デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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栗原ネネ編

 

 アイドルは凄い

 

 キラキラしてて

 

 人々を笑顔にして

 

 周りを明るく照らす

 

 太陽みたい

 

 だから私も

 

 そんなアイドルになりたくて

 

 オーディションに応募した

 

 そこで私は本当の太陽と

 

 出会うことが出来ました

 

 ―――――――――

 

「皆さんこんにちは〜! アイドルの栗原ネネですっ。精一杯歌うので、楽しんで行ってくださいね♪」

 

 私は今、群馬県内にあるとある総合病院の病棟内の広場で小さなライブイベントをしています。

 ライブイベントといっても、ここは病院内なのでいつものように大きく音楽を響かせたりするのではなく、ピアニストさんの演奏と私の歌声だけ(マイクもなし)の静かなライブです。

 この病棟には18歳以下の方々が入院していますが、他の病棟からもたくさんの方々が私の歌を聞きに来てくれてます。

 だから、ダンスは出来ないにしても皆さんが楽しめるように、私は精一杯歌いおうと気持ちを込めてあたりました。

 

 ―――――――――

 

「今回はどうもありがとうございました。患者さんたちもとても喜んでいました」

「いえ、こちらこそありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

 ライブイベントは無事に終わり、医院長さんたちとのご挨拶を済ませた私と私専属のプロデューサーさん。

 私が歌い終えた時、大きな拍手と笑顔を頂き、アイドルになれて本当に良かったと改めて実感しました。

 

 ―――

 

「さて、無事にライブも終了。俺は事務所へ報告の電話をしてくるから、ちょっと車内で待っててくれ」

「はい、分かりました」

 

 いつもならお仕事が終わると事務所に戻るのですが、今回はお仕事ではなくボランティア活動なので事務所にはイベントが終わったという報告だけをすればいいみたいです。

 それで今日はこのあとレッスンもないので、プロデューサーさんには私のお家に来てもらうんです。

 

 どうしてかというと、今家に私の妹……しーちゃんが一時退院で帰って来てるからで、しーちゃんがプロデューサーさんに会ってみたいと私にお願いしたからなんです。

 プロデューサーさんは最初は『事務所のアイドルじゃなくて俺なのか?』って凄く驚いてたんですが、しーちゃんとしては私を本当のアイドルにしてくれた人に会いたいんだってことを話したら頷いてくれました。

 

 ガチャ

 

「お待たせ。んじゃ、行くか。シートベルトしろよ〜?」

「あ、は〜いっ」

 

 ―――――――――

 

「わぁ〜! この人がおねーちゃんのプロデューサーさん!?」

「そうだよ、しーちゃん」

「どうも、始めまして。お姉さんのプロデューサーをさせて頂いてます、〇〇です」

「はわはぁぁぁっ☆」

 

 家に着いて早々、玄関の前で待ち構えていたしーちゃんは私がアイドルになった時と同じくらい目を輝かせてます。寧ろ私の時よりはしゃいでるかな?

 

 ―――

 

「わざわざご足労頂きまして、ありがとうございます。本当に〇〇さんには娘たちをよくしてもらって。主人もこれからもネネのことをよろしくと伝えておくように言われました」

「はい、こちらこそこれからも精一杯、娘さんをプロデュースしていきます」

 

 客室に通されたプロデューサーさんはお母さんとお話中。本当は今日お父さんもいるはずだったんだけど、急なお仕事でお母さんに伝言だけ頼んで行ったみたい。

 でもそれより私は気になることがある。

 

「しーちゃん、プロデューサーさんに迷惑でしょ?」

「えぇ〜」

 

 しーちゃんがずっとプロデューサーさんから離れないからです。今もプロデューサーさんの背中にギューッてくっついてて、私の注意も聞こうともしない。

 

「別にこれくらいいいさ。それよりえっと……」

「やった☆ しーのことはしーちゃんって呼んで!」

 

 もう、プロデューサーさんったら甘やかして……お母さんも注意しないで笑ってるだけだし、私恥ずかしいよぉ。

 

「んじゃ、しーちゃんな。それでだ、しーちゃん」

「なぁに?」

「しーちゃんは俺に何か用があって会いたかったのかな?」

「うん! おねーちゃんがね、アイドルになってから〇〇さんのお話ばっかりするから、しーも会ってみたかったの!」

「ちょ、しーちゃん!?」

 

 私、そんなにプロデューサーさんのことお話した覚えないんだけど!?

 確かにプロデューサーさんと今日は何をしたとか、レッスンでこんなことしたとか、褒めてもらったとか、移動中にこんなこと話したとかは話してるけど、プロデューサーさんのお話ばっかりって訳じゃないよ!?

 

「ネネは〇〇さんのことを本当に慕っていらして……家に帰ってくると凄く嬉しそうに〇〇さんとの出来事をお話してくれます」

「お、お母さんまで……」

 

 そ、そんなに私って家ではプロデューサーさんのことばっかり話してるのかな。そんなことないと思うんだけど……。

 

「そうなんですか? それで、しーちゃん。実際に会ってみたご感想は?」

「えっとねー、おねーちゃんの言う通りだなぁって思った! だってすっごく優しいもん!」

「そうか、それは嬉しいな」

「うん! だからこれからもしーの大好きなおねーちゃんをよろしくお願いしますっ!」

「あぁ、もちろんさ。お姉ちゃんをこれからもっともっと有名なアイドルにしてみせるから」

「うん!」

 

 恥ずかしい……そういうことは私の目の前でじゃなくて、私のいないところでやってほしい。

 でもどんなことにもちゃんとプロデューサーさんは答えて、それだけ真剣に私をプロデュースしてくれてるんだって思えました。

 

 ―――――――――

 

 それから暫くしーちゃんはプロデューサーさんを捕まえてずっとお喋りしてました。でもはしゃぎ過ぎたのか、少し疲れてしまったようで今はお薬を飲んで自室で休んでます。

 だからプロデューサーさんはもうお暇しようってなったので、私は適当に事務所に忘れ物をしたなんてお母さんに言ってプロデューサーさんと一緒に家を出ました。

 だって私、ずっとプロデューサーさんとお喋り出来なかったから、寂しかったんです。

 

 私はプロデューサーさんと密かにお付き合いしてて、事務所はもちろんのこと家族にも秘密にしてます。でもしーちゃんにだけはお話してたから、しーちゃんとしてはどうしてもプロデューサーさんがどんな人なのか知りたかったみたい。

 それでさっきベッドまで運んだ時に、

 

『あの人、とってもいい人だったね。おねーちゃん、あの人をしーのおにーちゃんにしてね!』

 

 なんてお願いされちゃった。

 

 アイドルとプロデューサーがお付き合いするのは普通ならご法度なのかもしれませんが、私の夢を叶えてくれて今も私のために頑張ってくれてる人を好きになるのって当然のことだと思うんです。

 アイドルが夜空に煌めく星なら星を輝かせてくれる太陽がプロデューサーなんだと思います。星が輝くために太陽を必要としているように、私もプロデューサーさんを求めたんです。だからこの恋が間違ってるなんて思いません!

 

「まさかネネがそれほどにまで俺のことが好きだなんてなぁ。聞かされてるこっちが照れ臭かったよ」

「忘れてください……」

「忘れない……というか忘れたくないな。彼女がそれだけ自分のことを話してくれてたんだから」

「そんな言い方……ズルいです♡」

 

 そんな風に言われたら"忘れてください"なんてもう言えないじゃないですか。

 

「それで、これからどうする? とりあえずドライブしてまた家まで送ろうか?」

「そう、ですね……あんまり遅いと怪しまれちゃうかもですし。……あ、でも丁度次のお仕事のお話もしてきたって言えば怪しまれないかな?」

「どんだけ俺と一緒にいたいんだよ……」

「そんなのずっとに決まってます。分からないんですか?」

「っ…………そ、そうか」

(見事なカウンターを食らったでござる……というか、ネネがてぇてぇ)

 

 ―――――――――

 

 結局、私はお母さんに『次のお仕事の打ち合わせもして帰るね』って連絡して、もう少しプロデューサーさんといることにした。でもしーちゃんが帰ってきてるから、夕飯までには帰らなきゃ。せっかくしーちゃんが帰ってきてるなら、家族揃って過ごしたいもん。

 いつかそこにプロデューサーさんも加わって過ごせたらいいなぁ……なんて♡

 

「そういえばネネって温泉好き?」

「え、好きか嫌いかで言えば好きですけど、急にどうしたんですか?」

「いや、ふと思い出したんだが、東京の事務所にいるプロデューサーから今度こっちで旅番組の企画やろうって言われててな」

「草津温泉ならではってことですね♪」

「そういうこと。んで、その時は東京から安部菜々ちゃんと森久保乃々を参加させて……」

「……Na・No・Neでのお仕事になる訳ですね!」

「そういうこと。どう? やりたい?」

「はい、是非!」

「んじゃそういうことで話しとくわ」

 

 菜々さんや乃々ちゃんに会えるの今から楽しみだなぁ。あとで二人に頑張ろうねってメールしとこ♪

 

「それじゃ早速下見にでも行くか」

「え、いいんですか?」

「ふらっと立ち寄るだけな。じゃないとネネの帰りが遅くなるだろ」

「お心遣いありがとうございます、プロデューサーさん♡」

「いえいえ。あ、一応マスクしてね、顔バレすると何かと面倒だから」

「はーい♡」

 

 ―――――――――

 

 私の家がある街から草津温泉街は車ですぐに行けるので、すぐに到着しました。下見というのは建前で、実際のところ私たちにとってはデートみたいな感じです♡

 実はもう既に何度か草津温泉街にはお忍びデートで何度も来てるんですよ♡

 草津温泉街ってその名の通り温泉がメインなんですが、温泉以外にも食べ歩きスポットとしても有名なのでこういうデートにはもってこいなんです。

 

「〇〇さん、揚げ饅頭食べましょ、揚げ饅頭!♡」

「ネネは好きだなぁ」

「衣サクサクで美味しいじゃないですか〜」

「それは否定しない。んじゃ買ってくか」

 

 こういうところで好きな人と一緒に美味しい物を食べるのって特別に美味しく感じます。

 家族と一緒にってのも美味しく感じますが、それと比べられないくらい今この時も美味しく感じます♡

 

「ネネと付き合って、食べ歩きが増えた気がするなぁ」

「〇〇さんはこれまで雑な食生活を送り過ぎなんですよぉ。だからこれからも私と色んな美味しい物を一緒に食べましょうね♡」

「おう。んで食べ過ぎ注意な」

「分かってます♪ それにちゃんと一緒にジョギングしますから♡」

「これからもよろしくな」

「はいっ♡」

 

 こうして私はプロデューサーさんとぷち食べ歩きデートを過ごして、家に帰りました。

 でもその日の夕飯はちょっと豪勢だったので、夜に少しだけジョギングする私がいたのでした……てへへ―――。

 

 栗原ネネ*完




栗原ネネ編終わりです!

ネネちゃんが彼女だとこんな風にのんびりとラブラブライフが待ってると思うですよねぇ。

お粗末様でした☆

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