デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


相馬夏美編

 

 努力は裏切らない

 

 だから努力するのは苦じゃない

 

 努力して努力して

 

 また努力して

 

 その先にある周囲の驚きが

 

 私を突き動かしてくれる

 

 アイドルはまさに天職だった

 

 だから私に声をかけた

 

 いい目を持つ魔法使いさんを

 

 嫌というほど喜ばせてあげたい

 

 ―――――――――

 

「あぁ〜、私としたことがぁ……」

 

 今日の私は完全オフ。でも私は趣味のランニングも出来ずにベッドに横たわっていた。

 先日はグラビア撮影でまだこの時期は水温の低い海に入ったせいだろう。でも後悔はしてない。だって可愛い水着を着て海で撮影してるのに海辺でのショットしかないなんてナンセンスでしょ?

 まあその結果風邪を引いてる私はもっとナンセンスなんだけど……。

 

「ちゃんとケアしてたんだけど、神様から無理をした罰をもらったのかな〜」

 

 幸い熱はないし、病院でも安静にしていればすぐに治ると診断された。明日は次のライブに向けてレッスンがあるし、午後からはグラビア写真集に使う写真の確認作業に参加させてもらうから今日は大人しくしてなきゃ。

 私専属のプロデューサーさんが頑張っていい仕事を沢山取ってきてくれるから、私もついその頑張りに応えたくて無理しちゃうのよね。とほほ……。

 

 でもこんな静かに過ごす時間はアイドルになって久々だから、有意義にしないとね♪

 そしてやることならもう決まってる。

 

「………………♪」

 

 今日はもうスマホで永遠と写真を見て過ごすわ。

 自分のスマホの中にある1つのアルバムフォルダ内には私とプロデューサーさんの思い出がぎっしり。

 その1枚1枚を見て、この時はどんなだった……この時はこうだった……って思い出に浸るの。

 

 だってこのフォルダは私とプロデューサーさんの恋愛アルバムだから♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私は一度こうと決めたらすぐに行動をするタイプ。でもプロデューサーさんは一度こうと決めたら念入りに計画をするタイプ。

 まあ私も計画は立てるけど必ずイレギュラーなことは起こるものだから、基本的に大まかな終着点しか決めないの。

 だからかな。私がプロデューサーさんに惹かれたのは。

 

 私にはない考えとプラン……そしてその中には常に私が中心にいる。プロデューサーであれば自分の担当アイドルを中心にするのは当然なんだろうけど、私はそれが嬉しくていつも私を第一に考えてくれるプロデューサーさんに恋をした。

 

 だから彼が私専属プロデューサーになってくれた時に即行動したの。

 沢山沢山アプローチして、スキンシップもして、時にはちょっと破廉恥な誘惑も……♡

 その甲斐あって彼が告白してくれた時は嬉しくて涙を流してしまった。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 その日から作ったこのフォルダは私の宝箱♡

 アイドルとプロデューサーだから表立ってデートとかは無理だけど、些細なことでも彼との思い出を写真に残していくことで「あぁ、私は彼の恋人なんだ」っていう実感を得るの。

 ただの自己満足だと言われればそうなんだけど、思い出って大切にしたいじゃない? それが大切な人との思い出なら誰だって大切にするはずだもの。

 

「…………プロデューサーさん♡」

 

 大好き♡ 画面の中で笑う彼に心の中で愛の言葉を囁くと、私の胸はランニングしてきたあとみたいに鼓動が早くなる。

 出来ることなら今日も事務所に行って会いたかった。彼は今日も私のために働いているんだもの。そんな大好きな彼のために何か恋人らしいことをしてあげたかった。お弁当を作っていってあげるとか、休憩の合間に肩をマッサージしたりとか……。

 

「はぁ……プロデューサーさんに会いたい」

 

 人を好きになったことはこれが初めてではないけれど、こんなにも会いたいと願う恋愛をしたのは初めてだ。

 1分1秒でもいいから会いたいし……触れたい。私と一緒に過ごさなかった時間を作ってほしくない。私って案外重たい恋人なのかも。

 

 ピンポーン

 

「?」

 

 ふと私の借りてるマンション部屋のインターホンが鳴った。

 時計はお昼丁度。宅急便? でも何か通販でポチポチした覚えはない。

 

 重たい体を起こしてドアホンの画面を確認した私はすぐに扉へ走っていく。

 だって来てくれたのはプロデューサーさんだったから♡

 

 ガチャ

 

「ハァイ、プロデューサーさん♡」

「突然押しかけてごめん」

「ううん、気にしないで♡ さ、入って入って♡」

 

 私が会いたいと願ったらプロデューサーさんが来たんだもの。こんなに嬉しい偶然はないわ♡

 

 ―――――――――

 

 リビングに通してプロデューサーさんをソファーに座らせた私。お茶を淹れようとしたけど、それより先にプロデューサーさんから手を引かれた私は彼の隣に座ることになった。少し強引だったけどそれでもなんでか嬉しかった♡

 

「どうしたの、プロデューサーさん? 今日はやけに積極的ね? ドキドキしちゃう♡」

「心配で来た。それに風邪引いてる彼女にお茶なんて淹れさせられないよ」

「もう……心配症なんだから♡」

 

 でもその小さな気遣いは私にこれでもかと幸福感を与えてくれる。大切にされてる、愛されてる、と伝わるから。

 

「心配くらいする」

「ありがとう♡」

「そもそも俺があれだけ反対したのに海に入った夏美が悪いんだ」

「それはもう今朝何度も聞きました〜♡ 反省してます〜♡」

「声色と表情が全然反省の色を見せてない」

「これはしかたないの〜♡ 今日は会えないと思ってたプロデューサーさんに会えたから嬉しさの方が強いの〜♡」

「…………馬鹿」

「ごめんね〜?♡」

 

 風邪を移してしまうかもしれない。でも至近距離にいるプロデューサーさんに擦り寄るなっていうのが難しい話。

 

 あぁ、どうしてこんなに好きなんだろう。愛おしくて愛おしくてたまらない。

 無理をした罰を今日は神様からもらったけど、この人と私を出会わせてくれた神様には本当に感謝してる。

 

「こほん……ちょっと台所借りるな」

「え?」

「昨日、別れ際に『頭痛がする』って言ってただろ? だから昨日の内にポトフ作っておいたんだ」

 

 キュンッ♡

 

「実家だとな、俺が風邪を引くとよく母さんがポトフを作ってくれた。だからレシピを聞いて夏美のために作ったんだ」

 

 キュンキュンッ♡

 

「…………ありがとう、頂くわ♡」

「……すごく顔がにやけてるんだが?」

「プロデューサーさんのせい〜♡」

 

 そんなことされて喜ばない人なんていないわよ。あぁ、本当にプロデューサーさん大好き!♡

 

 ―――

 

「ん〜、美味しい〜♡」

「……良かった。初めて作ったから不安だったんだ」

「プロデューサーさんってあまり料理しないものね〜。なのに私のためにありがとう♡」

「す、好きな人のためならこれくらい普通だろ……あ、おかわりするか?」

「うん、するする♡」

 

 この乱暴だけどゴロゴロした食材がまたいい味出してるわ。食べててなんか楽しくなっちゃう♪

 

「ねぇ、プロデューサーさん?」

「どうした?」

「料理してて包丁で指とか切らなかった?」

「流石にそこまで不器用じゃないよ」

 

 私の質問にプロデューサーさんは苦笑いしながらおかわりをよそってきてくれて、「ほら、どこも切ってないだろ?」って隣に座って両手を私に見せてきた。

 

「良かった。私のせいで怪我させちゃってたら嫌だもの」

「そんなこと気にするな。仮に怪我してもそれは俺の落ち度なんだから」

「それでも気にするの〜」

「夏美は優しいな」

「プロデューサーさん限定です〜♡」

「はいはい」

 

 風邪引いた時はショックだったけど、こんなに幸せならなって良かったかも♡ これだけ大切にされてるって実感出来るんだもの♡

 

「そういえばプロデューサーさん、午後のお仕事は?」

「あるよ。でもデスクワークだからもう少しお邪魔させてくれ」

「ノーパソ持ってきて私のとこでお仕事しててもいいよ?♡」

「んなこと出来るか」

「ざ〜んねん♡」

 

 風邪引いてなければずっと一緒だったのに〜。早く治して一緒の時間増やさなきゃ。

 

「あ……指切ってれば私がその傷舐めて風邪移してあげたのね〜♡ なんか残念だわ〜♡」

「何を急に訳の分からんことを……」

「だってプロデューサーさんが帰っちゃうと寂しいんだもん♡ 私がこんなにニコニコしてるのはプロデューサーさんと一緒だからよ?♡」

「…………可愛いこと言うな」

 

 だって本当のことだもの。それくらいプロデューサーさんと過ごす時間は私にとって宝物なんだから。

 

「それに俺に風邪を移すなら――」

「?」

 

 チュッ♡

 

「――キスで移した方がロマンチックじゃないか?」

「…………えぇ♡」

 

 やばい……今のは今日一番キュンとした!♡ サラッとキスまでされちゃった!♡

 

「風邪のキスはコンソメ味だな」

「仕方ないでしょ〜?♡」

「その割にはすごく嬉しそうだ」

「だって嬉しいもの〜♡ プロデューサーさんとのキスはいつだってそうなんだから♡」

「可愛いな、本当」

「アイドルですから〜♡」

 

 あぁ、本当に幸せ。今ならフルマラソンも完走出来そう!

 

「プロデューサーさんプロデューサーさん♡」

「どうした?」

「まだ帰っちゃダメ〜♡」

「どうして?」

「私が寂しいから〜♡」

「じゃあ2時になったら帰るよ」

「や〜だ〜♡」

「じゃあ3時……」

「もっと〜♡」

「帰れないだろ」

「ん〜、ん〜ん〜♡」

 

 年甲斐もなく甘えてみっともないと思う反面、甘えて困ってるプロデューサーさんの笑顔が見ていて楽しい♡

 神様は私とプロデューサーさんがイチャイチャ出来る時間をくれたのかしら?♡ だったらこれまで以上に感謝しなくちゃ!

 

「2時に帰って仕事終わらせたらまた来るから……」

「いつ終わるの?」

「めっちゃ頑張って終わらせてくる」

「プロデューサーさん忙しいから遅くなりそ〜」

「そうならないように頑張るんだよ!」

「じゃあ、約束のキス……ん〜、ちゅっ♡」

 

 私はあえてプロデューサーさんの首筋にキスをした。

 

「唇じゃなくていいの?」

「うん、風邪を移してあげたのにって言ったのは冗談。私のせいでプロデューサーさんが風邪を引いたら嫌だもの」

「もう遅いと思うが……」

「あれくらいならセーフよ、セーフ!」

「はいはい。で、ポトフまだあるけど、どうする?」

「おかわりする〜♡」

「分かった。沢山食べて早く治してくれ」

「えぇ♡ 治ったらいっぱいイチャイチャしてね?♡」

「今もしてるだろ」

「今以上に〜!♡」

「はいはい」

 

 こうして私は風邪をプロデューサーさんの愛情で治して、次の日からまたバリバリ仕事をしたの。

 約束通りプロデューサーさんとのイチャイチャも……ね?♡―――

 

 相馬夏美⦿完




相馬夏美編終わりです!
そしてさ行も終わりました!

夏美さんは普段から落ち着いた感じなので恋人の前では甘々にしてみました!

次からはた行です!
お粗末様でしたー☆

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