デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。
んご少なめです。


辻野あかり編

 

 まさか自分がアイドルになんて

 

 思ってもいなかったんご

 

 だってさだってさ

 

 アイドルって可愛い子とか

 

 キレイな子がやるお仕事だもん

 

 だからスカウトされた時に

 

 すっごく驚いたけど

 

 それ以上に嬉しかった!

 

 でも今はね

 

 嬉しい波がとっても来てるんご!

 

 ―――――――――

 

「ん〜、疲れた〜」

「アイドルって何気にハードだよね。舐めてた」

「アイドルって尊い……ぼくもそのアイドルになれた実感がやばい〜」

 

 皆さん、こんにち……おはようございます!

 アイドルの辻野あかりです!

 私は今、ダンスレッスンを終えたところで、私と同じ時期にデビューしたあきらちゃんやりあむちゃんと一緒です!

 

 今日は朝からレッスンのヘルコースだったんご……本当に地獄だったんご。

 私、何かを頑張るのって苦手で、デビュー前から続けていけるか不安だったの。

 でも事務所に入ると、先輩アイドルの人たちもあきらちゃんやりあむちゃんも私と同じような不安と戦ってて……私だけじゃないんだって思えたから今も続けることが出来てるんだと思う。

 

 それで私を頑張らせる1番の理由は―――

 

「おぉ、午前のレッスンお疲れさん。差し入れ持ってきたから昼飯にでも食べてくれ」

 

 ―――私専属のプロデューサーさんだと思うんご。

 

 この優しい笑顔をする人が私は大好きで、実は既に事務所には内緒でお付き合いしちゃってます。

 でもあきらちゃんとりあむちゃんには知られてます。いっぱい告白を断られて、やっと付き合えた喜びのままに2人に喋っちゃったんご……。

 でもでも、2人共いっぱい応援してくれてるの!

 それにプロデューサーさんなら、いいお婿さんになってくれるし、プロデューサー業をしてるからりんご農園のこともプロデュースしてくれると思うんご!

 だから絶対絶対絶対ぜ〜ったいお婿さんにするんご! 父ちゃんもお母ちゃんもプロデューサーさんならいいって言ってくれたし!

 

「わぁ、プロデューサーさん、ありがとっ!♡」

「どういたしまして。それよりシャワー浴びて、着替えて来いよ」

「はぁい♡ 待っててね♡」

「おう」

 

 ―――――――――

 

 事務所のレッスンルームに併設されているシャワールームにあきらちゃんたちと行くと、

 

「あかりちゃん、いい感じだね〜♪」

「順調そうじゃん」

 

 2人にそんなことを言われちゃいました。

 りあむちゃんはにやにやしてるし、あきらちゃんはあきらちゃんでなんかお母ちゃんみたいな眼差ししてるし……なんだか居た堪れないんご。

 

「そ、そうかな〜?」

「とぼけちゃって〜。あれだけ自分のPサマに猫なで声出してたのに」

「そ、そんな声出してないんご……」

「猫なで声かはともかく、私らと話してる時より声のトーン上がってたのは事実だね」

「あぅ……」

 

 恥ずかしいんご。無意識だったし、事務所でも特に仲良しのこの2人に指摘されて余計に恥ずかしい。シャワー強めにして心頭滅却んご。

 

 ジャアアアアアッ!

 

「うわっ、ちょっとあかりちゃん!? シャワー出し過ぎな件!」

「でも頭のアホ毛は立派なくらい立ってるね……」

 

 あああああ、恥ずかしぃぃぃぃぃ!

 

 ―――――――――

 

 それから私はあきらちゃんたちと別れて、プロデューサーさんと事務所からすぐの公園にやってきました。

 2人のこともお昼に誘ったんだけど、2人して私たちに気を遣ってプロデューサーさんと2人きりになっちゃった。

 

「あそこのベンチなんてどうだ? 今日は日差しも強くないし」

「は、はい……♡」

 

 うぅ……プロデューサーさんと2人きりなのは嬉しいんだけど、あきらちゃんたちに言われたことが恥ずかしくて変に意識しちゃうよぅ。

 あ、話は変わるけど、今日のお昼はプロデューサーさんの手作りなんです! 付き合ってからお互いにかわりばんこでこういう日はお昼を作ってるんご♪

 プロデューサーさん、一人暮らしが長いのもあってお料理上手だから毎回負けないように私もお母ちゃんからメールや電話でお料理教わってるんです。やっぱり胃袋を掴まないと……って私の方が掴まれてる気がするんご。

 

「今日はあかりから貰ったりんごを使ったキッシュを作ってみたんだ。デザートはりんごのカラメルソテー」

「ほあ〜☆」

 

 女子力高過ぎるんご! 未来の奥さんの立つ瀬が無くなるんごぉぉぉぉぉっ!

 

「りんごジャムも使ってるけど、これもあかりから貰ったりんごから作ったやつだから安心してくれな?」

「わっかりました!」

 

 うんうんプロデューサーさんは分かってますね。

 私、りんごジャムも好きだけど、市販のは嫌いなんです。だってその殆どは台風とかで落ちちゃったりんごを破格の値段で買い占めて、メーカーがジャムとかに使ってるんだもん。

 農家としては売り物にならない物を買ってくれるから助かるんだけど、私個人としては父ちゃんたちが丹精込めて作ってきたりんごを台風なんぞのせいで格安で売るハメになってるのが許せないのですよ。

 まあ私に父ちゃんたちが送ってくるりんごも形が悪かったりで売り物にならないやつなんですけどね。

 

「んじゃ、ほい……あーん」

「うぇ……」

「ん?」

「……お外ですよ、ここ……」

「周りにはどうせ仲良しの兄妹くらいにしか見えないさ」

「うぅ……」

 

 それはそれでなんとも……。確かに15歳差だから仕方ないかもですけど、もうちょっとドキドキハラハラといった甘酸っぱい雰囲気が欲しかったです。

 

「気にせず食えよ。あーん」

「あ〜……むっ」

「お味の方はどうですかな?」

 

 なんですか、その口調。まあどんな口調でもプロデューサーさんは素敵なんですけどね、はい。

 

「ごくん……デリシャスですわ」

「何故に英語とお嬢様口調?」

「な、なんとなく……?」

「ははは、相変わらずあかりはおかしいな」

「笑うごどねだべ!」

「お、出たな訛りあかり」

「あう……うぅ、プロデューサーさんの意地悪ぅ」

 

 すぐに人のことからかって……なのにキッシュは絶品でフォーク止まらないし……負けてるみたいで悔しいんご!

 

「気に入ってくれたようで何よりだよ」

「っ」

 

 これですよ、これ。この優しい微笑みがいけないんですよ。そのお顔されたらなんでも良くなっちゃうんですもん。ずるい。

 

「ん? どうした?」

「……なんでもないです」

「そっか、ははは」

「〜♡」

 

 ダメだ。プロデューサーさんのことが好き過ぎておかしくなるぅ。両想いになるってこんなに素敵なことだったんですね。片想い中は苦しいのにふわふわだったのに。

 

「たくさん作ったからどんどん食えよ? 午後からはヴィジュアルレッスンが控えてるしな」

「あぐ……頑張りまふ……」

 

 ダンスレッスンじゃないだけマシですね。午後もダンスやることになってたら地獄ですしお寿司。

 でもヴィジュアルレッスンもちょっと苦手なんですよね。鏡の前で色んなポーズ取るんですけど、自分のことだから未だに『私らしくないな〜』って思っちゃうんですよ。自分に自信がある人たちが羨ましいんご。

 

「俺もあかりのために仕事頑張るからな。それでお互い頑張ったら、ラーメン食いに行こう」

「ラーメンっ!?」

 

 それは本当ですか!! 私めちゃくちゃ頑張ります!!!!

 なんたってりんごと同じくらい私はラーメンが好きだから!!!!!!

 

「そ、ラーメン。この前同僚のヤツにいい店教えてもらったんだよ。大通りから離れてて、隠れ家的な店らしい」

「それ絶対に美味しいとこですよ」

「だろ? 白い醤油ラーメンと黒い塩ラーメンが人気なんだとよ」

「………ゴクリ………」

「……なんか悔しいな」

「え?」

 

 プロデューサーさんのつぶやきに私が首を傾げると―――

 

「だって俺の料理より夢中になってる感じだろ? 悔しいじゃん」

 

 ―――とっても可愛いこと言ってきたんご!

 なんですかなんですか、可愛すぎかよ! こちとら毎回プロデューサーさんのお料理楽しみにしてるんだよぉぉぉぉぉっ!

 

「こほん、いらない心配ですよ」

「でもさっき生唾のんだろ?」

「うぐっ……そうですけど、ちゃんと私はプロデューサーさんのお料理好きですからっ」

「りんごとラーメンの次にだろ?」

「う、うぐぐ……」

「俺としてはあかりの1番になりたいからなぁ。まだまだ精進しなきゃならないなぁ」

 

 うわぁうわぁうわぁうわぁ〜! プロデューサーさんが私を落としに来てますよ! 既に落ちてますけど! 余計に惚れるんご〜!

 

「ど……」

「ど?」

「ど……同格です! 同格! プロデューサーさんのお料理はりんごとラーメンと同格です!」

「同格か……でも悔しいからもっと精進しなきゃ」

「え」

「俺は同格じゃなくて1番がいいんだよ。好きな子なら尚更」

「ふぇぇ……♡」

「今度は1からラーメンでも作ってみるかな〜。食材は近所のスーパーとか肉屋で揃えられるし―――」

 

 な、なんだか余計に焚き付けちゃったんご!

 どうしようどうしよう! このまま行くとプロデューサーさんのお料理がないと生きていけない体にされちゃうのでは!?

 

「プロデューサーさんっ!」

「ん、どうした? 何かリクエストでも?」

「ち、違いますっ。と、とにかくですね……えっと、私はプロデューサーさんのお料理大好きですから、これ以上頑張らないでください!」

 

 じゃないと私のお料理スキルをマックスにしてもプロデューサーさんを超えられなくなっちゃいますから!

 奥さんのお料理より旦那さんのお料理の方が美味しい、なんてお母ちゃんたちに言われたくないっ!

 

「……そっか。分かった」

「ほっ」

「でもラーメン作るのはやってみたかったから、今度ご馳走するな」

「………………はい♡」

 

 あぁ、私のバカバカバカ! 食べたら終わるの分かってるのに頷いちゃったじゃん! プロデューサーさんのラーメンなんて美味しいに決まってるんご! 今よりも私の胃袋がガッチリとだいしゅきホールドされちゃうんご!

 

「なら次の次の俺の休暇にご馳走するな」

「え、次のお休みじゃなくて、ですか?」

「うん。やるならとことんって言うだろ? 麺まではやらないけど、チャーシューとかスープとか1から作りたいからな。だから次の次」

「あ、ああ……」

「ただのチャーシューじゃなくて、角煮っぽくするのもありだなぁ。燻製機と圧力鍋と両方で作ってみて食べ比べてみるのもありかも。スープは魚介と鶏ガラの両方を作ってみて―――」

 

 絶対美味しい……。何より、大好きな人のお料理だもん。絶対食べたら他のどんな美味しいお料理を食べても、この人のお料理の味に戻っちゃう体になってしまう。

 

「―――楽しみにしといてくれ♪」

「はぁい♡」

 

 でも、もうこれはこれでいいかも。

 これからもプロデューサーさんの隣で彼の手料理を味わえるように、私も色々と頑張ろう―――。

 

 辻野あかり*完




辻野あかり編終わりです!

飯テロっぽくなりしたが、いっぱい食べる君が好きってことで!

お粗末様でした☆

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