デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


浜口あやめ編

 

 ずっと忍者に憧れ

 

 役でもいいからと

 

 オーディションに応募した

 

 なのに

 

 そのオーディションは

 

 アイドルのオーディションで

 

 なんの成果も得ぬまま

 

 おめおめと地元に帰ることは

 

 嫌だったので

 

 思い切ってアイドルになったのです!

 

 そうしたら

 

 掛け替えのない主君と出会えたのです!

 

 ―――――――――

 

「プロデューサー殿〜! こっち、こっちです〜!」

 

「お〜、今行くよ〜」

 

 わたくしの名は浜口あやめ! アイドルという名の忍びであります! そして只今、わたくしは専属のプロデューサー殿と地元三重にやって来ています!

 

 訳を話しますと、明日から三重にある大きなテーマパークにてわたくしのソロコンサートが1週間に渡って開催されるからなのです!

 

 そして今日は下見という名目ではありますが、プロデューサー殿と先に現地入りしたということです!

 どうして下見という名目なのかというと―――

 

「久々のデートであやめはかなりテンション高いな」

「あ、当たり前です! というか、逢引と言ってください!」

「どっちも似たようなもんだろ」

「で、でもですね、ででで、デートというのは気恥ずかしく……」

「はいはい。それより荷物後ろに積んじゃっていいか?」

「あ、はい♡」

 

 ―――本当のところはデー……逢引だからです♡

 

 実はわたくし、プロデューサー殿に恋をしてしまっており、アイドル仲間の皆様にご相談に乗ってもらい、何度も何度もプロデューサー殿に告白し、二ヶ月前にお付き合いをさせて頂いているのです!

 ただ、わたくしとプロデューサー殿はお互いの立場上、表立っては交際出来ぬ身でありますゆえ、事務所の方には内密にしてあります。

 

 何故、わたくしがプロデューサー殿に恋をしたのか……それはプロデューサー殿がわたくしを笑わず、いつも真剣にわたくしと向き合ってくれていたからです。

 

 周りから憐れむ目を向けられることも、笑われることにも慣れていました。それでもわたくしはそのままでいたいと、思っておりました。何より、大好きなおじいちゃんとの素敵な思い出を簡単に捨てることなんて無理でしたから。

 

 そんなわたくしのことをプロデューサー殿だけが笑わずに、かと言って憐れまずに、真剣にわたくしのことを考えてくださったんです。

 今まで出会ってきた中で、そんな人はいなかった。だからわたくしはプロデューサー殿に恋をしたのです♡

 

 ただ恋をしたといっても、お互いに忙しい身。わたくしに至ってはプロデューサー殿のお陰で忙しくも、充実しています。しかしプロデューサー殿はそうではありません。いつもいつもわたくしのために尽力してくださって、そして折を見てわたくしを構ってくれます。

 本当に付き合えただけでも幸せなのに、プロデューサー殿に大切にされればされるほど、この方に恋をしてよかったと思い知らせる毎日でした。

 

 そのお陰か、デー……逢引とはいかずとも、短い逢瀬だけで、わたくしは満足していました。付き合ってから逢引はほんの2回しかしてませんが、本当に心から幸せな毎日だったんです。

 

 なのに今日から……1週間と2日もプロデューサー殿と同じ屋根の下にいられるなんて、考えただけでも心の臓が爆発してしまいそうです♡

 

 ―――――――――

 

「実家に行かなくて本当にいいのか?」

「はい、大丈夫です! 両親にもおじいちゃんにも事情は包み隠さずに話してありますし、みんなして『好きに過ごしなさい』と言ってくれましたから」

 

 事務所にはわたくしの実家に1週間と2日お邪魔することになっているのですが、実際にはお邪魔しません。わたくしとプロデューサー殿の仲を応援してくれている両親やおじいちゃんがわざわざ話を合わせてくれて、二人きりでちゃんとしたお宿に宿泊するんです♡

 両親としてはこんな変わり者の娘が立派な職に就いているプロデューサー殿を射止めたと聞いて、反対するどころか死んでも離すなと言っています。変わり者と言われるのは心外でしたが、自覚はあるし応援してくれるのは素直に喜んでいます。

 そしておじいちゃんに至っては『可愛い孫が選んだ相手を、自分の都合で否定してはあの世で婆さんに張っ倒される』とのことで……わたくしの成長が悲しい半面、喜んでくれています。

 

「そっか。でも今度改めてご挨拶に行かないとな」

「……はい。しかし、そうすると今度こそ婚約の儀を結ばされると思うのですが?」

「…………そうなってもいいよ。俺ももう覚悟を決めなくちゃな」

「プロデューサー殿……♡」

 

 車の中でとはいえ、プロデューサー殿にそこまで言ってもらえたわたくしは、幸せ過ぎてプロデューサー殿の頬に何度も何度も接吻してしまいました♡

 

 プロデューサー殿はわたくしより20も年上。だからこそ最初はわたくしの好意を避けていたらしいのですが、わたくしと向き合う決意をされてから……その態度はガラリと変わりました。

 プロデューサー殿としては歳のことを考えてわたくしが心変わりしないようにと、誠実にお付き合いしてくれているのです。

 しかしわたくしがプロデューサー殿以外を選ぶなど、あり得ません。それくらいにわたくしの気持ちは揺るぎ無いんです!

 

「運転中は危ないから止めてくれ」

「プロデューサー殿へ対する意思表示は大切ですから!♡」

「時と場合と場所を考えてな。せめてこの場合は言葉とか」

「プロデューサー殿、大好きです!♡」

「…………ありがとう」

「はい!♡ 大好きです!♡ とってもとってもお慕いしております!♡」

「ちょっと静かにして……」

(真っ直ぐな愛情表現は嬉しいが、おっさんにとっては眩し過ぎるんだよ)

 

「分かりました……プロデューサー殿、愛しておりますぞ♡」

「静かにって意味分かってる?」

「はい。ですから、静かに伝えたのですが……駄目でしたか?」

「うぐっ……」

(そんな子犬のような目で俺を見るな!)

 

「プロデューサー殿……」

「…………分かったよ。もう好きにしてくれ」

「プロデューサー殿……! はい、大好きです!♡」

「………………」

(俺、今絶対浮かれてるわ……どんなに歳とったとか大人ぶっても、俺もまだ若いってことだな)

 

 それからもわたくしはプロデューサー殿に何度も何度もわたくしの気持ちを伝え、プロデューサー殿も素っ気ない振りをしていても、微笑んでくださいました♡

 

 ―――――――――

 

 下見という名目ではありましたが、ちゃんと明日からの打ち合わせはあります。演出時の最終確認や立ち位置、あとは万が一の事態になった時の対応策なども万全で、いい打ち合わせとなりました。

 

 そして打ち合わせを終えたわたくしたちは、これから滞在するお宿に着き、それぞれ湯浴みを済ませ、今は二人きりで部屋にて寛いでいます。

 寛いでいるというより、わたくしがプロデューサー殿に甘えていると言った方が正しいかもしれません。

 

「プロデューサー殿〜♡」

「はいはい」

「ん〜♡」

 

 仰向けで寝そべるプロデューサー殿の上に、わたくしは遠慮なく覆い被さっています。

 そんなわたくしをプロデューサー殿は邪険に扱うことなく、その大きな手でわたくしの頭を優しく撫でてくださいます♡

 この少々弾んだポンポンポンというリズムで撫でられるのが、わたくしは堪らなく好きで、この上ない幸せに包まれます♡

 

「プロデューサー殿……♡」

「ん?」

「わたくしの名を……呼んでください♡」

「あやめ?」

「はいっ♡」

「あやめ」

「はいぃっ♡」

 

 プロデューサー殿からであれば、何度でもこの名を呼ばれたい。貴方様から呼ばれるこの名が……貴方様の口から紡がれるこの名が……わたくしにまた幸せと貴方様への思慕をより一層強めてくださるのです♡

 

「あやめ」

「〇〇殿……わたくしは幸せでどうにかなってしまいそうです♡」

「相変わらず可愛いことを……」

「可愛いだなんて……♡」

「そこで照れるのかよ」

「だ、だって……♡」

 

 可愛いなんて心から好いた貴方様から言われたら、照れるに決まってます。只でさえ、貴方様から名前を呼ばれるだけで舞い上がっているというのに……。

 

「本当に〇〇殿はわたくしを惑わす天才ですね♡」

「そのセリフ、そっくりそのままお返しするよ」

「ふふふっ♡」

「でも本当に、あやめが他に好きな人が出来たら、俺立ち直れるか不安だよ」

「むっ、またそんなことを……わたくしの気持ちは変わりません!」

「そうは言っても不安にだろ。俺は35で、あやめは15だ。あやめの周りにはこれから先、良い奴がゴロゴロ現れるからな」

「そんな方、わたくしは望んでません」

「望んでなくても出会うもんなんだよ。俺たちの出会いだって望んでいたものではないだろう?」

「それは……」

 

 そう言われてしまうと、わたくしは思わず言い淀み、プロデューサー殿から視線を逸らしました。

 何分、プロデューサー殿の言っていることは正しく、なんと返せばいいのか分からなかったからです。

 

「……ごめん、ちょっと意地悪だったな」

「いえ……わたくしもあれだけいつも〇〇殿に己の気持ちを告げているのに、言い返すことが出来ずお恥ずかしいです」

 

 わたくしが悪いのに、プロデューサー殿の方が申し訳なさそうにわたくしの頭へ再び手を伸ばし、撫でてくれます。

 自分がとても不甲斐なく、それでいてすごく恥ずかしい。どうしてあの時、『それでも貴方様しかいらないっ!』と声を大にして言えなかったのか……。一瞬でもプロデューサー殿の言葉に納得してしまった自分が許せない。

 わたくしはこんなにも貴方様を愛し、お慕いしているのに……わたくし自ら先の言葉に固まってしまった。

 

 わたくしが自責の念に囚われていると、ふと背中に温かい締付けを感じました。はっと我に返ると、プロデューサー殿がわたくしを抱きしめてくださっていました。

 

「? 〇〇殿?」

「あやめはまだ15なのに、どこまでもいい女だな」

「ニン?」

「あやめは本当に俺のことが好きなんだな。俺が自惚れるくらい、あやめは俺のことで頭をいっぱいにしてくれてるんだな」

「……はい、当然です♡」

「俺、もっと欲張りになるよ」

「え」

「欲張りになって、あやめが結婚出来る歳になるまで……そしてその後も俺だけを見ていてくれるように、なる」

「………………」

「あやめの全てを俺にくれ。代わりに俺の全てをあやめにあげるから」

「……ふふふっ、そんなこと言わずとも、わたくしの全ては既に〇〇殿の手中にあります♡ ニンニンッ♡」

「もうダメだ。あやめ可愛過ぎ。大人の余裕ぶっこいて、年齢がどうのとか理由にして逃げるの止める」

 

 そう言うと、プロデューサー殿はわたくしと体勢を入れ替えるようにします。もっと簡単に言えば、今度はプロデューサー殿が私の上に覆い被さっている状態です♡

 

「俺は今からあやめを泣かすと思う。先に謝っておく」

「拙者は忍びですぞ? 生涯仕える主は〇〇殿只1人だけです、ニンニンッ♡」

「絶対に今以上に幸せにする」

「ニンッ♡」

 

 その後、わたくしはプロデューサー殿からこれまでにないご寵愛をその身に刻まれ、生涯の愛を誓い合ったのです♡

 そのお陰か、コンサートの方は絶好調で……また新たに時期を見てコンサートを開く手筈となりした♪

 これからもわたくしはプロデューサー殿のお側で、共に幸せな時を過ごすのです♡―――

 

 浜口あやめ⦿完




浜口あやめ編終わりです!

あやめちゃんは好きなものには一直線なので、こんな感じにしました!

お粗末様でした☆

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