デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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乙倉悠貴編

 

 私にはコンプレックスがある

 

 それは身長

 

 身長が高いから可愛くなれない

 

 モデルの時も可愛い服じゃない

 

 だから私は可愛くなりたかった

 

 そして背の高いアイドルを見て

 

 これだって思った

 

 そんなアイドルオーディションで

 

 私は素敵な魔法使いさんに出会い

 

 お姫様になれたんです

 

 ―――――――――

 

「はーい、悠貴ちゃーん。今度はこっちに目線頂戴」

「こうですか?」

「うんいいよー、かっこいい!」

「ありがとうございます♪」

 

 私は今、ゲストとしてファッション雑誌のモデルのお仕事をしてます。

 この雑誌は主に中高生の女の子をターゲットにしてるんだけど、ボーイッシュな服がメインみたい。

 今回、このお仕事の依頼が来たのは私が前にジュニアモデルとしてやってた時に、私の面倒を見てくれた女性編集者さんがこの雑誌の編集に携わってるからなんだけどね。

 

「はい、これでラストー」

「どうぞ♪」

 

 パシャッ

 

「オーケーでーす。とりあえず悠貴ちゃんは休憩してて」

「ありがとうございました♪」

 

 カメラマンさんに促されて私が撮影エリア外に設置された休憩所に行くと、

 

「お疲れ様、悠貴ちゃん」

「あ、どうもっ」

 

 前にお世話になってた編集者さんの姿があって、その隣には私専属のプロデューサーさんが立ってました。

 

「何か飲むか?」

「水くださいっ」

「おう」

 

 プロデューサーさんから水を貰って、私は編集者さんに一礼して椅子に座る。

 すると編集者さんがジッと私のことを見てきた。

 

「あの……何か私の顔に付いてますか?」

「え、あぁごめんなさいね。ただ、今の悠貴ちゃんとあの頃の悠貴ちゃんを比べて、今の方が輝いてるなって思ったのよ」

「そうなんですか?」

「えぇ、だって笑顔が違うもの。それにボーイッシュな服を着てても無理に可愛く見せようとしないし」

「あはは……あの頃は、すみませんでした……」

「うふふ、別に文句を言ってる訳じゃないのよ? 成長したなって感慨深く思っていたの」

「そうですか……」

 

 なんか近所に住む優しいお姉さんとお話ししてるみたい……。

 

「アイドルのお仕事は色んなお仕事があるでしょうけど、これからも頑張ってね? 私これでも悠貴ちゃんのファンなのよ?」

「えぇ、そうなんですか!?」

「あら、そんなに驚かれるなんて心外だわ。悠貴ちゃんのCDはどれも初回限定盤で揃えて、通常盤だって買い揃えてあるほどなのよ?」

「あ、ありがとうございます……」

「握手券とかサイン券が手に入るのは嬉しいんだけど、仕事の都合で一度も行けたことないのよねぇ」

「な、なんなら今書きましょうか?」

「あら、いいの?」

 

 編集者さんはそう言うと、すかさず私のプロデューサーさんの方にも「いいかしら?」と訊ねる。

 対してプロデューサーさんは「ファンサービスも大切ですから」って笑顔で許可を出してくれたので、編集者さんは嬉しそうにサイン色紙とペンをカバンから取り出しました。最初からしてもらうつもりだったみたい……あはは。

 

 ―――――――――

 

 それからお仕事も無事に終わった私は、プロデューサーさんが運転する車で事務所へ戻ってました。

 

「お疲れ様、悠貴。ごめんな、あの仕事受けちまって」

「え、全然大丈夫ですよっ。寧ろアイドルとして可愛い衣装ばっかりだったから、アイドルの私とは違う私をファンの人たちにも見せることが出来るじゃないですかっ。プロデューサーさんもそう思ってあのお仕事受けたんですよね?」

 

 プロデューサーさんがどれだけ私のことを考えてプロデュースしてくれてるのか、私はちゃんと分かってます。

 だから謝らないでほしかった。

 

「……中学生なのに気まで回してくれてありがとな」

「いいえっ。だって私のプロデューサーさんが私のプラスにならないお仕事なんて引き受けませんからっ」

「悠貴……」

 

 それに―――

 

「プロデューサーさんは私のことをうんとお姫様扱いしてくれますからねっ♡」

 

 ―――私はプロデューサーさんのお姫様だから♡

 

 私はアイドルでまだ中学生なのに、15歳も離れてるプロデューサーさんと彼氏彼女の関係になってます。

 デビューしてすぐの頃、急なオフでプロデューサーさんと一緒に観た映画みたいに。

 自分でも本当にあの映画みたいに恋をするなんて想像もしてなかった。

 でもあの時一緒にあの映画を観たから、私は恋がどういうものか分かって、自分がプロデューサーさんに恋をしてるのも分かったの。

 

 私は周りの女の子たちより背が高くて、可愛い女の子に憧れてアイドルを目指した。

 その憧れてたアイドルにしてくれたのがプロデューサーさんで、これだけ有名になったのもプロデューサーさんがいて、いつも私を支えてくれたから。

 だから私はアイドルなのにプロデューサーさんに恋をして、告白して、今の関係になって、隠すのは大変だけど毎日がとっても幸せです♡

 

「……本当に悠貴は付き合ってから更に可愛くなったな」

「プロデューサーさん知らないんですか? 女の子は恋をすると可愛くなるんですよ?」

「身にしみてるよ……本当に末恐ろしい」

「女の子に向かって恐ろしいって酷くないですか〜?」

 

 プロデューサーさんのために私は毎日毎日可愛くなる努力してるのに!

 

「褒め言葉だよ褒め言葉。今以上に可愛くなられると俺が辛いんだよ」

「どうしてですか?」

 

 可愛くなったらダメなの?

 プロデューサーさんは可愛い女の子は嫌いなの?

 

「そうだなぁ……プロデューサーとして失格と言われることになってもいいから、可愛い悠貴をこのまま俺だけの悠貴にしたくなるな」

「? 私はずっとプロデューサーさんだけの私だよ?♡」

「あはは、悠貴にはまだちょっと早い話だったのかもな」

「もぉ、なんですか、それ〜?♡」

 

 ―――――――――

 

 そんな会話をしながら事務所に戻った私たち。

 プロデューサーさんは上の人へ今回の報告に向かって、私はプロデューサーさんが戻るまで休憩室で待つことにしました。

 

「おぉ、悠貴ちゃんじゃん! O・TU・KA・RE☆」

「お疲れ様です、悠貴ちゃん」

 

 休憩室には同じアイドル仲間の瑛梨華さんと肇さんがいました。

 二人共私より歳上なのに気さくにお話ししてくれます。

 そして実はプロデューサーさんに告白する際にも、このお二人にはご相談に乗ってもらったりました。

 

「お疲れ様ですっ。お二人はレッスンでしたよね? 今日はどんな感じでした?」

「ん〜、相変わらずかな〜? 鬼トレーナーの鬼コース!」

「とても大変でしたが、終わったあとの達成感はなんとも言えません」

 

 私が言うのも変だけど、二人共とてもいい顔してる。

 二人もライブがあったりテレビのお仕事があったりしてるのに、全然疲れた感じを見せないから流石だなぁって思っちゃう。

 

「悠貴ちゃんの方はどうだったの〜? 聞いたよ〜? あの女の編集者さんがやってる雑誌のモデルやってきたんでしょ〜?」

「え、瑛梨華さん、あまり立ち入ったことは聞かないほうが……」

「? 別に普通でしたよ? 私もその人とは前にお仕事してましたし、私のファンでもあったみたいで、サインもしてきましたっ♪」

「あ、そうなんだぁ。なら心配することなかったんだね」

「さっきから何の話をしてるんですか?」

 

 さっきから噛み合ってるようで噛み合ってない。

 すると瑛梨華さんが―――

 

「だってさ〜、その人、悠貴ちゃんのプロデューサーちゃんの元カノらしいじゃん?」

 

 ―――そんなことを言ってきました。

 

「え……そうだったんですか!?」

「あ、やっぱ知らなかったんだぁ。でもアタシのプロデューサーちゃん情報だよ?」

「私のプロデューサーさんも、その……そう仰っていました」

 

 そうだったんだ……知らなかった。

 でもプロデューサーさんも編集者さんも普通に会話してたし、妙な空気もなかった。

 

「まあどっちも大人だからねぇ。公私混同はしないのが普通なんだよね、多分」

「悲惨な別れ方でなければ互いに嫌悪感も抱かないのかもしれません。恋愛とは本当にそれぞれですね」

「…………そうですね……」

 

 それからも二人と一緒に他愛もないおしゃべりをして過ごした私ですが、プロデューサーさんと編集者さんが元恋人同士だったというのが私の頭から離れませんでした。

 

 ―――――――――

 

「それじゃ、また明日な。いつもの時間に学校へ迎えに行くから」

「………………」

 

 プロデューサーさんに家まで送ってもらった私。

 だけど私はまだあの言葉が消化出来ずにいて、プロデューサーさんの声も受け流してました。

 

「おい、一体どうしたんだ? ずっと心ここにあらずの状態みたいだけど?」

「…………ごめんなさい」

 

 心配そうに私の顔を覗き込むプロデューサーさん。

 その優しさは素直に嬉しい……でも編集者さんにも恋人だった頃はこんな風にしてたのかなって思うと、複雑な気持ちになる。

 どうしてなんだろう……どっちも私の恩人なのに、今は私だけのプロデューサーさんなのに……。

 

「……もしかして、聞いたのか? あいつと俺が前付き合ってたの?」

「…………ごめんなさい」

「いや別に謝ることはないけどな。悠貴が何を気にしてるのか俺には分からないけど、あいつとは本当にもう終わってるし、今の俺は悠貴と付き合ってるんだぞ?」

「はい、それは分かってます」

 

 分かってる……でも、心のモヤモヤが……晴れないのはどうしてなの?

 

「……嫉妬してくれてる?」

「え?」

「いや……俺の自意識過剰かもしれないけどさ、今の悠貴はなんか……あいつに嫉妬してるのかなって思って」

 

 嫉妬……私が?

 してないって否定したいけど、何故かそう返せなかった。

 

 そうだ。私は嫉妬してたんだ。

 プロデューサーさんの全部が私のだったのに、それを前とはいえ……出会う前とはいえ盗られたみたいに感じてたんだ。

 

「あぁ、もう可愛いな悠貴は!」

 

 するとプロデューサーさんが突然私を抱きしめてくれました。

 車の中とはいえ、普段はこんなことしないのに。

 

「プロデューサーさん?」

「ありがとうな。こんな俺をこんなに好きになってくれて」

「そんな……こんなだなんて思ったことありませんよ」

「俺は確かに悠貴より何年も生きてるから、何度か付き合った経験がある。だけど付き合ってきた数だけ失敗してるんだよ、俺は」

「………………」

「だからこんな俺を好きになってくれてありがとう、悠貴。大好きだ」

「私だってプロデューサーさんが大好きですよっ♡」

 

 あ、いいこと思いついたっ!

 

「なら私がプロデューサーさんとお付き合いする最後の女の子になりますねっ!♡」

「え?」

「それで、プロデューサーさんが私の人生で付き合う最初で最後の男の人になってくださいっ♡」

「…………」

「ダメ、ですか?」

「ダメなもんか」

 

 プロデューサーさん、もっと強く抱きしめてくれた♡

 

「あと5年……待っててくださいね♡」

「何年でも待つ……というか、その前に悠貴を必ずトップアイドルにしてみせる!」

「じゃあ私がトップアイドルになったら結婚してください♡」

「その時はこちらからお願いするよ」

「頑張りま〜すっ♡」

 

 そして私は車の中なのにプロデューサーさんと約束するかのようにキスをしました♡―――

 

 乙倉悠貴*完




乙倉悠貴編終わりです!

こんな感じのもたまにはいいかと思ってこうしました!

やっとあ行が終わった……次からか行になります!

お粗末様でした☆
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