デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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事務所には交際していることを明かしている設定です。


ローカル
青木慶編(ルーキートレーナー)


 

 ルーキー

 

 自分にはお似合いの言葉

 

 未熟だけど

 

 姉たちと同じ職に就いて

 

 色んなアイドルの手助けをして

 

 それを誇りに思ってる

 

 でも

 

 もっと何かの役に立ちたい

 

 でもそれは

 

 本当のところは

 

 アイドルの子たちじゃなくて

 

 あの魔法使いさんのため

 

 ―――――――――

 

 今日のわたしは完全なお休みです。学校も仕事もなく、本当のお休み。

 でもわたしは朝早く起きて色々と準備をして、待ち合わせの場所で、とある方を待っています。

 いつもはそんなにメイクとかオシャレってしないんだけど、今日は久々のデートだから頑張ったの。

 彼の好きな長袖の黒の縦セーターに膝丈の赤いギャザースカート、そして白いエナメルパンプス。髪型は……いつもと同じだけど、彼がプレゼントしてくれたバラの花びら柄のシュシュでまとめてる。

 

 喜んでくれるかな?

 

 いつもみたいに優しく微笑んでくれるかな?

 

 今日も可愛いよって言ってもらえるかな?

 

 色んな不安が頭の中に浮かんでくるけど、コンパクトミラーに映る自分の顔ははにかんでる。

 自分がこんな素敵な恋愛をするだなんて思ってもいなかったなぁ。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 第一印象はお互いに付き合いやすそうって感じだった。

 初めて彼が担当するアイドルをわたしが初めてお世話して、その子の初ステージにはわたしも招待されて、一緒になって彼女の成功を喜んだ。

 

 彼は新米プロデューサー(今は中堅みたい)でわたしはルーキートレーナー。

 お互い同じような境遇であることから、お互いに仕事の愚痴とか話すような仲になって、彼が担当していた子がアリーナでの初ライブを成功させたあとで―――

 

『これは慶ちゃんのお陰でもある。本当に感謝してる。それでなんだけど、今度は俺にも君と過ごせる時間を作ってくれないかな? もちろん、仕事抜きで』

 

 ―――って告白されて、わたしは嬉しくて、泣きながら彼の胸に飛び込んでた。

 

 お姉ちゃんたちは『あの人ならいいんじゃない?』って言ってくれたし、ちひろさんも『おめでとうございます♪ やっとくっつきやがりましたね☆』って言ってくれた。ちひろさんはちょっと笑顔が怖かったけど……。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そんな感じでわたしたちの恋愛は順調です。

 年上の人とお付き合いするのって初めてなんですが、5つ年上ってだけで安心感があるというか……わたしなんかより何倍もの責任あるお仕事をしてるから落ち着き具合と包容力が高いんですよね。

 だから今日はわたしのいいところをなるべくアピールしたいと思ってます! ふんすっ!

 

「お待たせ、慶ちゃん」

 

「いえ、わたしもつい先程来たところ……っ♡」

 

 ああ、いけない。今のわたし、絶対にだらしない顔になっちゃってる。

 だって私服姿の彼が素敵なんだもん。

 

 今回のデートが初めてって訳じゃない。でもわたしはいつも彼の私服姿を見ると、胸の奥がとくんってするの。

 だって今この瞬間だけは、彼はわたしだけの人になってるんだもん。

 

 いつも彼が担当してる可愛かったり、綺麗だったりするアイドルの子たちは彼のスーツ姿ばかり見てるはず。

 そんな彼の私服姿を無条件で見れるのはわたしだけ。だからこの瞬間がわたしは大好き。優越感に浸ってる嫌な女っぽいけど、こんな時くらいいいよね?

 

「慶ちゃん、今日はお化粧してるね。似合ってて綺麗だよ」

「ぁ……ぅ……ぇ……♡」

「毎回褒めてるのにちっとも慣れてくれないね?」

「………………みゅぅ♡」

「なんか可愛い動物みたい。こんな子が彼女だなんて、俺は幸せな男だな」

「………………はいぃ♡」

 

 ああ、ダメダメなわたし。だからお姉ちゃんたちに恋愛までルーキーとか言われちゃうんだよ。

 でも仕方ないと思う。だって好きな人にわたしにしか出さないような優しい声色で囁かれたら、照れるしかないもん。

 

「じゃあ、行こうか。今日は手? それとも腕の方がいい?」

「…………腕で♡」

「はい、どうぞ」

「んっ♡」

 

 わたしが彼の差し出してくれた左腕に抱きつくと、彼はわたしの頭を一度優しく撫でてから、わたしの歩幅に合わせてゆっくりと歩き出してくれます。

 そんな彼の横顔をわたしは横目に見ていると、彼が小さく笑いました。

 

「?」

「あ、ごめんごめん。チラチラとすぐ横から可愛い視線が来るもんだから、微笑ましくて」

「ぁぅ……♡」

「……堂々と見てよ。俺たちは恋人同士なんだから」

「……はい♡」

「でも、見てると首が大変だから程々にね」

「もう……身長差なんて――」

「じゃあ今日キスする時、俺は屈まないね」

「…………それじゃ絶対に届かない」

「身長差があると大変だね」

「むぅ、意地悪〜」

 

 でもそんなところもわたしは好き。それにわたしがそう言えば、彼はすぐに謝って頭をぽんぽんって軽く叩くみたいにして撫でてくれる。その力加減とかも好きだし、彼の優しさも伝わってくるから、からかわれててもやっぱり好きって気持ちしか出てこない。

 

 ―――――――――

 

 デートは始まったものの、わたしたちのデートは基本的に行き当たりばったりです。

 遊園地とか映画とか海とかなら話は違いますが、それ以外だったらただぶらぶらとお散歩してますね。

 わたしは彼と歩けるだけでそれはもうテンションマックスで嬉しいだけなんです。それを言うとよくお姉ちゃんたちに『あんたは犬か』って言われちゃうけど……でも本当にそれだけでわたしは満たされるんです。

 彼の方も同じみたいで、わたしの表情がいつ見てもニコニコしてて可愛いって言われちゃいました……てへへ。

 

「あれ、慶じゃん?」

 

 色んなお店が建ち並ぶ通りを歩いていると、学校のお友達に会いました。もちろん女の子です。

 

「あ、〇〇ちゃん! お買い物?」

「バイトだよ、バイト。あたしここの服屋でバイトしてんの。あたしは慶みたいに休日にデートしてくれるような人いないし〜」

 

 そう言うとお友達はわたしの彼を値踏みするように眺め始めました。

 

「ふ〜ん……ほほ〜う……慶はこういう人が好みなのか〜」

「どういう意味?」

「別に悪い意味で言ってないよ♪ お似合いだなって思っただけ♪」

「ならいいけど……」

「身長差あって余計に慶が可愛く見えるのがいいよね☆」

「なっ!?」

 

 なんでよ〜! 人が気にしてるのに〜!

 いいもんいいもん! 30センチ差なんて愛でいくらでもカバー出来るもん!

 

「彼女をあまりいじめないでください。反応が可愛いのは分かりますけど」

「っ!?」

「あはは、ごっめんね、彼氏さん! いじめるのは彼氏の特権だもんね!」

「っ!!!?」

 

 お友達の言葉にわたしは言葉を失ってたけど、お友達は構わずお店の中に戻っていきました。

 

「明るくていい子だね」

「スカウトしないでね?」

「流石にデート中までアイドル候補探さないよ。すぐ目の前に可愛い彼女がいるのに」

「だ、だからそういうことサラッと言うのやめてよ……恥ずかしい」

「減るもんじゃないからいいじゃないか」

「心臓に悪いのっ!」

 

 外なのにデレデレした顔になっちゃったら嫌だもん。

 

「あはは、ごめんごめん」

「むぅ」

「そんなに口尖らせてるとキスしちゃうよ?」

「む……それは二人きりになったらして、ほしい♡」

「本当に慶ちゃんは可愛いね」

「どうしてそうなるの〜!」

 

 結局、わたしは暫く彼から可愛い可愛いって言われちゃいました。

 

 ―――――――――

 

 時間もお昼時になり、わたしたちは通り沿いに見つけた小さな公園にやってきました。

 遊具はないけどベンチと水道と自販機があって一休みするにはいい場所です。

 日向のベンチを確保して、わたしは力作のお弁当を広げました。

 

「わぁ、流石トレーナー。どれもバランスよく入ってるね」

「えっへん♡」

 

 昨晩から仕込んで、早起きしてじっくり作りましたからね!

 

 最初は彼が外回りで見つけた美味しいお店に行く予定でしたが、いつも彼にお任せなのも悪いと思ったのでこうしたんです。彼って基本自炊する暇ないし、外食かコンビニの物ばっかりだから。

 

「あーんオプションはあるの?」

「あーんオプション?」

「うん。あーんって食べさせてくれるオプション。ある?」

「そ、そんなのあるわけねぇべっ! 人前でそぉたことできっか!」

「かなり訛ったね」

「はっ……コホン。そんなのありませんっ」

「そっか、残念」

「……お家デートでならしても……♡」

「じゃあ今からでも俺の部屋に」

「また今度〜!」

 

 してもいいけど、今からそれだけのためにってのは恥ずかしい! もう、こうと決めたらすぐ行動する人なんだからぁ。

 

 ―――――――――

 

 普通にお弁当を食べ終わったわたしたちは、食休みをしてからまた歩き出しました。

 すると新しく出来た雑貨屋さんを見つけたので、そこに入ることにしました。

 

「………………」

「………………」

 

 でも入ってわたしたちは言葉を失います。

 最初は良かったんです。オシャレな雑貨が並んでて。

 でもでも、お店の奥には変な雑貨がたくさんあったんです。ジョークグッズって言うんでしょうか……。

 

「女体盛り皿に女体マグカップ、ライター型の男のアレを模したモノが出てくるオモチャ……売れるのかこれ?」

「さ、さぁ……面白がって買う人もいるんじゃないかな?」

「慶ちゃんだったら買う?」

「わたしがこんなの買うとでも?」

「あはは、だよね。でも粗品ローターとかケチャップローションとかよく考えたもんだ」

「まあ、こういうのは子どもがいるご家庭ならカモフラージュになるかもしれませんね」

「あぁ、そういう手もあるのね」

 

 なんか妙な空気になっちゃってるなぁ。でも彼が笑ってるからいいかな。真顔になられてたら泣いてたよ、わたし。

 

「同僚のやつにマスタードローション買ってこうかな」

「やめてあげて」

「いや、ネタとしては面白いからさ」

「そんな子どもっぽいことしないでよ」

「大人が使うから子どもっぽくないよ」

「今後離れて歩きますよ?」

「いやだ」

 

 彼はそう言うとやっとローションを棚に戻してくれました。良かった。わたしだって離れて歩きたくないもん。

 

「じゃあ、デート記念にさっき慶ちゃんが見てた面白い缶詰買って行こうか」

「あ、それなら興味あるしいいよ♪」

「だし巻き卵缶とたこ焼き缶とお好み焼き缶ね」

「ならわたしがガトーショコラ缶とチーズケーキ缶買うね♪」

 

 お互い何買ってるんだろうって思われるかもしれないけど、これがわたしたちらしい。

 

「じゃあ買ったら、俺の部屋に来て試食会だね」

「うん、行く♡」

「その時はあーんオプションつけてね?」

「だから、二人きりならしてあげるってばぁ、もう♡」

 

 こうしてそれぞれ缶詰を買って、わたしは彼の部屋にお邪魔して、そのまま泊めてもらっちゃった♡―――

 

 青木慶#完




青木慶編終わりです!

19歳で学生でもある慶さんは恋愛したらこうなるかなと♪

お粗末様でした☆
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