デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


緒方智絵里編

 

 私は何をやってもダメだった

 

 引っ込み思案で弱虫で泣き虫で

 

 心ではそんな自分を変えたくて

 

 でも何も変えられなくて

 

 だからアイドルのオーディションに

 

 勇気を振り絞って応募した

 

 そしてそれが

 

 私を大きく変えてくれました

 

 ―――――――――

 

「わぁ……プロデューサーさん、見てください! こんなに素敵なコテージなのに、中は全部オール電化なんですって!」

 

 私は今、私専属のプロデューサーになってくれた運命の人とオフを利用してお仕事の下見ってことで、東京のとある河原近くにあるキャンプ場に来てます。

 今度ここで《シンデレラドリーム》のみんなとキャンプして、その時の様子を撮影するんです。

 撮影した映像はDVDやBrディスクにして売り出すみたいで、プロデューサーさんはもうやる気に燃えています。

 

「うんうん、いい感じだな。撮影する時はもっと大きなコテージを借りる予定だ。部屋割はあみだくじかな」

「ふふふっ、どの子と一緒のお部屋になるか楽しみです♪」

 

 プロデューサーさんは本当に楽しそうにお仕事のお話をするので、聞いてる私まで楽しくなってきます。

 それに今日はそれだけじゃなくて……プロデューサーさんと二人きりでこんな素敵なコテージにお泊まり出来るから、私も柄にもなくいつもよりはしゃいじゃってます。

 

 え、どうしてプロデューサーさんと二人きりなのかって?

 それは、その……私がプロデューサーさんと……お、おおお、おつおつおつ、お付き合いし、してるからでしゅ……♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私がプロデューサーさんに恋をしたのは、多分ですけどプロデューサーさんが私に『俺が君をアイドルにしてみせる』って言って手を握ってくれた時から。

 どうして多分なのかと言うと、私自身がいつプロデューサーさんに恋をしていのかハッキリと覚えてないから……。

 だってアイドルのオーディションを諦めようと思ってた私をプロデューサーさんが拾ってくれて、それなのに弱音ばっかり吐いてる私を見捨てずに、ずっと側に置いてくれて、約束通り私をアイドルにしてくれた……だからずっとずっとプロデューサーさんのことを私は目で追ってました。

 ですからハッキリとは覚えてないんです。

 でもでも、プロデューサーさんに出会えてからの私はずっとずっと幸せで、満たされてました。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そして1か月前、事務所のみんなと大きなドームライブを成功させた勢いで、私は帰りの車内でプロデューサーさんに告白して、私の告白をプロデューサーさんが受け入れてくれたんです。

 だから今回は私たちが、えっと……こ、ここ、恋人になって、初めての……お泊まりデートなんでしゅ♡

 

「ちぃ? おーい、ちぃちゃーん?」

「ひゃ、ひゃいっ!」

「うわっ、ど、どうしたんだよ、そんな大声出して……」

「あ……ご、ごめんなさい……ちょっと考え事してて……」

「考え事?」

「あ……べ、別にネガティブなことじゃないので、大丈夫でしゅ!」

「まあ、それならいいけど、何かあったら相談してくれよ? 一人で抱え込むの禁止だからな?」

「はい……ちゃんとプロデューサーさんを頼りますから、安心してください♡」

 

 私がそう言葉を返すと、プロデューサーさんはやさしく笑って私の頭を何度も何度も撫でてくれました。

 

 ―――――――――

 

 コテージ内の探検を終えた私たちは、今度は必要な物と貴重品を持ってキャンプ場内をお散歩することにしました。

 アイドルが来てるとバレちゃったらデートどころじゃなくなっちゃうし、キャンプ場の方にもご迷惑をかけてしまうので、私は髪型を芳乃ちゃんみたいに後ろで結んで普段は掛けないメガネを掛けてます。

 あ、髪をまとめてるリボンは白いレースのやつで両端に四葉のクローバーの刺繍が入ってるんですよ♪

 プロデューサーさんが外回りをしてる時にふと見つけたみたいで、私に似合うだろうからってデビューのお祝いでプレゼントしてくれたんです♡

 だから今では私の大切な宝物のひとつなんですよ♡

 

「東京なのに自然が多いですね」

「だからこそキャンプ場なんだろ。それに東京だって都心から離れれば自然が豊かな場所は多い」

「言われてみればそうですよね……この前テレビ番組の収録で行った高尾山でしたっけ? そこも東京なのに東京じゃないみたいでした」

「あぁ、あれな。番組としてもいい画が撮れたし、結構視聴者さんからの反応も良かったって好評だったな」

「夜の撮影は怖かったですけど、ムササビさんを見れたのは嬉しかったです♪ それにお昼にはリスさんも見れましたもん♪」

「ちぃは大はしゃぎだったよな〜。そんなちぃが可愛過ぎて俺は天に召されるところだった……」

「……恥ずかしいですぅ」

 

 プロデューサーさんったら、すぐそうやって可愛いとか言ってぇ……嬉しいけど照れちゃいます♡

 

「そ、それに……あの時は私だけじゃなくて、卯月ちゃんと美穂ちゃんもはしゃいでましたよ?」

「ちぃには負けるさ。なんたって『はわぁ、リスさんかわいいー☆』って言ってて、『お前の方が数倍可愛いだろっ!?』って俺は心の中で叫んでた」

「うぅ……そ、そんなこと言われてもぉ……♡」

 

 恥ずかしい……でも他でもない大好きな人からそう言ってもらえるのは本当に嬉しい♡

 

「それよりほら、もう少しこっちに寄れよ。河原は足場が不安定なんだから」

「あ……えへへ♡」

 

 プロデューサーさんに肩を抱き寄せられられちゃいました……幸せ♡

 

「プロデューサーさん……プロデューサーさんの腕にぎゅってしてもいい、ですか?♡」

「断ると思う?」

「思いません♡」

「なら訊く必要ないんじゃない?」

「そうですよね……えへへ♡」

 

 むぎゅっ♡

 

 落ち着く……プロデューサーさんの体温や匂い……プロデューサーさんの全部が今は私だけのなんだって思うと、胸のドキドキが早くなって、好きって気持ちがいつも以上に募る。

 

「好きだよ、智絵里」

「……私も、大好きなです♡」

 

 こういう時ばかりプロデューサーさんは私の名前を囁く。

 いつもは私のこと"ちぃ"って呼ぶのに……こういう時だけは。

 ズルい……でもそんなプロデューサーさんが私は好きで、仕方ない。

 

「〇〇さん♡」

 

 だから私も負けないように今だけはプロデューサーさんの名前を呼ぶ。

 すると彼は一瞬だけ恥ずかしそうに目を逸らして……でもすぐに私と目を合わせて、微笑んでくれます。

 あぁ、好き……大好きです♡ あなたなしでは生きていけないくらいに♡

 

「〇〇さん、〇〇さん♡」

「なんだよ♪」

「呼んでるだけです♡」

「そっか♪」

 

 こうして私たちはただのお散歩なのにとても幸せな時間を過ごしました。

 

 ―――――――――

 

 コテージに戻ってきた私たちは今度はお夕飯の準備に取り掛かります。

 最初、プロデューサーさんはキャンプらしくコテージの前でバーベキューしようかって言ってくれたんですけど、私がバーベキューは撮影の時にするからってお断りして今回は普通にコテージの中のキッチンでお料理です。

 だってお外だと人目を常に気にしてないといけないから、プロデューサーさんと恋人として過ごせないから。せっかくデートとして来たからにはデートが終わるまで恋人らしく過ごしたいじゃないですか。

 

「プロデューサーさんのエプロン姿って新鮮ですね♡」

「そうか? まあ、こういう時でしかエプロンなんてしないから、そう思われるのも仕方ないか」

 

 買ってきた食材を並んで洗う……これだけでもドキドキしてるのに、プロデューサーさんのエプロン姿で余計に私は舞い上がってしまいます♡

 

「ちぃのエプロン姿は仕事で何度か見てるけど、見飽きないなぁ」

「もう……そんなに見つめないでください♡」

「無理」

「うぅ〜……♡」

「どうしても見ないでほしいなら、『あなた……めっ♡』って言って?」

「えぇ、なんですかそれ〜?」

 

 見つめられてるより、そっちの方が恥ずかしいんですけど……。

 

「えぇ〜、いいじゃんいいじゃん。新妻智絵里をこの目で見たーい!」

「新妻って……♡」

 

 ()()早いですよぉ♡ あと二年は待ってもらわないと、私はあなたと結婚出来ないんですからね?♡

 

「早くぅ、せっかくなんだしいいだろ〜?」

「も、もう……今回だけですからね? あ、あなた……?♡」

「……なんたる破壊力……我が生涯に一片の悔いなし!」

「お、大袈裟ですよぉ……♡」

 

 でもこんなに喜んでくれるなら、もう少し大胆なことしてもいいかな?♡

 

「あ、あなた……♡」

「どうしたんだい?」

「えっと、その……こ、今夜は朝まで……私を愛してください……なんて♡」

 

 ドサッ

 

 どさ?

 

「えぇ、ぷ、プロデューサーさん!?」

 

 プロデューサーさん倒れてる! どうしようどうしよう! きゅ、救急車呼ばなきゃ! あ、でもその前に人工呼吸!?

 

「…………ちぃ」

「っ……プロデューサーさん! 大丈夫ですか!? 死なないでくださいっ! 私なんでもしますから!」

「大丈夫大丈夫……ちょっと新妻智絵里の破壊力に俺のライフポイントが――ん、今なんでもって言った?」

「はい! 私、プロデューサーさんのためならなんでもします!」

「…………裸エプロンで俺の上に跨ってキスしてくれ」

「分かりました! 今準備しますから!」

 

 プロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのためプロデューサーさんのため

 

「ちょ、ストップ! スト〜〜〜ップ!」

「嫌です! 早くしないとプロデューサーさんが死んじゃいます!」

「冗談! 冗談だから!」

 

 え……冗談?

 

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

「あぁ、つい悪ノリしちまっただけだ。ごめん」

「良かった……♡」

「だからその……早くしまってくれ……」

「? 何をですか?」

「何ってその……薄ピンクで縁が黒のレースを……」

「あ……あぁ……」

 

 ガバッ

 

「ほ、本当にごめん」

「……いいです、別に」

「お、怒ってない?」

「お、怒りませんよ……最初からプロデューサーさんに見てもらおうと思って、プロデューサーさんが好きそうな下着を選んで着けて来たんですから……♡」

「ち、智絵里……」

「〇〇さん……♡」

 

 そのあとのことは私もあまり覚えてません。でもプロデューサーさんにたくさん愛されたのはちゃんと覚えてます♡

 ただ……コテージのキッチンとかをたくさん汚してしまったのは反省して、朝からプロデューサーさんとお掃除しました―――。

 

 緒方智絵里*完




緒方智絵里編終わりです!

智絵里ちゃんはデレれば大胆にもなれると思うので、こんな感じになりました!

お粗末様でした☆

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