デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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的場梨沙編

 

 アタシはかわいい

 

 だってアタシのパパが

 

 いつもそう言ってくれたもん

 

 アタシはいつも

 

 パパの1番なの!

 

 だから

 

 アイドルになって

 

 もっともっと褒めてもらうの!

 

 そのために

 

 必要な駒をゲットしたのよ!

 

 ―――――――――

 

「はぁ〜……最悪だわ……」

 

 今のアタシの気分は最底辺。

 だって今日はパパがお休みだから一緒にショッピングデートに行く予定だったのに―――

 

「仕方ないだろう。梨沙の親父さんは急な会議に出席するんだから」

 

 ―――コイツ(アタシ専属のプロデューサー)と過ごす嵌めになったんだもの。

 

 べ、別にコイツがダメって訳じゃないのよ? 元々高スペックなアタシをアイドルとして有名にしてくれたし、なんだかんだ気遣いできるし、や……優しいし……。

 

 でもアタシはやっぱりパパが1番。だから会議なのは理解してても、ショックなのよ。

 

「そんなの知ってるわよ。バカ」

「……それだけ親父さんが会社のみんなに頼られてるってことだ。胸を張れよ。世界一大好きなパパなんだろ?」

「バカ」

 

 なによ、アタシよりもパパのこと知らないくせに!

 でも、それだけアタシのパパと仲良くなってるコイツをアタシも評価してる。

 だからパパは世界一のパパだけど、コイツは世界一のプロデューサーなのよ。

 

「それで、一応車で迎えには来たがどっか行くか?」

「行かない。そんな気分じゃないのくらい察しなさいよ」

「はいはい。んじゃ、親父さんが帰ってくるまでお邪魔させてもらいますよっと」

「ふんっ」

 

 ―――――――――

 

 今日、ママは元々お友達と出掛ける予定だったから、朝からいない。

 アタシは仕方なくソファーに座るプロデューサーの膝の上に乗って、プロデューサーのほっぺとか耳とかを弄って暇を潰してる。

 

 どうしてかって? そんなのコイツがアタシのフィアンセだからに決まってるじゃない。

 

 え、プロデューサーがフィアンセだなんてヤバイって?

 まあ普通に考えればヤバイわね。でもアタシたちの関係を知ってるのはパパとママ以外にいないからいいのよ。コイツだってこんなだけどアタシたちの関係がバレるようなヘマする人間じゃないもの。

 

 ん、そもそもどうしてプロデューサーにしたのかって?

 そりゃあ、コイツが1番アタシのことを理解してるからよ。

 アタシは本当ならパパと結婚したい。でもそんなの出来ないじゃない? 最初はトップアイドルになってめちゃくちゃ顔と名前を売って、総理大臣になって法律作っちゃおうとか考えたけど、それじゃ遅いの。

 だってパパはアタシが幸せになる姿を見たいんだもの。

 だからアタシのパパへの愛を理解した上での結婚となると、コイツが適任って訳。

 

 そ、それに……パパの次だけど、コイツのこと愛してるもん。

 

「梨沙」

「なによ?」

「耳痛い」

「そ、なら耳たぶにする」

「変わらないよ」

「なによ、うるさいわね! このヘンタイ!」

 

 でも確かにグニグニし過ぎたかも。でもそもそもは、触ってて気持ちいい耳をしてるコイツが悪いんだからね!

 

「俺は何もしてない」

「あら! アタシとこうしてるだけでヘンタイなのよ! そんなのもわからないくらいヘンタイなの! ホントにアタシがいないとどうしようもないヘンタイね! 良かったわね! アタシという存在がいて! じゃないとヘンタイなアンタと結婚する相手なんていないわよ!」

「へいへい……ありがとうございます」

「それでいいのよ、ふふん♡」

 

 全く。これだからヘンタイの相手は大変だわ。

 でも、コイツがどれだけアタシの見えないところで頑張ってくれてるのかをアタシは知ってる。

 それはパパが教えてくれた。だから、可哀想だから、コイツをアタシが責任を持って貰ってあげなくちゃいけないのよね。

 結婚するなら年上がいいってママに教わったけど、コイツはアタシより20も年上だから、こんなに年上と結婚するだなんて思ってもいなかったわ。

 

「アンタはアタシに感謝するのよ?♡」

「あぁ、そうだな」

「アンタがヨボヨボになってもアタシはまだまだ若いんだからね!♡」

「いつまでも若々しい奥さんが持てて幸せですよ」

「そうでしょそうでしょ♡」

 

 今の関係になって半年。コイツはいつもアタシのことを優先してくれる。殊勝なことだわ。

 流石にコイツも仕事でアタシとの約束を破る時はあるけど、それはアタシがアイドルとしてもっと有名になるために必要だから許してる。

 でも流石にフィアンセとキスの1つもしてないのはいけないわよね。

 パパはアタシのほっぺとかにキスしてくれるけど、唇には絶対にしてくれない。唇にするのはママにだけって誓ってるの。パパはやっぱりカッコイイわ!

 だから仕方なく……仕方なく! ちょうどいいから今日、コイツにキスするチャンスを与えようと思ってるの!

 

「ねぇ、アンタ」

「ん?」

「アタシたち、今の関係になって長いわよね?」

「半年は短いと思うが?」

「な・が・い! わよね?」

「……梨沙の世代にしては長いのかもな……」

「そうよね! なら、んっ♡」

「ん?」

 

 早くしなさいよ。せっかくこのアタシが目を閉じて待ってるのに。結構恥ずかしいのよ、これ?

 

「………………まだ?」

「何が?」

「だから……んっ!」

「?????」

「………………」

「……長くて綺麗なまつ毛だね?」

 

 ブチッ

 

「誰がまつ毛を褒めろなんて言ったのよ!?」

「? 今日も肌がすべすべだね?」

「そんなのいつものことでしょうが! 分かんないの!? キスよキス! もう半年になるのにキスもしてないなんておかしいでしょう!?」

「人それぞれなんだしいいと思うが……」

「アタシはイヤ! だからさっさとアタシにキスしなさい!」

 

 アンタのせいでムードもなにもあったもんじゃない。

 

 アタシがムカついてると、スッと目の前にプロデューサーの顔が迫ってきた。

 右の頬を手で優しく押さえられて、アタシの唇になにか柔らかい感触が伝わって……アタシは思わず目を見開いちゃった……。

 

 それがキスだって……プロデューサーにキスされてる気がついたら、アタシはそっと目を閉じて、プロデューサーの両頬に手を添えた。

 パパ以外とだなんで、コイツ以外には無理。他だったら気持ち悪い。

 だからかな……コイツとのキスがとっても気持ち良くて、心が満たされたみたいにいっぱいに思えた。

 

「……っはぁ、したぞ」

「…………うん♡」

「キスされて嬉しい?」

「別に……♡」

「……これでも?」

 

 そう言って、プロデューサーはまたアタシの唇を奪う。

 今度はさっきみたいに長い時間じゃなくて、もっと短いキスだった。

 

「しらない♡」

 

 こう言えばまたしてくれるんじゃないか? そんな期待をしてアタシはそう言ったけど―――

 

「……ならもう」

 

 ―――プロデューサーが今にも『もうしない』なんて言いそうだった。

 だからアタシは慌ててその言葉を遮った。

 

「嬉しい! 嬉しかった!」

 

 アタシがそう言うと、プロデューサーは笑って「最初から素直になればいいのに……」なんてこぼす。

 ムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!

 アタシの大切な大切なファーストキスをあげたのに!

 

「う、うるさい! そんな恥ずかしいこと、無理……んむぅっ」

 

 まだアタシが話してる最中なのに、プロデューサーはまたアタシにキスしてきた。

 なんなの!? 人の話は最後まで聞きなさいって教わらなかったの!?

 

「んはぁ……なんで、いきなりキスするわけ!?」

「嬉しかったんだろ?」

「……う、うん……」

 

 その優しい声と優しく笑ってる瞳にアタシはそう返すのがやっとだった。

 ムカつく……なのに、ちょっと気分がいい自分がいる。変な感覚だけど、それはとても気持ち良かった。

 

「素直でよろしい。なら続きをするな」

 

 いつもアタシの方が優位なはずなのに、この時ばかりはプロデューサーの方が優位だって感じる。

 だってパパやアタシが認めた人だもの。

 だから―――

 

「はいぃ♡」

 

 ―――アタシはもうなにも抵抗する気を無くして、プロデューサーにされるがまま……長い長い間キスをした。

 

 ――――――――― 

 

「はぁはぁ……」

「何よ、もう終わりなの?」

 

 まだアタシ足りないんだけど?

 

「あれから数時間もしてるんだが?」

「根性なし」

「おい」

「根性なし」

「後悔させてやる!」

「んんっ!♡」

 

 やった♡ いっぱいして♡

 

 プロデューサーは言葉通り、アタシが望むキスをしてくれる。

 息継ぎも出来なくて、苦しくて、コイツにアタシの全てを任せるしかない。

 普段のアタシならムカついて、コイツのスネとか脇腹とかに1発食らわせてるけど、今はいい。

 だって気持ちいいんだもん♡

 

「はぁはぁ……激しいの好きぃ♡ もっとぉ♡」

「おい、本当に初めてなのか!?」

「失礼ね! 正真正銘アンタがアタシの初めてよ! バカ!」

 

 アタシがそう簡単にパパやアンタ以外とキスする訳ないでしょ! バカも休み休み言いなさいよ!

 

「…………末恐ろしいな、梨沙は」

「今更知ったの?」

「あぁ、今更ながらな」

「そ、なら改めればいいだけよ」

「へいへい」

「ねぇ、そんなことより早く続き……して?♡」

 

 アタシがそう言ってプロデューサーの服の袖を引っ張ると、プロデューサーはまたキスをしてくれた。

 ちらっとテーブルに置いてある置き時計を見ると、もう16時を回ってた。

 道理で部屋が暗い訳ね。でも暗い部屋の中でのキスもまたいい感じ♡

 だからアタシは気にしないでプロデューサーの腰を両足でガッチリ捕まえて、アタシの気が済むまでキスをしたの。

 

 ―――――――――

 

「後悔させてやるですって?」

「…………すみませんでした」

 

 アタシの気が済んだのは夜の19時を過ぎた頃。

 アタシは家の雨戸とかを閉じたあとで、またプロデューサーの膝の上に座り直して、プロデューサーの出過ぎた言葉を問い詰めてる。

 

「ふんっ、口ばっかなんだから」

「…………」

「……でも、気持ち良かった。またアタシがしてって言ったらするのよ? 拒否権ないから」

「分かった」

「ふふん♡ こんなに不甲斐ない人がフィアンセだなんて、先が思いやられるわね♡」

 

 ホント、アタシが見捨てたらコイツは終わりね。

 でも大丈夫。アタシはそんな心の狭い人間じゃないもの。死ぬまで扱き使って、死ぬ直前までアタシに愛を注がせてあげる。ヘンタイなコイツにはこの上ないご褒美よね!

 

「一生アタシの側にいなさいよねっ!♡」

「おう」

「ふふんっ♡」

 

 的場梨沙⦿完




的場梨沙編終わりです!

マセガキチックな梨沙ちゃんですが、本音だだ漏れのダム決壊レベルのデレデレにしました!

お粗末様でした☆

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