デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


姫川友紀編

 

 野球が好き

 

 あの一体感が好き

 

 あの熱さが好き

 

 でも

 

 アイドルもそれと同じくらい

 

 熱いし

 

 ファンとの一体感も凄い

 

 だからアイドルになって

 

 良かったって心から言えるよ

 

 それに

 

 大切な人も出来たからね!

 

 ―――――――――

 

「うりゃっしゃーっ!」

 

 バコーン!

 

「でりゃおらーっ!」

 

 バコーン!

 

 あたしは朝っぱらから、よく行くバッティングセンターでがむしゃらにバットを振ってる。

 何故かって? そんなの憂さ晴らしだよ。昨日キャッツが負けちゃったから。

 

 あたし、今シーズンのキャッツはマジでいけると思ってる。だってあたしが始球式で投げたし、国歌だって歌ったんだよ?

 なのにまだ4位なんだよ〜。あの試合勝てば3位浮上だったのに!

 

「だらっしゃーっ!!」

 

 だからキャッツに届ける勢いでバット振ってるの。

 

「そんな乱暴にやってたら体壊すぞ?」

 

「あ」

 

 あたしに声をかけてきたのは、あたし専属のプロデューサー。バッティングセンターにはプロデューサーに連れてきてもらってて、飲み物買ってきてくれて、戻ってきたらしい。

 プロデューサーは今ではあたしの恋人でもあるんだ。

 流石に事務所には内緒にしてるけど、仲のいいアイドル仲間には教えてるし、援護してもらってる。今日だってみんなの援護のお陰で怪しまれずにこうして二人でバッティングセンターに来てるし。

 

「うるさいなぁ、いいじゃん別に」

「プロデューサーとしては良くないんだなぁ」

「むう……」

 

 あたしはプロデューサーに弱い。惚れた弱みっていうのかな。プロデューサーには本当に敵わないんだよ。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 プロデューサーにあたしが惚れたのは、強さ。身体的じゃなくて、精神的な強さね。

 あたしってダンスとかホントにダメで、トレーナーさんからも呆れられてたくらいなんだよ。

 元気だけが取り柄っていうか、アイドルを甘く見てたっていうか……デビュー前からいきなり壁にぶち当たったんだ。

 

 でもプロデューサーはいつも『一緒に頑張ろう』って言って、根気強くあたしに付き合ってくれた。

 自分の仕事があるのにノートパソコンをレッスンスタジオにまで持ち込んで、あたしと通い詰めてくれたの。

 

 プロデューサーなのにトレーナー並に知識あるから、レッスン後のストレッチとかめちゃくちゃ助かった。

 

 そんな風にホントに野球のバッテリーみたいに過ごして来たから、あたしは頑張って来れたし……気が付いたらプロデューサーに惚れちゃってた♡

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 それでね、始球式に出た帰りに告白して今なんだ♡

 

 でもそれとこれとは別。あたしはキャッツに優勝してもらたいから本気で応援してるし、負ければ本気で悔しい。

 だから憂さ晴らししてるの!

 

「とりあえずコーラでも飲んで落ち着け」

「は〜い」

 

 ボックスから出て、ベンチに座るプロデューサーの隣に座るあたし。するとプロデューサーは慣れた手付きであたしの汗をタオルで拭いてくれた。

 

「ありがと」

「あぁ、気にするな」

「ん」

 

 こんな可愛くない彼女のわがままも、プロデューサーは笑って許してくれる。これが年上の余裕ってやつなのかな? あたしより8歳も上だからな。見た目若いのに。

 

「今はプライベートだから何も言わないけど、仕事ではそんな顔するなよ?」

「分かってるよ。それにしたことないだろ?」

「うん。でも一応な」

「…………」

「ほらほら、そんな顔しない」

「んぅ♡」

 

 軽く叩くように頭をポンポンって撫でられると、あたしはすぐに嬉しくなって笑っちゃう。

 というか、今更なんだけどプロデューサーってスタミナ半端ないな。昨晩のあたしは荒れに荒れてて、めっちゃプロデューサーにがっついちゃったのに……。

 

「プロデューサー」

「うん?」

「あの、いつもごめん。可愛げのない彼女で……」

「俺にとってはこの上なく可愛いから大丈夫」

「それはそれで恥ずかしいんだけど……♡」

「別にいいじゃないか。変にストレス溜めるより、その都度発散出来るなら」

「うん♡」

 

 やっぱりあたしはプロデューサーしか無理だよ。プロデューサーじゃないとあたしみたいな女を相手に出来ないもん。

 

「せっかく来たし、たまには俺もバット振るかな〜」

「めっずらしぃ」

「ぎっくり腰にならない程度だがな」

「ま、頑張って♡」

「おう」

 

 プロデューサーって今じゃ面影ないけど、中学高校って野球部だったんだよな。高校は野球の強豪校だったらしくてベンチにも入ったことないって言ってたけど、そんな強豪校の部活経験があるからストレッチの仕方とか熟知してるんだろうなぁ。

 

 ボックスの立ち方は至ってスタンダード。でも構え方はシンプルだ。

 

 カーン

 

 スイングもコンパクトで力もいい感じに抜けて、ボールもちゃんと見えて打ってる。

 

「懐かしいなぁ……というか、まだちゃんとバットをボールに当てることが出来てる自分を褒めたい」

 

 そりゃあ何万回ってやってきたんだろうから、出来るだろ。プロデューサーは自分をもっと評価していいと思う。あたしの自慢のプロデューサーで彼氏なんだし♡

 

 カーン

 

 あぁ、でもこういう風に見てる側ってのもいいなぁ。何よりプロデューサーがバッターボックスに立ってるのってあんま見ないから、新鮮でいつもの倍かっこよく見える♡

 

 カーン

 

 マシーンが放ってくる球種はランダムなのに、どのボールも打ち返しててすごいなぁ。ホームランこそ打たないけど、右に左にって打ち分けてるのもすごい。

 

 あ、空振った。

 

「くっそ〜、やっぱりフォークは苦手だなぁ」

「フォーク苦手だったんだ」

「まあな。苦手意識があるから余計かも」

「そこまで分かってるなら大丈夫じゃない?」

「それはほら、俺自分に弱いから」

「ドヤ顔で言うことじゃない」

 

 本当、プロデューサーって不思議。でもそういう不思議なとこもあたしは好きなんだろうなぁ♡

 

 ―――――――――

 

 それからあたしたちはバッティングセンターをあとにして、それぞれ仕事に戻った。仕事って言っても、あたしの方はレッスンだけどね。

 でも朝からバッティングセンターでウォーミングアップしてきたようなもんだから、今日のダンスレッスンはそこそこ上手く出来て、トレーナーさんからも褒められた♪

 プロデューサーのオフィスに戻ったらプロデューサーにも褒めてもらお♡

 

 ―――――――――

 

「プロデューサー、レッスン終わったよ〜」

 

「分かりました。いえ、大丈夫です。暫くはビジネスホテルで過ごしますから」

 

 おりょ、何かあったっぽいな?

 

「……お疲れ、友紀」

「うん。プロデューサーは何かあったの?」

「あぁ、実は俺のマンションが火事になってな」

「えぇ!?」

「俺の部屋の真下が出火したみたいだ」

「ヤバイじゃん! 絶対に部屋無事じゃないだろ!」

「幸い燃え移ってはいない。ただ、オーナーさんが俺の部屋にもクリーニングとか入れるらしいから2、3日戻れないんだ」

「あ、でもそれくらいなら何とかなるね」

「うん。だから友紀は心配しなくて大丈夫だよ」

「うん……でもなんかあったら言ってね?♡」

「あぁ、ありがとう」

 

 そっか〜。プロデューサーも大変だなぁ。何かあたしに出来ることあればいいんだけど……あ、そうだ!

 

「プロデューサー、下着買いに行こう!」

「は?」

「だから下着! 部屋入れないんだから、下着買わないといけないだろ?」

「あぁ、確かにな」

「だろ? だから一緒に行こっ♡」

 

 ついでにデート出来るし♡ プロデューサーにちょっとでもあたしの元気分けてあげられるもん♡

 

「じゃあ、上に言ってくるよ。友紀は車のとこで待ってて」

「あ〜い♡」

 

 ―――――――――

 

 こうしてあたしはプロデューサーと一緒に近くのデパートの洋服売り場に来た。あたしは髪をポニテにして伊達メガネして、一応アイドルだってバレないようにしてる。

 

「おい、ちょっとくっつき過ぎじゃないか?」

「大丈夫だよ♡ それに堂々としてた方がバレないって♡」

 

 久々のデートだし、これくらいしたっていいよね? そもそもこんなに堂々と腕組んでるアイドルなんていないし!

 

「パジャマとかは買わないの?」

「スエット買えばいいかなって」

「そっか。あ、洗濯ならあたしの部屋でやってあげるね♡ これでも元野球部マネだから洗濯は得意だよ!♡」

「友紀は本当にいいお嫁さんになるな」

「えへへ、嬉しいでしょ?♡」

「もったいないくらいだよ」

 

 まさかマネージャー経験がこういう時に役立つなんてなぁ。何があるか分からないもんだ!

 とういうか、ちょっと欲張っちゃおうかな♡

 

「ね、プロデューサー♡」

「うん?」

「部屋のクリーニング終わるまで、あたしの部屋に来ない?♡」

「は?」

「クリーニング終わるまでの間でいいからさ〜♡ 新婚さんごっこしようよ〜♡ それともあたしと一緒に暮らすの嫌?」

「そんなことはない。でも俺たち――」

「――彼氏彼女だよね♡」

「……ちゃんとバレないように出来るのか?」

「バレてもいいと思うけど? お互いちゃんとした社会人なんだし」

「変なとこは肝座ってるよな」

「じゃなきゃアイドルなんて出来ないって♪ それにプロデューサーがそうしてくれたんだよ?♡」

「…………分かった。ならお言葉に甘える」

「やった!♡」

 

 大喜びするあたしだけど、プロデューサーにすぐ「声が大きい」って注意されちゃった。でも仕方ないじゃなん。大好きなプロデューサーがほんの短い間でも、あたしと一緒に暮らすんだもん。喜ばない方がおかしいよ。

 

 ―――――――――

 

「入って入って!♡」

「お邪魔します」

 

 買い物も終わって、あたしはプロデューサーを連れてあたしのアパートの部屋に来た。車は流石に置けないから、近くのコインパーキングだけど。

 

「ビールの空き缶が相変わらず散乱してるな」

「前よりは減ったでしょ?」

「こまめに俺が掃除しに来てるからな」

「えへへ、お世話になってます♡」

「お世話してます」

「お風呂入る?♡」

「なら先にシャワー借りようかな」

「いいよ〜。タオルは洗面所にあるの好きに使って。あ、シャンプーとかリンスとか女物だけどいい?」

「気にしない。寧ろ使っていいのか?」

「いいに決まってんじゃん♡」

「ありがとう」

「いえいえ♡」

 

 プロデューサーがお風呂行ってる間に何か簡単なの作るか。なんか本当に新婚さんみたいでさっきからドキドキしてて、何かしてないといられないし。

 

 ―――

 

「上がったよ」

「おかえり〜♡」

「なんだよ、にやにやして?」

「ううん、なんか同じシャンプーの匂いがするのっていいなって思っただけ♡」

「可愛過ぎかよ……」

「可愛くないよぉ♡ それよりレバニラ炒め作ったから、食べよ♡」

「何から何までありがとう」

「お嫁さんだからね♡」

「そう攻めてくるなよ」

「弱いとこ突いてかないとね♡ あたしなしじゃ生きていけない体にしちゃうんだから♡」

「大変なところに上がり込んでしまったらしい」

「好きなくせに〜♡」

 

 それからプロデューサーは3日間、あたしの部屋に滞在したんだけど……あたしの方がプロデューサーがいないと生きていけない体になっちゃった♡

 だから早く"お嫁に貰って"攻撃をして、お嫁に貰ってもらうんだ!♡―――

 

 姫川友紀⦿完




姫川友紀編終わりです!

押せ押せな友紀ちゃんならこんな感じになるかと思って書きました!

お粗末様でした☆
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