デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


堀裕子編

 

 この力を何かに役立てたい

 

 そう思ってた

 

 だからあの日

 

 予知夢を見たのは

 

 そうあれと

 

 私にこの力を授けた

 

 誰かからのお告げだと思う

 

 だからオーディションを受けた

 

 肝心なところで不発に終わり

 

 諦めかけたその時

 

 やはりお告げの通りになった!

 

 ―――――――――

 

「プロデューサー! 来ましたよ! さぁ、早く行きましょう!」

「……分かったから、んな大声出すなよ。こっちは二日酔いで頭が痛いんだ」

「そんなの自業自得じゃないですか。それより、自由時間は限られているんですから早く行きましょう!」

「あいあい……」

 

 私は今から、専属プロデューサーとデートに向かいます!

 何故なら昨日はここ、私の地元福井県で『セクシーギルティ』のライブがあって、午後まではオフということで自由時間だからです!

 

 なのにプロデューサーは昨日の打ち上げで見事に二日酔い……ちゃんとデートしましょうねって約束しておいたのに。でもスタッフさんたちとか早苗さん(主犯)とか同席してたみたいですし、きっと飲まされちゃったんでしょうね。プロデューサーもお酒は好きですから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私とプロデューサーは歳が14も離れていますが、ちゃんと事務所には秘密で付き合っています。

 告白したのは私からで、最初はアイドルとプロデューサーだからと断られてしまいました。

 

 失恋ということでかなり凹み、私の持つ"さいきっくぱわー"もすっかりと落ち込んでしまったのです。

 

 そもそも私がプロデューサーに惚れた理由は、私を馬鹿にしなかったこと。

 いつもプロデューサーは口では『サイキックとか分かんね』とか言いますが、絶対にそれを馬鹿にはしないんです。

 周りから変な子扱いされるのは慣れていましたが、『面白いな』って言ってもらえたのは初めてだったんですよ。

 プロデューサー曰く―――

 

『なんでも好きなことに真っ直ぐなのはいいことじゃないか。誰だって好きなことの一つや二つあるもんだし』

 

 ―――ということらしいです。

 プロデューサーは普通のことを言ったまでと思ってるかもしれませんが、私にとっては本当に嬉しい言葉でした。

 今まで否定しかされて来なかったんですから、私は。

 

 だから好きになったんです。

 

 しかしながら最初は断られた訳ですが、後日プロデューサーが私があまりにも凹んでいるから覚悟を決めた……と、告白してもらいました♡

 私はそれで十分だったんですが、相談役の早苗さんにご報告したら『それお情けじゃん。一発ぶん殴れ』って言われて……。

 それをプロデューサーに話したら―――

 

『そう思われても仕方ないかもしれない。言い訳に聞こえるが、俺はもう覚悟を決めたし……何より、あんな顔をする裕子をもう見たくない。だから好きなだけ殴るなりなんなりしても甘んじて受ける』

 

 ―――って言われました。

 だから私はその時罰を与えたんです。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 それが『お忍びで沢山デートしましょう♡』の刑なんです。だから今のデートもプロデューサーに断る権限はありません!♡

 

「ゆ、裕子……」

「はい、どうしました、プロデューサー?」

「悪いが、近くの喫茶店寄っていい?」

「いいですけど、喫茶店でいいんですか? 何なら近くのお店でお手洗いでも……」

「いや、吐き気じゃない。頭が痛いからちょっと休憩したいだけ」

 

 泊まってたホテルをチェックアウトして、その場解散して、私はプロデューサーとゆっくり歩いていたんですが、プロデューサーはかなり重症みたい。早苗さん、どれだけ飲ませたんですか。

 早苗さん曰く『ボトル10空けた先は覚えてない』そうで、その張本人も担当プロデューサーさんにおんぶされてましたからね。

 

「あ、ならあそこに公園がありますから、あそこのベンチで一休みしましょう」

「面目ない……」

 

 丁度いいところに大きめの公園がありましたから、私はプロデューサーの手を引いてベンチまで行きました。

 

 ―――

 

「えっと、とりあえず自販機で水とお茶を買ってきました」

「何から何まですまない」

「いえいえ、彼氏を介抱するのも彼女のお勤めですから♡」

「裕子に後光が指してるように見える」

「なんたってサイキックユッコですから♪」

 

 ふふん、プロデューサーのためなら私はなんだってしますからね!

 

「二日酔いの薬……」

「あぁ、私が出しますよ。いつものとこに入ってますよね?」

「うん」

 

 プロデューサーのバックの中もちゃんと把握してあります! なんたって彼女ですから!

 

「あれ? お薬変えたんですか?」

「ん……あぁ、安かったから」

「いつものじゃないと効かないんじゃないですか?」

「まあ気休めになればいいよ」

「何なら今から買って来て――」

「――いや、無理だろ。大丈夫だって。それより側にいてくれ」

「っ……は〜い♡」

 

 えへへ、どういう理由でも"側にいて"なんて言われたらときめいちゃいます♡ プロデューサーは悪い人ですねぇ♡

 

「……はぁ、ごめんな、こんなんで」

「いえいえ、たまにはいいですよ。でも程々にしてくださいね。いくらでもお酒を断る手段はあるんですから」

「そうします」

「いつもはこんなになるまで飲まないのに、何かあったんですか?」

「いや……ライブが成功して、浮かれまして……」

「ありゃ……」

「それに柄にもなく、彼女が出来て、初のライブ成功にとても自分で喜んでしまって……」

「ありゃりゃ♡」

 

 なるほどなるほど……私が彼女になって、恋人同士で臨んだライブが成功したのがそんなに嬉しかったと……♡

 そんなことを言われたら、もう許すしかありませんねぇ♡

 

「プロデューサーも結構乙女チックですね♡」

「うるさい……初カノが超絶美少女のアイドルなんだ。浮かれて何が悪い」

「悪いなんて言ってませんよ♡」

 

 嬉しいとしか感じません。だから私はこんなにニコニコしてるんです。

 

「おい、外なんだからそんなに引っ付くなよ」

「平日で人も少ないですから大丈夫ですよ♡ それにアイドルがこんなに堂々とデートしてるなんて誰も思いません♡」

「そこはサイキックパワーとかでどうにかするって訳じゃないのな」

「むっ、そんなこと言うと大声で愛を叫んじゃいますよ? 『さいきっくらぶぱわー』全開で」

「ごめんなさい、調子乗りました」

「……じゃあ、んっ♡」

 

 ごめんなさいのキスを私が要求すると、プロデューサーはちゃんとその罰を受けてくれました♡ えへへ、人がまったくいない訳じゃないのにお外でキスしちゃいました♡ 『さいきっくしあわせぱわー』が溢れちゃいます♡

 

「……気分はどうですか?」

「もう少しこのままいたいかな」

「なら日向ぼっこデートってことで♡」

「ありがとう。本当に裕子は俺にはもったいないくらいのいい彼女だ」

「褒めても何も出ませんよ?♡」

「そこはサイキックパワー出ないの?」

「プロデューサー?」

「ごめんなさい、また調子乗りました」

 

 こんな調子ですが、私たちはまったりとした時間を過ごしました。今考えてみれば、キスばっかりしてたような気がしますがいいですよね♡ だってデートですし!♡

 

 ―――――――――

 

 日向ぼっこデートをした私たちは、時間も時間なので場所を移すことにしました。

 飛行機で帰るので電話でタクシーを呼んで、空港付近まで乗せてもらって、そこからは歩いて散策することにしました。もちろん、私はタクシーを呼んだ時点で帽子とマスクをして変装済みです。

 プロデューサーもちょっとは楽になったみたいで、朝よりは顔色もいいので安心です♡

 

「そういやもうお昼だな」

「ですね。ここら辺で良さそうなところがあったら入ります?」

「裕子がいいなら」

「因みにプロデューサーは何系がいいですか?」

「和食系かな。味噌汁飲みたい」

「なるほど……なら定食屋さんがあったら入りましょうか♪」

「ありがとう。裕子大好き」

「えへへ♡」

 

 もう、大袈裟なんですから♡ プロデューサーと一緒ならどこだって私はいいんですよ♡

 

 こうして私たちは散策しながら定食屋さんを探し、見つけた定食屋さんに入ったんですが、やはり食べる時に帽子とマスクを外したらお店の方にバレちゃいました。

 バレちゃいましたというか、私たちのライブの宣伝ポスターがお店の中にあったので……。

 でも、お店の方にサインと写真を求められて嬉しかったですし、自分がこうしてアイドルとして有名になれたのはプロデューサーのお陰なので、余計にプロデューサーへの想いが強くなりました!

 

 ―――――――――

 

 それでお昼ご飯も済ませた私たちは空港に来ました。ですが、他の皆さんはまだのようなので私たちはまったりとロビーで待つことにしました。

 

「はぁ……腹がいっぱいで切ない」

「お店の方がかなりサービスしてくれましたもんね♪」

「二日酔いでも美味しく頂いたよ」

「プロデューサーなんてお味噌汁もおかわりしてましたしね♪」

「まさかのしじみ汁だったからさ。あれ二日酔いには効くんだ」

「あはは♡」

 

 なんのこともない会話なのに、なんだか心が温かくなってきます♡ やはり好きな人となら、何をしてても温かい気持ちになるんですね♡

 

「んだよ〜、笑うなよ〜」

「きゃあ、止めてください〜♡」

 

 私が笑ってたから、プロデューサーは私のほっぺを軽く突いてきました。でも私は余計に笑ってしまって、終いには両手でほっぺを両方から潰されてしました♡

 

「ふに〜……♡」

「こうされてもまだ笑うか」

「らって〜♡」

「…………可愛いってズルいな」

「んぇ?♡」

 

 なんだかプロデューサーのお顔が赤くなった気がします。というか、今の私って可愛いとは真逆のような気がするんですが……。

 

「裕子ってアレだよな」

「んはぁ……え、なんですかアレって?」

「犬っぽいよな」

「犬……?」

「うん。なんかこう……構えば構うだけ擦り寄ってくる感じ」

「プロデューサーに構ってもらうのは好きですよ?」

「う、ま、まあ、そうだな。裕子はそうだよな」

「???」

 

 言ってる意味が分かりません。そんなに私って犬っぽいですかね? プロデューサーが私のこと可愛がってくれるから、私は更にプロデューサーのことが好きになってるだけなのに。

 

「もう、そうやってつぶらな瞳で見つめんな」

「だってプロデューサーが……」

 

 変なこと言うからですよ。

 

「……本当、裕子って可愛いから困る」

「むむむ、よく分かりません」

「分からなくていいよ。プロデューサー失格だが、とびきり可愛い裕子は俺だけが知ってたい」

「はぅ……そんなこと言うのズルいですよぉ♡」

 

 お顔がにやけちゃうじゃないですかぁ……でへへ♡

 

「…………まあ、お互いズルいってことで」

「え〜、納得出来ません〜♡」

 

 そして私たちは他の皆さんが来るまでこうして口論してたんですが、早苗さんから『公共の場でいちゃつくな、リア充ども』って言われ、雫ちゃんからは笑われちゃいました―――。

 

 堀裕子⦿完




堀裕子編終わりです!
そして『は行』が終わりました!
次回から『ま行』になります!

サイキックゆっこはほのぼのまったりのイチャラブにしました♪
サイキック節が少なくてごめんなさい。

お粗末様でした☆

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