デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


難波笑美編

 

 アイドルになろうと思った動機は

 

 今考えてもミーハーやった

 

 だって芸能人に会いたい

 

 たったそれだけやったから

 

 でもウチにとっては

 

 それも立派な動機や

 

 行動を起こそうとしたきっかけや

 

 その結果

 

 アイドルになれたウチは幸運やで

 

 だから

 

 あの魔法使いはんには

 

 一生恩返しすんねん!

 

 ―――――――――

 

「はい、オッケーでーす!」

「お疲れ様でしたー」

 

「お疲れ様でした〜♪ また良かったらウチのこと使ってください♪」

 

 今日の仕事も無事終了! 今日の仕事はアイドルらしくアイドル雑誌の撮影やったで! しかも今回はウチが表紙飾んねん! もう両親や地元の友達らにも宣伝したから、バカ売れ必須やで!

 

「プロデューサーさん、どの写真使いますか?」

「そうですね……こらちとしては……」

 

 表紙に使う写真を編集側の人と選んでるのが、ウチの専属プロデューサー。ウチを本気でアイドルにして、ここまで押し上げてくれた天才や。

 プロデューサーはんがいなかったら、あの人じゃなかったら、ウチはアイドルになれてへん。だからウチ、アイドルとしては失格言われてもしゃぁないかもしれへんけど、プロデューサーはんのことめっちゃ好きやねん。ライクじゃなくてラブやで、ラブ♡

 

「これが一番可愛い表情をしてると思います」

「なるほど、ではこれを表紙にしましょう」

「お願いします」

 

 編集の人に平然と"可愛い"とか言わんといてや……照れてまうやん♡

 プロデューサーはんはウチより10コも年上やから、恥ずかしいセリフとかサラッと言えるんよね。嬉しいけど……♡

 

 今でこそウチらは事務所には内緒で付き合うとるけど、プロデューサーはんはウチがアピールする前から何も変わらへん。すぐウチに「可愛い」とか「キスさせて」とか「抱きしめたい」とか涼しい顔して言うからな。

 ウチのプロデューサーはんはドSやから、ウチの気持ちにずっと前から気付いてたのに敢えて気付いとらんふりをしてたんやで? ホンマ酷いよな? でもな……それでも喜んでたウチがいたんよ♡ ダメやね。惚れた方が負けやから、大抵のことは許せてまうんやもん♡

 

 どうして気付かんふりをしてたのか前に訊いてみたら―――

 

『今まで一度も経験したことなかったから、友達以上恋人未満の関係を満喫したかった』

 

 ―――って言われた。普通やったらキレてええセリフやと思う。けど、ウチはそれでも嬉しかった。だってちゃんとウチのこと見ててくれたってことやからね。

 

 あ〜、アカンアカン。控室戻らなあかんのに、プロデューサーはんのこと見てまう♡

 

「?」

 

 あ、プロデューサーはんに気付かれた。しかもこっち来るやん。

 

「どうした笑美? 何か気になることでもあるのか?」

「う、ううん、別に何もあらへん」

「そっか。なら早く控室に戻って帰り支度をしてこい」

「は、は〜い」

 

 ウチが返事をすると、プロデューサーはんがふと近寄ってきて―――

 

「そんなに熱い視線で見つめるなよ。関係がバレちゃうだろ? 僕だけのシンデレラ」

「〜〜〜っ♡」

 

 ―――なんて耳元で囁いてきた! アカン! 今のアカンて! それだけで孕める自信あるわ!♡

 

 でもなんか悔しいなぁ。よ〜し―――

 

「何言うてんの。自意識過剰やない?」

 

 ―――ツンデレ攻撃や! これでプロデューサーはんも少しはグッと……

 

「こんなに可愛い彼女がいるんだ。自惚れて悪いのかい?」

 

 ……来たのはウチやったぁぁぁぁぁっ!♡

 はぅ〜、好き〜♡ プロデューサーはんめっちゃ好き〜!♡ 好き好きの好っき好きやでホンマに〜!♡

 

「ほら、早く控室に行け」

「は〜い♡」

 

 ホンマにウチはプロデューサーはんが相手やとヤバいわ♡ 胸がキュンキュンし過ぎて止まりそ♡ でも死因がプロデューサーはんなら、ウチはそれでもいいかも……なんて♡

 

 ―――――――――

 

 午後イチからの撮影やったけど何だかんだ時間は結構過ぎてて、スタジオの外は真っ暗やった。

 

「もうすっかり夜やな〜」

「そうだな。笑美のお腹もぐうぐう鳴ってるし」

「それは聞き流すとこやで?」

「いつもボケをスルーしてるから拾ったのに」

「変なとこで拾うプロデューサーはんが悪いんや!」

 

 もう、いつも肝心なとこでウチのボケ拾わんくせに、こういう時ばっか拾うんやから。

 

「笑美はこのあと事務所に戻っても何もないし、寮に送るだけだ。だから寮へ送る前にどこかで食事して帰ろうか?」

「ホンマに!?」

 

 めっちゃ嬉しい! 二人きりやし、ディナーデートやん!♡ やっぱプロデューサーはんは出来る男やな〜♡ また惚れてまうや〜ん♡

 

「どこかリクエストはあるかい?」

「う〜ん……何がええかな〜?♡」

「分かった。じゃあいつものとこにしよう」

「早っ! 決めるの早っ! リクエスト訊いて来たくせに!」

「僕、辛抱強くないから」

「ウチが考えるのって辛抱いるん!?」

「だって長いんだもん」

「ぐぬぬ、何も言い返せへん……」

「ってことでいつものとこね」

「は〜い」

 

 まあいつものとこなら全然問題無いんやけどね♡

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーはんに連れてきてもらったとこはお好み焼き屋。東京やからオサレなことにカップル席もあるし、ここのお好み焼き屋の店長さんが大阪出身やから本場の味でウチもお気に入りなんよ。それにアイドルとしてもご贔屓にしてもろうとるから、何度かキャンペーンガールもさせてもらったし、ポスターとかサインも玄関先にバッチリ飾られてんねん♪

 

「いやぁ、ここは注文が楽でいいね。顔見ただけで『いつものね!』って言ってもらえるから」

「どんだけ来てんねんって感じやけどな♪」

「でもいつものはそれとして、他のも頼むんだけどね」

「あはは、確かにな〜♪」

 

 ここはお好み焼き屋やけど、他にもたこ焼きもあるし、串カツもあるし、どて焼きもあるんよ。冬限定で関東炊きもあって、これもこれでめっちゃ美味い! だからめっちゃ人気の店なんやで! まあウチがキャンペーンガールやったお陰でもあるんやけどな!

 

「笑美」

「ん〜、なぁにプロデューサーはん?」

「今日もニコニコで可愛いね」

「うっさいわアホ♡ 誰のせいやと思とんねん♡」

「僕のせいなのかい?」

「あったり前やん!♡ プロデューサーはんがウチのことこんなんニコニコにさせてんねんで?♡」

「そっかそっか〜。なら僕の前では何倍も可愛い笑美な訳だ」

「も〜、そないなこと言うなや♡ アホ♡ 終いにはしばくで?♡」

「僕はMじゃないから叩かれても喜ばないよ?」

「勢いで言っただけや!♡ アホ、どアホ!♡」

 

 でもめっちゃ好き!♡

 

「失礼します。デラックス豚玉お持ちしました」

「ありがとうございます。あと追加でウーロン茶二つとどて焼きください」

「かしこまりました」

 

 よっしゃよっしゃ待ってました!

 

「プロデューサーはんはノータッチやからな?」

「うん、お願い」

「へへーん、今日もめっちゃ美味いお好み焼き食わせたる♡」

「楽しみだなぁ」

「せやろせやろ♡」

 

 お好み焼きを焼くのはウチの仕事。実を言えばプロデューサーはんの方がめっちゃ上手く焼けるんやけど、そんなん悔しいやん? せやからそれ以来ウチが焼くことにしたんよ。それにウチが焼いたのプロデューサーはんが食べてくれるのってなんか嬉しいし♡

 

「そういえば」

「ん?」

「この前行ったお好み焼き屋では笑美は荒れてたね」

「あ〜、この前のとこな〜。だってしゃぁないやん。あんなんお好み焼きちゃうもん」

「切り方くらい気にしなくてもいいと思うけどね〜」

「アカン」

「なるほどね〜」

 

 この前、仕事先で見つけたお好み焼き屋に入ったんやけど、そこのお好み焼き屋はウチとしてはアウトやった。

 店員さんがお好み焼き焼いてくれるんはええよ。そんで切ってくれるのもグッドや。でもな、ウチはその切り方に『は?』ってなったんよ。だってお好み焼きをピザやケーキみたいに切ったんやで? ありえへんやろ? ピザやケーキとちゃうねんぞ? その家のルールやったらまあしゃぁないけど、お好み焼き屋の看板出してあの切り方はないわ。

 関東の人はピザみたいに切るのが普通みたいやけどさ、大阪人のウチからしたらその切り方は手掴みで食べる切り方やねん。熱いのに手掴みで食えって喧嘩売られてるみたいになってまうねん。そもそもお好み焼きはシェアしないで一人一枚計算やんけ! あ、これはウチ個人の意見やから、そこは許して。

 

「切るにしてもせめて半分やろ」

「まあ関東人である僕からしたら、お好み焼きはピザみたいにみんなでワイワイ食べるみたいな感覚があるからねぇ。それに一つの量もかなりあるし」

「そこら辺からズレとるよな〜。だからこそ、ここのお店は最高やで!」

「本場の人が開いたお店だからね」

「うんうん。東京のお好み焼きも味はええんやけどな。でもやっぱりスタイルが大事やねん」

「なら将来は僕も大阪に行かないといけないかな?」

「へ?」

 

 何言うてんのプロデューサーはん? 将来? 大阪に行く? イミワカラン。

 

「え、笑美は僕と結婚してくれないの?」

「へぁっ!?」

 

 結婚? 結婚って結婚やんな? ウチとプロデューサーはんが? 結婚? ホンマに?

 

「お〜い、笑美〜?」

「な、ななな、何言うてんねん!」

「え、だって僕、将来は笑美と結婚したい」

「そ、そんなこと、今言われても……♡」

「今は出来なくても約束くらいしておいても損はないと思うんだ」

「そ、そそ、そうやけど……雰囲気とかあるやん?♡」

「僕と笑美だけ。仲良くお好み焼き屋で過ごしてる。雰囲気バッチリ!」

「もっと相応しい場所あるやん!」

「笑美のことしか僕考えてないから。もっと言えば笑美のことだけ考えてて、他のこと考えてる余裕ないから」

「〜〜〜っ♡」

 

 ホンマこいつ、こいつホンマ!♡ アホやろ!♡ どアホ過ぎやろ!♡

 

「はぁ〜〜〜〜〜っ」

「でっかいため息だなぁ」

「もう、ホンマ……めっちゃ好き♡」

「僕も笑美のこと好きだよ」

「めっちゃ好き♡ 死ぬ程好き♡」

「僕も同じだよ。死んだら笑美との思い出が増やせなくなるから死なないけど」

「んなこと知っとるわ、アホ♡」

「うん」

 

 ホンマ、ウチこの人の女で良かった。心からそう思ったわ。だってプロデューサーはんじゃなかったら、ウチはこんな幸せな気持ちにならへん。プロデューサーはんだからウチは今めっちゃ幸せ感じてんねん。

 

「プロデューサーはん♡」

「何かな?」

「今夜ウチ、寮に帰りたな〜い♡」

「どこに泊まるの?」

「プロデューサーはんのとこ〜♡」

「ちゃんとお願いしてごらん?」

「うぅ……ウチのこと好きにしてええから、プロデューサーはんのお家泊めてや〜♡」

「良く出来ました」

「アホ〜♡」

「プロポーズの答えはベッドの上で聞かせてね」

「変態〜♡」

「変態で結構」

「んぅ〜♡」

「それよりお好み焼き焦げてるよ?」

「それはもっとはよ言えやー!」

 

 そんな感じで今回もプロデューサーはんのせいで上手く焼けんかった。やから仕返しにプロデューサーはんのお部屋でこてんぱんにしてやろうと思とったけど、ウチの完敗やったわ♡―――

 

 難波笑美⦿完




難波笑美編終わりです!

笑美ちゃんが恋人だと毎日楽しいと思いますね♪

お粗末様でした☆

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