デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


大西由里子編

 

 あたしは腐っている

 

 いつからかそうなってて

 

 あまり人に趣味の話は出来なかった

 

 でもそんなあたしに

 

 自分の好きなものを隠す必要ない

 

 って言ってくれた人がいる

 

 ―――――――――

 

「――で、そういうところがすごくて! ユリユリとしては超絶萌えるんですよー!」

「なるほどね〜。私はそういうのよく分からないんだけど、由里子ちゃんがすごっく好きなのは伝わるわ〜」

 

 あたしは今、ネット番組の生放送に出演してる。

 これはただのネット番組じゃなくて、あたしみたいなキワモノアイドルをゲストに呼んで「こんなアイドルもいるよー!」って紹介してくれる番組なの。

 

 放送時間は1時間なんだけど、最初の自己紹介と経歴紹介以外の話題はずっとあたしの趣味の話♪

 司会者で進行役をしてる女性タレントさんはノーマルだけど、聞き上手だからあたし的にはすごく楽しい放送になった。

 まあ、見てくれてる人たちはどんな反応してるかあまり分からないけどね……。

 

 ―――――――――

 

 放送も無事に終わって配信スタジオがある階の控室に戻ってきた。

 そこでスタッフさんから聞いたんだけど、結構コメントとかメールで『男だけど今度そっち系の買ってみようかな』とか『めっちゃイキイキしてるユリユリぐうかわ』とか……手応えは良かったみたい♪

 しかも控室から出る時にみんなから『良かったらまた出演してください』、『頑張ってください』って言ってもらえたのが嬉しいかったじぇ!

 

 そんでそんでビルからあたしが出ると――

 

「お疲れ様です、大西さん」

 

 ―――あたし専属のプロデューサーが待っててくれた。

 

 あたしに『好きなものを隠す必要はない』って言ってくれて、あたしの趣味を理解してくれた初めての男の人。

 まあプロデューサーに声をかけられるまではあたしもろ腐女子だったから、そもそも声をかけられることすら経験なかったんだけどね。

 

 それに今では―――

 

「とっても楽しかったよ! このお仕事もらってきてくれてありがと、ダーリン……なんちゃって♡」

 

 ―――あたしはプロデューサーとお付き合いしてるんだじぇ!

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 あたしがプロデューサーに告白したのはほんの1か月前。

 あの時かけてもらった言葉がずっとあたしの心に残ってて、思い出す度に嬉しくなって……この人は特別な人だって思うようになったのがきっかけだった。

 

 アイドルなのに腐ってていいのか――

 

 それを高々に言って引かれないか――

 

 こんなのでアイドル出来るのか――

 

 目立つのは好きだけど、本当に大丈夫なのか心配で仕方なかった。

 

 でもレッスンや打ち合わせの度にプロデューサーはあたしの腐の部分を認めてくれて、それを強みにしようって提案してくれたの。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そんでまんまとあたしが恋に落ちちゃったって訳。

 て言うか、そこまで自分の趣味とかを理解してくれる異性が側にいたらコロッと行かない、普通?

 

「――って感じだったよ!」

 

 事務所へ帰る途中の車内で、あたしは後部座席から運転席にいるプロデューサーにお仕事の報告をする。

 今回は……というかいつもだけど、報告内容はほぼあたしの趣味関連のこと。

 そもそもプロデューサーって普通のお仕事であろうとなんだろうと『そのままの大西さんで』って言うから、話すことは変わらないんだよ。

 よだれたらしちゃったとか、ニヤニヤしちゃったとか……明らかにアイドルとしてはNGなことをしても―――

 

「確認としてタブレットの方で放送を観ていましたが、とても良い笑顔でしたね」

 

 ―――こう言って、優しく微笑んでくれる。

 恋愛補正なのか何なのか知らないけど、プロデューサーからそうやって微笑んでもらえると、あたしはすっごく幸せで気持ち良くなるんだよね……ふへへ♡

 

 ―――――――――

 

 事務所に着いて上の人への報告が終わると、あたしはプロデューサーと一緒に彼が使ってる個室に戻った。

 

「では早速午後からのスケジュール確認に入ります」

「はーい」

 

 個室に戻ってもあたしたちはアイドルとプロデューサーの肩書きを付けたまま。

 あたし的にはオフィスラブでこんなクールな男が二人きりだと甘えたがりの構って系男子でグイグイきてほしいけど、現実はそう甘くない。

 まあでも、プロデューサーはプロデューサーとして自分の仕事に誇りを持って全うしている訳だし、あたしがそういうのを好きなのと同じことなんだよね。

 だからこれはこれでイイ! プロデューサーのお仕事してる時の顔っていつもの3割増しでカッコイイし(恋人補正)!♡

 

「――ん、大西さんっ、聞いていますか?」

「ジュル……あぁ、ゴメンゴメン。あたしがプロデューサーに逆壁ドンするんだっけ?」

「違います……もう一度確認しますよ? 15時より荒木比奈さんと壁サーの花としてトークイベントがあります」

「はい、了解です!」

「打ち合わせ通りに、そして大西さんらしく好きなことをしゃべっていただければいいので、楽しんできてください」

「はーい!」

 

 本当にプロデューサーはあたしのこと理解してくれてるなぁ。

 自分の好きなことを大手を振って出来る人ってなかなかいないのに、それを実現させてくれるんだもん。

 だから―――

 

「プロデューサー、しゅきぃ♡」

 

 ―――ぐへへ♡

 

「はい、私も大西さんのことが好きですよ」

「へぁ!?」

「どうしました? そんなウ〇トラマンみたいな声をあげて……」

「あたし今何て言ってた!?」

「プロデューサー、しゅきぃ……と」

「ぁぅぁぅぁぅ……」

 

 うひ〜、思ってたことが口に出ちゃった……恥ずかしい。

 

「しかし何度聞いても良いものですね。可愛い恋人から好きと言われるのは……年甲斐もなくはしゃいでしまいますよ」

 

 悩殺低音イケボイスと魅惑の微笑みというハートブレイクコンボ炸裂ぅぅぅぅぅうっ!♡

 あたしの脳内がとろっとろになるんじゃあぁぁぁぁぁっ!♡

 

「さて、では昼食にしましょう。何かリクエストはありますか?」

「裸エプロンを要求するっ!♡」

「食べ物でお願いします」

「ならダーリン特製男体盛りをっ!♡」

「?…………あぁ、女体盛りの男バージョンですね」

「イエースイエスイエスッ!」

「衛生面や絵面的にアウトです」

「ぐぬぬ……色んなとこを発掘しながら食べたかったのに!」

 

 あれをこうして……ああして……最後は……ぬふふふふ♡

 

「ではトークイベント会場付近のお店にしましょう。行きますよ?」

「あ、はーい♡」

 

 さり気なく手を差し伸べてくれるこの紳士加減……プロデューサーは相変わらずあたしを更にプロデューサー漬けにさせる気ね……恐ろしいわ!♡

 

 ―――――――――

 

 そんでまたプロデューサーの運転でイベント会場付近にやってきたあたしたち。

 会場の方で用意してもらった駐車スペースに車を停めさせてもらってから、カーナビで近くのお店を探す。

 

「今更だけどさ〜、東京って本当に色んなお店があるよね〜。このエリアだけで普通のファミレスから高級レストランから色んな国のレストランがひしめき合ってるもん」

「そうですね……私は大学進学で上京してから、かれこれ10年以上住んでますが、未だに驚かされることばかりですよ」

「え、プロデューサーも?」

「はい……例えばこのポーランド料理のお店の隣にロシア料理のお店があるとか」

「これの何が驚きなの?」

「ポーランドとロシアは仲があまりよくありませんからね。よく共存出来ていると思いまして……。まあそれも日本だからという理由が強そうですけどね」

「ふーん……ポーランド人とロシア人の――」

「そっち系のお話にはさせませんよ?」

「あ、てへへ。ついいつもの癖で♪」

 

 そんなこんなであたしたちはカーナビで色々と見つけてはおしゃべりして、気がついたら時間もヤバくて結局近くのコンビニで買って車の中でお昼ご飯にした。

 でもこういう風に時間を忘れてプロデューサーとおしゃべり出来たのは嬉しかったかな♡

 

 ―――――――――

 

 無事にトークイベントも終わって今日のお仕事は終了!

 またここでも熱く語ってしまった……。

 何とも言えない達成感に浸りながら事務所に帰って、比奈ちゃんとそのプロデューサーと別れたあと。

 

「それでは行きましょうか」

「へ、どこに?」

 

 プロデューサーが帰りの車の中であたしにそう言ったの。

 何のことだか分からなかったあたしにプロデューサーは―――

 

「昼食が残念なことになってしまいましたからね。大西さんがイベントに励んでいる間にあるところを予約しておきました」

 

 ―――そんなことを言ってきた。

 あたしはプロデューサーと一緒だったから全然そんなこと思ってないんだけど、こうしてあたしのためを思って行動されると嬉しくて胸がキュンキュンする♡

 

「おぉ〜……あ、でもあたしさ、高級レストランとか堅苦しい感じのとこ苦手なんだけど、大丈夫かな?」

「大西さん……」

 

 あれ、すごくガッカリされてる!?

 

「私はあなたのプロデューサーで……恋人ですよ? ちゃんとあなた好みの場所です」

「???」

「あなた行きつけのネットカフェです。あそこならカップルシートもありますし、好きなアニメやマンガを楽しみながらお食事も出来ますから」

「プロデューサー……!♡」

 

 どうしてプロデューサーはこんなにもあたしのツボを抑えてるんだろう。

 しかもちゃっかり個室……これはもうイチャラブしてもいいってことだよね!♡

 あ、勿論節度あるイチャラブだよ? お店にとっての迷惑行為、ダメ絶対。

 

「もっとあなたの好きなことを私に教えてください。恋人となった以上、私はあなたのことをもっと知りたいんです」

「うん……なら覚悟してね、プロデューサー!♡」

「望むところです」

「あ、でもプロデューサーが好きなことも教えてね♡ あたしだってプロデューサーの好きなこと知りたいもん♡」

「はい、分かりました」

 

 こうしてあたしたちはネットカフェデートして、お互いのことをもっと知る時間になった。

 そして……初めてのキスもすることが出来ちゃった♡―――。

 

 大西由里子*完




大西由里子編終わりです!

腐女子といえど恋愛だってしますからね!
なのでこんな感じにしました♪

お粗末様でした☆

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