デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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年齢はアニメ設定の25歳として書きます。
事務所ではバカップル認定されてる設定です。


千川ちひろ編

 

 誰かのサポートをするのが好きだった

 

 そしてお礼を言われると

 

 もっとサポートしたくなる

 

 だから今の職は天職だと思う

 

 応援したい子が沢山いて

 

 みんな笑顔が輝いてて

 

 でも

 

 一番応援しているのは

 

 そんなアイドルの子たちを支える

 

 魔法使いさんだったり

 

 ―――――――――

 

「千川君、ちょっといいかな?」

「はい、どうしました、部長?」

 

 なんの変哲もない午後。

 私がいつものように仕事をしていると、今西部長に声を掛けられ、その手を止めました。

 

「実は知り合いから映画の試写会のチケットを貰ってね」

「はい……」

「私は興味がないから、彼と行ってきたらどうかな? 君たち明日は休みだったよね?」

「え、いいんですか?」

 

 部長の言う"彼"とは私の恋人。この事務所に所属しているプロデューサーの一人。

 彼からの告白で私たちの交際はスタートし、お互い仕事でもプライベートでもよく話をしていたので、一年が経った今でも関係は良好なんです。

 事務所の飲み会とかでもみんなから冷やかされてしまいますが、それはそれで嬉しかったりしています。

 だってみんなから私たちの交際を認めてもらえてるみたいな感じがしますから。

 

「いいよいいよ。私としては興味がないし、こうしたイベントホールは今じゃどこも煙草が吸えないから窮屈でね。だったら自分の部屋で観た方がよっぽど有意義だ」

「では、遠慮なく……ふふっ」

「相変わらず仲がいいね。いい休暇を」

「ありがとうございます♪」

 

 ―――――――――

 

 そして休暇当日。

 私の今日のコーディネートは白いニットのロング袖セーターに同じく白のニットロングスカート。スカートの方には全面にハニカム柄があしらわれていてお気に入りなんです。

 それから今日は気温が低いので上着に黒いダウンジャケットを羽織って、靴はグレーのスニーカーにしました。

 バッグはレザー調のミニフラップショルダーバッグにして、髪型はいつものではなくサイドを捻ってゆるふわにした1つのシニヨンヘアにしました。

 

 彼もとても褒めてくれて、とってもいい気分で試写会の会場に入ったのですが―――

 

「…………」

「…………」

 

 ―――試写会が終わってから、私たちは近くのカフェに場所を移してなんとも言えない空気の中にいました。

 

 上映された映画がくっそつまんなかったんです。あ、ごめんなさい、言葉が汚くなってしまいました。

 でも本当につまんなかったんですよ。

 

「……監督が悪いのか、プロデューサーが悪いのか……部門や会社は違うが同じプロデューサーとして恥ずかしいぞ……」

「あはは、ですよね……」

 

 私たちはお互い、映画などはなんの偏見もなく1つの作品として観れるのですが、今回ばかりはそうもいきませんでした。

 何せ、タイトルからして謎過ぎます。なんですか『沈黙の羊羹』って。

 しかも主演が毛穴・リーブスとニコラス・せいじって誰ですか? 沈黙のなんちゃってパロディならそんなくだらない芸人じゃなくてセ〇ールのモノマネ芸人さん使ってくださいよ。

 それもただ大人の二人が1つの羊羹を奪い合うのに、1時間半も永遠と自分たちの脳内で腹の探り合いしてるだけで、ラストは本編に全然関係ない子どもに食べられて終わりだなんて。

 

「今西部長には俺から素直な感想伝えておくよ」

「お願いします……私じゃなんて言えばいいか分かりませんから」

「俺だって分からないよ」

 

 せっかく1週間振りのデートだったのに……前の日から彼のマンションにお泊まりまでして楽しみしてたのに、こんな空気になるだなんて……。

 

「とにかく、腹ごしらえしてデート再開しよう。ちひろは服見に行きたいんだろ?」

「はい。でも、いいんですか?」

「俺もちひろに似合う服選びたいからな」

「もう……♡」

 

 彼はいつもそうです。いつも私を優先してくれます。

 男の人からすれば女の買い物なんて退屈でしかないのに、彼はそれすらも私と一緒という理由があるだけで楽しんでくれるんです。

 事務所には綺麗な子も可愛い子も沢山いるはずのに、変わらず私のことを見ててくれるのが、私は堪らなく嬉しい。

 忙しくない時は必ず1週間に一度はこうしてデートしてくれますし、本当に素敵な彼氏さんです。

 

 ―――――――――

 

 食事を済ませた私たちは私がご贔屓にしているコスプレグッズのお店にやってきました。

 ここは毎週新しいコスチュームが並ぶので、好きなんです。

 

「あ、これ蘭子のステージ衣装じゃないか」

「こちらにはトライアドプリムスの皆さんのステージ衣装がありますよ」

「どれも再現度高いな……なのに一万円切るのか」

「生地が違いますからね」

「まあ、俺たちとしては見慣れてるから何もグッと来ないけどな」

「あはは、確かに……」

 

 でもそれだけうちのアイドルたちの衣装が並んでいるのを見るのは嬉しいですね。

 私も彼程ではないにしても、サポートしている一人ですから♪

 

「あ、あの衣装ちひろに似合いそう!」

 

 そう言うと彼は私の手を優しく引いて、その棚まで連れていきました。

 そこの棚は不思議の国のアリスをモチーフにしたデザインの衣装が何種類も並んでいて、彼が私に差し出してきたのはとってもエッチなミニワンピース衣装でした。

 胸のところはある箇所が分かるようにハートマークがあしらわれ、胸元から下のお腹ら辺まで中央のラインを描くシースルー。背中はダイヤモンドカットされていて、スカートの両サイドにはクラブとスペードのスリットがあります。

 もう、本当にエッチなんですから。

 

「〇〇さん?」

「でもちひろはこういうのも好きだよね?」

「そ、それは〇〇さんが喜んでくれるからで……♡」

「結構ノリノリで着てるように見えるけど?」

「か、可愛い服は好きですから……♡」

「じゃあこれもいいってことだよね?」

「……エッチ♡」

「男だからな」

「もう♡」

 

 でもなんだかんだ言われても、彼が選んでくれる衣装を買ってしまうのが私です。だって本当に喜んでくれるから、なんだって着てあげたくなっちゃうんです。

 

 ―――――――――

 

 服を買ったら私は必ず彼の部屋でその服を着ます。

 当然、そうなる流れが当たり前なんですが、私も彼にだけ見せるコスプレ撮影会は好きです♪

 

「どうですか?♡」

「可愛い! この世に舞い降りた女神!」

「えへへ……♡」

 

 私をべた褒めしながら、自慢の一眼レフで連写する彼。

 アリス衣装に合わせて黒のガーターベルトに白と黒の縞々模様のニーハイを合わせましたが、気に入ってくれたみたいです♪

 因みにあのカメラはこの時のためだけに買ったらしいです。

 本棚には既に私のアルバムが沢山あって、私も私でその気になって色んなポーズをしちゃってますし、他人には見せられない写真も沢山あったりまします。まあ私も1、2冊頂いたんですけどね。

 でも前にプライベートでも仲良しの音無さんと私の家で女子会をした際に見られてしまって……『リア充爆発しろっ!』って真顔で言われちゃいました。怖かったなぁ。無表情で泣いてましたし……。

 

「ああ、なんて可愛いんだ……こんなに可愛い子が恋人だなんて、俺は幸せな男だ」

「私も幸せですよ♡ お相手が優しくて素敵な恋人さんですから♡」

「抱きしめたい」

「どうぞ♡」

 

 私が両手を広げると、彼はすぐに私のことを抱きしめてくれます。

 力強いけど、決して苦しくない、優しい抱きしめ方……私は彼に抱きしめられるの大好きです。

 

「ちひろ、いい匂いする……」

「〇〇さんもいい匂いしてますよ♡」

「年齢的には加齢臭がヤバくなる頃なんだがな」

「ん〜、でも〇〇さんって元々体臭が薄い方ですし、お仕事上身嗜みは清潔にしてますから気にしなくても大丈夫ですよ♡」

「ちひろはまたそうやって俺を甘やかす」

「事実ですから♡ あ、でも流石にアレをしている時は匂いが強いですね♡」

「ちひろはがっつき過ぎなんだよ……男としては嬉しい限りなんだけどさ」

「教え込んだ悪い魔法使いさんがいますからね〜♡」

 

 私がそう言って彼の鼻先を人差し指で軽くツンツンってすると、彼はわざとらしく口笛を吹いてとぼけます。口笛吹けないのに……可愛い♪

 

「んっ、ん〜、はぁ……もっと強く抱きしめてください♡」

「でもそれだと苦しくないか?」

「苦しいくらいされる方が私はいいんです♡ 私の全てを〇〇さんに委ねて、身も心も〇〇さんのモノになった気がして、好きなんです♡」

「可愛過ぎかよっ」

「くっ、んふぅ……はぁはぁ、〇〇、さぁんっ♡」

 

 もっと、もっとして……。私は貴方の女です。

 遠慮なんてしないで、もっともっと強く抱きしめてください。

 

「はぁはぁ……かぷっ♡」

「くぉっ、ちひろっ」

 

 彼の愛情のお返しに私が彼の首筋を甘噛みすると、少し両手の力が緩んじゃいました。だから私はもっととおねだりするように、彼の首筋を吸い上げます。

 すると彼はより一層両手に力を込めてくれるんです。

 

「ちゅ〜っ、んっは、はむっ、ずちゅるるるるっ♡」

「くっ、ギブっ!」

 

 そう言って彼はソファーに倒れ込み、私が彼を押し倒したような格好になりました。

 

「はぁはぁはぁはぁ……〇〇さん、愛してます♡」

「俺も、っ……愛してるよ、ちひろ」

「今夜はシンデレラじゃなくて、アリスの私に〇〇さんの素敵な魔法を掛けてくれるんですか?♡」

「魔法に掛かってるのは俺の方だよ。こんなに魅了されてるんだから」

「えへへ、恋の魔法を掛けちゃってますか?♡」

 

 私はそう言いながら彼の言葉を待たずに、何度も何度も彼の首筋や頬、耳というあらゆる場所にキスをします。

 私、自分で思っていたよりキス魔さんだったみたいです。彼はお姫様扱いしてくれてますが、本当の正体は悪魔さんなんです。

 

「ちひろは相変わらず可愛過ぎて困る」

「もっと困ってくれていいですよ〜♡ 私にはメリットしかありませんから〜♡ ん〜ちゅっ、ちゅっ♡」

「とんだ小悪魔アリスだな」

「私はちひろです〜♡ 〇〇さんの可愛い可愛い恋人さんで〜す♡」

「ちひろには敵わないよ……というか、今夜も泊まるってことでOK?」

「私は大丈夫ですよ♡ 会社終わりでそのままお泊まりさせてもらったので、制服もありますしお着替えも置かせて頂いてますし♡」

「じゃあ、大人のお茶会と洒落込みますか」

「きゃあ♡」

 

 彼にお姫様抱っこで抱えられ、私は喜びの悲鳴をあげます。

 だって今夜も大好きな彼と過ごせるんですから。

 

「寝坊しない程度のお茶会にしよう」

「え〜♡」

「えーじゃない。遅刻したら常務にノーモーションリバーブロー喰らう」

「頑張ってください♡ 介抱は私にお任せを♡」

「洒落にならん!」

 

 そう言いつつもちゃんと私のおねだりを聞いてくれる彼がいるから、私はついつい甘えちゃいました。

 でもなんとか寝坊はしませんでしたよ。私が全力で彼のサポートをしてますからっ―――。

 

 千川ちひろ#完




千川ちひろ編終わりです!

ちひろさんはコスプレが趣味なのでこんな感じになるかなと!

お粗末様でした☆

◇作者から読者の皆様へ◇

そしてこれにてこの作品は終わりとなります。
2月に入りましたら、各お話を属性毎に並び替え、属性毎の章を作る予定です。
ご了承ください。

この作品を読んでくれた方々
楽しみにしてくれていた方々
評価をしてくれた方々
お気に入り登録してくれた方々
誤字脱字を報告してくれた方々
ご感想を書いてくれた方々
多くの方々に感謝します。

こうして完結出来たのは読んでくれる皆様方のお陰であり、私からは感謝の言葉しかございません。

今後の活動は特に決まってませんが、相変わらず性懲りもなく何か甘いお話をあげるかもです^^;
今のところはリクエストを頂いているものを書いていく感じですね♪
気になる方は私の活動報告をご覧ください☆

もし機会があればまた私の作品を読んで頂けると幸いです(*^_^*)

重ね重ねになりますが、私の作品を読んで頂き本当に本当にありがとうございました!
後書きが長くなりましたが、それではまた別の作品でお会いしましょう!
Twitterもやってます(頻繁につぶやくとは言ってない)!

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