デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


原田美世編

 

 車が好き!

 

 だから将来は

 

 絶対に車に携わる

 

 そんな仕事に就きたかった

 

 だけど

 

 人生って不思議なもんでさ

 

 脇道や横道にそれることもあるの

 

 でもさでもさ

 

 その道がすっごくキレイなのを

 

 教えてくれた人がいるの!

 

 ―――――――――

 

「では、ス〇キのエンジンのものまねします!」

 

 一息ついて、また肺に空気を入れる。

 そして、

 

「スゥゥゥズゥゥゥキィィィ!」

 

 大声でエンジンの音をまねる。

 すると収録スタジオは笑い声が響くの。

 

「それアイドルがやっていいの!?」

「反則やんそれ!」

 

 ひな壇の芸人さんたちも笑ってくれてる。よかった♪

 

 あたしの今日のお仕事はバラエティ番組のゲスト出演。

 番組名は『なんでそれをまねようとしたの?』っていう、普通はあんまりまねないことをまねるのが得意な人が出る番組なんだよね。

 あたし専属のプロデューサーさんが『美世ならいける』って言って取ってきてくれたんだけど、まさかそんなにウケるとは思わなかった。いやぁ、不思議なもんだねぇ。

 

 ―――――――――

 

 収録も無事に終わって、あたしはプロデューサーさんが車を回して来てくれるのを正面玄関で待ってる。

 収録自体は予定より早く終わったんだけど、時間はもう夜の8時を回ってる。だから事務所には戻らないで、そのままあたしは直帰。

 でも今日はプロデューサーさんも直帰なんだ。それで今から……プロデューサーさんのマンションにお邪魔しちゃう、というかお泊まりするんだ!

 

 どうしてかって言うと、今日はあたしがプロデューサーさんとお付き合いして1ヶ月目の記念日だから♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 元は整備士として上京してきたあたし。

 その日はたまたまお休みで、気ままにドライブをしてたら、エンストした車を見つけて、そのドライバーさんが慌ててから声をかけた。

 それがあたしとプロデューサーさんの出会い。

 

 まさかそれでアイドルにスカウトされるとは思わなかったけど、あのキラキラした目で口説かれたら……ね?

 

 それにアイドルになって、速いだけが全てじゃないって気付いたし、今までビュンビュン過ぎてた景色がとてもキレイなんだって教えてもらった。

 

 だからかな……あたしとは何もかも違う人だから、惚れたんだと思う。

 そりゃあ、最初はアイドルとプロデューサーでそんなこといいのかなとか、普通そんなの有り得ないよねとか、色々と悩んじゃったんだけど、アイドル仲間でツーリング仲間の拓海ちゃんとか夏樹ちゃんとか里奈ちゃんとかに背中押してもらって、いっぱいアピールしたの。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 その結果が今で、それがもうとても嬉しくて、毎日毎日プロデューサーさんに恋してる♡

 だってプロデューサーさん、バイクも車も興味無いなのに、いっつもあたしのお話最後まで聞いてくれるんだもん♡ そんな人いないよ普通。あたしだったら相槌打つのも面倒くさくなるもん!

 

 ブロロン

 

 あ、プロデューサーの車の音だ♡

 プロデューサーってホ〇ダのフィットなんだよね。しかも赤! 中古で安かったからとか言ってたけど、いいセンスしてると思う! まあ当然恋人補正バッチリだけどね!♡

 

「お待たせ。乗ってくれ」

「は〜い♡」

「後部座席な」

「…………は〜い」

 

 ホントなら助手席がいい。でも仕方ないよね。マンションに着くまではアイドルだもん。我慢します。

 

「後部座席にいるから、飛ばしてね?」

「ダメに決まってるだろ。安全運転第一」

「ブーブー」

「このままアイドル寮に向かってもいいんだぞ?」

「それはイヤ!」

「なら聞き分けるように」

「は〜い」

 

 プロデューサーさんは真面目だなぁ。車内もめっちゃピカピカだし、性格出てるわ。

 

「シートベルトしろよ〜?」

「は〜い」

 

 ―――――――――

 

「やっぱり俺の思った通りだったな。美世ならいけると思ったんだ」

「ウケて良かったよ〜」

「そりゃこんだけ可愛い子があんなガチのものまねするとは誰も想像してないだろ」

「あはは、それもそっか♡」

 

 可愛いって言ってくれた♡ やった♡

 

 車内でのあたしたちの会話は基本的にお仕事のお話。デートの時は流石に違うけど、お仕事のあとはいつもこんな感じ。でもそれでもよくあたしのこと褒めてくれるから、実は案外好きだったりする♡

 

「そういえば次の仕事なんだけどな」

「うん」

「車のイベントとバイクのイベントの2つオファー来てるんだ」

「おぉ〜!」

「でもどっちも日程が同じでな。どっちかは断らないといけないんだ」

「えぇ〜!」

 

 そんな〜、あんまりだよ〜! いっそのこと両方同じ会場でやればいいのに!

 

「それで、俺としては車のイベントのオファーを受けようと思ってる」

「理由は?」

「ゲストとして参加すると好きなスポーツカーに乗れる」

「おぉっ!」

「更にレースクイーンの格好も出来る」

「それはプロデューサーさんの趣味だよね?」

「何を言う。彼女のレースクイーン姿だぞ? 彼氏としては見ないといけない」

「だから趣味じゃん!」

「趣味ではない……彼氏としての責務だ」

「はいはい」

 

 素直じゃないんだから♡ というか、言ってくれたらプロデューサーさんの前でならどんな衣装だって着てあげるのに♡

 

「因みにバイクの方は?」

「サイドカーに乗れるな」

「本体は?」

「停めた状態で跨がるだけならいいって」

「ん〜、だったら車かな〜?」

「だろ? それにバイクなら他にも事務所で出せるアイドルいるし」

「確かに」

「それに何よりレースクイーン姿の彼女見れるし」

「結局そこで決めたよね?」

「違う。俺はただ見たいだけだ」

「嘘つき……というかやっぱり趣味じゃん!」

「違う」

 

 もう頑固だなぁ。まあそれだけ求められるのも悪い気はしないけどね♡ なんだかんだ言って、あたしもプロデューサーさんならなんでも許しちゃうんだよ。愛って偉大だなぁ。

 

 ―――――――――

 

 そんな話をしつつ、プロデューサーさんのマンションに到着。

 一応伊達メガネとマスクをして、あとはプロデューサーさんの左腕に抱きついてもろ恋人モードでいればオッケー♡ ここで変にコソコソするより、堂々としちゃう方がいいと思うから♡

 

「上がってくれ」

「お邪魔しま〜す♪」

 

 プロデューサーさんの部屋はザ・プロデューサーって感じ。資料とか企画書とかがデスクに山となってて、自分がこれまでプロデュースしてきたアイドルのポスターとかCDが飾ってある。

 あとプロデューサーさんって駄菓子が好きで、部屋に絶対大人買いした駄菓子の箱が積んであるの。なんかこういうの見ると可愛い♡

 

「プロデューサーさんの部屋ってカオスだよね」

「独身男性の部屋なんてそんなもんだろ」

「でもさ〜、なんかアイドルのポスターとかいっぱいあって、駄菓子もそれに負けないくらいあって……アイドル好きの駄菓子屋さんって感じ」

「なんの相乗効果もないな」

「だからカオスなの!」

「はいはい。何か飲む?」

「コーヒー!」

「はいよ。甘めな?」

「うんっ♡」

 

 えへへ、なんかこういうやり取りっていいよね♡ 通じ合ってるっていうか、わかり合ってる感じ♡

 

 プロデューサーさんがコーヒーを淹れてくれてる間、あたしは部屋にある駄菓子をいくつかもらう。彼女特権ってやつで、好きなの好きなだけ食べていいんだって♡

 

 あ、カルメ焼きだ。お父さんが好きで、ガレージの脇でよく作ってくれたっけ。懐かしいな〜。

 

「持ってきたぞ」

「あ、ありがと♡」

「今回はカルメ焼きか」

「うん、ちょっと懐かしいって思って」

「俺も懐かしく思って買ったんだ」

「懐かしいってだけで箱買いしちゃうんだね」

「駄菓子は好きだからな」

「あはは♡」

 

 あ〜、可愛い〜♡ いつもそうやって素直でいればいいのに〜♡

 

「プロデューサーさんはカルメ焼きにどんな思い出があるの? あたしはお父さんが好きで作ってもらってたくらいなんだけど?」

「俺か? 俺は理科の実験で黒焦げにした思い出だな。それで理科の先生が作るの超絶に上手かった」

「へぇ、プロデューサーさんの時代ってそうなんだ」

「美世は何か実験で作ったりしなかったのか?」

「あたしは……アイスかな? カンカンに材料入れて、その周りを氷で覆って、コロコロ〜ってするの」

「俺はしなかったな〜」

 

 やっぱり世代が違うと違うもんだね〜。まあ10も歳が離れてるから当然っちゃ当然なのかも。それかただ学校によっての違いかな。

 

「年の差を感じるね〜」

「言うな」

「あはは、ごめんごめん。でも、若い彼女がいて幸せでしょ?♡」

「否定はしない」

「えへへ、でしょ〜?♡」

 

 いいよね、こういうの♡ なんでもない会話なんだけど、それだけで心が満たされるって感じ♡ やっぱりプロデューサーさんはあたしにとって必要不可欠な存在なんだなぁ♡

 

「えへへ♡」

「にやけ過ぎ」

「だって〜、えへへ♡」

「……」

(くそ、彼女が可愛過ぎる!)

 

「プロデューサーさん♡」

「?」

「えへへ、呼んだだけ♡」

「…………」

「プロデューサーさん、プロデューサーさん♡」

「………………」

「プロデューサーさ〜ん♡」

「……………………」

「えへへ〜、大好き、だよ?♡」

「アクセル全開にしてもいい?」

「ブレーキ壊す気満々だから、いいよ♡」

 

 そう言ってあたしが胸元をプロデューサーさんにチラッと見せたら、プロデューサーさんのブレーキは壊れて、い〜っぱい弄ってもらっちゃった♡ プロデューサーさんのせいで癖になっちゃったんだから、これは一生責任をとってもらないと♡

 

 ―――――――――

 

 いつの間にか寝ちゃってたあたしたち。しかもカーペットの上とはいえ、床で寝ちゃったからちょっと体が痛い……。

 プロデューサーさんは……

 

「ぐぉ〜、ぐぉ〜」

 

 ……おおう、あられもない格好で寝てる。まあ、それはあたしもなんだけどね♡

 

 辺りを見るとキレイに掃除されてる。多分あたしが寝ちゃったあとに、プロデューサーさんはあと始末してくれたんだろなぁ。なんか申し訳ない。

 ならお礼に朝食でも作ってあげようかな♡

 

「あ」

 

 服どうしよう。やっぱりプロデューサーさんが好きそうだし、ワイシャツ羽織る? それともエプロン姿? ん〜、どっちがいいのかな? プロデューサーさんムッツリスケベさんだからなぁ。あたしにはその辺オープンにしてくれてるけど、どっちがいいのかわかんないなぁ。

 

「悩む」

「何を?」

「ワイシャツかエプロンか」

「ならこのまま朝からどう?」

「何を……って、プロデューサーさん!?」

「おはよう」

「お、おはよう、ございましゅ♡」

「それで、朝食前に美世を食べてもいいのかな?」

「え……♡」

「美世の可愛いエンジン音、聞きたいなぁ」

「もう、えっち♡」

 

 それからあたしは、プロデューサーさんにいっぱいふかされちゃいました♡

 あ、でもちゃんとレッスンには遅刻しなかったよ! その辺プロデューサーさんは真面目だから!

 ただまあ、朝からってのも有りかな〜♡―――

 

 原田美世*完




原田美世編終わりです!

車ネタが入れられなかったですが、ご了承を。

お粗末様でした☆

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