デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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日野茜編

 

 常にトップを狙う!

 

 何故ならそこに

 

 トップがあるから!

 

 何事にも全力を注ぐ

 

 何故ならそこに

 

 素晴らしい景色が待っているから!

 

 それを教えてくれたのは

 

 名監督……じゃなかった

 

 偉大なる魔法使いさんです!

 

 ―――――――――

 

「はっはっ……はーはー……」

 

 早朝のいつものこの道は走るのに丁度いい。

 

「あら、茜ちゃん、おはよう」

 

「おはようございますっ!」

 

 近所の人たちも笑顔で私に挨拶してくれます。

 アイドルになってから、学校はもちろんのこと、街を歩いていても、今では声をかけてもらってます。

 でもここの人たちは私がアイドルになったと知っててもいつも通りで、そこがなんか嬉しい。

 

「おう、この前テレビで見たぞ! 頑張れよ!」

 

「ありがとうございますっ! 頑張りますっ!」

 

 こうして気軽に声援をもらえるのは、いつもの声援と違って、また別の心地良さがあります。

 

 だから、もっともっと努力してトップアイドルになりたいです!

 そして―――

 

「お、来たな。んじゃ、朝のトレーニング頑張ろう」

「はいっ♡!」

 

 ―――この人に……私の大切な専属プロデューサーに恩返ししたい!♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 プロデューサーと私はつい先日、事務所には内緒でお付き合いを始めました。

 先日、私はプロデューサーのお陰で全国高等学校ラグビーフットボール大会のイメージキャラクターになったんです!

 それが嬉し過ぎて、勢い余って、プロデューサーと二人だけのお祝い会の時に告白してしまったんです……てへへ。

 

 結果はご覧の通りで、プロデューサーは私の全力トライを受け止めてくれました♡

 

 プロデューサーと出会ってから、アイドルにスカウトされて、アイドルをやりながらも大好きなラグビー部のマネージャーも出来て、毎日が幸せで仕方ないです!

 

 そんな素晴らしい毎日はプロデューサーによって実現してもらってます。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 だからこそ、私はトップアイドルになって、プロデューサーに恩返ししたいんです!

 

 今は日課となったプロデューサーとの二人だけの朝練です! 流石にライブイベントやラグビー部の朝練などがあればこの朝練は中止なんですが、それ以外では出来るだけこうしてます!

 やっぱり朝イチで大好きな人のお顔が見れるのっていいですね!♡

 

「何にやにやしてるんだよ」

「だぁってぇ〜、でへへ♡」

 

 幸せなんですもん♡ 仕方ないじゃないですかぁ♡

 

「幸せそうで何より。それじゃ、ペースを崩さずに……行くぞっ」

「はいっ!♡」

 

 プロデューサーは中学、高校、大学とサッカー部だったらしく、私より12歳年上でもこうして朝練に付き合ってくれますし、私なんかより遥かにスタミナがあります。

 前にお仕事でプロデューサーと高校時代の同級生にお会いしたんですが、プロデューサーは左サイドバックのスタメンで豊富な運動量を誇り、プロも夢じゃないと期待されてたみたいです。当の本人は全くプロ入りは望んでなかったみたいですが……。

 

 どうしてプロデューサーが今の職に就いたのか前に訊ねてみたら、『アイドルが好きだから』って言ってました。

 

「茜、ちょっとペースが早い。もっと俺に合わせて」

「あ、すみませんっ!」

「あれ?」

「どうかしました?」

「いや、ジャージがいつものと違うと思っただけ」

「あぁ、洗濯に出しました。今のは新しく買ったやつです!」

「なるほど。赤のジャージ、似合ってるよ」

「や、やめてくださいよ〜♡」

 

 不意にそうやって褒められると、私ふにゃふにゃになっちゃうんですから♡

 

「別にいいじゃん。公には言えないけど、彼女を褒めたってバチは当たらない」

「そうですけど〜♡」

「はいはい。んじゃ別の話題な」

 

 プロデューサーはそれから今日の予定を話してくれました。

 私、どうしても恋人らしい会話が苦手なんですよね。プロデューサーに『好き』って囁かれただけで、地べたに座り込んでしまうくらいに……。

 

 前にプロデューサーは『茜はそのままでいいよ』って言ってくれましたけど、私としてはもう少し……プロデューサーに呆れらないように、恋人らしい会話を出来るようにしたいです。

 

 ―――――――――

 

 朝練を終えた私たちは待ち合わせの公園で別れます。プロデューサーは私が学校に行っている間も私のためにと更に努力してくれてます。

 今日はラグビー部もお休みですから、放課後になれば走って事務所に行く予定―――

 

 ―――

 ―――

 ―――

 

 ―――だったんですけど……

 

「俺、ずっと前から日野のこと好きだったんだ! 付き合ってほしい!」

 

 ……放課後に私はラグビー部の部長さんから、ラグビー部の部室前に呼ばれて、告白されてしまいました。

 

 アイドルになったからなのか分かりませんが、私にもたまにあります。

 でも当然、私にはもうプロデューサーという恋人がいる訳で……

 

「ごめんなさい!」

 

 ……断るしか選択肢がありません。申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 

 申し訳ないという気持ちもありますが、プロデューサーに恋をするまで、誰とも付き合うなんて考えてもいませんでした。

 

「そうだよな。アイドルって恋愛禁止だもんな」

「え、ええ、まあ」

「でも気持ちだけでも伝えられて良かったよ。ありがとう! また部活でな!」

「はい、また」

 

 私は部長さんと別れると、無性に走りたくなって、走り出しました。

 

 複雑な気持ちを消化させるために。

 

 ―――――――――

 

 私は運良く、プロデューサーに私の告白を受け止めてもらえました。

 告白するための勇気がどれだけ必要なのか……それが分かるから、断るのって辛いです。だからといって変に気を遣ってしまうのも相手に悪いと思って、あのような場面の時にはきっぱりと告げています。

 私は悪い女です。これまで何人もの勇気を断って来たんですから。

 アイドルとしてみんなに元気や勇気を与える側なのに……。

 

「はぁはぁ……はぁはぁ……」

 

 息切れしながら事務所の前に着くと、

 

「おいおい、レッスン前なの分かってるのか?」

 

 いつものようにプロデューサーが待っててくれてました。でも私がいつもと様子が違うので、心配してくれています。

 嬉しいですけど、今の私にとってはちょっと辛いです。私は貴方に心配されるほど、いい女じゃないんですから。

 

「とりあえず汗拭け」

 

 タオルを受け取り、滝のように流れる汗を拭く。

 頭ではプロデューサーの側にいちゃいけないと思ってても、心ではプロデューサーの側にいたいと思ってます。本当に自分でも呆れてしまいます。

 

「何かあったのか?」

「…………」

「あったんだな。じゃあレッスンは中止」

「いえ、それは……」

「代わりに俺と走ろう」

「プロデューサー……」

「一緒に走って、もし話せるようなら、話してみ」

「はいっ」

 

 プロデューサーは私にはもったいないくらい、いい人です。だから私はプロデューサーに甘えて、急いでジャージに着替えて、プロデューサーとゆっくりと走り出しました。あ、もちろんプロデューサーもジャージに着替えて、ですよ。

 

 ―――――――――

 

「落ち着いたか?」

「はい、少しだけ……」

 

 事務所から走って30分くらいの所にある、大きな公園。そこのベンチに私たちは休憩として座りました。

 プロデューサーからまたタオルと冷たいスポーツドリンクを受け取り、喉を潤し、私はゆっくりと口を開きます。

 

「……ラグビー部の部長さんから告白されました」

「へぇ、その部長、女を見る目あるな」

「茶化さないでくださいよ……」

「事実だからな。それで?」

「それでお断りして……」

「申し訳ない気持ちになったと」

「……です」

 

 プロデューサーはやはり年上なので鋭いですね。流石人生の先輩です。

 

「私は悪い女なんです」

「どうして?」

「告白する勇気とか覚悟とかを知ってるのに、断ってるからです」

「なら茜は告白されたら全員と付き合えるのか?」

「そんなの無理です!」

「ならそこでの茜の選択は間違ってないだろ。それで勝手に落ち込むなよ」

「ですが……」

 

 そんなに大人になれませんよ、私は。

 ただでさえ、アイドルになって、その上で今までなかった告白なんてされて、しかもそれを断るなんて……いろんなことがあり過ぎてます。

 

「少なくとも俺は断ってくれて喜んでるよ」

「え」

「だってそうだろ? 俺かその部長かで茜は俺を選んでくれた。男として恋人として、嬉しいに決まってる」

「はい……」

「それに茜は悪い女なんかじゃない」

 

 どういうことですか? プロデューサーの言葉に私がプロデューサーの方を見ると、プロデューサーは真剣なお顔をしてました。

 

「告白をされたと聞いた瞬間、俺は茜は断ってくれたと思った。その部長がすごい勇気を出して告白しても、茜が断るのを俺は無条件で確信してた上に断ってくれたと聞いて嬉しかった。そんなことを思ってる俺の方が性格悪いと思わないか?」

 

 言い終えると、プロデューサーは笑います。でもそれはいつもの優しい笑顔ではなくて、なんだかいたずらっ子みたいでした。

 

「そ、そんなことは……」

「茜は悪い女じゃない。強いて言えば、悪い俺にメロメロなだけってことで、俺のせいにすればいい。誰がどう思おうと、俺は茜を最高の彼女だと思ってるから」

「プロデューサー……」

「恋愛も勝負みたいなもんだ。時の運が絡んでくる。今回は茜がちゃんと俺のことを好きでいてくれたから、若いその部長におじさんの俺が勝てたんだ」

 

 プロデューサーはおじさんなんかじゃないですよ。まだまだ若いです!

 

「でも負ける気はないぞ? 俺が茜を一番幸せに出来るんだからな!」

「あうあうあうあう……♡」

「茜のトップは誰にも譲らない。だから茜は堂々とこれからも断っていいんだ。悪いのは俺で、茜は最高の彼女だ」

「は、はひ……♡」

「うんうん。無事に解決!」

「…………♡」

 

 さっきまで悩んでいた自分が馬鹿みたいです。プロデューサーはいつも私が欲しい言葉をくれます。

 

『茜は最高の彼女だ』

 

 これだけで私はまた更にプロデューサーのことが好きになりました♡

 この人で良かった……この人に恋をして良かった……この人の彼女になれて良かった……いろんな良かったを、私はプロデューサーに貰ってます。

 そしてその良かったは、また私の心に火をつけます!♡

 

「プロデューサー、私、絶対にトップアイドルになります!♡」

「おぉ、一緒にトップを目指そう」

「はいっ!♡ プロデューサーラァァァァァブ!♡」

「ちょ、んなこと叫ぶな!」

 

 走り出す私の背中を追うプロデューサーは、そう言いながらも笑ってました。

 頑張ります。絶対に私がトップアイドルになってプロデューサーに恩返しして……貴方の最高の恋人さんとして君臨し続けるために!―――

 

 日野茜⦿完




日野茜編終わりです!

茜ちゃんは赤面するのが似合う!ということで、こんなお話にしました!

お粗末様でした☆
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