デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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高森藍子編

 

 アイドルの道は辛く険しい

 

 でもその道から眺める風景は

 

 どんな道よりも

 

 キラキラと輝いてて

 

 笑顔で埋め尽くされている

 

 そんな素晴らしいことを

 

 教えてくれたのは

 

 私とたまたま目が合っただけの

 

 一人の魔法使いさんでした

 

 ―――――――――

 

「当店は時間制のバイキングとなっておりますが、店長である私の権限で今回は無制限とします。お飲み物はあちらのドリンクバーから、お冷とおしぼりはセルフとなっておりまして、ドリンクバーのお隣にあります。ごゆっくりお楽しみくださいませ」

「ありがとうございます♪」

「ありがとうございます」

 

 私は事務所から歩いて行けるバイキングのお店にやってきました。専属のプロデューサーさんとここでお昼を過ごすんです。

 ここは最近出来たバイキングレストランでオープン当初から私がキャンペーンガールをさせてもらっているお店なんです♪

 ビルの三階からの景色はとても綺麗で時間なんて忘れちゃいそうです♪

 でも本当にそうなる大きな理由は―――

 

「俺が適当に持ってきていいのか? それとも一緒に取りに行く?」

「一緒に行きます〜♡」

 

 ―――大好きな人との大切な時間ですから♡

 

 私とプロデューサーさんは事務所には内緒でお付き合いをしています。でもアイドル仲間のみんなには相談とかも乗ってもらったので、知られてます。

 アイドルとプロデューサーが付き合うのは良くないことだと思って、最初は私も自分の恋心を捨てようと思っていました。でもみんなに相談するとみんな応援してくれました。だから私はプロデューサーさんと今に至ります。

 プロデューサーさんは私が不動のアイドルになるまではこの関係は秘密しようと言ってますが、今回みたいにちょくちょくデートに誘ってくれるので、私は幸せいっぱいです♡

 

「わぁ、プロデューサーさん、見てくださいっ。色んな食べ物がありますよっ」

「そうだな。それに毎日メニューが違うらしいから、人気なのも頷ける」

「毎日がパーティみたいですね♪」

「でもここまで人気になったのは藍子がキャンペーンガールやってるからだからな!」

「もう、プロデューサーさんったらぁ♡」

 

 そう言ってくれるのは嬉しいですけど、そんなに褒められると照れちゃいます♡ 私はプロデューサーさんに言われた通りにお仕事に臨んでるだけなんですから♡

 

「あれ、この七輪って何に使うんでしょう?」

「あ〜、それはテーブルに持ってって、そこにある魚の切り身とか肉とか自分で焼いて食べられるらしいぞ」

「はわぁ、珍しいサービスですね〜」

 

 でもだから各テーブルの真上に換気扇が付いてたんですね。

 

「やってみたい?」

「やってみたいです!」

「なら持ってこうか」

「はいっ♪」

 

 お昼が終わったら私の予定はレッスンだけ。それならニオイが付いちゃっても平気だよね? でも一応事務所に戻ったら服に消臭剤使お。

 

 ―――――――――

 

「さて、色々と持ってきたが……何から焼く?」

「お魚さんがいいです♪」

「OK……んじゃ、ジュワ〜っと」

 

 ジュワワワ〜ッ

 

「焼けてますね〜♪」

「そりゃあ焼いてるからな」

「私、こういう焼く作業とか出来ないんですよ〜。どうしてかいつも焦がしちゃって〜」

「藍子の特技みたいなもんだよな」

「え〜、そんなことないですよ〜」

「特技だからいつも焦がすんだろ?」

「うぅ〜……でも今回はプロデューサーさんが焼いてくれるから焦げませんよ!」

「俺だからな」

「にゃう〜っ!」

 

 今日のプロデューサーさんは意地悪さんですぅ。いつも優しいのにぃ。でも意地悪さんでもプロデューサーさんなら大好きですぅ♡

 

「可愛く唸ったかと思ったらニヤニヤして……そうやって藍子はまた俺を虜にするんだな」

「そんなことしてません〜♡」

「余計にニヤついてるんだが?」

「プロデューサーさんのせいですぅ♡」

 

 だって可愛いって言ってくれましたし、私の虜にもなってくれるんですから、ニヤニヤしちゃうじゃないですかぁ、もう♡

 

「それより焼けたぞ。ほら」

「あ、ありがとうございます♪ 美味しそうですね〜、なんていうお魚さんなんでしょう?」

「それはタラだな」

「あぁ、あのなんとかですぅって言う男の子ですね」

「それはフグ〇家のだな。そう言うと人ん家の子どもを捌いちゃってることになるから止めような」

「でも雫ちゃんの家の牛マルク三世さんは事務所のみんなで美味しく食べましたよ〜?」

「考え方の問題だ」

 

 難しいですね。でも命を頂くんですから、美味しく頂きます。

 

「頂きます……はむっ」

「どうだ? 一応塩味は付いてるみたいだったが……」

「とっても美味しいですっ!」

「そりゃ良かった……うん、塩味が効いてて美味いな」

「きっと高級なタラなんでしょうね〜」

「バイキングのタラならそんなに高級じゃないと思うぞ?」

「そうなんですか?」

「普通はな。食品にコストかけてたらもう少し値段釣り上げないと儲けがなくなっちまうだろ」

「なるほど〜」

 

 ビジネスの世界というのは難しいですね〜。私にはさっぱりです。でもビジネスがあるから社会が成り立ってるんですよね。凄いです。

 

「ほい、次はシャケな。んで、サバも焼けたぞ。どんどん食べろ」

「は〜い♪」

 

 どのお魚さんも美味しい♪ これが高級な物じゃないだなんて思えないくらい美味しいです♪

 

「あ、私分かっちゃいました!」

「何が?」

「こんなに美味しく感じるのはきっとプロデューサーさんと一緒に食べてるからですよ!♡」

「あーはいはい、そういうのは――って、あぁ、その目は本気で言ってる目だね。ありがとありがと」

「はいっ♡」

 

 やっぱり大好きな人と一緒にいるとどんなことも特別な時間になるんですよね♡ プロデューサーさんと出会えて本当に良かったです♡

 

 ―――――――――

 

 それから時間も過ぎて時刻は夜の7時。レッスンも終わって、あとの私は帰るだけなんですが、私はまだ事務所にいます。

 プロデューサーさんはいつもこれくらいにお仕事を終えるので、それを待ってるんです。

 その理由は必ずすることがあるんです♡

 

「お待たせ。じゃあ、行こうか」

「はいっ♡」

 

 それは私たちだけで夜の街をお散歩すること♡ お昼のお散歩も好きですけど、夜のお散歩は少し恋人らしく過ごせるので、大好きになっちゃいました♡ 私の場合、マスクを着けて髪を下ろせばいいだけなので♡

 

「プロデュ……〇〇さん、今日はここの道はどっちの道に行きますか?♡」

「昨日は右だったから、今日は左に行こうか」

「はいっ♡」

 

 普通の恋人同士みたいに腕を組んで道を歩けるなんて新鮮で楽しい。それにちょっと悪いこともしてるみたいでワクワクしてる私もいます。でもそのワクワクはすぐにプロデューサーさんに対するドキドキへ変わります。

 

「………………♡」

 

 だって少し視線を上げれば、すぐにプロデューサーさんの……大好きな人の横顔が恋人同士の距離で見えるんですから♡

 お仕事の時も近くで見れますが、やっぱりこっちの距離感の方がいつもよりとっても近くてドキドキするんです♡

 

「左から凄い視線を感じるなぁ」

「? 誰かに見られてるんですか?」

「うん、藍子っていう可愛い子にめっちゃ見られてるんだ」

「わ、私ですか?」

「それ以外いないだろ」

「うぅ〜、そう言われると恥ずかしいです」

「でも視線は外さないっていうね」

「はぅ〜……♡」

 

 だって大好きな人のことなら見ちゃうじゃないですかぁ。でも流石に迷惑なのかなぁ。

 

「藍子ってさ」

「はい?」

「犬っぽいよね。しかもぽやんとしてる犬。散歩好きだし、ずっと俺のこと見てるし」

「そ、そうですかね〜?」

 

 そんなことないと思うんだけどなぁ。でもプロデューサーさんが別の現場に行っちゃったりすると、寂しくはなっちゃうかな。側にいてくれると安心するし……。

 

「藍子」

「はい?」

 

 急に立ち止まったプロデューサーさんの方に私が体を向けると、プロデューサーさんが私の頭と顎の下を優しく撫でてくれました。

 どうしたんだろうって思いましたけどナデナデされるのは嬉しいので、私はつい笑ってしまいました♡ だって嬉しいと笑っちゃうじゃないですか♡ 何より大好きなプロデューサーさんからですし♡

 

「わふぅ〜♡」

「まんま犬だな」

「え〜?」

「だって撫でられて喜んでるし」

「それは〇〇さんだからですよぅ。知らない人にされたら困っちゃいますぅ」

「知らない人に撫でられるとかどんな状況だよ」

「私も知りませんよ〜」

 

 そもそもプロデューサーさん以外の方に撫でられても嬉しくないです。アイドルのお友達ならまだ嬉しいですけど……でもやっぱりプロデューサーさんにされるほど嬉しくなりません。

 

「あ、ここ公園だ」

「あ、本当ですね」

「ちょっと休憩しようか」

「はい♡」

 

 ―――

 

 そこは小さな公園。でもお掃除も行き届いてて綺麗な公園ですし、公園の中にも私たちみたいにお散歩してる人たちやウォーキングやジョギングしてる人たちもいます。

 私たちは自動販売機で飲み物を買って、適当なベンチに座りました。

 

「いい公園だな」

「そうですね。私のお散歩コースの公園みたいです♪」

「自動販売機にホットのミルクティーもあるしな」

「はいっ♪」

 

 でも私がこんなにニコニコしてる理由はプロデューサーさんが隣にいてくれるから。そうじゃなかったら夜のお散歩なんてしてませんし、もう少し疲れたお顔しちゃってると思います。

 

「肌寒くないか?」

「大丈夫です。ありがとうございます」

「藍子は鈍感だからなぁ。常に気を配ってないと心配だ」

「私、そんなに手のかかる子じゃないですよ?」

「好きな子だから常に気を配ってるんだよ」

「っ……えへへっ、そっか……えへへへ♡」

 

 どうしよう、とっても嬉しくて笑いが止まりません♡

 

「ニヤけ過ぎ」

「ごめんなさ〜い♡ えへっ♡」

「可愛いから許す。はははっ」

 

 私につられてプロデューサーさんも笑い出します。特に理由もないのに笑ってる私たちですが、なんかこういうのもいいなって思っちゃいます。

 きっと幸せってこういうことを言うんでしょうね♡

 

「さて、散歩の続きをするか」

「はい♡」

「戻ったら家まで送るよ」

「お願いします♡」

「彼氏だからな」

「じゃあ……彼女からのお願い、聞いてくれますか?♡」

「何かな?」

「あとで、でいいんですけど……キスしてほしいです♡」

「そのお願いは今叶えよう」

「っ……はい♡」

 

 プロデューサーさんは私からそっとマスクを外して、周りに私のお顔が見えないように優しいキスをしてくれました♡

 周りにはまだ人もいましたけど、私はこの人の彼女さんなんだって強く感じられてとても幸せな気持ちになりました♡―――

 

 高森藍子⦿完




高森藍子編終わりです!

ゆるふわアイドルの藍子ちゃんはやっぱりゆるふわで甘々じゃないと!←

お粗末様でした☆

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