デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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事務所には交際宣言している設定です。
名前は(れい)と言います。


青木麗編(マスタートレーナー)

 

 一度はアイドルなんてものに

 

 憧れて目指していた

 

 でも叶わなかった

 

 だから今の職に就いた訳だが

 

 これはこれで気に入っている

 

 なんたって

 

 アイドルたちの手助けが出来るんだ

 

 こんないい仕事はない

 

 だけど

 

 最近はこの仕事がますます好きになった

 

 ―――――――――

 

「麗さん、そういうことでいいですね?」

「……〇〇殿、そんなこといきなり言われても……はぅ」

 

 私はこの事務所でトレーナーをしている青木麗だ。

 これでも事務所のトレーナー長として責任のある役目を頂いている。

 そんな私は今、いつものトレーニングルームの廊下で、アイドルの皆がいる前で、その子たちのプロデューサー殿に壁際に追いやられている。いわゆる壁ドンと言うやつだ。

 彼と私は社内恋愛をしていて、それは許されている。彼の方が私より1つ年下だが、プロデューサーという重大な責任を持つ仕事をしているだけに、彼の方が私よりも何倍も大きな大人である。

 そんなところに惹かれ、よく事務所で顔を合わせるのもあってプライベートな話をするようになり、私が酔った勢いのまま『私を貴方の一番にして!』なんて恥ずかしいこと言ってしまって今の関係に至る訳だ。

 

 それで今、どういう状況なのかというと、彼のことを下の名前で呼び捨てにするように迫られている。

 下の名前を言うだけなら恥ずかしくはない。いつも下の名前で読んでいるのだから。

 しかし呼び捨てはダメだ。恥ずかし過ぎる。

 だって心底惚れた相手の名前だぞ? 恋人になれただけでも夢みたいな話だというのに、呼び捨てなんて……私の彼への愛が溢れてしまう!

 

「ほら、ちゃんと証人たちも揃ってるんですから、約束してください。今後俺のことは呼び捨てにしますって」

「で、でも……」

「俺たち、付き合って2年になるんですよ? なのに未だに呼び捨てじゃないって変に距離を感じるんですが?」

「き、キミだって未だに私に敬語だし、さん付けじゃないか」

「俺は麗さんを心から尊敬してるんです! いいじゃないですかっ!」

「それを言うなら私だって貴方のことを本気で尊敬し、最高の男性だと思っている!」

 

 どうして分かってくれないんだ。

 私はキミのことが大好きなんだ。大好きだからこそ、呼び捨てなんて恐れ多いんだ。付き合って2年と言ったが、ついこの前手を繋いで歩けるようになったばかりなんだぞ? キスだってまだなのに、呼び捨てなんて……まるでプロポーズ前じゃないか!

 それにな、私は浅ましい女なんだ。手を繋げるようになった瞬間から、手を繋ぐ口実をいつも探している。だから自分で自分を律していないとダメなんだ。

 

「もういいです。麗さん」

「っ!?」

 

 き、嫌われた!?

 

「もうトレーニングの時間になりますから、この話はお互いに仕事が終わったらにしましょう。今夜お時間頂いても?」

「…………はいぃ♡」

 

 良かった。私がキミからの誘いを断るはずがない。何を差し置いてでもキミを最優先するさ。公私共に。

 

 私が返事をすると、彼は私の左手を優しく両手で握り、私の薬指にキスをしてその場をあとにした。

 まるで王子様だ、と私が破顔してその背中を眺めていると、アイドルたちから『リア充』コールをされた。恥ずかしかったが、それ以上に幸せな気持ちだった。

 

 ―――――――――

 

 自分の仕事を終えた私は帰らずに事務所の休憩室で、彼が迎えに来るのを待っていた。

 一応シャワールームで仕事の汗は流してきたし、今日の私服は彼が選んでくれた白のニットセーターとグレーのアンクルパンツに黒のローヒールパンプスだ。私だって恋人が出来たんだ、オシャレもしないとな。彼に呆れられたくないし。

 

「………………♡」

 

 しかし、恋人を待つというのはいいものだ。

 話し合いをするだけなのだが、こうも気分が浮かれているのは私がどれだけ彼に対して好意を寄せているかが分かる。

 これまで数回交際したことはあるが、どうも上手く行かず、これまで手を繋いだことすらなかった。

 そんな私に乙女の甘酸っぱい初めてを彼はいくつも与えてくれた。本当におとぎ話に出てくるような王子様みたいな人だ。

 まあ、実際にも彼のご実家は凄いがな。お父上は経産省幹部でお母上は化粧品会社の社長。ご長男の方はそこの副社長でご次男はお父上と同じく経産省にいる。そしてご三男の彼だけが自由な身でプロデューサーになっている。それも敏腕だ。

 親の七光りと就任直後は言われていたが、彼の手腕で世に出たアイドルグループたちは必ずテレビに引っ張りだこなんだからな。

 そんな彼と交際している私は本当に恵まれた女だよ。

 お家柄なんて抜きに私は彼となら四畳半生活だって幸せを感じられる自信がある。愛とは偉大だ。

 

「お待たせしました、麗さん」

 

「あ、ああ、いや、待ってない♡」

 

「ありがとうございます。車を回して来ますから、玄関で待っててください」

 

「私も一緒に行ってはダメだろうか?」

 

 せっかく会えたんだ。もう離れたくない。それにそこまで手を繋げるじゃないか。

 

「…………いいですよ」

「♡」

 

 彼は私の意図を察してくれて、笑顔で手を差し出してくれた。

 だから私も年甲斐もなく少女のように笑って、その手を取った。

 すると力強く彼の胸に抱き寄せられた。

 

「麗さん、捕まえた♪」

「あ、あぅ……♡」

「もう離しませんからね」

「…………♡」

 

 彼の言葉が嬉しくて、私は何も言わずに彼の胸板に頬を寄せる。

 そうすると彼は私のことを優しく両手で包み込んでくれた。

 

「麗さんは俺の前だととても可愛くなるので、ズルいですね」

「そ、それは大好きなキミの前だから……♡」

「嬉しいです。ですから、早く呼び捨てにしてください」

「またそんな意地悪なことを……♡」

「好きな女性には呼び捨てにされたいので」

「まだ心の準備が……♡」

「いつまで準備期間を設けるんです?」

「わかんにゃい……♡」

「可愛いとズルいですね〜」

「にゃうぅ♡」

 

 ―――――――――

 

 暫く抱き合ってた私たちだったが、ちひろさんから『はよ帰れ』と言われたので彼の車に引き上げてきた。

 車を走らせてやってきたのは彼のマンションだった。

 

 そしてリビングまで来ると、私はまた彼に抱き寄せられた。

 

「ど、どうしたんだ?♡」

「男の部屋になんの警戒心もなく上がる可愛い猫ちゃんがいましたので、保護してます」

「き、キミ以外の男の部屋になんて行かないよ……♡」

 

 そもそも彼と付き合って以来、仕事以外で男の人とは会話すらしない。仕事外でもトレーニングの相談とかなら受け付けてはいるが、プライベートなことは何も話してないし、訊かれもしない。

 

「今夜は俺を呼び捨てにするまで帰しませんから、そのつもりで」

「そんな……♡」

 

 そんなこと言ったら、いつまでも私は呼ばないぞ。

 いつまでだって私は彼の側にいたいんだからな。

 

「さぁ、俺の目を見てください」

「…………♡」

「呼んでください、俺の名前を」

「……〇〇、殿♡」

「それじゃダメですって言ってますよね?」

「あうあうあうあう……♡」

「呼び捨てにする、たったそれだけですよ?」

「は、恥ずかしい……♡」

 

 大好きな大好きなキミだから、私はこんなに恥ずかしいんだ。

 そ、それに言わなければ、ずっとキミと抱き合っていられるんだろう?

 ひ、一晩過ごせば、結婚したようなものだし……ふへへ♡

 

「あ」

「? どうしました?」

「妹たちに電話しないと……今夜帰れないから」

「言う気がないということですか?」

「だ、だって……言わなければ、このままキミといれるんだろ?♡」

「はぁ……どこまで可愛い思考してるんですか、麗さんは」

「わ、私は可愛くない……♡」

「可愛いですよ。全く……困った恋人さんですね」

「き、キミがそう言ったのにぃ……」

「確かに言いましたが……そんなことを言われたら、帰す気が吹っ飛びましたよ。呼び捨てにしてももう今夜は帰しません」

「ほ、本当かっ!?♡」

「はい」

「じゃ、じゃあ、そういうつもりでいいんだな!?♡」

 

 結婚してくれるってことでいいんだな!?

 私は既にその気分だったが、事実としてもうキミのモノってことでいいんだな!?

 

 そう思うと、私の心は彼への愛が溢れ出した。

 そして次の瞬間には―――

 

「〇〇、愛してるっ♡ いっぱいいっぱい愛してるっ♡」

 

 ―――彼の名を呼んでいた。

 彼の名前と愛してるという言葉を何度も、何度も……。

 彼の頬へ頬擦りしながら、ぎゅうっと抱きついたまま、言えば言うほど私の心が満たされて、とても気持ち良かった。

 

「急に言ってくれるんですね」

「だ、だって……〇〇が結婚してくれるって言うから、嬉しくて♡」

「?????」

「一晩過ごすということはそういうことでいいんだよな?♡ な?♡ にへへ、私、家事は得意だし、面倒見もいいぞ♡ これまで一緒にいれなかった分、目一杯〇〇のサポートをしてやる♡ 家のことは任せておけ♡」

「…………急展開ですね」

「ん〜♡ なんでもいい♡ 私はもう〇〇の本当の女だ♡ 〇〇〜♡ 〇〇〜♡ ん〜んん〜♡」

 

 タガが外れたように私は彼への愛を全身を使って表している。

 でも彼は私の愛を受け止めてくれる。なんたって私の旦那様なのだからな。こんなに幸せなことがあるだなんて、アイドルを目指して挫折した頃は考えもしなかった。

 

「麗さんってスキンシップ激しいんですね……」

「愛する人限定でな♡ 妹たちにもこんなことはしないぞ♡ もちろん、私の生涯でこんなことする相手は〇〇だけだ♡ 安心しろ♡」

「安心というかなんというか……色々と驚きが多くて」

「そうなのか? あ、もしかして私、ウザいか? ウザいならこれからは控えるが……寂しい」

「いえ、このままでいいですよ。可愛さ倍増でそんな女性と結婚するのがちょっと実感湧かなくて……」

「そうかっ♡ 分かるぞ分かるぞっ♡ 私だってこんなに素敵な人が旦那様になるだなんて夢みたいだからなっ♡」

「まだキスもしてませんからね〜」

「た、確かにな……でも結婚相手なら、もうしてもいいんじゃないか?♡」

 

 28年も大切に守り通してきたファーストキスは彼に捧げたい。もちろん、他の初めても全部。

 まあ残念なことに人生初の恋人にはなってあげれられなかったが、それだけだ。何しろ私に興味を抱いた男性なんて片手で数えられるくらいしかいなかったからな。

 だからこそ、こんなに素敵な人と結ばれたこの幸せは掛け替えのないものだ。

 

「俺、キス以上のことすると思います」

「いいぞ♡」

「妹さんたちに連絡してから、シャワー浴びに行きましょう」

「分かった♡」

 

 こうして私たちは初夜を迎え、身も心もひとつになった。

 最初は痛かったが、彼から与えられている痛みであれば自然と嬉しみの方が勝っていた。まあまさか自分がそれをしながら朝を迎えることになるとは思ってもいなかったが……案外出来るものだな。

 これからも私の色んな初めてを彼にあげたいな―――。

 

 青木麗#完




青木麗編終わりです!

真面目なだけに愛も重くしてみました!

お粗末様でした☆

次はちひろさんと常務さんで終わりとなります!
最後まで楽しんでもらえるように頑張ります!
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