デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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長富蓮実編

 

 夢は追い続けるもの

 

 追い続けなければ

 

 その夢は叶えられない

 

 追い求めなければ

 

 その夢は夢で終わる

 

 だから自分を曲げることは

 

 出来なかった

 

 古臭い、時代遅れだと言われても

 

 でもその結果

 

 私はアイドルの神様に

 

 素敵な魔法使い様に

 

 出会えたんです

 

 ―――――――――

 

「では令和歌謡祭"あの日のアイドルヒットソング"! 続きましては、今やお茶の間の人気アイドル! 老若男女問わず、みんなから愛されるアイドル・長富蓮実ちゃんがあの名曲を歌います!」

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチ

 

『呼吸を止めて1秒 あなた真劍な目をしたから♪』

 

 今、私は夢だった大きな歌番組の生放送に出演しています。それも大好きな……自分が憧れていたアイドルの名曲をこのステージで歌えています。

 この歌番組以外でも『赤いスイートピー』や『センチメンタル・ジャーニー』といった素晴らしい名曲の数々を歌わせて頂き、中には御本人様との共演も果たしました。

 

 夢を追い続けて良かった

 

 諦めなくて良かった

 

 だってそうして来たからこそ、今の私があるんですから。

 

 しかし私一人では夢のままで終わっていたことでしょう。

 私の夢が現実になったのは―――

 

『そっと 悲しみに こんにちは〜♪』

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!

 

 ―――プロデューサーさんに出会えたからです。

 

 ―――――――――

 

 無事に私の出番も終わり、私は自分の控室に戻ってきました。やりきった脱力感と緊張から解き放たれた解放感で足腰がガクガクで、椅子に腰掛けるまでが大変でした……。

 そして今回もまた私は泣いてしまいました。夢が叶って、憧れていたアイドルの名曲を全力で歌えたことで……それを実感すると自然と涙が溢れてしまうんです。

 

 ガチャ

 

「お疲れ、蓮実! とっても輝いてたぞ!」

 

 あぁ、私のプロデューサーさんがとても良い笑顔で私を褒めてくださいます。ただでさえ嬉しくて泣いているというのに、また更に涙が押し寄せてきます。

 

「ありがとう……ぐすっ……ございますっ」

「あ〜あ〜、泣くなよ〜。もうこれにも慣れたけど、やっぱり蓮実が泣いてるの見るのはちょっとな」

「ごめんなさい……でも、うぅっ」

「お〜、よしよし。蓮実はアイドル〜、泣かない子〜」

 

 プロデューサーさんはそう言って私を抱きしめ、頭を撫でてくれます。

 私が泣いているとプロデューサーさんはよくこうしてくれるんです。別に子ども扱いしているとかではなく、これがプロデューサーさんなりの心遣いなのでしょう。

 でも私はプロデューサーさんからこうされると嬉しくて、落ち着いて……泣き止めるんです。

 だって―――

 

「プロデューサーさん……」

「お、泣き止んだね。偉い偉い……ちゅっ」

「んっ♡」

 

 ―――泣き止んだご褒美にキスをしてくれますから♡

 

 ―――――――――

 

 私とプロデューサーさんは事務所には内緒でお付き合いをしています。しかし事務所に内緒というだけで、仲良しのアイドル仲間や母にはご報告しています。

 プロデューサーさんは私を古臭いと言わず、今に生きる清純派アイドルとして育ててくださったお方。

 オーディションでは不採用だったのに、『なら自分が君を採用して清純派アイドルにする』と約束して見事に約束を果たしてくださいました。

 

 そんな人に恋心を抱いてはいけませんか?

 昔のアイドルだって恋はしてました。なら私だってしたいですし、私たちの関係を知る人はみんな応援してくれています。

 だから私はご法度とされていても、プロデューサーさんから離れません!

 

「プロデューサーさんっ♡」

「どうした、蓮実?」

 

 生放送も無事に終わり、私はプロデューサーさんの運転で一先ずいつも打ち合わせ等の時に行く喫茶店に来ました。

 ここは夜遅くまでやっていて、今の時間帯はお客さんも私たち以外にいません。なので貸し切り状態。よって私はプロデューサーさんの正面に座っていても、大好きな彼の大きな手を理由もなく握ったり指を絡めたりして遊んでいます♡

 

「二人っきりですね♡」

「そうだね」

「ずっとこうしていたいです♡」

「僕もだよ」

 

 ここの喫茶店のマスターさんはとてもお優しい方で、私たちがお店に入るといつも人目につきにくい奥のテーブルに案内してくれます。

 マスターさんは私のファンでもあって、私の恋を応援してくれているんです♪

 また注文の際も『いつもの』と伝えるだけで、あとは私たちをそっとしておいてくれます。

 

 しかし今日はちょっと違いました。なんでも生放送をご覧頂いていたようで、マスターさんからは『とても良かったよ、ますますファンになった』と言ってもらえました。

 それが嬉しくて、私はいつも以上にふわふわとした気持ちになってるんです。

 

「プロデューサーさんに出会えて、私は本当に幸せの連続です。どうかこれからも私とずっと一緒にいてくださいね?」

「なんだよ、急に改まって……ずっと一緒だよって付き合う際に約束しただろう?」

「それは分かっているんですけど……どうしても不安になってしまうんです」

 

 アイドルに恋人がいるのは今も昔も風当たりはキツい。もし見つかったら引き裂かれるかもしれない。好き同士なのに別れなくてはいけなくなるかもしれない。

 そう思うと不安で、しかたなくなってしまうんです。

 

 今日歌った歌だって大好きな曲の一つですが、歌詞は少し悲しい。

 あの歌詞のように愛さなければこんなにも私は不安になることなかったのだから。

 

 それでも―――

 

「不安になるのは分かる。でも結局はお互いの問題だ。今の僕たちは確かに不安の中にいるけど、その中で恋をして、愛を育んでいるのも確かだ。ならこれまで通り育んでいけばいい。僕は何を殴り捨てても蓮実を離す気は毛頭ないよ」

 

 ―――プロデューサーさんの言葉で私の不安は嘘のように軽くなります。

 そしてまた涙が溢れ出すんです。

 

 この人に出会えて本当に良かった

 この人に愛されて本当に幸せ

 この人と共にこれからもありたい

 

 アイドル失格と言われても、私はこの気持ちに嘘をつきたくない。

 

「プロデューサーさん……」

「僕は蓮実のことが、大好きだよ。だから泣かないで」

「無理です……ぐすっ」

 

 こんなにも嬉しくて幸せなのに涙を我慢することなんて、私には出来ません。本当に本当に溢れてくるんです。止めたくても無理なんです。それくらい私は……あなたのことが大好きなんです。

 

「ほら、泣かな〜い泣かな〜い」

 

 ナデナデ

 

「うぅっ……えぐっ……プロデューサーさんっ」

「ん〜?」

「大好きです……本当に……っ……心からっ、大好きなんで、す」

「十分伝わってるよ」

「泣き虫で……ごめんなさい……ぐすっ」

「いいよ、蓮実が泣き虫なのは今に始まったことでもないからね」

「くすんっ」

 

 撫でられても撫でられても今の私は泣き止むことを知りません。寧ろ撫でられれば撫でられるほど、この人のことを好きと思えば思うほどに、涙が溢れ落ちます。

 なのにプロデューサーさんはいつも優しく微笑んでくれているんです。でもそれが安心出来て、私は彼の笑顔を見るとホッと出来ます。

 

 ―――――――――

 

「目が痛いです……」

「そりゃあんだけ泣いたらね〜」

 

 ようやく泣き止んだ私ですが、泣いたせいで目が腫れてしまいました。でもプロデューサーさんは変わらず微笑みを私に向けてくれていて、頭を撫でてくれています。本当に優しい人……大好きです♡

 

「ほら、このおしぼりで冷やして」

「はい……はふ、冷たくて気持ちいい♪」

「次はこっちの温かい方のおしぼりで温めてね」

「……んっ、落ち着きます♪」

 

 わざわざ温かいおしぼりを用意してくれたマスターさんに感謝しなくては。私が泣くと何も言わずにそっと温かいおしぼりと冷たいおしぼりをご用意してくれますので……。

 

「ん〜……まだ腫れてるね。もう一度冷たいのでまぶたを冷やして」

「は〜い……♪」

 

 プロデューサーさんは芸能界に携わって長いですから、こういう時の対処もよく知っています。本当に頼りになるお方です♡

 

「はい、次温めて〜」

「は〜い♡」

 

 なんだか対処してもらってるのに楽しくなってきました。言われた通り交互におしぼりをまぶたにあてているだけなのに。

 

「どれ、また見せてみて?」

「はい……どうです――」

 

 ちゅっ♡

 

「――え?」

 

 どうしてあのタイミングでまぶたへキスを? 全然嫌ではないですけど……不意打ちなんてずるいです♡

 

「うん、バッチリ治ったね。思わずキスしてしまうくらい元通りになったよ」

「もう、プロデューサーさんっ♡」

 

 そんなこと言われたら何も言い返せないですよ♡

 

「だって蓮実が可愛いんだもん」

「可愛いとキスするのですか?」

「ダメ?」

「いえ……ならプロデューサーさんは毎回キスしなくてはいけませんね♡」

「そうだね。蓮実はいつも可愛いから」

「♡」

 

 幸せ……とてつもなく幸せ。この人の前で私は、何度も驚いたり泣いたり笑ったり……時には怒ったりしてます。でもこの人の前だから私は色んな表情を浮かべてしまうのかもしれません。

 私の全部を知っててほしいから♡

 

 でも―――

 

「プロデューサーさん♡」

「何?」

「今度は私からしてもいいですか?♡」

「もちろん」

「では、目を閉じてください♡」

「はい」

 

 ―――私もあなたの全部を知りたい。

 だから私は、彼が私にだけ見せる今の表情を、

 

 ピロリン♪

 

 撮影するんです♡ 撮影のやり方を覚えるのに苦労しましたが、みんなに教わってマスターしたんです!♡

 

「こら、何撮ってるんだ」

「大好きなプロデューサーさんのキス顔です♡」

 

 でも彼はまだ目を閉じたまま。私になら撮られてもいいと思っているんでしょう。恋人特権ってやつですね♡

 

「流石にこれ以上またされるのは恥ずかしいんだけど……」

「ふふっ、ごめんなさい♡」

 

 ちゅっ♡

 

 何度目になるか分からない、彼とのキス。でも何度味わっても、幸せの味は変わらないし、色褪せることもない。

 

「蓮実とのキスはいつでもバレンタインみたいな甘さだね」

「なんてったってアイドルですから♡」

「って、写真じゃなくて動画だったのか!?」

「ふふふ、私とプロデューサーさんの甘〜い映像が撮れてますよ♡」

「全く、蓮実は時々やることが大胆だね」

「大好きです、ミ・アモーレ♡」

「蓮実に敵う気はしないよ」

 

 こうして私たちはまた秘密の恋愛の中で絆を深めることが出来ました。

 その日は家に帰るのがいつもよりちょっと遅くなってしまいましたが、私がとてもニコニコしていたので両親は何も言えなかったらしいです―――。

 

 長富蓮実*完




長富蓮実編終わりです!

清純派アイドルを貫くはすみーですが、恋したらこうなるかなと思って書きました!

お粗末様でした☆
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