デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。
過去のことは不明な点が多いのであまり触れません。ご了承ください。



白雪千夜編

 

 当初はただの戯れだった

 

 いつものように

 

 お嬢様がやれといえば

 

 それをやる

 

 お嬢様が飽きたとなれば

 

 それをやめる

 

 なんの変哲もない

 

 機械のように指示に従う

 

 それだけで十分だったのに

 

 最近では機械じゃないのだと

 

 つくづく思わされている

 

 ―――――――――

 

「様ぁないですね」

「明日には回復してやる! 今に見てろ!」

「だからわざわざこうして手間を掛けて看病にきてやっているではないですか。これだから単細胞生物は」

「たかだか37度の微熱で無理矢理仕事休ませて、ベッドに縄で括り付けて、その言い草の方がおかしいだろうが!」

 

 はぁ、全くうるさい病人ですね。

 あ、どうも。私は白雪千夜。アイドルをしています。

 そして今日は仕方なく私専属プロデューサーの看病をしています。お嬢様も許可をすぐにくださいました。それだけ私はコイツが……白状すると大切なので。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 最初は本当にやる気なんてなかった。

 アイドルなんて華やかなもの。

 そんなの自分とは正反対だと思ってた。

 

 でもお嬢様が一緒にと言ったので、仕方なくなりました。

 それで私にあてがわれたのが、今のプロデューサーです。

 

 私の世界に必要なのはお嬢様。ただそれだけ。

 だからわざわざ他人に頼る必要はない。

 

 なのに、彼といると心地よくなっていく自分がいた。

 

 話す言葉は汚く、品なんて微塵もない。

 とても単純明快で裏表がない。

 私を華やかな人間じゃないとちゃんと知っている。

 

 その上で私をアイドルにした彼を、私は尊敬した。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そして腹立たしいことに、ヤツに惚れてる自分がいたんです。

 でも気にしません。お嬢様は常々―――

 

『千夜ちゃん、可愛いんだから、いい人見つけなさいよ♪ あ、でも僕ちゃんとしては離してあげないからそのつもりで☆』

 

 ―――なんて言ってましたし、事務所に話す義理もありません。どうせアイドルは今だけでどうなっても適齢期を迎えれば辞めますから。

 だからあとは私がしたいようにするだけです。

 ヤツに私の愛を受け入れさせ、愛の鎖で縛る。それだけ。

 だから今も彼女として病床のコイツを献身的に看病しているのです。

 

「リンゴです。私がわざわざそこのスーパーに足を運び、わざわざ数分間もの間吟味して、わざわざ私のポケットマネーで買ってきた見切り品です。ありがたく食いやがりなさい」

「リンゴ丸ごとかよ、せめて剥いてくれよ……てか、袋からすら出してくんねーのかよ! それより大層な言い回ししてるが、見切り品なんだろ! おおんっ!?」

「猿がキーキャーと煩いですよ。それとも猿だからバナナ希望ですか? 別に猿は雑食なのでバナナじゃなくてもいいんですよこの野郎。それに残念なことにバナナの見切り品はなかったんですよ。グルメ(笑)な猿はこれだから困ります」

 

 やれやれ、ってやつです。熱で怠そうにしてるくせにやたらテンションが高い。いつものことですが……。

 これはもしや彼女である私がいるからなのでしょうか? 全く、本当に可愛くてうるっさい猿さんですね。ふふふ。

 

「頼むから人の話聞けよ……」

「バナナが良かったって話ですよね? ちゃんと聞いてますよ。お前と違って私は人間なんですから」

「バナナの話なんてしてねぇしーっ! リンゴ渡すなら皮剥いてって話をしてんだよーっ!」

「どうして私がそこまでしてやらなきゃいけないです? お嬢様のためなら剥きますが、お前のために使う技術などアイドルの技術しか持ち合わせていません」

「ならとっととこの縄解いて帰れよ! 俺は自分の仕事行くから!」

「熱があるのに何をふざけたことを……。いいですか? お前はプロデューサー。しかもそこそこ底辺の。日頃から満足なパフォーマンスを見せていない上に熱で余計にパフォーマンスが低下している。なのに仕事をする? 余計に私の仕事を増やすなこの猿っ!」

 

 お前は大人しく私の庇護下にいればいい。私の無償の愛を受ければいい。そうそれば明日にはそんなバカでも引かない風邪を治してやりますから。

 

「猿猿言うな! ったく、もういいよ、リンゴ寄越せよ。自分で剥く」

「そう言って私がはいそうですかとお前にリンゴをやすやすくれてやるとでも?」

「じゃあどうすりゃくれんだよ?」

「……口づけすれば渡します」

「へ?」

「口づけです。キスです。接吻です」

「…………どうしてそうなる」

「風邪は人に移すと治ると古来より―――」

「―――いやいや、そういうことじゃなくてよ! こんな雰囲気めちゃくちゃなのによくもキスしてくれなんて言えたな!? 余程のメンタルないと言えねえぞ!?」

「いいからさっさと口づけしやがれこの野郎。こっちはさっきから口づけしたくて辛抱強く待ってやってるんですから」

「急に押してきやがったな!?」

 

 何をつまらないことをほざいてやがるのでしょうか、コイツは。

 ベッドの上に火照った恋人がいればもう十分ゴーサイン出ているではありませんか。正直、こうして言い争ってる時間も惜しいくらいです。

 面倒なので1発かましますか。

 

「ちゅっ♡」

「んむうっ!?」

 

 んむうとか女の子ですか。可愛い。

 

「ぷはぁ……ナイスです♡」

「ナイス、じゃねーよ! するにしてもソフトなのにしろよ! もろに舌絡めてのディープなんかして! 移ったらどーすんだよ!」

「お前の体内の免疫細胞と私の体内の免疫細胞を一緒にしやがらないでください。私の体内の免疫細胞の方が優秀に決まってますから、お前が引いた程度の細菌くらい余裕で殺せます」

「するならもっと甘い雰囲気でしろやー!」

「はぁ? 恋人と2人きり、ベッドの上、相手が弱ってる、私萌える……最高の雰囲気じゃないですか。どこまでアホなんですか? 頭に脳味噌詰まってますか、本当に?」

 

 それに風邪を引いたら引いたで、コイツに責任をもって私の看病をさせてあげればいいだけのこと。今回もそうですが、そうなるとお嬢様に一部始終をご報告しないといけませんが、もうそれも慣れましたし。

 何にしても、好きなコイツと2人きりという時間が作れれば私は一向に構いません。仕事してるとなかなか2人の時間を捻出するのが大変ですから。

 

「お前ってやつは……!」

「それよりもう剥きましたよ。早く食べないと酸化して味が落ちます。さっさと食いやがれです」

「お願いします。人の話を聞いてください」

「分かりました。全く、甘えん坊な彼氏を持つと大変ですね」

 

 たかだか37度の微熱とか言っておいて、口移しじゃないと食べられないだなんて……困った彼氏ですよ全く。

 

 私はリンゴを口に含み、ある程度のペースト状にすると、何か未だにブツブツとぼやいていたヤツの口に流し込みました。

 ここまでしてあげるのは私くらいでしょうね。全く、私がいないとコイツはとんだダメ人間です。

 

「ゴクン……お前さ」

「飲み込みましたね。それでは次を―――ちゅっ♡」

「んむーっ!」

 

 ―――――――――

 

 はぁ、大の大人(33歳)が17歳の女にリンゴ全部(3個)を口移しで食べたいだなんて。とんだ甘えん坊です。だから愛おしく思うのかもしれませんね。今だって食べ終わって放心状態ですし。

 

「………………」

「そんな顔してもおかわりはありませんよ? ほら食後のお薬を飲みやがれください」

 

 おや、随分と素直にお薬は飲むんですね。いいことです。

 

「……もう寝る」

「どうぞ」

「……千夜は帰れ」

「無理です。風邪が治るまでここにいます。お嬢様の許可も得てます」

「……もうやだ。いい年こいたおっさんが17の女に良いように弄ばれるだなんて……」

「はぁ、今度は添い寝ですか。全く、どこまでも甘えん坊さんですね」

「違う! そんなこと言ってねー!」

「もうやだと言ったのはお前です。ほら、優しい彼女が献身的に今から添い寝をしてやりますから」

「だからそんなこと―――」

「―――それでは失礼しますね」

「人の話聞いてー!」

 

 ―――

 

「…………」

「…………」

 

 ご希望通り、拘束を解いてから添い寝をしてあげているというのにこの猿は何が不満なのでしょうか?

 さっきから私に背中を向けています。不快です。ここは無条件に喜び、むせび泣き、私の胸に顔を埋めるのが普通なのに。

 私の胸が小さいからですか? いや、そんなことありませんね。つい先日もいっぱい吸わせてあげましたし、本人も進んで吸いに来てましたから。

 では何がいけないのでしょう? 後ろからのぎゅうをご所望? 全くどこまでも困った猿です。

 

「おい、こっちを向けください」

「言葉遣い変になってんぞ?」

「お前が素直に甘えないからです」

「いやだからさ、俺の話聞いてた?」

「聞かなくてもお前の思考は短絡的過ぎて手に取るように分かります。だから早くこっちを向けください」

「いい、このまま寝る」

「ちっ」

「おい、今舌打ちしたな?」

「お前が面倒だからですよ」

 

 全く、仕方ないですね。

 

 私は仕方なく布団の中で猿の上を乗り越え、くそせっまい猿の前に潜り込みました。猿はそれが嬉しいのか、私の行動に震えて歓喜し、言葉を失っています。悔しいけど可愛い。

 

「おい」

「困った猿ですね、お前は。私が彼女じゃなかったらフラれてますよ」

「だから」

「ほら、抱きしめててあげますから寝なさい。そして寝ている間私に好きなようにやられてなさい」

「ねぇ」

「寝るまでこうしてほっぺすりすりしててあげますから」

「ねぇってばぁ!」

「……ちっ、なんですか?」

 

 ここまでやってあげてるのにまだ他に要求があるんですか? ほっぺじゃなくて口づけがいいとか? それだと寝難いだけだと思いますが?

 

「風邪移るから、マジでもう帰れよ。俺のせいで千夜が風邪引くとか本気で嫌なんだよ」

「引きませんよ。さっきからそう言ってますよね。バカですか?」

「わかんねぇだろ、そういうの。風邪なんて誰だって引くんだからさ」

「でも私は引きません」

「なんでそう言い切れるんだよ?」

「お前を愛しているからですよ」

「え、それ今関係ない」

「私にはあります。それにそもそもお前が『愛があればなんだってやれる』ってバカの1つ覚えみたいに言って、私をステージに立たせているんですから」

 

 だから私もそれをバカの1つ覚えみたいに実行してるんですよ。そんなことも分からないのですね、流石くっそ可愛い愛しの私だけの猿。

 

「ほら、分かったなら早く寝てください。寝ればあとは私の好きにさせてもらうので」

「…………寝る」

「おやすみなさい♡」

 

 それから程なくして、コイツはすぐに眠りに就きました。

 なので私はそんな彼の寝顔を堪能し、存分にそこら中に口づけをし、最高の時間を過ごさせて頂きました―――。

 

 白雪千夜*完




白雪千夜編終わりです!

クーデレというか罵りデレっぽくなりましたが、ご了承を!

お粗末様でした☆
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