働くのが好き
中でもウェイトレス
自分でお客様に運んだ
美味しいお料理で
笑顔になってくれるから
でも
そんな私に
君にしか出来ない
アイドルがある
って言ってくれた
魔法使いさんがいます
―――――――――
「ふぇ〜、いっぱい歩いていっぱい美味しい物食べられて幸せ〜♪」
私、ついさっきまで"東京都内の話題スイーツ巡り"という番組収録をして、事務所に帰ってきました!
このお仕事は私の専属プロデューサーさんが取ってきてくれたお仕事なんですが、私だけじゃなくて『スイーツファイブ』でのお仕事だったんです♪
だから―――
「焼きドーナツ最高でした〜♪ 今度オフの時に箱買いします!」
「ケーキも美味しかったよね〜♪ あの生クリームの山……最高でした♪」
「どれも美味しかったけど、あのアップルパイが良かったね!」
「あ〜、私と同じだ〜♪」
―――みんなも大満足したみたいです!
因みに私はオープンカフェのジャンボバケツパフェが1番のお気に入りになりました♪
「まあみんな満足感のある仕事になったみたいで何よりだよ。番組側もいい画が撮れたって満足してたし、数字が良ければまたオファーされるかもしれない」
最後まで付き添ってくれた私のプロデューサーさんがそう言うと、私もみんなも目を輝かせます。だってまた美味しいスイーツが食べられるんですからね!
でも―――
「でも、もし再度オファーされた場合、内容によっては撮影前は食事制限をした方がいいだろう。じゃないといくらレッスンとかしてても体調や体重がヤバくなるだろうからね」
―――その言葉にみんなして……いや、正確には私と光ちゃんを除く3人が私のプロデューサーさんから顔ごと逸らしました。どうしたんだろう?
「今はとりあえずお疲れ様ってことで……解散!」
『お疲れ様でした〜!』
―――――――――
解散後、私のプロデューサーさんは代表者として上に報告に行き、みんなはそれぞれ自分のプロデューサーのところへ行きました。
私はというと、プロデューサーさんが戻るまではプロデューサーさんのオフィスにいてもやることがないので、休憩室に来てます。実はここの甘いカフェオレのファンで、暇な時はいつも飲みに来てるんです♪
そんな訳で私ひとり、カフェオレを楽しんでると―――
「あ、お疲れ様、志保さん」
―――かな子ちゃんが来ました。でもなんだかジャージに着替えてます。
「かな子ちゃん、今からレッスンなの?」
「はい。プロデューサーさんに、収録中に食べ過ぎだって言われて……それで今から家の門限ギリギリまでランニングマシーンに……」
「あ、あぁ、そうなんだ……頑張ってね」
「はい……それでその前に飲み物買いに来たんです」
「なるほど」
かな子ちゃんのプロデューサーは結構厳しいみたいだからなぁ。
「志保さんはいいですよね。私は食べたら食べただけ増えちゃいます」
「いやぁ、私だって増えるよ? でもその分運動はしっかりしてるから、プラマイゼロみたいな?」
「なるほど〜」
「それに、好きな人に重たいって思われたくないし……」
「ふふ、惚気ですか?」
「ち、違う違う!」
「惚気にしか聞こえませんでしたよ〜?」
「うにゃ〜!」
ほ、本心を言ったんだけどなぁ。やっぱり、そう聞こえちゃうのかなぁ。
私、実は事務所には内緒でプロデューサーさんと1か月前から秘密恋愛してるんです。秘密と言っても本当に事務所だけで、かな子ちゃんをはじめとした仲良しのアイドル仲間には相談に乗ってもらってたりしてるので、知られてます。でもみんなして応援してくれるから、とても心強いです。
どうしてお相手がプロデューサーさんなのかと訊かれると、どう言えばいいのか迷うんですが……強いて言うなら一緒にいて楽しいからですかね。
私は自他共に認める甘党なんですけど、プロデューサーさんも甘党。だからよくご褒美に一緒に甘い物を食べに行ったりしてて……そうやって時間を重ねて、恋に発展したのかと……♡
―――――――――
かな子ちゃんと別れて、それと入れ替わるように私のプロデューサーさんが私を迎えに来てくれました。
嬉しいのに、かな子ちゃんにからかわれた直後だったのもあって、ちょっと恥ずかしかったです。
どうしてプロデューサーさんが私を迎えに来たのかと言うと、実はこれから私はプロデューサーさんのマンションにお泊まりに行くんです♡
プロデューサーさんのお姉さんの旦那さんがコンビニの経営者なんですが、スイーツ商品で大量の廃棄が出てしまったらしくプロデューサーさんもその廃棄品が届けられたそうで……私もお呼ばれするんですよ♪
廃棄と言っても期限切れとかではなく、事故で箱が潰れてしまったり、棚から落ちて商品その物の形が崩れてしまったりしたやつなので味は大丈夫なんだとか。
「いやぁ、流石の俺もデカいダンボールのスイーツは色々とヤバいことになるからな」
「あはは、私が彼女で良かったですね♡」
「そうだな」
「〜♡」
廃棄品はダンボール3箱来たみたいですが、そのうち2箱は事務所の皆さんに配ったんです。女の子多いですし、スイーツ好きな人も多いですから。
でも1箱分は私と食べたいから取っておいてくれたみたいです♡
―――――――――
「はわぁ、本当に大きいですね……」
マンションのお部屋に入ってリビングに行くと、テーブルの上に引っ越しで使うような大きなダンボール箱がデデンとそびえ立ってました。
「デカいだろ?」
「想像以上でした……」
「でもこんなに廃棄が出て経営の方は大丈夫なんですか?」
「巻き返すって言ってたし、何とかなるんじゃないかな。義兄さんはやり手だからね。今回のは本当に事故だし」
「怪我人が運転手以外で出なかったのが幸いでしたよね」
最近は多いですからね。コンビニに車が突っ込んじゃう事故。都心でもあるんですから、気をつけないと。
「それよりダンボール開けて、好きなの取って食べてくれよ。俺は着替えてくるから」
「ではお言葉に甘えて♡」
何があるかなぁ♪
おお〜っ! レギュラー商品から食べたいと思ってた新作スイーツまで、ところ狭しと!
でも、こんなに食べたら流石にヤバいかなぁ。でもせっかくプロデューサーさんはゴーサイン出してくれてるし、食べない訳にもいかないよね。
「う〜ん……」
「そんなに悩むほど、どれから食べるか迷ってるのか?」
「あ、プロデューサーさん」
プロデューサーさん、部屋着に着替えてきました。いつもスーツ姿だから、こういうカジュアルな格好は新鮮でドキッとします♡
それにナチュラルに私の隣に腰を下ろしてくれるとことか、『あぁ、私この人の彼女なんだなぁ♡』って実感出来てキュンキュンですよ♡
「本当に遠慮しなくていいんだぞ?」
「は、はい……でも量が量なので……」
「明日はダンスレッスンあるだろ?」
「でも、今日もお仕事とは言え、結構食べちゃってますし……」
「今更感が凄い」
「ぁぅ……」
それはそうですけど……。アイドルである以上は体型はキープしとかないと。私、ただでさえお尻にお肉付きやすいから……。
「なんなら食べる前に軽く運動するか?」
「え?」
「有酸素運動。そうすれば食べられるだろ」
「で、でも……♡」
それは本当に最後のデザートってことで楽しみたいなぁ……なんて♡ いやいや、プロデューサーさんに求められるのは嫌じゃないですけどね!♡ プロデューサーさん、普段も優しいけどベッドの上だと数段優しいし!♡
あ、でも恥ずかしいこと耳元で囁いてくるのはちょっとなぁ。ああされると毎回ドキドキして大変なんですよ。
「着替え置いてあるしいいじゃん。それに今回が初めてって訳じゃない」
「うぅ……プロデューサーさんのエッチ♡」
「は?」
「え?」
シーン……
「何を勘違いしてるのか敢えてツッコミは入れないが、俺は普通に一緒にジョギングしてこようって提案しただけだぞ?」
「ふぇ……」
わ、私としたことがぁぁぁぁぁっ! そ、そうですよね! 確かにプロデューサーのお部屋に私のジョギングシューズもジャージも、こんな時のために置いといてもらってますもんね!
「ふぇ〜ん……恥ずかちぃ……」
「俺の言い方も悪かったんだろうな」
「いえ、私がエッチな子だからでしゅ……」
「でも俺はそんな志保も好きだ」
「はぅ〜♡」
「ほら、着替えて一緒にジョギングに行こう」
「は〜い」
―――――――――
気を取り直して私はプロデューサーさんとジョギングを始めました。
夜のジョギングはあまり人目を気にしないで出来るので、なんだかデートしてるみたい♡
だからかもしれませんが、夜のジョギングはいつもよりお互いの距離が近いんです♡
「夜になると涼しいから、ジョギングには最適だな」
「そうですね♡」
「帰ったら一緒に風呂入ろうな」
「んにゃ……ストレート過ぎますよぅ♡」
「だってハッキリ言わないとさっきみたいになるだろ?」
「あ、あれは私が悪いんですっ!」
「でもハッキリ言えばあんなことにならないだろ?」
「そ、そういうのはもっとオブラートに包んでくださいよ!」
「難しいなぁ」
プロデューサーさんは極端なんですから。私より8つ歳上さんなんですから、もうちょっと考えてくださいよ。
でもそうやって求めてくれるのは嬉しい自分もいます。だから私は自分でも顔はニコニコしてるって分かってます。
「でも流石にスイーツだけでお夕飯済ましちゃうのは大丈夫ですかね?」
「毎日じゃないからいいじゃん。今日はそんな日ってだけだよ」
「太っちゃったら責任とってくださいね?」
「気持ちいい有酸素運動するから大丈夫」
「な、もう! まだ言うんですか!?」
「俺もしたいからね。せっかく可愛い彼女がいるんだし、将来もこの子って決めてるし……」
「ふぇ……♡」
わ、私、今……プロデューサーさんからプロポーズされちゃった? "将来もこの子って決めてる"って、私だよね? だってプロデューサーさんの彼女は私だもん。
「その前にその子をトップアイドルにしないとね。約束したし」
「っ……プロデューサーさ〜ん」
「泣くか笑うかどっちかにしろよ」
「誰のせいだと思ってるんですか〜!」
「さぁ、誰だろね?」
「プロデューサーさんの意地悪〜!♡」
「心外だなぁ。こんなにも俺は彼女に愛情を注いでいるのに〜」
「〜〜!♡」
こんな感じで私は、ずっとプロデューサーさんにはいじられていくんだと思います。
でもそれでも幸せだと思ってる自分がいる。
だから一生責任とってくださいね♡―――
槙原志保⦿完
槙原志保編終わりです!
スイーツ女子なので、甘いラブラブな関係を書きました!
お粗末様でした☆