デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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チートプロデューサーです。ご了承ください。


丹羽仁美編

 

 歴史が好き

 

 中でも戦国時代

 

 その中でも前田慶次が

 

 一番好き!

 

 破天荒なのに超一途

 

 男の中の男だからね!

 

 そんな時

 

 アイドルも武将だ、なんて

 

 言ってきた人がいた

 

 そしてアタシは

 

 その口車にまんまとハマった!

 

 ―――――――――

 

「はい、カ〜ット! 良かったよ、仁美ちゃん!」

「ありがとうございました!」

 

 アタシは今、超脇役だけど時代劇ドラマの撮影で、無事にそのシーンを撮り終えたとこ。アタシの役柄は女侍で主役の侍と戦うはずが、主役から『女子は斬れぬ』と言って無視される役なの。

 正直このシーンいる?って自分でも思ったけど、アイドルになったそもそもの理由が時代劇に出ることだったから、念願の時代劇に出れて本当に嬉しい!

 あとでアタシ専属のプロデューサーに感謝しなきゃ♪

 

 なんであとでなのかというと……

 

「それでは本番…………アクション!」

 

「某を見事に斬り伏せてみよっ!」

「お主……何故、そこまでしてあ奴に仕える……お主の主は民に悪政を敷く者ぞ?」

「某は殿に恩義がある……それ以外に理由などないっ!」

 

 ……今、プロデューサーが悪役城主に仕える腹心役の槍使いとして撮影に臨んでいるから。しかもちゃんとセリフまで貰えてる!

 

 プロデューサーは日本でも数少ない槍術に特化した流派の武術の門下生で、小さな頃から稽古をしてきた人なの。んで、元々は監督さんがスタントマンを使う予定だったんだけど、テレビ局の方から予算がそんなにもらえなかったらしくて、監督さん的に納得のいくスタントマンが起用出来なかったんだって。

 そこで前にプロデューサーとお仕事したことあるこの時代劇のディレクターさんが、監督さんにプロデューサーのことを話して、頼み込まれて今に至るって感じ。まあプロデューサーならギャラめっちゃ安く済むし、本格的な映像も撮れるしでうってつけだよね。

 

 ただ―――

 

「ふんっ! はぁっ! せやぁーっ!」

 

 ―――プロデューサーめっちゃカッコイイ〜!♡

 

 斬られ役だけど、そこそこの役柄だからアクション多めなんだよ!

 んでんで、何気なく長槍を振り回したり、穂のとこで突きを見舞ったり、相手からの攻撃をさり気なく石突で防いだりして見せたり、太刀打ちで相手からの一振りを防いだり…………もう、控えめに言って超カッコイイ!♡

 

 アタシさ、アイドルだけど実はプロデューサーの恋人なの♡

 当然事務所には内緒にしてるけど、アイドル仲間で前に何度かユニットを組んだことのある子たちとはめっちゃ仲良しだから、色々と相談に乗ってもらってる。

 

 プロデューサーってアタシが好きな前田慶次とは違って超真面目だけど、今回みたいにアタシが出演出来るようにわざわざ侍役を貰って来てくれたりする傾いた感じは合ってる!

 そんなプロデューサーだからアタシはきっと惚れちゃったんだよね〜♡ 最初はアタシの告白にも丁重にお断りしてきたくせに、いざ付き合うって決めたらめっちゃ一途だし!♡

 

 だから尚更、今回の撮影でアタシはプロデューサーに惚れちゃったよ♡

 

 ―――――――――

 

 撮影も無事に終わって、アタシたちは事務所に帰ってきた。ただプロデューサーに至っては監督さんから「また是非とも起用したい!」なんて言われてて、めっちゃ焦ってた。

 でも監督さんの気持ちも分かるよ、アタシは。だって本当にカッコ良かったし、あのシーンは主役と悪い殿様が斬り合うシーンの次にいいシーンだったもん。

 まあアタシとして恋人補正でプロデューサーが出てるシーンの方がダントツで一番いいシーンなんだけどね♡

 

「はぁ……まさかこんなことになるなんて……」

「あはは、お疲れ、プロデューサー」

 

 上の人に報告してきて自分のオフィスに帰ってきて早々、プロデューサーはぐったりと自分デスクの椅子に座り込んで天井を見上げる。

 だって上の人から『かなりの評判だった。これを機に役者へ転向したらどうかね?』なんて言われてたもん。

 

「俺が有名になっちゃダメなんだよ〜。俺は仁美をもっと有名にしたくてプロデューサーしてるんだよ〜」

「ありがと……でもアタシね、今回のお仕事はプロデューサーと形だけでも共演出来て嬉しかったよ♡」

 

 アタシは素直な自分の思ったことを伝えながら、落ち込むプロデューサーの頭をよしよしって撫でてあげた。

 プロデューサーってアタシより12も年上なんだけど、こういうところは年下みたいな感じがして……いつもと違って可愛いって思っちゃう♡

 

「……それは俺も嬉しいよ。でも仁美が脚光を浴びなきゃ意味ないんだよ〜」

 

 そう言うと、プロデューサーはアタシの腰に両手を回して自分の方へ引き寄せた。だからアタシもプロデューサーの頭に両手を回して、そのままギュ〜ッて抱きしめ返す。

 こういう時にちゃんと弱音を吐いて頼られるのって、自分のことを信頼してもらってる感じがするから好き。

 

「でもでも、アタシとしてはプロデューサーを惚れ直しちゃう1日になったよ?♡ それだけじゃダメなの?♡」

「………………」

「もう本当にカッコ良かった……そんな人がアタシの彼氏なんだもん。アタシ幸せ♡」

「……仁美……」

「もっと言えば、アタシはプロデューサーに出会えてから毎日幸せ♡」

「……俺も幸せだよ」

「えへへ、ならそれでいいじゃん♡」

 

 アタシが笑ってそう言うと、プロデューサーは「そうだな」って笑顔を返してくれた。良かった……やっぱり好きな人が落ち込んでると嫌だもん。

 

「じゃあじゃあ、余計に惚れさせた責任……取って♡」

「何をすればいい?」

「ん〜……キスして♡ 今、ここで♡」

「ハードル高いな」

「抱き合ってる時点でハードルはめっちゃ高いよ?」

「うぐっ……確かに。でもこれは仁美に俺が甘えてるだけで……」

「はいはい、つべこべ言わない。それより早くしてよ、キス……本当に誰かが来ちゃうよ?」

「それはいくない」

「ん、物分りがよくてよろしい♡」

 

 事務所内にいるのにキスするなんて、普通しないよね。というかアイドルとそのプロデューサーが付き合ってる時点でアタシたちは相当な変わり者。でもだからこそアタシたちらしいのかもしれない。それにお互いが変わり者同士だからこそ、上手くいってるのかも♡

 

「…………ぷはぁ、もうお終い?♡」

「お終い。これ以上キスしてたら、それ以上のことをしたくなる」

「うわぁ、プロデューサー変態〜♡」

「うるさいなぁ。そんなこと言うなら今日は送ってやらないぞ?」

「いいよ〜? まだバス走ってるし、最悪タクシーで帰るし〜」

「…………何かあったら嫌だから俺が送る」

「あはは、やっぱりプロデューサーはアタシのことになるとダメダメだね〜♡ そういうとこ大好き……ん〜、ちゅっ♡」

「仁美に適う気はしないよ……」

 

 ―――――――――

 

 そのあとも結局アタシは何度も何度もプロデューサーとキスをしてから、送ってもらうことにした。

 今はプロデューサーの運転する車に乗ってる。でもアタシが座る座席は助手席……だってもうアイドルとしてのお仕事は終わりだから、今はプロデューサーの恋人だもん♡

 

「〇〇〜、ちょっとアタシのお話聞いて〜♡」

「なんだよ、藪から棒に?」

「今日から連休でしょ〜?」

「一般の人たちはな」

「んで〜、アタシの両親、揃って旅行中なんだよね〜?♡」

「へぇ、じゃあ連休明けまでは仁美が留守番か。ごめんな、今日の仕事がなければ仁美も旅行行けたのに……」

 

 やっぱりプロデューサーって真面目だなぁ……というか、謝るのが先なの? 彼女が家に一人だって言ってるのに?

 

「お仕事だもん、謝らなくていいよ〜。それにアタシが興味ない旅行先だし〜」

「そっか……まあ、何にしても残りの連休は仁美もレッスンくらいしかないから、それ以外はゆっくりするといい」

「…………鈍感」

「へ?」

 

 いや、うん、知ってたよ。この人にはストレートに言わないと通じないって。だって回りくどいアピールしててもびくともしなかった人だからね。

 付き合う前のアタシならこれで話は終わってたけど、今のアタシはそれで終わるほどの女じゃないのだ!

 

「〇〇、率直に言うね?」

「あ、あぁ……」

「今夜アタシの家に泊まって♡」

「なっ!?」

 

 かなりの衝撃を与えたっぽいね♡ でもよそ見もしないでハンドルもしっかり握ってるのは流石大人。

 

「だからさ〜、今夜だけでいいから家に泊まってよ〜♡ せっかくのチャンスなんだから〜♡」

「でも俺は明日朝から会議があって……」

「なら明日の仕事終わったらアタシの家に帰ってきてくれる?」

「そ、それは……」

「なら今夜泊まった方がいいよね〜?♡」

「…………」

 

 考えてる考えてる♡ さぁ、早く首を縦に振るのだ!♡

 

「…………ダメだ」

 

 ありゃ? くぅ、ここでも真面目なプロデューサーが勝つのか〜。これは潔く諦め―――

 

「せめて仁美が俺の部屋に泊まりに来てくれ。それならいい」

 

 ―――る必要ないじゃん、やったー!♡ 勝利の女神は我に味方せりー!♡

 

「それ本当!?♡」

「あぁ……あ、ご両親には友達の家に泊まるとかちゃんと言っておくようにな?」

「オッケー♡ 今すぐメールするねっ♡」

 

 やったやった♡ いやぁどう転ぶか分からないもんだね〜♡ 下着どうしようかなぁ♡ 新しく買ったのおろそうかなぁ♡ それともプロデューサーに1回アタシの部屋来てもらって選んでもらおうかなぁ♡

 

「なぁ、仁美」

「ん、なぁに?♡」

「……その、連休中だけだが、よろしくな?」

「うん、こっちこそよろしく〜♡ いっぱい恋人らしく過ごそうね〜♡」

「恋人らしく、か」

「? どうかした?」

「いや……恋人らしくというか、新婚さんみたいだなって思ってしまってね」

「お〜、確かに新婚さんだね♡ あ、じゃあじゃあ、明日帰ってきたら、お約束の『おかえりなさい、あなた〜♡』ってのやってあげようか?♡」

「嬉しいけど選択肢1つしかない」

「うわぁ、やっぱり〇〇って変態〜♡」

「うるさいうるさ〜い」

「にしし、まあそんな〇〇がアタシはとっても大好きなんだけどね♡」

「っ……うるさい」

 

 もう照れちゃって〜♡ プロデューサーは本当に純粋で可愛いなぁ♡ こんな人と付き合ってるアタシって本当に幸せ者だよ〜♡

 

「あ、〇〇、これからアタシの家に行って、アタシが着替えとか持ってくるじゃん?」

「あぁ、そうだな」

「んで、〇〇の部屋に行く前に薬局寄ってよ」

「あぁ、いいぞ。何買うんだ? お泊まり用の歯ブラシとかか?」

「そんなの買わないよ。ゴム買うのゴム」

「なっ!?」

「にしし〜、いっぱい買うからよろしく♡」

「俺が買うよ……使うの俺だし」

「お〜、ヤル気満々♡」

「ここまで来たらな」

「えへへ、いっぱいイチャラブしようね♡」

「あぁ」

 

 こうしてアタシは連休中、プロデューサーの部屋にお泊まりした。お泊まりは本当に幸せで最高だったけど、あの幸せな時間はアタシをダメにした。

 だってあれから早くプロデューサーと結婚したいって、余計に強く思っちゃうようになったから!♡―――

 

 丹羽仁美*完




丹羽仁美編終わりです!

ちょっとプロデューサーがチートっぽくなりましたがご了承を。
ともあれ、仁美ちゃんはやっぱり押せ押せなのが似合います!

お粗末様でした☆

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