デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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本田未央編

 

 よく友達に言われた

 

 未央はいいよねー、なんでも卒なくこなせてー

 悩みとかなさそうだよねー

 

 でもこれは半分正解で半分不正解

 

 本当の私は不安もいっぱいで

 それを見ないように

 笑い続けてただけだった

 

 友達に言われて目指したアイドル

 

 楽しそうだからオーディションに応募して

 楽しそうだからやってみたいって思った

 

 不安な気持ちを笑顔で隠して

 

 ―――――――――

 

「いやぁ、疲れた疲れた〜」

 

 今日の仕事は今度発売されるユニットの新曲のレコーディングで、それを終えて私はみんなと別れて事務所内にある私のプロデューサーの個室に戻ってきた。

 勿論、ハイスペックアイドルのみおちゃんですから? なんら問題なく終わったよ!

 

 でも流石にあれだけ歌うとちょっと疲れちゃった。

 ライブの方が疲れるでしょって言われるかもだけど、私としてはライブの方が楽しくて好き。

 私の歌やダンスに応じて聞こえるファンの声援や手拍子の音、みんなの笑顔とあの一体感……疲れなんて感じないから。

 

 だからただ機材の前で歌うのってちょっと苦手〜。

 

「おぉ、お疲れ様。冷蔵庫にジュースあるから好きなの飲むといいよ」

 

「やった、ありがと、プロデューサー!」

 

 この人が私の専属プロデューサー。

 不安で仕方なかった私の心を見抜いてくれて、私を本当のアイドルにしてくれた人で……事務所の人たちには秘密にしてるけど、私の恋人♡

 

 まあよく言う禁断ってやつ?

 アイドルだからスキャンダルとかはご法度なんだけどさ……こんなに自分のことを応援してくれて理解してくれる人を好きなるのは当然だと思うんだよねー。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 友達に言われたのがキッカケで応募したアイドルオーディション。

 書類審査を通って、不安な気持ちを笑顔で隠して、いつもみたいなノリで最終面接に挑んだ私。

 

 面接の結果は後日とかじゃなくて、面接が終わって控室みたいなところで休んでたら、すぐに知らされた。

 その時、私に『合格です』って言ったのがプロデューサー。

 

 嬉しかった……でもそれと同時にこんな気持ちでアイドルになっていいのか不安だった。

 その時は私だけが合格で、一緒に面接した他の子たちは悲しそうに帰ってった。中には泣いてる子もいた。

 だから余計に私って場違いなんじゃ……って思ってた。

 

 するとプロデューサーが小さく笑ったの。

 私がそれを不思議そうに見てると、

 

『君は分かりやすい子だね……大丈夫。君はアイドルに向いてるし、プロデュースするのは僕だ。もうこの瞬間から、その不安は僕の不安でもある。一緒に頑張ろう』

 

 優しい笑顔でそう言って私の手を握ってくれた。

 本当に嬉しかった。私の心をちゃんと見てくれた初めての人だったから。

 

 なやみゴトは尽きない

 でもそれを一緒に考えてくれる人がいる

 私の大きな夢が

 あの瞬間から二人の大きな夢になった

 不安で壊れそうだったけど

 手を繋いだら嘘みたいに怖くなくなった

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そりゃあ、まあ……このみおちゃんでも最初はなかなか芽が出なくて、周りの子たちは順調に成長してるしで結構しんどかった時もあるよ?

 でもやっぱそんな時はプロデューサーが一緒にいてくれた。

 だから私は今もアイドルを続けてて、今では仕事も沢山もらえるようになったんだよね♪

 

「…………ふへへ」

 

「なんだぁ、急に変な笑い方して?」

 

 あ、幸せ過ぎて笑っちゃってたみたい。

 

「ううん、なんでもな〜い☆ それよりプロデューサーさ、明日は私もプロデューサーもオフだよね?」

「そうだよ。今週は収録とか生ラジオとか色々と仕事が重なっちゃったし、2連休貰えたんだ。僕も急な会議とかさえなければ羽を伸ばすつもりでいる。だから――」

 

 ペラペラと次から次へとプロデューサーから言葉が出てくる。

 私のプロデューサーだからアイドルとしての私の体調管理とかもあるのは分かるんだけどさ……。

 そんな話をみおちゃんは聞きたいんじゃないのだ!

 

「――この前CMに起用してくれたエステサロンに行くのもありだし、それこそ未央の趣味であるショッピングにだって……」

「ねぇ、プロデューサー?」

「……え、なんでそんな怖い顔してるの?」

「アイドルは笑顔しか見せないよ〜? ちゃんと笑顔でしょ〜?」

「僕には青筋を立てて笑う般若面に見えるよ……」

「黙らっしゃい! いーい!? 明日から2日間、私もプロデューサーもお休みで、私は丁度学校もお休みなの!」

「あ、あぁ、だからゆっくり静養して――」

「――ちがぁぁぁう! みおちゃんそんなの望んでぬぁぁぁいっ!」

 

 もう、どうして私の彼氏はこういう時の察しは悪いんだろ。

 でも付き合う前のアプローチの苦労に比べたらまだマシかな……。

 

「じゃ、じゃあ、未央は何を望んでるの?」

「そんなのデートでしょ!? デ・エ・ト!!!!」

「こら、個室とはいえ事務所内で大声で何言ってんだ!」

「だって……プロデューサーったらなんにも分かってないんだもん! 恋人同士が同じ日にお休みなのに、どうして別々で過ごさなきゃいけないのさー! 揃ってお休みの日なんて3か月に1回あるかないかなのに!」

「そ、そっか、ごめん……」

「じゃあ……んっ」

 

 私はそう言ってプロデューサーの前に立ってまぶたを閉じた。

 みおちゃんをないがしろにしてごめんねって意味でキスを要求したんだけど……

 

「???」

 

 ……プロデューサー、全く分かってない。

 こうなったら私か―――

 

「あぁ、気付かなくてごめん。明日、朝の10時に駅まで迎えに行くよ、楽しいデートにしよう」

 

 ―――らぁぁぁぁぁっ!

 なんでいきなりそんな悩殺イケメンボイス(恋人補正)でデートのお誘いしてくるのぉぉぉっ!

 胸キュンだよぉぉぉっ!

 声だけで孕んじゃうよぉぉぉっ!

 好き過ぎてどうにかなっちゃうよぉぉぉっ!

 

「未央?」

「…………こほん、じゃあ明日はデートね!♡ ちゃんとエスコートしてね、プロデューサー!♡ ちゅっ♡」

「っ!?」

 

 えへへ、結局私からキスしちゃった♡

 でも仕方ないよね。好きな人からあんな自然(?)にデートに誘われたんだもん♡

 明日のデートが今から楽しみで仕方ない!

 

 ―――――――――

 

 次の日の朝。

 私はちゃんと変装……って言ってもみくにゃんと美嘉ねぇに言われて伊達メガネと帽子(クリーム色のつば付きベレー帽)くらいしかしてないけど……。

 でもこれ案外バレない♪

 

 勿論オシャレの方は万全!

 気合いを入れておニューのオレンジのミニスカを履いて、上は前にプロデューサーが似合うって言ってくれたスカイブルーのロング袖&ロング丈のフード付きカーディガンにしたもんね!

 これできっとプロデューサーはまたみおちゃんの魅力にメロメロ―――

 

「おーい、お待たせー!」

 

「あ……っ!?」

 

 ―――にゃぁぁぁぁぁっ!!!?♡

 

 なんですか車の窓から私に手を振るあの爽やかイケメンは!!!?♡

 はい、私の彼氏ですぅぅぅぅぅっ!!!!♡

 

「ごめんごめん。早めに出たつもりだったんだけど、待たせちゃったみたいだね」

 

 颯爽と車から降りてやってきた私の彼氏……やばい、ライブなんかよりも緊張するぅ!

 

「う、ううん……そそ、そんにゃことにゃい!♡ わわわ、わたひがはやめにににに!♡」

 

 どうしようどうしようどうしよう!

 久々のデートだし、プロデューサーもいつもの何倍も格好いいしで声が震えちゃう!

 

「でも未央の方が早くに着いたのは事実だからね。だからごめんね? その代わり、今日のデートで沢山楽しませてあげるからね」

 

 はい死んだ! 私今死んだ! 寧ろさっきから死にまくってます!

 恋愛フィルターガチガチの私の贔屓目だって言われてもいい!

 それくらい今日のプロデューサーは格好いい!

 

「う、うん……♡」

「あはは、未央はデートになると大人しくなるね。そんなとこも可愛いよ」

「はぐぅ……♡」

「え? ハグ? こうかい?」

 

 ムギュッ♡―――

 

 おっほっほぉぉぉぉぉんっ!?!?!?!?!?!?♡

 駅前なのにハグキタコレぇぇぇぇぇっ!!!!!♡

 

「でへへへへへぇ〜♡」

「そのスカート姿もいいね。今日はまた未央に惚れ直しちゃう日になるよ、きっと」

 

 私は開始前から惚れ直してますぅぅぅぅぅっ!♡

 

「うぇっへへへぇ……ぷろりゅ〜しゃ〜、しゅき〜♡」

「僕も未央のことが好きだよ。それじゃ、そろそろ行こうか?」

「いくぅ♡」

 

 とまあ、当所の目論見とか全く違っちゃったけど、私はプロデューサーの車に乗り込んでデートに向かったのだ。

 私の心臓、ガンバ!

 

 ―――――――――

 

「エスコートするって言ったけど、いつもの場所なんだよね。ごめんね?」

「ううん、私とプロデューサーの定番スポットだもん♡ 嬉しいよ♡」

 

 そこは私たちが付き合う前からよく来てた都心から離れた大型ショッピングモール。

 付き合ってからもデートといえば大抵はここで、私たちらしくてここまでの道程の風景を見てるだけで嬉しくなっちゃう。

 

「さて……僕は久々だけど、未央は友達とかと何回か来てたりする?」

「私も実は久しぶり……誘われても理由をつけて断ってる」

「え……なんで?」

「だって……プロデューサーとのデートのことを思い出して顔がにやけちゃうんだもん……♡」

 

 これはしまむーやしぶりんたちと来た時に言われたこと。

 でも仕方ないじゃん!?

 プロデューサーのことが大好きなんだもん!

 

 自分で言っておいてなんだけど、我ながらちょっと恥ずかしい。

 プロデューサーはそんな私を見て笑ってるかなってコソッとプロデューサーの顔を見ると―――

 

「…………っ」

 

 ―――プロデューサーがとても顔を真っ赤にしてた。

 なんだろう? 私のライフポイントはもうゼロなんですが……キュン死にさせる気なのでしょうか? どなたか私にザオ〇クを使ってくださる方はいませんか?

 

「そんなこと言わないでよ……嬉しくて未央をこのまま攫って行きたくなる……」

 

 是非とも攫ってください。寧ろお願いします。

 

「プロデューサー……♡」

「な、何?」

「攫ってくれても……いいんだよ?♡」

「っ!?」

 

 言っちゃった……♡

 でもこれは私の本当の気持ち……攫って欲しい。

 私とプロデューサーだけの二人だけの世界へ。

 

「全く……今日は未央にしてやられてばっかりだなぁ」

 

 そのセリフ、そっくりそのままお返しします。

 

「プラン変更。流石に攫っちゃうのは犯罪だからね……だから――」

「?」

「――未央を明日の夜まで僕が預かることにするよ♪」

「…………うん♡」

 

 こうして私たちは急遽、1泊2日の旅行に行くことになった。

 親……お母さんには私とプロデューサーの関係は話してるし、プロデューサーのことも気に入ってるからお泊りしてくるってメールをしたら『娘よ、上手くやれ』って返ってきた。

 

 いきあたりばったりの旅行だったけど、とても楽しくて幸せで……プロデューサーに愛されてるって実感する旅行だった。

 詳しくは恥ずかしくてとても話せないけど……たはは―――。

 

 本田未央⦿完




本田未央編終わりです!

普段元気な子がカウンター食らってワチャワチャしてるのって可愛いですよね?

お粗末様でしたー☆☆☆

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