デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


榊原里美編

 

 世界は広い

 

 お兄様がいつも言っていました

 

 だから私もいつか

 

 自由にお外へ行きたいと

 

 窓の外を眺めていました

 

 でも何をしたらいいのか

 

 どうしたらいいのか

 

 分からなかった

 

 そんな時に

 

 運命の出会いがありました

 

 ―――――――――

 

「ラジオの前の皆様ごきげんよう。榊原里美の『ゆるふわラジオ』のお時間がやって参りましたよ〜。そして今日はスタジオの前にもたくさんの方々が来てくださいました〜。今日は楽しんで行ってくださいね〜♪」

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチ

 

 今日のお仕事は私のラジオ番組です。この番組はデビューして少ししてから土曜日の午後に始めたファンとの交流ラジオ番組で、今回は月に一度行われる公開放送の日。

 この日もいつものようにたくさんのファンの皆様が駆けつけてくださいました。

 そしてその中には私のお兄様のお姿もあり、私はいつも以上に張り切ってお仕事に励みました。

 

 ―――

 

「お疲れ様でしたー」

 

「はーい、お疲れ様」

「また来週よろしくでーす」

 

 番組も無事に終わり、私はラジオのスタッフさんたちへご挨拶をして今度はスタジオのお外へ行きます。

 なぜならスタジオ前にお集まりになられたファンの皆様へご挨拶するからです。

 

「皆様、此度はスタジオまでご観覧に来てくださってありがとうございました」

 

 パチパチパチパチ

 

 すると今度は私専属のプロデューサーさんがすかさず私とファンの間に入り、

 

「サインや握手をお求めの方々は、ご通行中の人たちの邪魔にならないように整列してください」

 

 テキパキと迅速な対応をしていきます。

 

 私がここまでアイドルとして成功出来たのは全部このプロデューサーさんのお陰なんです。

 お優しくて、ご親切で……いつも私を助けてくださる方。

 そんなプロデューサーさんを私は一人の男性として愛しています。

 

 アイドルとプロデューサー……それは決して結ばれてはいけない定めなのだと思っていましたが、お兄様へご相談をしたら―――

 

『そんなの関係ないと思う。里美がしたいようにしたらいいよ』

 

 ―――このように助言を頂き、私はお父様やお母様のご許可も得てプロデューサーさんへ自分の気持ちを告白致しましたところ、私の告白を受け入れてもらえたのです。

 しかし付き合って1か月……未だ事務所の方には私たちの関係はご報告してはおりません。私は何もやましいことはないのでいつご報告してもいいのですが、プロデューサーさんが『せめて里美が学校を卒業してから』ということで、今は秘密にしています。

 

 ですから、卒業後は胸を張ってご報告出来るようにアイドル仲間の皆様やお父様たちから日々助言を頂いて、プロデューサーさんの迷惑にならないようにしていきたいという所存です。

 

 ―――――――――

 

「いやぁ、あんなに僕の背中をよちよち付いてきた里美が見違えたなぁ」

「いえ、妹さんは最初から芯のしっかりとした方でしたので、プロデュースしていくに連れて期待が確信に変わりました」

「お、お二人してそんなお話は止めてくださいっ。するならば私がいないところでしてくださいっ」

 

 ファンの方々との小さな交流も終えた私はプロデューサーさんとお兄様と一緒にスタジオ近くの立派なホテルでお茶の席を設けていました。

 お兄様は日頃海外でビジネス活動をしていらっしゃっていますが、近々東京で新しくオフィスを設けるそうでそのお話がまとまるまでは日本に留まるみたいです。

 ですから私のお仕事もご観覧になられに来られました。

 

 お仕事も無事に終わり、ファンの皆様も喜んで頂き、大好きなお兄様と愛するプロデューサーさんに囲まれて過ごすお茶の席はとても嬉しいことなのですが、私のことばかり話題にされるので恥ずかしくなってしまいます。

 

「それにしても本当に立派になったね、里美。そして僕を見ていたから男を見る目もちゃんと培っていたようで安心したよ」

「もう、お兄様ったら……」

「お父様も僕と同意見だけど、里美をどうでもいいどこぞの奴にくれてやるよりは里美が選んだ人と結ばれてほしいのさ」

 

 お兄様が優しく微笑んでそう言うと、プロデューサーさんは「恐縮です」と苦笑いしました。可愛い♡

 

「〇〇さんもそんな他人行儀な言葉遣いはせず、もっと砕けた物言いをしてほしいな。いずれ僕らは義兄弟になるのだから」

「し、しかし……」

「でも自分より年上の弟が出来るのって不思議な感覚だなぁ」

「そ、そうですね……」

 

 プロデューサーさん緊張してますね。お兄様やお父様たちの前ではいつもこんな調子で心配です。

 

 あ、そうだ♡

 

「プロデューサーさん♡」

「ん、どうし――」

 

 ちゅっ♡

 

「――っ!!!?」

 

 キスすれば少しは緊張も解れますよね?♡

 いつも私はライブ前にこうしてプロデューサーさんから勇気や安らぎを頂いてますし、今は私がプロデューサーさんへ安らぎを与えたいですから♡

 

「…………ぁ、さ、里美!?」

「緊張は解れましたか、プロデューサーさん?♡」

「え、いや……そういうことじゃなくて……」

「お気に召しませんでしたか?」

 

 ちゃんとプロデューサーさんが喜んでくださるように、私からも舌を絡めたのですが……。

 

「いやぁ、お熱いね」

「す、すみませんっ」

「気にしなくていいよ? ここは貸し切りにしてあるし、パパラッチなんて気にせず二人きりの時のように過ごしてくれていい」

「は、はぁ……」

 

 プロデューサーさん、余計に緊張してしまったようです。

 うぅ、どうしたらいいのでしょう?

 

「うんうん、関係も良好みたいで何よりだよ。これからも里美のことを愛してやってほしい」

「はい、勿論です」

 

 お兄様へそう言葉を返すプロデューサーさんの目はとてもまっすぐで、私はその言葉が私に向けられていないのに大きな喜びを感じていました♡

 

 ―――――――――

 

 それからもしばらく私たちは世間話をしながらお茶をしました。プロデューサーさんも後半にはお兄様と楽しそうにご趣味(サッカー)のお話で盛り上がり、今度一緒に日本代表の試合を観戦するお約束までしていました。

 そんな帰り、私はプロデューサーさんの運転でお屋敷へと送って頂いていた時のこと。

 

「まさか里美のお兄さんもサッカーが好きで俺と同じイタリアのサッカークラブサポーターだとは思わなかったよ」

「うふふ、大変楽しそうでしたね……お二人が仲良しになられて、見ていてとても嬉しかったです〜♡」

「やっぱり、共通の趣味とかがあると会話が弾むからな」

「お二人して少年のような眼差しでしたからね〜♪」

「そりゃあ趣味の話題だったからな〜。でも流石にお兄さんの奢りでイタリアまでサッカー観戦に誘われたのは焦ったよ……」

 

 プロデューサーさん、先程からずっとお兄様のことをお話になられます。

 それだけプロデューサーさんとお兄様の仲が良くなったことは素直に喜べるのですが、私はちょっとお胸の奥がチクチクしてきます。どうしてなのでしょう?

 

「お兄様がああも仰るのは余程のことですよ? 遠慮なさらずともよろしかったのに」

 

 自分でそう言うと、ますますお胸のチクチクが増してきました。

 そしてそれと同時に、プロデューサーさんと離れたくないという気持ちが溢れてきます。

 

「プロデューサーさん」

「うん?」

「お屋敷に着きましたら、少しお休みになられて行きませんか? 事務所へ戻りましたら、また遅くまでお仕事なのでしょう?」

「ん〜……ならちょっとお言葉に甘えようかな」

「はい、是非とも甘えてください♡」

 

 ―――――――――

 

 お屋敷に着いた私たち。私はすぐにプロデューサーさんを私のお部屋にお通しして、お屋敷の方々には二人きりにしてもらうよう言いました。

 普段の私ならそんなことわざわざ言わないのに……どういう訳か今日の私はプロデューサーさんが私以外の誰かとお話するのが見たくありませんでした。

 

「プロデューサーさん……♡」

 

 部屋に戻ると、プロデューサーさんはスマートフォンで事務所とご連絡を取っていました。

 

「はい、お願いします。ちひろさん」

 

 ざわっ

 

 電話のお相手はちひろさんのようです。でもどうしてでしょう? ちひろさんとはいつも事務所で笑顔でご挨拶する仲なのに、私の心は穏やかではありません。

 

「……ごめん。ちょっと報告をね」

「……………………」

「里美?」

 

 次の瞬間、私は体が勝手に動いていて、プロデューサーさんを自分のベッドの上に押し倒していました。

 

「ど、どうした、里美?」

「プロデューサーさん……」

 

 どうしてでしょう……プロデューサーさんへの思いが……愛が、これでもかと溢れてきて、溺れそうになってしまいます。

 心配そうに私を見つめるプロデューサーさん……明らかに私がおかしいからなのですが、その気遣いでさえ私の胸の奥にはプロデューサーさんへの想いが募っていきます。

 

 プロデューサーさん……好き。

 心の中でつぶやくと、私の中で何かが弾けたかのような小さな衝撃が走りました。

 そして―――

 

 好き……好き……好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ!

 

 ―――想いがこれでもかと溢れます。

 

「プロデューサーさん♡」

「お、おう、どうした?」

「プロデューサーさんは私だけですよね?♡」

「そりゃあ、そうだろ。好きだからこうしてる訳なんだし」

「お兄様とご旅行なんて行きませんよね?」

「それは断っただろ。それに観戦する時は里美も一緒に来てもらわなきゃ俺が困る。流石にお兄さんと二人だと場の空気が保たなさそうだし……」

「っ……はい、行きます♡ 私も連れて行ってください♡」

 

 離れたくない。離したくない……この人は私の大切な人だから。

 

「今日はどうしたんだ、里美?」

「分かりません。でもプロデューサーさんのことが好き過ぎてお胸が痛いです♡」

「それは……まあ嬉しいけど、素直に喜びにくいなぁ」

「プロデューサーさん、私に好きって言ってください♡」

「? 好きだよ、里美」

「えへへへ……嬉しいです〜♡」

 

 やっぱりこの人は特別な存在です。その言葉を聞いただけで、私の心は満たされて、落ち着きます。

 

「なんだか、お腹減って来ちゃいました……」

「なら、体型が崩れない程度に甘いもの食べたら?」

「お部屋にはいつもハチミツが置いてあるんです♡」

 

 机の上に……プロデューサーさんと二人で撮った写真の隣に置いてあるんですよ♡

 

「じゃあ、ちょっと舐めて落ち着いたら?」

「プロデューサーさんも舐めます?♡」

「…………じゃあ、一口もらおうかな」

「なら、前から試してみたかったことしてみていいですか?♡」

「? いいけど、何するんだ?」

「それは見てからのお楽しみです♡」

 

 それから私はハチミツを持ってきて、プロデューサーさんの指に絡めてそれを食べさせてもらいました♡

 そしてプロデューサーさんには、プロデューサーさんが大好きな私の大きな2つのふわふわパンケーキにハチミツを垂らして、ゆっくりと味わってもらいました♡―――

 

 榊原里美*完




榊原里美編終わりです!

ヤンデレの一歩手前って感じ。そしてゆるふわなのにグイグイいく感じにしました!

お粗末様でした☆

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