デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


松山久美子

 

 キレイになりたい

 

 もっともっと

 

 

 そうなるには

 

 人に見られることが重要

 

 だから

 

 人に見られる仕事をしたかった

 

 

 でも

 

 世の中そう上手く行かなくてね

 

 悔しかった

 

 

 それでも

 

 見る目がある魔法使いが

 

 ちゃんといたことが

 

 幸運だったと今でも思う

 

 ―――――――――

 

「こんな感じでどう、P?」

 

 私の問いに私専属のプロデューサーであるPは、2回だけコクコクと頷いて見せる。

 今、私は今度発売予定のライブディスクの特典として付ける、ブロマイドとB0サイズポスターの撮影中。撮影場所は事務所内の撮影用簡易スタジオで、コストは最低限しか掛けない。

 その理由は私自身の自分への自信と加工なんてしてない私自身をファンに見てもらいたいから。そしてPは元カメラマンで過去には自分で撮影した写真集を出した経験もあるから、撮影には必要以上のコストを掛けなくても済むの。

 私だけじゃなくて、事務所に所属してるタレントやアイドルなら、その子が望めば私のPが写真撮影するのよ。

 

 私のP……なんて、どうしてそんなに得意げに言ってるの?って思われるかもしれない。

 でも得意げにもなるわ。だってPは私をアイドルとして、デビュー前よりもっとキレイに輝かせてくれて、プライベートでも真剣にお付き合いしててラブラブなんだもの。

 流石に表立っては言えない関係だけど、ちひろさんとか仲良しのアイドル仲間とかには色々とフォローしてもらってる。

 

 Pは33歳で私は21……歳の差は干支一回り以上だけど、愛に歳の差なんて関係ない。付き合う前からそう思ってたし、Pと付き合ってからよりそう思う。

 確かにちょっと……会話のネタとかで分からない単語とかはあるけど、分からないなら教えてもらえば済むもの。

 大切なのは愛をその人とちゃんと育むこと。私はそう思ってるし、Pと私はちゃんと私たちの愛を育んでる。それはきっと、これからも。

 

「こんなポーズはどう?」

「………………」

「なら、こう?」

「…………」

 

 Pはあまり喋らない寡黙な人。悪く言えば無口だけど、良く言えば職人気質。でも喋らなくても意思表示は分かりやすいから、結構意思疎通は出来てる。

 今だって私はスターライトステージで着てる白のメイン衣装で色々なポーズをして、Pは私のそのポージングに首を横に振ったり縦に振ったりして、Pの納得がいくポーズになったらシャッターを切ってくれる。

 

 パシャ

 

 ほら、こんな風に。

 自分の見せ方は自分がよく分かってる……なんて思ってたけど、Pが撮るのと自分が指示して撮って貰ったのと比べると全然違うのよね。

 だからこうした撮影中は全部Pにお任せって感じ。専属だから誰よりも私の輝く写真を撮ってくれるもの。

 

「……そろそろ休憩にしよう」

「ん、了解」

 

 休憩スペースに置いてあるソファーに座ると、Pはすかさず私に飲み物をくれる。もちろん、丁寧にストローまでちゃんと用意した上でね。なんか執事がいるお嬢様にでもなった気分。

 

「ありがとう、P」

 

 私のお礼の言葉にPは小さく頷いただけで、撮影した写真の確認作業に入る。

 そして数分もすると―――

 

「これとこれとこれ……がいいと思うが、どうだろう?」

 

 ―――選定した写真をプリントアウトして見せてくれるの。

 でも、見せられても、私の答えはいつも同じ。

 

「私からは何も言うことないわ。世界で1番私のキレイを分かってるPが選んだ写真だもの」

 

 だってそうでしょう? P以外ならこっちがあっちがって色々と注文するけど、Pにそんなことする必要ないもの。

 

「分かった」

「♡」

 

 たったのその一言と小さな微笑み。それだけで私の胸は鍵盤を叩いたみたいに音がハッキリと強くなるし、今にも踊り出しそうなほどに心が踊る。

 Pはこうやって私を虜にしていくの。本当なら私がPを虜にしたいのに。

 

 ―――――――――

 

「ちひろさんの私物だからって色々着ちゃったけど、良かったのかな?」

「ちゃんと許可は貰ってる。それにどれも可愛かったし、キレイだった」

「…………ありがと♡」

 

 ハッキリと伝えてくれるのは嬉しいけど、それはそれで恥ずかしかったりする。

 お世辞とか社交辞令とかで言われるのとは訳が違う。大好きな人に言われるんだもの、それも真っ直ぐに。

 

「で、でも結局、ポスターにするのは黒色のナイトドレスだったわね」

「問題ない。最高の1枚だった」

 

 Pがポスターに選んだ写真……それはアイドルというよりは女優みたいなドレス姿の私だった。

 シンプルなAラインの膝下丈で袖は七分丈。さらりとした生地感で清楚感たっぷりの上品なシャツブラウス。柔らかい通気性のあるシルキーで滑らかなファブリックは、着心地よくて、動きやすかった。

 鎖骨を含めたデコルテラインを出す事で、見栄えが良く上品かつ女性らしい首元を強調できるデザインだったのも流石はPって感じ。

 極めつけはポニーテールにした髪を纏めた髪留めと、指輪かしら。

 ドレスは黒だけど、装飾品は私の瞳の色で合わせたの。P曰く『キレイだから必要以上の物はいらない』だって……流石に照れたわ。

 

「報告が終われば俺の仕事も今日は終わりだ。送って行くついでに、夕飯でもどうかな?」

「私が断るとでも?」

「訊ねないで連れ回すのも失礼だろう?」

「ふふっ、確かに♪ じゃあ、お願いします♡」

 

 Pはそんな私に小さく笑って上司への報告に向かった。

 その一方で私はPとディナーを過ごせる嬉しさで、自然とスキップしてて……それを見てたちひろさんに『バレたいんですか?』って注意されたわ。不覚。

 

 ―――――――――

 

 Pが私をディナーに誘う時のお店は決まってる。それはPが上京してからずっと通ってる馴染みのお店で、過去にはここでアルバイトもしてたらしい。

 店長さん一人でひっそりとやってる小さな小さな定食屋さんで、アイドルの私がそのままPと腕を組んでお店に入っても『さっさと結婚しろ!』って言われるくらいなの。

 最初は驚いたけど、今ではその温かい空間が私もお気に入りなのよね。

 

「大将、やってるか?」

「こんばんは〜♪」

 

「やってなきゃ店先のランプつけてねぇよ、それよりさっさと結婚しろ!」

 

 あはは、また言われた。

 

「また馬鹿高い料金設定のパーキングに入れて来たのか?」

「あそこがこの店に1番近いですから」

「儲かってるって言ってるのと同じだな!」

「いえ、そんなことないですよ」

 

 この会話もいつもと同じ。ここのお店はカウンター席しかなくて、入ったらいつも世間話が始まるの。

 

「そういや久美子ちゃん、結構有名なアイドルなんだね。うちの孫……今中学生なんだけど、久美子ちゃんのファンなんだってよぅ」

「あら、それは嬉しいです♪ 店長さんのお孫さんなら、いくらでもサインでも写真でも差し上げますよ!」

「あぁ、いらんいらん。甘やかしても仕方ねえし、そういうのは自分の力で手に入れなきゃな。他のファンに失礼ってもんだ」

「なるほど〜」

 

 う〜ん、流石は店長さん。しっかりしてるわね。尊敬するわ。

 

「んで、おめぇはなんでそんなに得意げな顔してんだ?」

「俺の久美子が幅広い年代に愛されているので、プロデューサーとしては嬉しいんですよ。それにそんな人が恋人なので」

「かぁー! 甘ったるいったらありゃしねぇ! さっさと注文してさっさとよく噛んで食ってさっさと帰ってくれ!」

「俺はいつもの肉じゃが定食を」

「私はこの前頼んだチーズオムライス♪」

「おうよ! 水はタダだから好きなだけ飲みな!」

 

 それからも色々な世間話をしながら、Pも私も楽しいディナーを過ごした。帰る時にいつものように店長さんから砂糖撒かれちゃった……塩を撒くの逆の意味でしてるんだって。店長さんはツンデレってやつなのかも♪

 

 ―――――――――

 

「でね、次のオフはそこに行きたいの!」

「分かった」

 

 あとはもう帰るだけ。でもそれだけじゃ寂しいから、私たちはいつも車の中で少しお喋りをする。

 もちろん、私の契約してるマンションの駐車スペースでね。あわよくば私の部屋に泊まっていってほしいから、わざわざ私はここでお喋りするの。

 それで今度のオフでのデートの約束。まあ、デートはかなり先なんだけどね。

 

「?」

「どうかしたか?」

「今気が付いたけど、Pの腕時計変わってる」

「この前新しくしたんだ」

「あぁ、前の壊れたって言ってたものね」

 

 出来るだけ一緒にいたいから、私はここぞとばかりに色んな話題を振る。時間を掛ければ掛けただけ、お泊まりしてくれる可能性があるもの。

 

「いくらしたの?」

「一万ちょい」

「結構したんだ」

「身につける物にはそうしてる」

「ふ〜ん……でも分かるなぁ。私も今度Pにだけ見せるベビードールも同じくらいの値段だし」

「っ!!!?」

 

 お、爆弾投げたらちゃんと反応してくれたわね。これはもうひと押し!

 

「Pが見たいなら……今夜にでも見せてあげよっか?♡」

「………………」

 

 ふふふっ、考えてる考えてる。いいよいいよ〜。もっと私のことだけで頭をいっぱいにして。

 

「Pの好きなデザインなんだけどなぁ〜♡ 着たままでもナニとは言わないけど、出来ちゃうんだけどなぁ〜♡」

「……………………」

「大好きなPにそんな私を見てもらいたいし、色々としてほしいんだけどなぁ〜♡」

「…………………………」

 

 トドメよ!

 

「私を見て……♡」

 

 Pの耳元でとびきり熱っぽく囁いた私。

 するとPはコクコクと何度も何度も頷いて、でも私とは目を合わせたまま。可愛い♡

 

「じゃあ、お泊まり決定〜♡」

「……あぁ」

「ちゃんと着替えとか洗濯してあるからね♡」

「ありがとう」

「背中流してあげるね♡」

「あ、あぁ……ありがとう」

「朝は彼シャツしてあげるね♡」

「それはいい」

「えー、どうしてー?」

「…………」

「ちゃんと理由言わないとやるー♡」

「……今想像しただけでも、朝から頑張ってしまう」

「なるほど〜♡」

 

 明日は午後からだし、私的には問題ないわね。

 

「じゃあ彼シャツ決定♡」

「おい」

「いいじゃない。彼女がゴーサイン出してるんだし♡」

「…………」

「今夜も朝もいっぱいいっぱいイチャイチャしよ?♡」

「自信があるのも考えものだな」

「そんな私に愛されてるPは幸せ者ってことね♡」

「……違いない」

 

 こうして私はPを部屋に泊めることに成功!

 そして言った通りいっぱいイチャイチャしたの♡―――

 

 松山久美子⦿完




松山久美子編終わりです!

自信に溢れている久美子さんなので押せ押せ系にしました!

お粗末様でした☆

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