デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


椎名法子編

 

 アイドルはドーナツだ

 

 人々を笑顔にして

 

 楽しい時間を与えて

 

 幸せな気持ちにさせてくれる

 

 だからもっともっと

 

 ドーナツの良さを……

 

 あ、間違えた

 

 アイドルの良さを

 

 ファンのみんなに伝えたいな

 

 そして

 

 大好きな人に褒めてもらいたい!

 

 ―――――――――

 

「んふふ、んふふふ〜♪」

 

「ど、どうしたんだろ、法子ちゃん?」

「お手紙を読んでから、ずっとあの調子ですね……」

 

 皆さん、こんにちは! 大阪出身、中学1年生でドーナツ大好きアイドルの椎名法子です!

 今、あたしはメロウ・イエローのみんなと次のライブのためのレッスンを終えて、事務所に戻ってきたところ。

 それでちひろさんからあたしたちそれぞれ宛にきたファンレターを受け取って、それを休憩室で読んでるところなんだ。

 

 あたしがどうして笑ってるのかというと、今読んでるファンレターはあたしのファン第一号になってくれた女の子からのファンレターだから。

 その子はあたしがアイドルになって初めてのお仕事で知り合った女の子で、たまにその子のお父さんと一緒にライブにもイベントにも来てくれるの!

 

「えへへへ、なんか嬉しいなぁ♪」

 

「浸ってるとこ悪いけどさ、ちょっと不気味だよ?」

 

「はわっ、ご、ごめんね、嬉しくてつい……」

 

 有香ちゃんに注意されちゃった……てへへ。

 

「ドーナツを食べている時くらい幸せそうにしてましたよ」

 

「あぅ……」

 

 ゆかりちゃんにまで……これはちょっと恥ずかしいかも。

 でもファン第一号の子からのファンレターだもん。嬉しいに決まってるじゃん! だったらニコニコしちゃうじゃん!

 

「ゆかりちゃん、ドーナツを食べてる時だけじゃないよ。プロデューサーさんに褒められてる時が抜けちゃってるよ」

「あら、確かにそうですね♪」

 

「ちょ、ちょっともう、二人共〜!」

 

『あははは♪』

 

 もう、すぐにプロデューサーのこと言うんだからぁ。

 

 実はあたし、専属プロデューサーとお付き合いしてるの。遊びとか設定とかじゃなくて、本気で。

 プロデューサーとドーナツどっち取るのって言われたらプロデューサーって言えるくらい好きなんだから!

 でもあたしってまだまだ子どもだし、プロデューサーに迷惑かけちゃうから、あたしたちの関係を知ってるのはこの二人だけ。

 

 自分でもプロデューサーに恋するなんて思ってなかったし、恋すらするのもまだまだ先のことだと思ってた。

 でもなんて言うのかなぁ……プロデューサーがあたしをスカウトしてくれたから今のあたしがあって、プロデューサーに出会わなかったらこれまでの素敵な時間が過ごせてなかったってことだから、プロデューサーがどれだけあたしにとって不可欠なのか計り知れないの!

 

「それにしても、あの法子ちゃんがこんなにプロデューサーさん大好きっ子になるだなんてね」

「今はドーナツを差し置いてでもプロデューサーさんですからね。最初それを聞いた時は天変地異の前触れかと思いました」

「あたしってそんなにドーナツドーナツしてる〜?」

 

 確かにドーナツは好きだし毎日欠かさずに最低でも5個は食べてるけど、そんなにドーナツドーナツしてないと思うんだよね。

 なのに―――

 

『してる(ます)♪』

 

 ―――二人は即答。そんなことないのにぃ。

 

「そんな法子ちゃんが今はプロデューサーさんプロデューサーさんって状態だから、不思議なんだよ」

「同時に恋というのはこれほどまで女の子を変えてしまうのかと、驚いてもいます」

「だってプロデューサーのこと大好きなんだもん。仕方ないじゃん」

 

 ドーナツは今じゃコンビニに行けば大抵は手に入るけど、プロデューサーはプロデューサー1人しかいないんだよ? だったらプロデューサーを優先するのが普通だと思うだけど……。

 

「あはは、法子ちゃんはかわいいねぇ♪」

「だからプロデューサーさんも法子ちゃんの可愛さに首ったけなのでしょうね」

「もう二人共〜!」

 

 もう恥ずかしいから止めてー!

 

 ―――――――――

 

「って感じでさ〜、二人にからかわれてとっても恥ずかしかったんだよ〜?」

「そうなのか。よしよし」

「〜♡」

 

 あれからもずっと有香ちゃんとゆかりちゃんにからかわれまくったあたしだったけど、プロデューサーたちが迎えに来てくれたから助かった!

 それで今はプロデューサーに慰めてもらってる。

 

 まだ事務所内だけど、ここはプロデューサーが使ってる個室だからちょっとくらいくっついてても問題ないんだ。

 やっぱりプロデューサーにぎゅーってしてもらいながら頭をよしよしってされるの好き♡ 体がタコさんみたいにへにゃ〜ってなって、プロデューサーのことしか考えられなくなっちゃうの♡

 まあ付き合う前からあたしはプロデューサーのことばっかり考えてるけどね……♡

 

「プロデューサー、今日のお仕事はまた残業?」

「いや、今日は定時だ。次のライブでの話も無事にまとまったから」

「そうなんだ! お疲れ様!♡」

「あんがと。まあ来週からは次に使うライブハウスを見に行ったりなんだりするからまた残業の日々に戻るんだけどな」

「そうなの? プロデューサー、無理しないでね? プロデューサーが倒れちゃったら、あたし泣いちゃうよ」

「休むべき時に休んでるから大丈夫だよ。あんがとな」

 

 ポンポンっ

 

 んゆぅ……プロデューサー、またよしよしってしてくれた♡

 

「それで、定時で上がる訳だが……」

「?」

「どっかデートでもしに行くか?」

「いいの!?♡」

「まあせっかく時間が空いたからな」

「行く行く!♡」

「ん、了解。んじゃ、残りの仕事終わらせちまうから、法子はそれまでどこ行きたいか考えといてくれ。あと親御さんにも『友達とご飯食べて帰る』とか連絡入れとけよ?」

「はーいっ♡」

 

 やったー!♡ 久々にプロデューサーとデートだー!♡

 アイドルとプロデューサーだし、色々と忙しいから普通のカップルみたいにデートは出来ないけど、こうしてたまにでもデート出来るとそれだけで幸せな気分になっちゃうよ♡

 

 こうしてあたしはルンルン気分のまま、ソファーでおやつのドーナツを食べながらプロデューサーのお仕事が終わるのを待ってた。もちろんその間にお母さんにもメールしといた!

 

 ―――――――――

 

「…………で、何がどうしてこうなった?」

「? あたしがプロデューサーといっぱいくっついていたかったから!♡」

 

 定時で上がったプロデューサーはあたしの希望通り、プロデューサーが暮らすマンションのお部屋に連れてきてくれたよ♡

 お外で食べ歩きをしたり、レストランで食事をしたりするのも良かったんだけど、やっぱりプロデューサーとゆっくり二人きりの時間を過ごしたかったから。

 それに最近のプロデューサーは残業ばっかりで疲れてるだろうし、お家デートならあたしはプロデューサーにくっつけるし一石二鳥だよね!

 

「法子は本当にまっすぐで眩しいなぁ」

「そうなの?」

「あぁ、俺には勿体無いくらいの彼女だよ」

「それを言うならプロデューサーもだよ? カッコいいし、優しいし、甘やかしてくれるし、美味しいドーナツ差し入れしてくれるし……」

「ドーナツは別に関係ないだろ」

「あるよ! ドーナツだよ!? プロデューサーのドーナツ眼はピカイチなんだから!」

 

 ドーナツ眼……それはこの世に沢山あるドーナツの中でも、とびきり美味しいドーナツを見分ける眼のことを言うのだ!

 そしてそれはドーナツを愛する人しか持ってないスキルなんだからね! 誇っていいよプロデューサー!

 

「何を言ってるのか俺には理解出来ないが、んな眼を俺は持ってない。ただ……」

「ただ?」

「ただ、法子をずっと見てたから法子が好きそうなドーナツなら分かるようになっただけだ」

「な、なるほど……♡」

 

 どうしよう……それはそれで嬉しい♡ というか、そんなこと言われると照れちゃうよぉ♡

 

「んへへへへぇ、プロデューサー、好きぃ♡」

「お、おう……俺も好きだよ」

「〜〜〜♡」

 

 もう我慢出来ない……プロデューサーにもっと抱きついちゃお♡

 

 むぎゅっ♡

 

「っと……な、なんだよ、急に?」

「好きって気持ちが溢れてどうしようもないから♡」

「そ、そうか……」

 

 あ……プロデューサーも両手をあたしの背中に回してきてくれた♡

 男の人だから、プロデューサーが力を入れて抱きしめると、ちょっと苦しい。でも全然嫌じゃないのが不思議なんだよね。

 苦しい……でもその"苦しい"はプロデューサーが抱きしめてるからなのか、あたしの胸がドキドキしてるからなのかは分からない。

 まあどっちでもいいんだけどね。幸せなことには変わらないし、ぎゅーってされるのは好きだから♡

 

「プロデューサー♡」

「ん〜?」

「ちょっと、首筋噛んでもいい?♡」

「またか……まだこの前噛まれたとこ歯型残ってんだぞ?」

「じゃあ、今度は吸うだけにする!♡」

「どっちにしても痕残るじゃないか」

「だってぇ、ぎゅーってしてるとプロデューサーの首筋噛みたくなるんだもん……♡」

「ドーナツの次は俺か……」

「プロデューサーがあたしを惚れされたのがいけないんだからね!♡」

「へいへい……幸せな悩みってことにしますよ。お好きにどうぞ」

「やった♡」

 

 はむっ♡

 

 どういう訳か、プロデューサーの首筋が欲しくなっちゃう。なんかプロデューサーの体にあたしだけが分かる痕跡があると、安心するっていうか……この人はあたしのだよってみんなに言ってるみたいな気分になって止められない。

 プロデューサーが困るなら我慢するけど、なんだかんだ言ってさせてくれるからあたしもそれについ甘えちゃう♡

 

「………………ぷはぁ♡」

「女子中学生にキスマークをつけられる20代後半男性って……明らかに逮捕されそう」

「えっちなことはしてないから大丈夫だよ♡」

「それはそうなんだが……」

「それにプロデューサーがあたしのこと本当に大切にしてくれてるの、ちゃんと分かってるよ♡」

「そりゃあな」

「だからキスマークくらい大丈夫!♡ それにキスマークがあってもあたしがつけたなんて、有香ちゃんとゆかりちゃんにしかバレないよ♪」

「余計にからかわれるんじゃないか?」

 

 あ、確かにそうかもしれない……しまったぁ。

 でもまあいいっか。そうなったらなったでプロデューサーとあたしはラブラブだもんって開き直っちゃえば♡

 

「開き直っちゃえばいい!♡」

「法子のそういうとこ、好きだよ」

「……なんか馬鹿にされた気がするぅ」

「してないしてない」

「納得いかないから、また歯型残す!♡」

「ちょ、こら、止めろっ」

「やだ〜!♡」

 

 こうしてあたしは嫌がるプロデューサーに無理やりまた歯型をつけて、門限ギリギリまでうんと二人だけの時間を過ごしたよ♡―――

 

 椎名法子*完




椎名法子編終わりです!

ドーナツ大好きアイドルも恋人の前では恋人に首ったけってことで!

お粗末様でした☆

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