デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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事務所には交際宣言している設定です。


青木明編(トレーナー)

 

 アイドルのトレーニングをする

 

 それが私の仕事

 

 姉妹たちと同じ仕事だし

 

 姉たちは厳しめで

 

 妹はストレッチが主

 

 そして私は

 

 トレーニングに臨む子たちの

 

 緊張を解すのが役目ですね

 

 でも

 

 一番緊張してしまうのは

 

 自分だったりしてます

 

 ―――――――――

 

「はーい、笑顔が無くなってるわよー! ステージでそんな顔をファンに見せる気ー!?」

 

『はいっ!』

 

 私は青木明。姉妹揃ってここの事務所のアイドルたちのトレーニングやレッスンを任せられています。

 やり甲斐のある仕事だし、アイドルの子たちも真剣に励んで頑張ってて、そのやる気にこっちも頑張らなきゃと毎日エールを貰ってる気分。

 仕事の方は本当に順風満帆で何も不安はないです。

 でも最近じゃプライベートの方が不安は多いんです。

 

 それは何かと言うと―――

 

「お疲れ様です。差し入れ持ってきました」

 

 ―――このプロデューサーさんのせいです。

 

 この方が今私が受け持つアイドルたちの担当プロデューサー。

 私より3つ年上なんですが、3つしか違わないのにとてもしっかりとした大人な方です。だからこそ若手でありながら5人のプロデュースを任せられているのでしょう。

 それで何故私の不安が彼のせいなのかというと―――

 

「明ちゃん、お疲れ! 明ちゃんに会いたくて差し入れ持ってきちゃったよ!」

 

 ―――愛情表現がストレート過ぎるからです。

 

 私と彼が付き合っていることは事務所では誰もが知っています。

 まあそれもこれも一年前にやった事務所の忘年会の隠し芸大会で彼がパフォーマンスのあとで盛大に告白したからなんですけどね。

 私も私で彼とは歳も近くて仕事以外の話をするような仲でしたし、たまにデートもしてましたからついみんながいる前でOKしてしまいました。

 いや、交際を始めたことに後悔なんて一度もしてません。しかしですね……愛情表現がストレート過ぎるのはやっぱり恥ずかしいと言いますか、なんとも言えない気分になるんですよ。姉妹たちからは『リア充爆発しろ』って言われる始末ですし……。

 

「な、何みんなの前で言ってるんですか……」

「僕、嘘つけないから!」

「それはとてもいいことですけど……」

「明ちゃんは僕と会えて嬉しくないんだ……」

「うぅ……」

「そうなんだ……」

「嬉しいに決まってますっ!」

「僕たちは相思相愛だね!」

 

 無邪気に私を抱き寄せて、これでもかとみんなの前で頬擦りしてくる彼。

 私も私で彼の好意が嬉しいから拒めない。ああ、アイドルの子たちからの生温かい視線が痛い……。

 

「あ、そうそう。良かったら今夜一緒に食事しない? 僕、今日の仕事は早くに終わるから」

「え、ええ、〇〇さんがいいなら……」

「やった! 約束だよ?」

「はいはい、予定は空けておきます……ふふ♡」

「じゃあ約束……んっ」

「んむぅっ!?♡」

 

 ああ、みんなの前なのに……でも幸せだから拒めない私。

 キスが終わると、彼は私に微笑んで「それじゃあ、また夜にね」と言ってこの場から去っていきました。

 私は呆けて彼の背中を見送っていましたが、当然アイドルの子たちから冷やかされててんやわんやしてしまいました。

 あ、差し入れのプリンは有名店のやつでとっても美味しかったです!

 

 ―――――――――

 

 私は自分の仕事が終わると、すぐに姉妹で暮らしているマンション(ルームシェア)に戻りました。

 私だってデート前の準備は必要なんです。

 

 軽くシャワーを浴びて、お化粧して、彼からプレゼントされて気に入ってるロング丈で長袖のカーキニットワンピース(グレー)に袖を通す。

 そこに白地で花柄レースのロングカーディガンを合わせて、前髪は彼に褒めてもらった星型のヘアピンで留めてバックは流す感じ。

 そしてデート用の黒のチェーンバッグ(少し大きめ)に、履いていく靴はハイカットスニーカー。

 

 リビングに置いてある姿見で最終チェックをしていると―――

 

「明、今夜は泊まりか?」

「避妊はしなさいよ?」

 

 ―――早速、姉たちに絡まれます。まあもう慣れましたが。

 

「泊まる場合は連絡するよ」

 

「とか言って、高確率でお泊まりじゃない」

「若い者同士だからって夜はちゃんと寝るんだぞ?」

 

「分かってますっ」

 

「ほらほらお姉ちゃんたち。そんなに言わないの。明お姉ちゃん、プロデューサーさんによろしくね」

 

「ええ、分かったわ」

 

 ああ、妹だけが私のオアシスですね。寝坊すると『腑抜けてない?』って言われますけど。

 

 ―――

 

 それから私がマンションの前で待っていると、彼の車が停まり、彼はわざわざ降りてきて助手席までエスコートしてくれました。

 

「今夜の明ちゃんも素敵だね」

「ありがとうございます……♡」

「僕は幸せ者だなってつくづく思うよ」

「私も、です♡」

 

 車に乗り込むと、暫く彼から褒めちぎられる時間になります。人目がないので私も素直に反応しますが、やはりこの時間は慣れません。頭がふわふわして、座ってるのに身体が浮いているような気分になります。

 

「キス、してもいい?」

「どうぞ……♡」

 

 キスする直前の彼が私の顎を優しく上げる動作に私は毎回ときめいてしまいます。

 なのにすぐキスされるので、ときめきが止まりません。私、自分で思っていたよりキスが好きだったみたいで、彼とキスをしていると自分から舌を絡めにいっちゃうんです。

 

「……はぁ……明ちゃん、僕と一緒でキス好きだね」

「はい……大好きです♡」

「そんな目で見つめられると、ディナーの前に明ちゃんを食べたくなっちゃうなぁ」

「私はどちらでもいいですよ♡ 部屋を出た瞬間に姉が鍵もチェーンも掛けちゃいましたから♡」

「ありゃりゃ、ならお持ち帰りコースは決定って訳だ」

「責任とってくださいね♡」

「もちろん。じゃあ、早速僕のマンションへ行こうか」

「…………はい、連れてってください♡」

 

 ―――――――――

 

 彼のマンションの部屋は一人暮らしということもあって2DK。洋室と和室があって洋室はお仕事部屋で、和室がくつろぎスペース。

 お仕事ではとっても真面目な彼だけど、プライベートはちょっとズボラ。夏以外はずっとコタツが出てるし、キッチンの棚はインスタント食品だらけ。

 夏は特に色んなイベントがあるから彼も忙しくしてて、そんな時は私が定期的にお掃除しに来たりしてます。合鍵も頂いてますので。

 

「本当に私を先に食べるんですか……?♡」

「残念だけどまだちょっとお預け。実は最初から僕のとこに招待するつもりだったんだ」

「まさか〇〇さんがお料理を!?」

「まっさか〜♪ 目玉焼きすら焦がす腕前なのに〜♪」

「胸を張るところじゃないですよ」

「えへへ、まあそれは置いといて……実は実家から白菜が箱で届いちゃってね。明ちゃんとお鍋したいなぁって」

「わぁ、いいですね♪」

 

 彼の実家は大きな農場を持つ農家さん。家業はお兄さんが継いでるそうです。

 

「イチャイチャしながらお鍋パーティだね!」

「もう、恥ずかしいこと言わないでください♡」

 

 ―――

 

 こうして始まったお鍋パーティ。

 白菜が主役とのことで、彼は白菜と豚バラのミルフィーユ鍋をご所望でした。

 なので私はご所望通りに用意しているんですが―――

 

「明ちゃん、ちゅう」

「またですかぁ?♡ もう……ちゅっ♡」

 

 ―――彼がすぐにキスのおねだりをしてくるので、なかなか進みません。

 

「明ちゃんとのちゅうは僕の元気の源だからね!」

「それは嬉しいですけど、恥ずかしいんですからね?」

「でも毎回ちゅうしてくれる明ちゃん好き」

「だ、だって……私も〇〇さんとキスするの好きですし、断れませんよ」

「明ちゃんは本当に可愛いね♪」

「ありがとうございます……♡」

 

 どっちかと言えば彼の方が可愛いと思います。素直ですし、いつもニコニコしてますし、甘え上手ですし。

 

「明ちゃん明ちゃん」

「またですかぁ?」

「だめ?」

「断りませんよ……ちゅっ♡」

「〜♪」

 

 ―――

 

 やっとお鍋が出来上がった頃には時計の針が21時を過ぎてました。作るのに2時間も掛かっちゃっいましたよ。

 でもいつもよりキスがいっぱい出来て、その点は良かったです♪

 それに―――

 

「うまーーーーいっ!」

 

 ―――彼のこの笑顔が見れただけで、私としてはお釣りが来ちゃいますから。

 

 私、彼とこういう風に過ごすようになってから、こんな風に将来は過ごしたいなって考えるようになったんです。重たい女に思われそうなので彼には言いませんが。

 でも、本当に彼となら将来のことを前向きに考えられるんです。

 だからいつか、そうなったらいいなって思ってます。

 

「あぁ、明ちゃんってお料理上手で本当にいい子。絶対僕のお嫁さんにする」

「ふふふっ、期待して待ってます♡」

「待ってて。というか、もう本当にしちゃう?」

「へ?」

「だから結婚……しちゃう?」

「…………」

 

 え? え? え? 私今、プロポーズされてる?

 きゃあ! どうしよう! すごく嬉しい!

 な、何か言わないと!

 

「いいよ、何も言わなくて」

「…………」

 

 え?

 

「だって、明ちゃんさ」

「…………」

「とっても嬉しそうだもん。そういうことだよね?」

「…………♡」

「今度お互いが休みの日に、一緒に指輪買いに行こうね」

「…………♡♡」

「それから姉妹さんたちにご挨拶して、ご両親にご挨拶しに行って」

「……♡♡♡」

「一緒に結婚式のプラン考えようね」

 

 ああ、夢みたい。夢だったのが、本当になっちゃうんだ。

 

「あ、でもその前に」

「?」

「明日、出社前に婚姻届貰いに行こうね」

「…………はい♡」

「あ、やっとお返事してくれた」

「幸せ過ぎると、声って出せなくなるんですね……えへへ♡」

「みたいだね……ねぇ、明ちゃん」

「はい♡」

「愛してる」

「っ……私も、〇〇さんのこと、愛してますっ♡」

 

 私が言葉を返すと、彼はすぐに私を抱き寄せてキスをしてくれました。

 そのキスは今までした中で一番幸せで、彼への愛がとってもとっても募って、一生の思い出になりました。

 

 ―――――――――

 

 時刻は深夜。

 和室の部屋に敷かれた布団。

 彼と愛し合ったあと。

 今まで以上に愛してくれた彼に抱かれ、私はもう眠ってしまっている彼の寝顔を見ながら幸福の中にいる。

 

 本当に夢みたい。

 

 本当に愛している彼と結ばれた。

 

 本当に本当に夢みたい。

 

 でも初めてのあの感覚が、これが夢ではないと教えてくれる。

 まだ温かい。彼が注いでくれた温もり。

 愛おしさが募って、私は彼みたいに眠りに就けない。

 

 眠りに就いて、起きたら夢でした……なんてことになるのは嫌。

 だからもう少し、私は起きていたいのかも。

 

 明日から色々と大変そうだけど、その都度幸せを彼と共有したいな。

 愛しています、旦那様……なんて♡―――

 

 青木明#完




青木明編終わりです!

姉妹で一番の清楚枠(個人的に)なので、こんな風にしてみました!

お粗末様でした☆

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