デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


工藤忍編

 

 夢があった

 

 アイドルになるっていう夢が

 

 でも周りには無理だと言われ

 

 何も言い返せないアタシは

 

 そこから逃げるように

 

 上京していた

 

 いつか見返してやりたい

 

 そして輝きたい

 

 そんなアタシの夢を

 

 誰よりも信じてくれた人がいる

 

 ―――――――――

 

 ラ〜ラララ〜♪

 

『テレビの前の皆様、こんにちは。黒沢徹子で御座います。今週もやって参りました『徹子ルーム』、今回のゲストは老若男女に大人気のアイドルでいらっしゃいます、工藤忍さんにお越し頂いております』

『どうも、こんにちは。徹子さん始めまして、今日はよろしくお願いますっ』

『はい、こちらこそよろしくお願いしますね。では早速で大変恐縮ですが、今回のテーマに入らせて頂きます』

 

 ―――

 

「うわぁ、アタシ緊張してるなぁ」

「そうかなぁ? 結構普通じゃない?」

「笑顔も自然ですし、問題ないかと」

「あずき的には衣装が和服じゃないのが残念かな〜」

 

 今日は"フリルドスクエア"みんな揃っての貴重なオフ。お仕事以外でも仲良しのアタシたちは、寮の談話室でアタシが一人で出演したテレビ番組を観てます。最初はどこか遊びに行こうともしてたんですが、柚ちゃんが『そういえば、今日ってシノが出た徹ルムの放送日じゃん』って言い出したのがキッカケで今に至ります。

 もうこういうのも慣れてきちゃったので、特段恥ずかしいとかはないんですが―――

 

『こちらで事前に忍さんの周りの方々に色々とご質問させて頂いたんですが、忍さんは本当にご苦労されたようで、皆様口々に忍さんは努力家だと仰っていました』

『そうなんですか? アタシはその……なんと言うか、本当にアイドルになりたくて必死にやってきただけです』

『あらあら、ご謙遜を。ここにその時の資料がありますが、忍さんをご担当している専属のプロデューサーさんなんかは「忍は自慢のアイドルです。彼女のひたむきな姿勢が周りにもいい影響を与えています」と書かれいます。こんなにも力強いことをプロデューサーさんに言ってもらえるというのは、それだけ忍さんが努力を続けて来られたからだとわたくしは思いますよ?』

『あ、ありがとうございます……』

 

 ―――正直に言ってこの時のアタシは今思い出すだけでも顔が熱くなるくらい恥ずかしかった。

 

 アタシの専属であるプロデューサーさんは周りがどれだけ無理だと言ってもアタシを信じてくれた掛け替えのない人。アタシはこの人に出会えたから、今のアタシがあるんだと確信してるし、この人のためにももっと頑張らなきゃって思ってる。

 

「いやぁ、テレビだっていうのにお二人さんの相思相愛さが出ちゃってますなぁ」

「や、やめてよ、柚……」

「そうですよ、柚ちゃん。忍ちゃんにとって〇〇プロデューサーさんは大切なお人なんですから」

「そうそう。もうそんなこと今更言わなくても、二人はラブラブだからね〜♪」

「や、やめてったらっ!」

 

 もう、みんなして勝手なこと言って……だから観られたくなかったんだよ。

 

 アタシとプロデューサーさんはみんなが言うように、えっと……お付き合いしちゃってます。

 アイドルとプロデューサーなんてご法度かもですが、プロデューサーさんはアタシを信じ続けてくれて、アタシの夢を叶えてくれた人なんです。何も分からなかったアタシにイチからちゃんと指導してくれて、時には肩の力を抜くことも教えてくれた。

 そんな人に恋心を抱くのは間違っているでしょうか? 中には間違ってると言われる方もいるでしょう。でもアタシは真剣にアイドルをしてるし、プロデューサーさんのことも真剣に想ってます。

 

「あはは、にしてもシノさ〜、今日オフなのにプロデューサーがいなくて寂しくない?」

「べ、別に……夕方になったらディナーデートの約束してるもん」

 

 確かに柚ちゃんが言うように寂しくないって言えば嘘になります。でもプロデューサーさんは今もアタシのためにお仕事をしてくれてますし、ちゃんと昨日の内にデートの約束もしてくれました。だからアタシは大丈夫!

 

「まあ、相変わらず仲良しさんですね♪」

「キスシーンを撮られないようにね〜☆」

「お外でキスなんてしないよっ!」

「えぇ〜、でもさ〜、プロデューサーから迫られたらしちゃうでしょ〜?」

「そ、そりゃあ……まあ♡」

 

『(うわっ、めっちゃデレデレ顔っ!)』

(忍さん、かわいい♪)

 

「というか、アタシのプロデューサーさんはそんなことしないもん! ちゃんと弁えてるから!」

「出た〜、シノの必殺"アタシ、プロデューサーさんのことは誰よりも知ってます"セリフ!」

「必殺技みたいに言うな! それに長過ぎっ!」

 

『あはははははっ♪』

 

 もう、みんなしてからかって……酷いよ。

 でもそう思いながらも、こういう時間も心地いいと思ってる自分もいるっていう……。

 アタシがプロデューサーさんと今のようになれたのもみんなのお陰でもあるから、からかわれるのは仕方ないかなぁ。

 

 ―――――――――

 

 あのあともアタシはみんなにからかわれながらまったりとした時間を過ごし、アタシは待ち合わせの時間になったからみんなと一旦別れました。

 

 上京してきた頃と今を比べると本当に何もかも変わった。

 アイドルになれたことでアタシはアイドル寮に住むことが出来て、お友達も尊敬出来る人もたくさん出来た。

 喧嘩別れした両親とも今は普通に連絡を取れるようにもなったし、向こうの友達たちからも応援メッセージとか送られてくる。

 その度にアタシは頑張ろうって思うし、更にプロデューサーさんへの感謝の念が募る。

 

「忍ーっ!」

 

 アタシがアイドル寮の玄関を出るとプロデューサーさんの声がした。

 プロデューサーさんはもう既に到着してて、アイドル寮の前に停めた車から降りてアタシに手を振ってる。

 それを見ると、アタシの胸は壊れたかのように鼓動が早まり、自然と笑顔がこぼれてしまう。

 

「プロデューサーさんっ♡」

 

 声も自然と弾んでしまう。それだけアタシはプロデューサーさんのことが好きなんだ。

 アタシはまるで磁石みたいにプロデューサーさんが広げる両手の中にすっぽりと身を埋める。するとプロデューサーさんはそんなアタシを優しく包み込んで、頭を優しくナデナデしてくれる。アタシはそれが凄く好きで、幸せで……これだけでもうこれまでも寂しさとか恥ずかしさとか飛んでいった。

 

「外なのにいいのか?」

「いいんです……プロデューサーさんだっていいからアタシを抱きしめてくれたんでしょう?♡」

「まあな。というか、可愛過ぎる忍が悪い」

「なんか理不尽じゃありませんか、それ?」

「毎日毎日可愛い彼女が更に可愛くニコニコしてるんだから、これくらいの理不尽は受け入れろ」

「なんて言い草なんですか♡」

 

 そんなこと言っても、自分で笑顔なのが分かる。

 いつまででもこうしていたいけど、デートもしたい。だからアタシは自分からプロデューサーさんから離れて、車に乗り込んだ。

 

「何かリクエストはあるか?」

「ん〜……パスタ食べたいです、パスタ!」

「ん、了解。んじゃ出発〜」

「は〜い♪」

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんの運転でアタシはパスタの美味しいお店に向かう。アタシたちのデートはいつも特にこれってのは決めてないで、気になったお店とかにふらっと立ち寄る感じのが多い。

 ディナーデートでもあるけど、ドライブデートみたいなとこもあるからアタシはこのデートがお気に入り♡

 

 それで車内での話題はアタシが柚ちゃんたちにからかわれた話題。

 

「楽しいオフを過ごしたようで何よりだなぁ」

「他人事だと思って〜。半分はプロデューサーさんのせいでからかわれたんですからね?」

「忍が俺のこと好き好きオーラを出してるのが悪いんじゃないか〜?」

「好き好きオーラなんて出してませんっ!」

 

 そりゃあ確かにプロデューサーさんのことは大好きだけど、オーラまでは出してないもん……多分。

 

「でもあの放送、もう既に結構な評判になっててなぁ。今度はフリルドスクエアで出演依頼が来てるんだ」

「え、本当ですか!?」

 

 みんなとのお仕事がまた増えるなら嬉しいなっ♪

 

「ホントホント。番組側にも忍のファンになったってお便りがいくつも届いてるみたいだ。やっぱり忍はみんなから愛される天才だな」

「そんな……プロデューサーさんがアタシをプロデュースしてくれてるからですよ。プロデューサーさんがいなかったらアタシなんて……」

 

 アイドルになんてなれなかったと思う。

 学校とバイトが忙しくて、養成所も通ってる余裕もなかったし、全部独学でやってた。なのに肝心なオーディション本番で倒れる始末。

 でもプロデューサーさんがアタシに手を差し伸べてくれた。そうじゃなかったら今のアタシはいないもん。

 

「ほら、俯くの禁止。結果が良ければ全てよしだ。今ある自分を楽しめ」

「……はいっ」

「俺は忍のそのひたむきなところに惚れ込んだんだ。この子なら弱音も吐かずに頑張ってくれるだろう。こういう子にこそチャンスが必要なんだって」

「………………」

「んで、信じた結果は最高だった。やっぱり俺の目に狂いはなかった」

「えへへっ♡」

 

 そんな風に言われるとくすぐったい♡

 でも嬉しくて嬉しくて笑顔が溢れちゃう♡

 

「でも本当に弱音吐かないから心配なんだよなぁ。一人でなんでも抱え込んじまうからな、忍は」

「い、今はちゃんとプロデューサーさんに相談してますよ」

「当然だ。忍の悩みは俺の悩みでもあるんだからな」

 

 そんなこと当然なんて言ってくれるの、プロデューサーさんくらいですよ。プロデューサーさんがそう言ってくれるから、アタシはここまでこれたんですからね♡

 

「プロデューサーさん」

「ん〜?」

「大好きです♡」

「俺も忍のことが大好きだ」

「アタシの方がいっぱい大好きなんですからね?♡」

「それはどうかなぁ? 俺は寝てる時以外はずっと忍のことを考えてるぞ?」

「それはお仕事ですからね〜。その点アタシは恋人としてプロデューサーさんのことばっかり考えてますから♡」

 

 こんなこと平然と言ってるからみんなにバレちゃうのかなぁ? でも本当のことなんだもん。とってもとっても大好きなんだもん。

 

「なら今どんなこと考えてるのか言ってみ?」

「えっとですね〜♡」

 

 それからアタシはずっとプロデューサーさんにアタシがどれだけプロデューサーさんのことを考えてるのか教えました♡

 でもそのせいで寮の門限が近くなっちゃって、結局その日のディナーデートは牛丼屋さんになっちゃいました……てへへ―――。

 

 工藤忍*完




工藤忍編終わりです!

忍ちゃんってバカップルが似合うと思うんです(真顔)。

お粗末様でした☆

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