デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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西園寺琴歌編

 

 アイドルは素晴らしい

 

 私の世界を一瞬にして

 

 より色彩豊かにし

 

 全てを変えてくれたから

 

 アイドルになるようにと

 

 父に言われて

 

 始めたアイドルでしたが

 

 今ではその父に心からの

 

 感謝を送りたいです

 

 何故なら

 

 掛け替えのない人と

 

 出会えたから

 

 ―――――――――

 

「あっはっは、さすが我が娘だ! よくぞここまで登りつめたな!」

「ありがとうございます、お父様。しかし、私がここまでこれたのも、全てはプロデューサー様の手腕ですわ」

「恐縮です」

 

 私は今、私の専属プロデューサー様を我が屋敷に招き入れてご会食をしています。

 先日、私のファーストアルバムが発売され、CDやダウンロード販売で1位を獲得したお祝いなんです。

 本当ならば父は盛大にやるつもりだったのですが、私がお願いして今回は私たちだけの席を設けさせてもらいました。

 

「それで……我々だけの席を望んだということは、そういう報告が聞けると捉えてもいいのかな?」

「先走り過ぎですよ、あなた。こういうのはお二人のタイミングがあるんですから」

「おぉ、それもそうだな! しかし婚約なら早いに越したことはない……だから期待が先走ってしまったようだ!」

 

 私とプロデューサー様は半年前からお付き合いをしてます。事務所にはまだ内緒にしてますが、父と母がプロデューサー様を大変気に入り、西園寺グループの名に惹かれて擦り寄ってくる害虫……失礼しました。地位目当ての人よりも、私が最も信頼を寄せているプロデューサー様と結ばせようとお見合いさせたことで今に至ります。

 

 プロデューサー様は私のことを西園寺家の娘ではなく、一人の女性として向き合ってくれた初めての殿方。

 故に私はプロデューサー様を心からお慕いし、愛しております。それはプロデューサー様も私と同じお気持ちであると存じています。

 しかし―――

 

「娘さんとの婚約はまだ出来ません」

 

 ―――今日はそういうご報告をするために席を設けさせてもらった訳ではありません。

 プロデューサー様の言葉に父と母は目を丸くさせていますが、プロデューサー様は姿勢を崩さずに両親へ言葉を続けます。

 

「私はまだ娘さんとの約束を果たしていません。ですので、今しばらくの猶予をいただきたく思います」

 

 その言葉に父は「約束?」と訊き返しました。

 

「はい。娘さんを……彼女をトップアイドルにするという約束を果たせていないのです」

「しかし琴歌はこのようにランキング1位を獲得したではないか」

「それは一時の1位です。それに言い方が悪いかもしれませんが、その程度で彼女の活躍に満足しているのですか?」

 

 父はそう言われるとハッしたように目を見開き、プロデューサー様の次の言葉を待ちます。

 

「彼女はオリコン1位を一度取っただけで終わるアイドルではありません。もっともっと輝けるんです。私はそれを確信し、これまで以上に情熱を注いでプロデュースしたいんです。ですから――」

「――もういい」

 

 プロデューサー様の言葉を遮る父。しかし父はとても優しい笑顔を私に向けました。それは母も同じです。

 

「琴歌、本当にいい人を見つけたな。私は誇りに思う」

「でも、〇〇さんに飽きられてはなりませんよ、琴歌? しっかりと将来の妻としてこれからもこれまでのように尽くしなさい」

 

 両親の温かい言葉に私は勿論、プロデューサー様も笑顔でお返事をいたしました。

 

 ―――――――――

 

 ご会食も終わり、私はプロデューサー様を連れて今夜プロデューサー様がお泊まりになるお部屋へご案内しました。

 

「ここがプロデューサー様のお部屋ですわ」

「広くて落ち着かないなぁ……」

「しかし、ここが屋敷の中で1番狭いお部屋なんです……」

「そうなんだ……やっぱすごいね」

 

 ここはお屋敷の中でもたった30畳しかない粗末な部屋。本来は物置部屋だったのですが、プロデューサー様のご希望に添えたくて家の者に頼んで整えてもらったんです。

 しかしそれでも広いなんて……将来の妻失格ですわ。

 

「プロデューサー様……どうか愛想を尽かさないでくださいっ。プロデューサー様に見捨てられたら、私……」

 

 生きていけません。アイドルなんて出来ません。プロデューサー様だから今の私がいるんです。

 

「いやいや、大袈裟に捉え過ぎだよ。ただ屋敷を持ってるってのは本当にすごいなぁって思っただけ」

「本当に本当ですか?」

「ホントホント。だって俺が住んでる部屋より断然広いし家具も断然揃ってるからね」

「他のお部屋であればもっと取り揃えていますよ?」

「一般庶民には分からない世界でやんす」

 

 ふふふ、プロデューサー様ったらまたおふざけになられて♡

 

「ですが、私と結婚をしたらここに住むんですよ?♡」

「ですよねー……」

「あ、でも父が新しく建てるかもしれませんから、その時に小さくとお願いいたしましょうか?」

「小さくって、どれくらい?」

「お部屋は取り敢えず客室も合わせて20部屋。それとキッチンは4つにして、バスルームは5つ。今ご提案した規模であれば使用人さんたちも30名ほどで済みますわ♪」

「小さいって言葉を辞書で調べてみよう」

 

 むぅ、まだご不満があるのですか?

 あ……私ったら、肝心なことを忘れていましたわ♡

 

「そうですね、夫婦で過ごせるお部屋も夫婦でお休みするお部屋も必要ですわね♡ 至らない妻で申し訳ありませんでした♡」

「違う違う……まあ、そういうのは追々ってことでいいとして、琴歌ちょっといい?」

「? はい、どうされました?」

 

 むぎゅっ♡

 

 次の瞬間、私はプロデューサー様の大きくてたくましい胸の中にいました。

 しかしいきなりの抱擁だなんて、どうされたのでしょう?

 

「プロデューサー様?」

「いきなりしてごめんな」

「いえ……私にとっては嬉しいことですから♡」

「そっか……」

「しかし何故いきなり?」

「えっと……広くて落ち着かないから、琴歌を抱きしめて落ち着こうかと……」

「あらあらまあまあ♡」

 

 私を抱擁することでプロデューサー様のお気持ちが安まるのでしたら、嬉しいですわ♡

 それにお仕事をされている時の凛としたお姿とは違って、今は構ってちゃんな大きなワンちゃんみたいで可愛いですわね♡

 

「ヨシヨシ……プロデューサー様はいい子いい子♡」

「まるで俺が子どもみたいだな」

「誰しも甘えたくなる時はありますわ♡ そしてそれが私に対してなのですから、私にとって今のプロデューサー様は愛おしくも可愛らしいお方です♡」

「まあこれはこれでいいかな」

「ふふふ、良かったですわ♡」

 

 プロデューサー様、本当に不安でいらしたのでしょう。いつもの優しい手も少々震えていましたから。

 ですがこの私がずっとご一緒しています。ですから、ご安心してくださいませ……旦那様♡

 

 ―――――――――

 

 それからも私はしばらくプロデューサー様と抱擁を交わしながら、頭を撫でて差し上げていました。

 今ではプロデューサー様もいつも通りに戻り、ソファーに座ってアフターディナー・ティーを楽しんでいます。

 本来アフターディナー・ティーは男女別で過ごすのですが、私たちは同じ時間を過ごしています♡ いずれは夫婦になるのですし、恋人同士こんなアフターディナー・ティーもいいですよね?♡

 

「あ、これ美味しい……」

「ポートワインもご用意してますが、こちらもお飲みになられますか?♡」

「いや、明日も仕事があるし、お酒はいいかな。俺アルコールが入るとすぐ眠くなっちゃうし……そうするとせっかくの琴歌との時間が削られちゃうから」

「もう、プロデューサー様ったら♡」

 

 それほどまでに私との時間を大切に思ってもらえて、私は幸せです♡

 

「私は本当に幸せ者ですわ♡」

「お嬢様ってだけで勝ち組なのにね」

「今ではプロデューサー様のお陰でアイドルでも勝ち組ですわ♡」

「これからももっと勝たせるよ。目指せ世界ツアー!」

「楽しみです♡ 私も実現出来るよう、精一杯頑張りますね♡」

 

 ―――――――――

 

 アフターディナー・ティーが終わると、私はプロデューサー様を連れて屋敷のバスルームに来ました。

 本当ならば我が屋敷自慢の大浴場をお使いになられてほしかったのですが、プロデューサー様のご希望により屋敷で1番狭いバスルームにしたいんです。

 

「……広い。俺の部屋くらいのバスルームが1番狭いとか……しかも妙にキラキラしてるし、花びら浮いてるし、マーライオンみたいのあるし……」

「大浴場は水瓶を持つ美女の像が水瓶からお湯を出してますよ?」

「そのうち滝行が出来るバスルームが出来そう」

「お望みとあれば――」

「――大丈夫、いらないから」

 

 そんなに珍しいのでしょうか? 日本は水源豊かですし、節約しなければいけないほど水に困る国ではありませんのに……。

 

「それとね、琴歌」

「はい、なんでしょうか?♡」

「どうして当然のように一緒に入ってるの?」

「どうしてと言われましても……私の両親は普段からご一緒に入浴されてますし、これが普通なのでは?」

「普通の夫婦ってそこまでラブラブじゃないと思うだよなー」

「では両親は今でもラブラブということですね♪ 嬉しいですわ♪」

 

 それにいいお手本がいるということは、私たちもずっとラブラブでいられるということですし♡

 

「それとね、琴歌」

「はい?」

「出来ればその……隠してほしいなぁ……なんて」

「何をですか?」

「だからその……前を……」

「前?」

 

 前とはどこのことでしょうか? プロデューサー様の目をアイマスクなどで覆えば良いのでしょうか?

 

「至らぬ妻で申し訳ありません。前とはどういうことなのでしょうか?」

「だ、だから琴歌の体を隠してくれ……」

「そんなにお見苦しいですか?」

 

 そうであれば大変申し訳ないことをしてしまいました。そう思われないよう、今後ヨガやエステに通わなくてはなりませんね。

 

「い、いやそうじゃなくて……ああもう! こうなるから隠してって言ってるんだ!」

 

 プロデューサー様はそう言って私の手をとある箇所へと持っていくと―――

 

 カチンコチン♡

 

 ―――プロデューサー様の小プロデューサー様が大きく脈を打っておられました♡

 

「まずいだろ、色々と……」

「何もまずいことなんてありませんわ♡」

 

 ニギニギ♡

 

「ちょ、何やって――」

「――遅かれ早かれこうなるのでしたら、私は今すぐにでも構いません♡ それだけ〇〇様のことを愛しているんです♡」

 

 お金では手に入らない物を私に与えてくださった愛しき貴方♡ 私はもっと早く貴方とこうなりたかった♡

 

「ダメだ! ご両親に顔合わせ出来なくなる!」

「両親はもう快諾済です♡ これでもちゃんとこちらのお勉強もして、プロデューサー様の好みも把握してますわ♡」

「え」

「あぁ、愛しき将来の旦那様♡ 今宵、私たちは心も身体も二人の愛で永遠に結ばれるのですね♡」

「あ……あぁ……」

「責任はちゃんと私が取りますから、初めての私をご堪能くださいませ♡」

「あぁぁぁぁっ!」

 

 こうして私はプロデューサー様と素敵な夜を過ごし、次の日の朝に父と母へご報告すると大変喜んでくださいました。

 でもプロデューサー様はお疲れのご様子……今夜もまた癒やして差し上げないと♡―――

 

 西園寺琴歌*完




西園寺琴歌編終わりです!

なんか書いてたら若干ヤンデレチックになってしまった……頑張れプロデューサー!←

お粗末様でした☆

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