デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


関裕美編

 

 目つきが悪いってよく言われた

 

 笑顔を作るのも苦手で

 

 集合写真やなんかの時は

 

 決まってカメラから

 

 必ず顔を逸らしてた

 

 でも今は少しだけ

 

 自分でも笑顔が出来ると思う

 

 そう思えるのは

 

 私を笑顔にする

 

 魔法使いがいるから

 

 ―――――――――

 

「はい、これでラストで〜す!」

 

 パシャ

 

「お疲れ様でした。確認作業に入るので、"GIRLS BE NEXT STEP"の皆さんは控室で休憩してください」

『はいっ』

 

 今日の私のお仕事はユニットのみんなで今度やる、ライブの宣伝ポスターや物販に出すポスターやブロマイドの撮影。

 半年前の私なら宣材写真撮るだけでも緊張してたけど、最近では撮られるのも怖くない。それに今日は普段からプライベートでも仲良しのユニットのみんなとだからいつも以上にちゃんとした笑顔を浮かべることが出来たはず―――

 

 ―――――――――

 

 ―――なんだけど……。

 

「………………」

 

 どんなに私が出来てると思っててもプロの目から見たら出来てないかもしれない。だからついつい私はネガティブなことを思い浮かべてしまう。

 

「裕美ちゃん、またムッて顔してるよ?」

「私も人のことは言えませんが、大丈夫ですよ。それにダメならまた撮ればいいんですから」

「わ、私もそう思います。それに今回は機材トラブルもありませんでしたから……」

 

 そんな私にメンバーの泰葉ちゃん、千鶴ちゃん、ほたるちゃんは優しい言葉をかけてくれた。

 

「うん、ごめん……それとありがとう」

 

 だから私はちゃんと笑顔をみんなに返した。

 すると、

 

「それに今日の撮影は裕美ちゃんがだ〜い好きな専属プロデューサーさんも一緒なんだから、ちゃんとフォローしてくれるよ♪」

 

 泰葉ちゃんがにやにやしながら私の眉間をツンツンってくる。

 

「ぷ、プロデューサーさんを出す意味が分かんないよっ!」

 

 だから私は咄嗟に泰葉ちゃんへそう返したんだけど……

 

「何も恥ずかしがる必要はないのでは? 事実なんですから」

「裕美ちゃんのプロデューサーさんならきっと大丈夫ですよ」

 

 ……千鶴ちゃんもほたるちゃんも私のプロデューサーさんなら大丈夫とか言ってくる。

 

 私は自分専属のプロデューサーさんと1か月前に付き合い始めた。

 アイドルとプロデューサーだし、そもそも歳も一回り違うんだけど、みんなから背中を押されて告白したらOKしてくれたんだ。それだけで夢みたいなのに、この前初めて……その、ちゅ、ちゅうも出来て、本当に幸せいっぱい。

 泰葉ちゃんたちも私たちの関係がバレないようにフォローしてくれるし、ほたるちゃんに至っては『キューピッドになれて私の方が幸せな気分です』って喜んでた。

 

 それで次のライブを企画したのが私のプロデューサーさんだから、今回は私たちの撮影に同行してる。撮影中も見守ってくれてて、私はその都度顔が緩みそうで大変だった……。

 

 ガチャ

 

「関〜、ちょっといいか〜?」

 

 あ、噂をすればプロデューサーさんが入ってきた。

 

「な、何?」

 

 みんなして意味深ににやにやしてくるから手短に済ませてよね。

 

「ブロマイドでもう一枚別の表情が欲しいから、もう少しだけ頼む」

「ん、分かった」

「あ、言っとくけどダメだった訳じゃないからな? どれも可愛くて誰にも売りたくないくらいだ」

「わ、分かってるっ! みんなの前でいちいち言わなくてもいいからっ! わ、私先に行くからねっ!」

「ちょ、待ってくれよ!」

 

 パタン

 

「ふむふむ、相変わらず仲良しですね。あのお二人は」

「裕美ちゃん、お顔真っ赤でしたけど嬉しそうでしたね……」

「そりゃあ嬉しいでしょ♪ んじゃ、私たちは気長に待ってよ♪」

 

 ―――――――――

 

「はい、じゃあそのまま……いきま〜す」

 

 パシャ

 

 プロデューサーさんから言われた別の表情……それは私のしかめっ面だった。なんでもファンの中には私のしかめっ面も好きだと言ってくれてる人がいるみたいで、その人たちのためにこの表情のブロマイドも売るんだって。前よりはコンプレックスに思わなくなってるけど、本当に私のこんな表情でいいのかなって思っちゃう。

 なのに―――

 

「ダメダメ、もっと眉間にシワを寄せて! そう! そんな感じ! 可愛いぞ、関! カメラマンさん今です!」

 

 ―――プロデューサーさんは凄いノリノリで監督してる。まあ褒められてるから悪い気はしないけど、しかめっ面を褒められるのは複雑。それにプロデューサーさんから『可愛い』って言われると、嬉しくて顔が緩みそうになるから意外としかめっ面でいるの大変なんだから。

 

「どうですか、プロデューサーさん?」

「…………いいですね! この本人の意図とは違い、まるで人を怒ってくれてるみたいな表情! ゾクゾクしませんか!?」

「いやぁ、自分はそっちの気はないので……でもプロデューサーさんがそう言うのでしたらいいと思います」

 

 カメラマンさんに若干引かれてるじゃん、プロデューサーさん。というか、プロデューサーさんってMだったのかな? どっちかと言うと私をからかって楽しむSだと思うんだけど……。いつもちゅうする時おねだりさせてくるし……あれ恥ずかしいんだけどなぁ。

 

 ―――――――――

 

 しかめっ面のブロマイドも撮り終われば、みんなして今日のお仕事は終了。私のプロデューサーさんの運転で事務所に戻って上に報告して、メンバーはそれぞれ解散になった。

 私はというと、プロデューサーさんが使ってる個室でプロデューサーさんのお仕事が終わるのを待ってるとこ。実はこのあと初めてプロデューサーさんのマンションのお部屋にお泊まりするの。アイドル寮の人にはそれらしい理由をつけて外泊許可貰ってるし、お泊まりの準備もバッチリ!

 ただ、大人の恋人のお部屋にお邪魔する訳だし、もしかしたらプロデューサーさんはそのつもりかもしれないから、ちょっと緊張する。別に嫌な訳じゃないし……そもそもそうならないかもしれないし!

 

「関〜?」

 

「ひゃっ……な、何?」

 

「いや、眉間にシワが寄ってたからどうしたのかなって」

 

「べ、別に? ただ……」

 

「ただ?」

 

「……早くお泊まり行きたいなって、思ってただけ」

 

 これは嘘じゃないもん。本当に早くお泊まり行きたいもん。

 

「そっか。でももう少し待っててくれな」

 

「うん……♡」

 

 プロデューサーさんに笑いかけられると、私もつい笑っちゃう。恋って不思議。

 

 それから私は変に考え込まず、ソファーに座ってプロデューサーさんが終わるのを趣味のアクセサリー作りをしながら大人しく待ってた。

 

 ―――――――――

 

「はい、どうぞ」

「お、お邪魔します……」

 

 何回かプロデューサーさんのお部屋には来てるけど、今回はお泊まりってのもあってか妙な緊張感がある。あ、でもちゃんと帽子とマスクして変装はしてきたから、大丈夫。

 

「なんだよ、そんな改まって?」

「お、お泊まりは初めてだから……」

「あぁ、なるほど。じゃあ初めてらしく特別なお泊まりデートにしような」

「うん……えへへ♡」

 

 プロデューサーさんは慣れてるなぁ。まあ私と付き合うまでに誰かしらと付き合ってた経験もあるんだろうし、これくらい大人なら普通なのかも。

 それにいつも余裕があるプロデューサーさんってかっこいいし、安心する♡ いつでも頼れる存在って本当に大きいし、掛け替えない。そう思わせてくれたのもプロデューサーさんだし、プロデューサーさんだから私は恋をしたんだよね。

 

「プロデューサーさん」

「ん?」

「大好き……だよ?♡」

「な、なんだよ急に……」

「えへへ、言いたくなったから……♡」

「そっか、俺も裕美のことが大好きだよ」

「うん♡」

「それより早く中に入れ」

「あ、ご、ごめん」

 

 私、玄関先だったのも忘れちゃってた。うぅ……次から気をつけなきゃ。

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんのお部屋は男の人らしいお部屋。散らかってるのはお仕事が忙しいから仕方ないけど、コンビニのお弁当の残骸ばっかりなのはちょっと嫌。

 私のことは気に掛けてくれてるのに自分のことは二の次になってるのはいけないと思うんだ。

 

「プロデューサーさん、またコンビニのお弁当ばっかり……」

「自炊してる暇がなくてなぁ。でもカップ麺は極力避けるようにしてるんだから、譲歩してくれよ」

「……むぅ」

「そんなに眉間にシワを寄せてるとキスしちゃうぞ?」

「誤魔化しても許さないよ?」

「うぐ……」

 

 私が作ってあげられればいいんだけど、毎日は同棲とか結婚しないと無理だし……あ、そうだ。

 

「プロデューサーさん」

「は、はい……」

「今度から事務所で私がプロデューサーさんのために寮でお料理作ってきてあげるから、それを食べなよ」

「へ?」

「ほら、私一応寮のみんなとお料理したりするし、上京して来て響子ちゃんたちから色々教わってるから」

「…………」

「? 迷惑だった?」

 

 それならそうだと言ってほしい。プロデューサーさんに嫌われたくないもん。

 

「いや……嬉しいよ? ただ……」

「ただ?」

「……なんか奥さんみたいだなって思って、ちょっと感動が……」

「っ!?」

 

 な、何よ、それ! そ、そりゃあ、プロデューサーさんのために私が言い出したことだけどさ、お、奥さんだなんて……気が早いよぅ♡

 

「ば、ばか……♡」

「し、仕方ないだろ? そういうの初めての経験なんだ……」

「え」

 

 初めてなの? 前に付き合ってた人から手料理とかご馳走されたことないの?

 

「俺、裕美が思ってるほど経験豊富じゃないんだ。芸能界での経験なら豊富だが、こういう甘酸っぱいのはこれまで一度も……」

「ふ、ふーん……♡」

 

 じゃあ、私が初めてなんだ?♡ どうしよう、嬉しくて心臓爆発しそう♡

 

「じゃ、じゃあ、お泊まりデートも私が初めて?♡」

「も、もちろん……というか、彼女いたことなかったし、告白されたのだって人生初だったよ」

「そっか……えへへぇ…………そうなんだぁ♡」

 

 私、今の顔絶対に変。でも直せない。それくらい今の私は幸せ♡

 

「わ、笑うなよ……」

「ごめん……でも、嬉しいから笑っちゃうの♡ えへっ♡」

「っ……そんな可愛い理由、ずるいぞ」

「ごめんね♡」

 

 いつも余裕のあるプロデューサーさんのこんな顔も見れる私って今幸せな女の子なんだろうなぁ♡ プロデューサーさんを好きになって本当に良かった♡

 

「ね、プロデューサーさ……〇〇さん♡」

「こ、今度はなんだよ?」

「初めて同士だしさ、いっぱい一緒に初めてしようね♡」

「お、おう……」

「じゃあ何からしよっか?♡ あ、早速お料理作ってあげようか?♡」

「冷蔵庫に食材ない……」

「じゃあお買い物からだね♡ 行こ♡」

「あ、あぁ……」

「私の得意なお料理を〇〇さんのためにいっぱい作るから、プロデューサーさんも私のお料理をいっぱい食べてね?♡」

「うん……腹空ったし、めっちゃ食う」

「うん♡」

 

 それから私たちは初めてのお泊まりデートを私たちなりにうんと楽しんだの。お料理のこと以外にも一緒にソファーでまったりしたり、理由もないのにちゅうしたり、理由もないのに触れ合ったりして……あっという間に朝になってた。

 また大好きなプロデューサーさんのお部屋にお泊まりデートに誘われた時の為に、それまでにお料理のレパートリー増やしとかなきゃ♡―――

 

 関裕美*完




関裕美編終わりです!

関ちゃんは可愛い。なのでベタベタな純愛にしました!

お粗末様でした☆

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