デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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南条光編

 

 アイドルはヒーローだ

 

 地道な努力を続けて

 

 誰にも辛い表情は見せない

 

 みんなの前では

 

 いつだって光り輝く存在

 

 それを教えてくれたのは

 

 アイドルを教えてくれたのは

 

 掛け替えのない相棒だ

 

 ―――――――――

 

「南条ちゃん、今回はありがとう。そしてお疲れ様ね〜。また一緒にお仕事しようね〜」

「はいっ、ありがとうございました!」

 

 画面の前のみんな、こんにちは! アイドルの南条光だ! アタシは今、念願であった特撮ヒーロー番組の主題歌の収録を終えたところだ!

 どんな特撮ヒーロー番組かはまだ秘密にしてないといけないから明かせないが、その時が来るのを楽しみにしててくれ。アタシ自身、精一杯歌ったから!

 

 まさかこんなに早く夢が叶えられるなんて思ってもみなかった。でもアタシをスカウトしてくれて、今ではアタシ専属のプロデューサーになってくれたPが精一杯プロデュースしてくれたから実現したんだと思ってる。

 

 それに今じゃ、Pはただの恩人じゃなくて……アタシの恋人だからな♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 アタシがPに恋をしてると自覚したのは半年前。

 その日アタシは熱があったけど、レッスンを休みたくないから無理をしてレッスンに臨んだんだ。

 だってアイドルもヒーローもやることは違っても、多くの人に勇気を与える仕事だからな。だから早く誰かのためになりたくてデビューしたかったんだ。

 

 でもその結果、アタシは倒れた。その時、意識は朦朧としてたけど、Pがアタシのために必死になって動いてくれてたのはハッキリと覚えてる。

 

 それからなんだ。Pを見ると胸が苦しくなり始めたのは……。

 苦しくて辛いのに、一緒にいるだけで力が湧いて……アタシはこの人のためにアイドルになりたいって心から思えたんだ。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そして今ではアタシはPに自分の気持ちを告白して、それにPが応えてくれた。事務所に秘密にしてるのは悪い気がして嫌だけど、Pと一緒に仕事が出来なくなる方がもっと嫌だ。

 だからアタシが自分で責任を取れる年齢になるまでは、静かにPと恋人関係を続けていこうと思う。

 でもアタシたちは孤立していない。アイドル仲間のみんながアタシたちの関係を応援してくれてる。だからアタシ、今度はPのお嫁さんになるっていう夢を叶えるために今以上に頑張るんだ!

 

「おう、お疲れ、光。そしておめでとう、今日はお祝いだな」

「…………P」

 

 収録スタジオから控室に戻ってくると、そこにはアタシの大好きなPが待っててくれた。いつものように笑顔で。

 ただそれだけなのに、アタシの身体はカァーッと熱くなる。全身に力が漲って、茜ちゃんじゃないけどボンバー!って叫びたくなる。それくらいアタシはPのことが好きなんだ。

 

「? どうした光?」

「P、アタシ……」

「???」

「Pと出会えて良かったよ」

「なんだ唐突に?」

「1つ、夢が叶ったから」

「それに見合う努力をしてきた結果だ。俺はそれをアシストしただけ」

「Pがいなかったらこうならなかった」

「そりゃあな。でも実現させるのは本人次第だ。そして光はちゃんと実現させた。俺はそれを見届けたに過ぎない」

「Pには敵わないなぁ」

 

 いつもPはこうだ。アタシがどんなに感謝してもPはいつもアタシが頑張ったからって言ってくれる。

 Pの言うことや教えてくれることは正しいと思ってる。でもね、Pは1つ肝心なことを間違えてる。それは―――

 

「でもアタシはPがいるから、ここまで来れたんだからね?」

 

 ―――アタシの力の源はPだってことだよ。愛の力って言ってもいいと思う。

 

「はは、それは光栄だ。俺も光が一生懸命愛してくれるから、やる気が湧くんだ」

「もう……♡」

 

 特撮ヒーローモノでたまに恋愛的な描写とかお話があると、前のアタシはそんなのいらないって思ってた。だって正義と悪が戦うのにそこに恋愛感情とかいらないと思ってたから。

 でも今のアタシは分かる。種族を超えた愛や敵味方を超えた愛、そして大切な人を守りたいと思う愛情……そこから正義が生まれるんだって。

 アタシもPのためにアイドルをしてて、Pはアタシのためにプロデュースしてくれてる。これはアタシたちだけの正義という名の愛なんだ。

 だからこの愛をアタシは大切に大好きなPと育みたい♡

 

 ―――――――――

 

「でさでさ、サビに入る瞬間に音楽がズドドド〜って感じに押し寄せてきてさ! そこがまたかっこよくて〜!」

 

 偉い人たちと挨拶をして、スタジオをあとにしたアタシとP。今回は真っ直ぐに事務所に戻らずに、その前にちょっと早い夕飯をPとファミレスで食べてるとこ。

 ヒーローモノの主題歌になっただけあって、今回の曲もとってもかっこよかった。歌詞も良かったし、アタシはずっとこのことばかり話してる。

 そんなアタシの話をPはニコニコしながら聞いててくれるんだ♡

 

「そんなに気に入ってくれたなら、頑張って仕事もらってきた甲斐があるよ」

「ホントにありがとな、P! やっぱりPはアタシの最高の相棒だ!」

 

 相棒……ホントにいい響きだよな。まあ本音を言えば恋人って言いたいけど、今は二人きりの場所じゃないから言わないようにしてる。

 これでも一応アイドルだし、ファンの夢を壊しちゃいけないからな!

 

 それに―――

 

「あの、アイドルの南条光ちゃんですか?」

「ファンなんです! 良かったらサインください!」

 

 ―――こうしてアタシのことを知ってくれてて、サインを求めてくれる人がいるから。

 

 最初の頃はサインを求められる度に狼狽えてたけど、今は慣れたのもあって自然な笑顔を返せてると思う。

 まあでもアタシがところ構わず『P、P』って呼んでるから周りにバレちゃうんだろうけどね。

 

「ありがとうございました!」

「これからも応援してます!」

「ありがと〜♪」

 

 ファンにサインするとみんな嬉しそうにしてくれるから好き。それにPもニコニコしててくれるから、それもホントに好き♡

 

「光ももうすっかり有名人になったな」

「Pがプロデュースしてくれてるお陰だよ♡」

「光が頑張ったからさ」

「もうすぐそうやって自分のことないがしろにする〜」

 

 もう少し素直に喜ぶべきだと思うんだよな。それこそ『光はワシが育てた!』くらい言ってもいいと思う。

 

「俺の評価なんてなんだっていいんだよ。俺が全身全霊を掛けてプロデュースした光が評価してもえればそれで俺は満足なんだ」

「…………そういう言い方、ズルっこだ」

「俺はいつも素直な言葉を言ってるだけだ」

「むぅ……♡」

 

 アタシがPに口で勝てることはない。寧ろ何をやってもPに勝てるとこなんてないと思う。あったとしても髪の長さとか特撮ヒーローの歴代レンジャー名を全部言えることくらいだ。

 負けるのは悔しい。でもPだからアタシは負けてもいいと思ってる。だってPはアタシの中で誰にも負けないアタシだけのヒーローだから♡

 

「なあなあ、P♡」

「ん?」

「夕飯食べたら事務所戻るんだよな?♡」

「そうだよ。戻って報告して俺は俺の仕事をするからな」

「そっか、頑張ってな♡」

「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」

「まだ内緒……へへへ♡」

「???」

 

 Pは不思議そうな顔してるけど、アタシはとっても楽しかった。だって事務所に戻ればPにご褒美もらう予定だからな♡

 

 ―――――――――

 

 それから事務所に戻ってきたアタシたち。Pが報告を終えて自分のオフィスに戻ってくると、アタシはすぐにPの胸に飛び込んだ。

 

「光?」

「ん〜、ん〜ん〜!♡」

「なんだなんだ? 今日は甘えたい気分なのか?」

「んっ!♡」

「よしよし、光はいい子いい子〜」

「ん〜♡」

 

 Pに頭よしよしされるの好き〜♡ これだけでアタシはふにゃふにゃになるんだ♡ もし悪の組織がPを操ってこんな攻撃をしてきたらヤバイかもしれない。でもPのためなら頑張れるかな? Pを守れなきゃPのヒーローになれないからな!

 

「俺の仕事をやる前に光を家に送ってくよ」

「まだ帰りたくない〜♡」

「でも帰らなきゃな。ヒーローにも休息は必要だ」

「今が一番の休息だも〜ん♡」

 

 Pと一緒にいる方が落ち着くし、一番癒やされる。だからアタシはギリギリまでPとこうして抱き合ってたいんだ♡

 

「あ、そういえば」

「んぅ?♡」

「また東京の遊園地のヒーローショーのゲストにイグニッションZEROで呼ばれてるんだ。土日祝と三連チャンだけど、受けていいよな?」

「わ! ホントに!? やるやる! やるったらやる!」

「ならそう話を通しておくよ」

「やったー!」

 

 仕事だけど本物の特撮ヒーローと一緒だなんて最高! Pはアタシの夢を叶えてくれる最高のヒーローだよ! それに東京でなら前倒しで行くことになるし、デートも出来るよな!♡

 

「なあなあ、P!」

「?」

「大好き!♡」

「ちょ、声が大きい。もう少し声を抑えて」

「無理!♡ 大好き大好き大好きー!♡」

「こらこらこらこらこら」

「むぐっ!?」

 

 Pに口を手で押さえられちゃった。でもこれはこれでなんか新鮮でいいかも♡

 

「むふふん♡」

「なんで嬉しそうなんだよ……」

「ぷはぁ……好きな人にされることはなんだって嬉しいからな♡」

「そうか……」

「それにPはアタシのこと裏切らないし!♡」

「…………眩しい」

「へ?」

「光が眩しい……尊い」

「ん〜? 変なP♪」

 

 早く次の連休にならないかな〜♡ あ、お母さんとかにも教えとかなきゃ。流石にPと二人きりでお泊まりするのは言えないけど、いつかその時が来たら言おう。

 

「あ、そうだP!」

「今度はなんだ?」

「またその仕事が成功したら観覧車乗ってもいい!?」

「まあ、それくらいなら……」

「やった! じゃあじゃあ、この前は出来なかった、観覧車でのチュウしような!♡」

「ん?」

「だからチュウだよ、チュウ!♡ この前はPがダメだって言って出来なかったじゃん!」

「………………」

「もしかして、次もダメなの?」

 

 《お目々ウルウル攻撃》

 

「…………分かったよ」

「やったー!♡ やっぱりP大好きー!♡」

「だから大声で言うな!」

「むぐむぅ♡」

 

 へへへ、余計に楽しみが増えちゃった♡

 

 こうしてアタシはそのあともずっとPに好き好き♡っていっぱい伝えて、家に送ってもらった♡

 それで土曜日の仕事のあとで早速観覧車のてっぺんでチュウもしたんだ♡ これからもアタシはPと色んなことをしたいな♡―――

 

 南条光⦿完




南条光編終わりです!

光ちゃんの愛情表現はとてもストレートだと思うんです!(真顔)

お粗末様でした☆

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