デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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櫻井桃華編

 

 アイドルをやる前のわたくしは

 

 井の中の蛙でした

 

 淑女としての振る舞いを

 

 ただ知っている気になり

 

 自分が淑女であると

 

 錯覚しておりました

 

 そんなわたくしを

 

 優しく導く最高のパートナーが

 

 わたくしのことを

 

 本物の淑女へと昇華させ

 

 今のわたくしの居場所を

 

 与えてくださいました

 

 ―――――――――

 

『皆様、本日は来て頂いて感謝しますわ!』

『また仁奈たちに会いに来てくだせー!』

『その時も今日みたいに薫たちといっぱい遊ぼーね!』

『また会えるのを、みりあたち待ってるからねー!』

『もう夜なので帰る際は気をつけてくださいね』

 

 ワァァァァァッ!!!!!

 

 わたくしたち「リトル・マーチング・バンド・ガールズ(L.M.B.G)」の全国ドームツアーのラストである神戸公演が無事に幕を閉じました。

 全力を出し切った達成感や脱力感……様々な思いを胸に、最高の仲間たちやファンの皆様と最高の時間を過ごせたことを心から感謝しましたわ。

 

 ―――

 

「みんなお疲れ様」

「みんな輝いてたぞ♪」

 

 控室では仲間たちの担当プロデューサーがそれぞれみんなを労っています。

 なのにわたくしのプロデューサーちゃまは何処へ?

 

 ガチャ

 

「お〜、みんなお疲れ〜」

 

 っ!♡

 見つけましたわ!♡

 

「プロデューサーちゃま!♡」

 

 この遅れて控室へ入って来られたのがわたくし専属のプロデューサーちゃまでしてよ!

 前までは何人ものアイドルを世に出した敏腕プロデューサーなのですが、今はわたくしだけのプロデューサーちゃまですの!♡

 

「おぉ、桃華……お疲れ様。最後までよく頑張ったな」

「そんなの当然でしてよっ♡ それよりプロデューサーちゃま、どうして控室でプロデューサーちゃまだけがわたくしのお出迎えをしてくれなかったんですの?」

「スポンサーの方に代表者として挨拶をな。それとVIP席に桃華のご両親も来てたから、その挨拶も……」

「なるほど……でしたら今回のことは水に流して差し上げますわ♡」

「ありがとう」

「でもお詫びにしっかりと抱きしめてくださいまし♡」

「お安い御用ですよ、お嬢様」

 

 幸せ♡

 

 見てお分かりの通り、プロデューサーちゃまとわたくしは赤い糸で結ばれていますの♡

 事務所にはまだご報告はしていませんが、お父様たちご公認ですし誰もわたくしたちの仲を引き裂くことは出来ませんわ♡

 でも特段秘密にしている訳ではいないので、L.M.B.Gの仲間たちや他のアイドル仲間たちには教えていますの。味方は多い方がいいとお父様もよく仰っていますからね♪

 

 ―――――――――

 

 それからスタッフの方々とご挨拶をしたわたくしたちは、揃ってわたくしのお屋敷へと戻ってきました。

 ただ、プロデューサーちゃまたちは事務所の方へご報告があるので今はわたくしたちアイドル仲間だけです。

 わたくしたちは同じ事務所ではありますが、それぞれ活動地域が別。このユニットもわたくしのプロデューサーちゃまが言い出さなければ生まれなかったユニットなのです。

 全員で合わせてレッスンをする時間は限られていますが、わたくしたちはプライベートでも仲良しなのでチームワークはピカイチですわ♪

 それに神戸にてユニットのお仕事がある場合は毎回わたくしのお屋敷へみんなをご招待して、仲間たちとの絆を育んでいますのよ!

 

「相変わらず、桃華ちゃんのお家のお風呂はでっけーですね!」

「ホントホント〜♪ 泳げるもん!」

 

 仁奈ちゃんと薫ちゃんはライブのあとなのに相変わらず元気ですわ。

 

「褒めて頂けるのは光栄ですが、だからと言って泳いではいけませんことよ?」

「みんなでゆっくり浸かろうね〜」

「明日疲れてたらパーティ楽しめないからね」

 

 一方でみりあさんと千枝ちゃんは淑女らしく過ごしていますわね。

 L.M.B.Gは本当ならばもっとメンバーがいるのですが、今回のツアーではこのメンバーで臨んだんです。やはりそれぞれ学業など個々でありますし、個々でのお仕事がありますから。

 

「今度はメンバー全員でツアーやりたいね」

「1日2日なら大丈夫だと思うけど、全国ツアーってなると難しいけどね」

「でも前みたいにメンバーみんなと桃華ちゃん家のお風呂入りたいなー」

「仁奈も大人数で入りてーです!」

 

 全員で……わたくしもそちらの方がいいですわ。大人数での入浴も……まあ気持ちは分かるということで。

 

「あ、でも、今度桃華ちゃんのバースデーライブの時に全員揃うから、その時ならみんなで入れる!」

「か、薫ちゃん、桃華ちゃんがいいよって言ったらだよ」

「大丈夫だよー。ね、桃華ちゃん?」

「構いませんわよ♪」

「やったー!」

 

 お父様もいつでも使えと仰ってくれていますし、大丈夫。でも入浴用のバラは多めに頼んでおかなくてはいけませんわね。

 

「そーいえば、桃華ちゃん」

「どうしましたの、仁奈ちゃん?」

「桃華ちゃんは誕生日プレゼント、プロデューサーに何をお願いするでごぜーますか?」

「え」

 

 プロデューサーちゃまへわたくしがおねだり?

 

「しませんわ。わたくしのプロデューサーちゃまはちゃんとわたくしが何を求めているか分かっていらっしゃいますから」

 

 わたくしがわざわざプロデューサーちゃまへおねだりする必要なんてありません。

 だって―――

 

(プロデューサーちゃまといつまでも一緒に居られれば、わたくしは何も)

 

 ―――望む物なんてありませんもの♡

 

「桃華ちゃんって大人だね〜。薫なら絶対自分のせんせぇに欲しいものお願いしちゃうよ〜」

「仁奈もでごぜーます」

 

 ふふっ、お二人らしいお考えですわ。

 

「私はてっきり指輪でもお願いするのかと思っちゃったよ」

「あ、みりあもそう思った! だって二人は付き合ってるんだもんね!」

 

 ? 指輪? なぜ指輪なのかしら?

 

「桃華ちゃん前にプロデューサーと結婚するって言ってたから、結婚指輪でも貰うのかな〜って思ってたよ」

 

 !!!?

 

「誕生日にプロポーズとか、なんかロマンチックだよね」

 

 なるほど……それもあり……いえ、大ありですわね。

 そのあとのわたくしは、プロデューサーちゃまからのプロポーズのことで頭がいっぱいになってしまって、みんなとどんなお話をしたのかすら記憶が曖昧になってしまいました。

 

 ―――――――――

 

 それからプロデューサーちゃまたちもお屋敷に戻って来て、みんなとささやかなお食事会を過ごし、みんなとパジャマパーティをし、みんなが寝静まってからわたくしはプロデューサーちゃまをお屋敷のラウンジへ呼び出しました。

 

 お屋敷のラウンジはわたくしのお気に入りの場所。それにプロポーズならばこうした夜景の見える場所というのが最適ですから。

 

「お呼びですかな、お嬢様?」

 

 わたくしだけしかいない広いラウンジへやってきたプロデューサーちゃま。プロデューサーちゃまはいつでもどこでも寝る時は上下のジャージ姿。最初はそのセンスに疑問を持ちましたが、今ではそれすらも愛おしくてたまりません。恋は盲目とよく言ったものですわ。

 

「今はアナタだけの桃華です。お嬢様なんて呼ばないでくださいまし」

「了解。んで、どうかしたのか、桃華?」

 

 っ……名前を呼ばれただけですのに、どうしてこうもときめいてしまうのでしょう♡

 きっとそれだけわたくしはプロデューサーちゃまを愛しているのでしょうね♡

 

「プロデューサーちゃま、近々わたくしの誕生日だということはお分かりですわね?」

「うん、そりゃあな」

「でしたら、期待……しててもいいですわよね?」

「何を?」

 

 ガーンッ

 

 知っていました……知っていましたとも。プロデューサーちゃまはそういう鈍感なお人だと。

 

「で、ですから、誕生日プレゼントですわ。プロデューサーちゃまはわたくしのフィアンセなのですから、ね?」

「…………???」

 

 全くお分かりになられていませんわね、そのお顔は。

 

「もう、分かりませんの!?」

「うん、全く」

「〜〜〜っ!」

 

 頭に来ましたわ!

 紳士ならば……フィアンセならば尚更、わたくしの期待に応えるのが筋だというのに!

 

 はっ、いけませんわよ、櫻井桃華。ここで取り乱しては櫻井家の名が廃り、淑女としての品も落としてしまいますわ。

 

「こほん……プロデューサーちゃまはわたくしと結婚する運命ですわよね?」

「桃華がそれまで俺を好きでいてくれればな」

「またそんなことを言って……」

 

 プロデューサーちゃまは前からこう。わたくしがどんなに言っても『未来はどうなるか分からない』との一点張り。

 

「ごめんな。俺、桃華のこと本当に好きだけど、桃華みたいに自信がないんだ」

「…………いけませんわね」

「え?」

「いけませんと言いましたの」

「…………」

「いいこと? わたくし、櫻井桃華はこれから先アナタだけを愛して生きていきます。アナタはわたくしをここまで導いてくれた掛け替えのない方……わたくしの伴侶はアナタ以外どこにもいません」

「ありがとう、桃華」

「それにわたくし、気に入ったものは手放さない主義ですの♡」

 

 ギュッ♡

 

 こんなに優しくて、誰よりも慈愛深く、誰よりもわたくしのことを考えてくれるお人なんて……どこにもいませんわ。

 わたくしはアナタだから恋に落ち、アナタだから結ばれたいと強く望んでいますのよ。

 

「絶対に放しませんわ……だってこんなにこんなにアナタへの愛で胸がいっぱいになるんですもの♡」

「桃華……」

「ですから、誕生日プレゼント……期待してますわ♡」

「…………なら、柄じゃないけどもうあげてもいいかな?」

「あら、気が早いのではなくって?♡」

 

 でも善は急げともいいますものね♡

 

「まあ、いいから」

「では……良くってよ?♡」

 

 するとプロデューサーちゃまはわたくしから一歩後退し、その場で片膝を突きました。

 わたくしが期待に胸を高鳴らせていると―――

 

 チュッ♡

 

 ―――プロデューサーちゃまはわたくしの左手を取り、薬指にキスをしたのです。

 

「……今俺が出来るのはこれが精一杯だ。でも必ず今キスを送ったその指に俺たちが夫婦であるという証を送ることを今誓うよ」

「っ……はいっ♡」

 

 思っていたのとは違いましたが、なんてロマンチックなのでしょう♡ ジャージ姿なのはまあ……フィアンセ補正で帳消しにしてあげますわ♡

 わたくしは既にそうですが、もうますますアナタのことしか眼中にありません♡

 

「偶然にも今日は俺が桃華をスカウトした日だ……スカウトした日なら、プロポーズじゃなくて、その約束ってことの方が俺ららしいだろ?」

「〜っ♡」

 

 プロデューサーちゃま……そこまでお考えになられていましたのね♡

 もう、どこまでわたくしを虜にする気ですの、まったく♡

 

「愛してるよ、桃華」

「わたくしの方がアナタを愛してましてよ!♡」

 

 こうしてわたくしは最高のプレゼントを頂きました。

 それなのに後日、プロデューサーちゃまはわたくしの誕生日に『俺の時間を桃華にプレゼント』なんて言って、その日1日中わたくしと過ごしてくださいました♡

 早くプロデューサーちゃまと結婚披露宴を盛大に開きたいですわ!♡―――

 

 櫻井桃華*完




櫻井桃華編終わりです!

12歳なのに溢れ出る良妻感。
私の中でも桃華ちゃんはかなり上位に入るお気に入りキャラなので、こんな感じにしました!

お粗末様でした☆

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