デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


輿水幸子編

 

 カワイイとは罪である

 

 そう、ボクは生まれながらにして

 

 カワイイという十字架を背負って

 

 この世に誕生しました

 

 ですがボクは悲観してません

 

 世の中にボクのカワイイを

 

 宇宙1のカワイイをお届けする

 

 これが使命ですからね!

 

 そんなボクを世に知らしめるのに

 

 必要不可欠な方がいるんです

 

 ―――――――――

 

「プロデューサーさん、早くしてください! カワイイカワイイボクがわざわざお迎えに来てあげたんですよっ!?」

「そんなの頼んでないし、約束した覚えもござんせん」

「約束なんてしなくてもボクが来た=何を差し置いてもボクの相手をするのがアナタの使命ですっ!」

「俺徹夜だったんだよ〜。さっき帰ってきて、やっとマイベッドに転がったとこなんだよ〜。勘弁してくれよ〜」

 

 ぐぬぬ、ああ言えばこう言って……本当にボクの恋人だという自覚が足りませんね。この宇宙1カワイイ彼女がわざわざ貴重なオフをアナタのために使ってあげようと言っているのに!

 

 さっきからこのボクを差し置いてベッドで寝ようとしているのが、ボクの専属プロデューサーにして宇宙1恵まれている彼氏さんです。

 今日はお互いに3ヶ月振りとなる揃ってのオフ。ボクがカワイイからモデルにライブにキャンペーンガールにと引っ張りだこだった中で、やっとの二人同時オフなんです。

 なのにプロデューサーさんったらボクを差し置いて寝ようとしてるんですよ? 絶対におかしいですよね? 宇宙1恵まれているという自覚がなさ過ぎですよね?

 

 え? アイドルとプロデューサーが付き合ってていいのかって? いいに決まってるじゃないですか。だってこのボクを目の前にして求愛しない男性がこの世にいるはずないですし、カワイイボクがわざわざ見定めて付き合ってあげてるんですから何も問題ないです。正義です。

 どうして水がないと生物が生きていけないのかと同じで、プロデューサーさんはボクがいないと生きていけないんです。

 ただ、ボクはまだ結婚出来る年齢ではないし、付き合ってるのがバレるとプロデューサーさんの命が危険に晒されるので、このことは国家機密並の機密事項ですね。知っているのは信頼出来る友達の方々だけです。

 

「というかなんで幸子が俺の部屋にいるんだよ……」

「そんなのプロデューサーさんが帰ってきた時に一緒に入ったからです。このボクの気配に気づかないなんてどうかしてますよ?」

「もしもしポリスメン?」

「わーわー! 何してくれちゃってるんですか!?」

 

 このボクを警察に突き出すなんて最っ低ですね! これはもう『ボクが許すまで構わないといけないの刑』に処すしかありません!

 

「頼むよ〜、寝かせてくれよ〜。俺幸子のために死ぬ気で仕事してきたんだぜ〜?」

「っ……ま、まあそれは当然のことですよ。なんたって宇宙1カワイイ――」

「――ぐぉ〜っ」

 

 寝るの早っ!? というか本気で寝てますよ、この人!?

 

「………………むぅ」

 

 プロデューサーさんがボクのために頑張ってるのは知ってます。顔を見ればどれだけ頑張っているのかくらい分かりますからね。

 でもお仕事が多ければ多いほど、アナタとの時間が減ってしまって……アナタに置いていかれてしまいそうで……怖いんです。

 

 ま、まあ、この人がボクを置いていくなんて地球に宇宙人が侵略してくるくらいの確率なんですけどね!

 

 でも……でも、やっと二人の時間を長く過ごせると思ってたのに、こんなのってあんまりですよ。わざわざこのボクがこの日のために色々と準備してきてあげたのに!

 持ってきたキャリーバッグの中にはボクが昨夜寝る間も惜しんで作った料理とか、プロデューサーさんが色んなボクを愛でたいだろうとこの人好みの衣装を何着も入れてきてあげたのに!

 

「プロデューサーさんがその気なら、ボクにだって考えがありますっ」

 

 もぞもぞ……

 

「フフーン……プロデューサーさんが寝ちゃうなら、ボクが添い寝してあげます! いいご身分ですね! 宇宙1カワイイボクに生で! 直に! 添い寝してもらえてっ!」

「ぐぉ〜……ぐぉ〜……」

「フ、フンッ……せいぜい夢の中でもボクを愛でるといいです。ボクはボクで好き勝手させてもらいますからっ!」

 

 と言っても、さすがにこんなによく眠ってるプロデューサーさんを起こしてしまうのは気が引けますね。ボクはカワイイ上に優しいので! まさにカンペキなんでっ!!

 

「………………」

 

 むぎゅっ♡

 

「んっ……♡」

 

 プロデューサーさんの……大好きな人のニオイがする♡ 落ち着きます♡ こんなに間近で過ごせるなんて暫く出来ませんでしたし、こんなに抱き着くこともありませんでした。

 全く……ボクをこんなに惑わせて、罪作りな人ですね。起きたらボクが満足するまで構ってもらわないといけません。

 

「ぐぉ〜……ぐぉ〜……」

「……バカ、甲斐性なし、マヌケ♡」

「むにゃむにゃ……」

「大うつけ、あんぽんたん、幸せ者♡」

「ん〜」

「っ!?」

 

 はわわ、プロデューサーさんがボボボ、ボクを抱きしめて……!!!!!♡

 

 ギュ〜ッ♡

 

「んっ……ぁ……はうんっ♡」

 

 な、なんて絶妙で高度なハグをするんでしょうか……と言うか、本当に寝てるんですか? 実は起きてるなんてこと―――

 

「ぐぉ〜……」

 

 ―――ありませんね。このイビキですもん。

 

 プロデューサーさんのイビキを目の当たりにするまでは、イビキなんてうるさいだけだと思ってましたし、周りにもこんなに大きなイビキを掻く人もいなかったのでこの人のイビキはボクにとって衝撃的でした。

 でも不思議なことに、このイビキを聞いていると落ち着いてしまう自分がいるんです。ボクに変な癖を植え付けるなんて、本当に罪深いプロデューサーさんですね。

 

 でもそんなプロデューサーさんのことが―――

 

「大好きですよ♡」

 

 ―――――――――

 

 ―――パチッ

 

「…………あれ?」

 

 ボク、いつの間にか寝ちゃってました?

 時計を見るとお昼の12時過ぎ……ぐぬぬ、せっかく朝からプロデューサーさんのマンションのお部屋へアタックしにきたのに、ボクとしたことが不覚をとってしまったようですね。さすがはボクのプロデューサーさんと褒めてあげましょう。

 

「プロデューサーさん、もうお昼ですよ! いい加減に起きて―――」

 

 あるぇ? おーかしーぞー? ボクのプロデューサーさんがいないぞー? どこ行ったんでぇすー?

 

「―――よぉ、幸子〜。おはよ〜」

「プロデューサーさんっ♡」

 

 どこ行ってたんですか!? このボクを放っといて! しかもちゃっかり着替えも済ましてますし! 起きたんなら起こしてくださいよ!

 

「むぅ……」

「何むくれてんだよ?」

「起こしてくれなかった……」

「カワイイ寝顔だったから、起こすのが忍びなくてなぁ(棒)」

「っ……な、なら仕方ないですねっ!♡ プロデューサーさんはボクのこと大好き過ぎるから、起こすのなんてハーバード大を100回主席で卒業するより難易度が高過ぎですものね!♡」

 

 えへへ、早速プロデューサーさんからカワイイって言われてしまいました♡ 幸せ〜♡

 

「幸子も起きたなら、リビング行こうぜ。さすがに腹も減ったし」

「そうだろうと思ってちゃんとお料理を用意して来ました!♡ ボクの手料理が食べられるなんて幸せ者ですね!♡ いいんですよ、健気で出来のいい彼女を褒めても!?♡」

「うわー嬉しいなー、感動で泣いちゃうなー(棒)」

「フフーン、そうでしょうともそうでしょうとも♡」

 

 ―――――――――

 

 リビングに行き、健気なボクがお料理を温め直している間、プロデューサーさんはテレビをつけて適当にチャンネルを回しています。

 すると―――

 

『私だけの〜♪ あなたへstep up!♪』

 

 ―――枯れた大地もたちまち潤うボクの美声が聞こえてきました。

 

「あぁ、そういやこの前の収録、今日放送だったな」

 

 これはお昼の人気音楽番組。そんな番組からボクへオファーするのは当然なんですが、ボクのカワイイ姿を放送すると目にした人々がボクのあまりの可愛さに気を失ってしまいますから、なかなかオファーが来なかったんですよね。

 でも、満を持してボクを取り上げたんですから番組の人気もきっとうなぎのぼりでしょう!

 

 なのに―――

 

『幸子! 幸子! 幸子! 幸子! 幸子ーっ!』

 

 ―――ボクの出番より、プロデューサーさんの出番の方が長いってどういうことですか!?

 

「うわぁ、なんで俺こんなに映ってんだよ……」

「むしろボクより扱い上ですよね!? どうしてこのボクよりプロデューサーさんの方が目立ってるんですか!?」

「いやぁ……俺にはなんとも……」

 

『今人気絶好調のアイドル、輿水幸子ちゃんでしたが……その彼女をプロデュースしているプロデューサーさんも彼女に負けずキャラ濃いですね〜』

『あのしっとりとした曲で熱烈なオタ芸をスタジオの脇でしてるんでもんね……しかも動きがキレッキレ』

 

 司会者とかスタジオの出演者方までもがプロデューサーさんを褒めています。

 

「むぅ……むぅむぅ!」

「こんなことになるとは……すまんかった。幸子が緊張してたから、少しでも和ませるように、俺なりに行動した結果なんだよ……」

 

 そんなの知ってます。白状すると、プロデューサーさんがボクの視線の脇で一生懸命に踊ってくれていたから、ボクは無事に歌い終えることが出来たんです。

 でもそれがまさかボクより注目を集めるだなんて……。

 

「し、仕方ないですね。だってボクのプロデューサーなんですもんね。プロデューサーさんが目立ってしまうのも仕方ないですね」

「全国放送で俺はなんて黒歴史を……」

「黒歴史? 勝手に黒にしないでもらえます? 普通は共演出来ないボクと共演出来たんですから、真っ白でしょう!」

「…………あんがと。とりあえず、さっきのは見なかったことにして幸子の手料理を食べるよ」

「そうしてください♡」

 

 ―――――――――

 

「ご馳走様でした」

「お粗末様でした。一応訊きますが、お味はどうでした?」

 

 しっかりとプロデューサーさんの好きな物や味付けをリサーチして挑みましたが、念の為です。

 

「美味かった!」

「と、当然ですね♡ なんたって――」

「――カワイイ彼女の愛情がたっぷり詰まってる料理だもんな」

「わ、分かってるじゃないですか♡」

 

 えへへへへへへ、一生懸命作った甲斐がありますね♡ こんなに喜んでくれるなら、今度はもう少し手のこんだ物にしてあげましょう♡ ボクはプロデューサーさんに対してだけは特別に優しいので!♡

 

「お腹は膨れました?」

「おう」

「じゃあこのあとやることは分かってますね?♡」

「幸子を可愛がる」

「上出来です♡ さぁ、今すぐ可愛がってください!♡」

「具体的にはどうするの?」

「え、えっと……チュウ……とか?♡」

「チュウは大切な時にするとか言ってなかった?」

「いいんですっ♡」

「幸子がチュウ学生だから?」

「何寒いギャグ言ってるんですかっ! 早くしてください!」

「ほいほい……ちゅっ」

「〜♪♡」

 

 こうして今日もプロデューサーさんはカワイイボクをうんと可愛がるのでした。ま、こんなにカワイイボクが目の前にいるんですから当然ですよね!♡―――

 

 輿水幸子*完




輿水幸子編終わりです!

宇宙1カワイイ幸子ちゃんは実は無自覚デレデレにゃんにゃんのはず。たぶん……。

お粗末様でした☆

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