デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


涼宮星花編

 

 アイドルは難しい

 

 そう思っていた時期があります

 

 しかしそれはわたくしが

 

 アイドルを知らなかっただけで

 

 アイドルもヴァイオリンと同じ

 

 やればやるほど上達し

 

 多くの方々を

 

 笑顔にすることが出来ます

 

 そのことを教えてくれたのは

 

 偉大な魔法使い様なのです

 

 ―――――――――

 

「…………星花」

「はい、どうしました、プロデューサー様?♡」

「…………ここはどこだ?」

「はて、プロデューサー様はおかしなことをお訊きしますね?」

「…………いや、だってなぁ……俺は事務所の仮眠室で寝てたはずなのに、目が覚めたら知らない部屋にいて、しかも目は覚めてるのに未だ身体は動けない状態でベッドに寝かされてるんだぞ?」

「それならば大丈夫ですわ。いずれお薬の効果もなくなって動けますから♡」

「動けますからって言われてもなぁ……」

 

 わたくし、涼宮星花は日頃お世話になっている愛しの専属プロデューサー様へ感謝のしるしとして、サプライズプレゼントをしています。

 そのプレゼントはわたくしとプロデューサー様だけが使える湖畔の見える質素なお屋敷です♡

 

 プロデューサー様はわたくしのフィアンセ……今はまだアイドルとプロデューサーという肩書きをお互いに背負う身として、大々的には公表していませんし、事務所にも秘密にしています。それでもわたくしの家族にご報告し、正式に認められています。

 わたくしがこうしてアイドルとして成功出来たのも、お父様やお母様、そして妹がわたくしの成功を大変喜んでくれたのも、全てプロデューサー様のお陰。

 ならばわたくしがプロデューサー様へ何か恩返しをするのは至極当然のことでありませんか? ですからわたくしはお休みの日に二人きりで過ごせる、このお屋敷をプレゼントするためにサプライズを計画し、今日実行したのです♡

 

 でも、プロデューサー様がなかなか起きてくださらなかったので、色々と我慢するのが大変でしたわ。わたくしをこんな風にしてしまったプロデューサー様を本当に恨めしく思うと同時に、プロデューサー様色に変わってしまったことにこの上ない幸福感を募らせてしまいます♡

 

「そもそもここって本当にどこなんだ? 日本?」

「はい、ちゃんと日本ですわ。流石にお父様も海外には土地を持っておりませんから」

「? 土地?」

「はい、ここはわたくしとプロデューサー様だけが使用出来るお屋敷ですの♡」

「あぁ、お屋敷ね、俺たちだけの…………えぇぇぇぇぇっ!?」

 

 ふふふっ、プロデューサー様ったら、そんなに喜ばれて……わたくしまで嬉しくなって胸の鼓動が早くなってしまいますわ♡

 

「お屋敷って!? えぇっ!? どういうことだ!?」

「ですから、わたくしとプロデューサー様だけのお屋敷です♡ ここなら誰にも邪魔されずに、心ゆくまで二人きりで過ごせますのよ?♡」

「いつの間にこんなの建てたんだ?」

「お父様に少しだけご助力をお願いし、わたくしが持つ資産で建てましたわ」

「資産……」

「あ、プロデューサー様は何もご心配なさらなくていいですわ。ちゃんとこれからのことも考えた上で計算し、出せる資産内から建てましたから」

「………………」

「ですが、わたくしが不甲斐ないことに実家の洋館のようには建設出来ず、二階建てでコテージ式の質素なお屋敷しかご用意出来ませんでした」

「……もういい。もう何も言わないでくれ」

(俺の小石クラスのプライドが植物プランクトンクラスになってしまう……)

 

 プロデューサー様、あんなに涙を堪えて……。そこまでわたくしのサプライズを喜んでもらえたならば、これ以上の喜びはありませんわ♡

 あぁ、本当ならばもうプロデューサー様の胸に顔を埋めて愛を囁き合いたい……ですが、まだこのお屋敷の説明が終わってませんからね。もう少しの辛抱です。

 

「プロデューサー様?」

「まだ何かあるのか? もう何を聞かされても驚かないよ」

「そろそろお薬の効果もなくなったと思いますので、お身体が動かせるようでしたら一緒にお屋敷の中を見て回りませんか?♡」

「…………うん、動くよ。じゃあ行こうか」

「はい♡」

 

 あぁ、プロデューサー様の逞しい左腕……ここだけでなく、プロデューサー様の全てが愛おしく思えますわ♡

 

 ―――――――――

 

 寝室を出たわたくしたちは先ずお屋敷の外へとやってきました。やはり外観をお見せしておかないといけませんからね。

 

「…………自分が不甲斐なくて今にでもあの湖畔に飛び込みたい気分だ」

「まだ水温は冷たいですからダメですわ」

「…………しっかし、本当ここ日本のどこだよ?」

「わたくしの地元である岐阜ですわ♡」

「え、岐阜?」

「はいっ♡ いつでもSPさんたちに自家用ヘリで連れてきてもらえますわ♡」

「………………」

 

 またプロデューサー様ったら涙を堪えて……本当にプロデューサー様は感動屋さんで可愛いですわ♡

 

「お掃除の方は特別に日本メイド協会から定期的に派遣されてくるメイドさんたちがしてくれます。食料の方もその時に入れ替えてもらえるのでご安心ください♡」

「料理は一流シェフが?」

「そうしたいのでしたら呼びますわ♡ しかし……」

「……しかし?」

「プロデューサー様のお口に入るお料理は、出来れば全てわたくしが自分の手で作って差し上げたいのです♡」

 

 わたくしはプロデューサー様の妻となる女……でしたら夫のために手料理を振る舞うのが当然ですわ。お母様だってお父様のために毎日キッチンに立っていましたもの。それにお母様直伝の肉じゃがやだし巻き卵だって完璧にマスターしていますから!

 もちろん事前に調べておいたプロデューサー様のお好きなお料理の数々もそれぞれの味のお好みもプロデューサー様のお母様から教えてもらっていますから完璧に再現出来ますわ! それもこれもプロデューサー様に対するわたくしの愛ですわ!♡

 

「…………もう俺の存在価値ないな」

「そんなことありませんわ! プロデューサー様は生きて頂いているだけで……いえ、肺呼吸をして頂いているだけで存在価値がありますわ! わたくしをアイドルとして成功させたのはプロデューサー様なのですよ!?」

「ありがとう……ちょっと元気出た」

「ちょっとではわたくしが嫌です。どうしたらもっと元気が出ますの?」

「俺に言われてもなぁ……」

「では、少し失礼しますわ」

「え――」

 

 ちゅっ♡

 

「――んはぁ……えっと、わたくしがプロデューサー様にされたら元気が出ることを、試してみました……はぅ♡」

 

 流石にわたくしからというのははしたなかったかもしれませんね。嫌われたらどうしましょう……もしそうなってしまったらこの先、わたくしは生きていけませんわ。

 

「自分でやっといて照れるなよ……ありがと」

「っ……はいっ♡」

 

 あぁ、はにかんだその表情……自我を保つのでやっとですわ♡ どうしてプロデューサー様はこんなにもわたくしを惑わすのでしょう♡ 胸が苦しいのに幸せでいっぱいですわ♡

 

「中を改めて案内してもらってもいいかな?」

「はいっ、もちろんですわ♡」

 

 ―――――――――

 

 再びお屋敷の中へと入ったわたくしたち。説明をするわたくしのお話をプロデューサー様はうんうんと頷きながら聞いてくれています。

 しかし自分で説明していても実家と比べて少々凹んでしまいますわ。

 

「ここがキッチンですわ」

「流石オール電化住宅だなぁ。使いやすそう。これはレンジ?」

「それは過熱水蒸気オーブンレンジですわ。下ごしらえさえしてあれば、油を使うことなく揚げ物が出来ますの♪」

「ひぇ〜……」

 

 ふふふっ、目を輝かせて可愛いですわ♡

 

「? ここの台のとこだけ何も置かれてないけど? 食材切ったり、水洗いしたりするにはちょっと遠いし、何かこれから置いたりするのか?」

「あ、そこはプロデューサー様がわたくしを食べる際にわたくしがそこに手をついたりする時に使うスペースですわ♡」

「んぉ?」

 

 もう、プロデューサー様ったら♡ わたくしからそんな破廉恥な説明をされるなんて、エッチですわ♡

 

「な、なんでそんなスペース作ったんだよ……」

「だってプロデューサー様、お好きじゃないですか……その、裸エプロン♡」

「うぐっ……ななな、なぜしょれを」

「フィアンセのご趣向を知るのは当然ですわ♡ それに、わたくしも興味はありますし……プロデューサー様に求められるなら、わたくしはその全てにお応えしたいのです♡」

「………………」

 

 そんな熱い眼差しでわたくしを見ないでください♡ 早速食べてほしくなってしまいますわ♡

 

「ほ、ほら、ここでなら後ろからでも平気ですし、ここに上がれば向き合って出来ますわ♡」

「…………星花」

「は、はい?」

「あとでしてもらってもいいかな?」

「っ……はいっ♡」

「じゃ、じゃあ、次のとこの説明を頼むよ。ここにいたら変な気持ちになるから」

「は〜い♡」

 

 わたくしはもう変な気持ちになってしまってますが、プロデューサー様のご意思が最優先ですわ♡

 

 ―――――――――

 

「…………」

「…………♡」

 

 一通りご説明を終えたわたくしはプロデューサー様とリビングのソファーに肩寄せ合って座っています。

 ただこうして座っているだけですのに、何か特別なことをしているみたいな高揚感がわたくしを浮足立たせます。

 愛する方と同じ時を過ごすのは本当に尊いことなのですね。

 

「まさかどの部屋でもアレが出来るようになってるとは思わなかったよ……」

「プロデューサー様のご趣向を考慮した結果ですわ♡」

「無理に俺に合わせる必要ないんだぞ?」

「合わせるだなんてとんでもない。わたくしはプロデューサー様が望むならば、いつだってお応えしたいのです♡」

「……自分がどうしようもないド変態みたいに思えてきたよ」

「まあ、それはいけませんわ。プロデューサー様はわたくしの最高の夫なのですから♡」

「ありがとう」

「もう息を吸ったり吐いたりするだけでも体力を使いますのに、それでもなお肺呼吸をしていて偉いですわ♡」

「それ褒められるべき点か?」

「はいっ♡ プロデューサー様は生きているだけで偉いですわ!♡ わたくし、涼宮星花が保証しますわ!♡」

 

 もう本当ならばプロデューサー様をこのままこのお屋敷に置いて、わたくしと死ぬまで一緒に過ごしていてほしいです。そもそもプロデューサー様を養えるくらい何通りものプランがありますから♡

 

「俺、頑張って星花が自慢出来る人間になるよ。だからこれからも全身全霊でプロデュースするから」

「はいっ♡」

 

 しかしプロデューサー様の今の目標はわたくしとは違う。ですからわたくしは愛するプロデューサー様のために尽くすのです。

 これまでもこれからも……死ぬまで♡

 

「ではプロデューサー様、早速どこで致しましょうか?♡ わたくし、もうプロデューサー様がほしくて切ないですわ♡」

「えっと……なら、先ずはキッチンからで……」

「エプロン用意してきますね♡」

 

 しかし今だけはわたくしのわがままにプロデューサー様を振り回させていただきますね♡―――

 

 涼宮星花*完




涼宮星花編終わりです!

星花ちゃんは天然気質なとこがあるのでイケイケドンドンな感じが合うと思ってこうなりました!

お粗末様でした☆

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