デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

49 / 196
上京してる設定です。


兵藤レナ編

 

 人生はギャンブル

 

 時に負け

 

 時に勝ち

 

 人はそのマスを進む

 

 なのに

 

 刺激的な人生なんてなかった

 

 同じことの繰り返し

 

 つまらなくて仕方なかった

 

 そんな時に

 

 私は人生最大の大勝負に

 

 見事に負けたの

 

 ―――――――――

 

「視線くださーい」

 

「はい♪」

 

 パシャパシャパシャ

 

 シャッターを切られる度、もう慣れたフラッシュライトが私を照らす。

 今の私はアイドルの仕事で豪華クルーズ旅行のキャンペーンガールとして、そのポスターを撮影してる。

 

 衣装は前から着慣れてるディーラーの制服と社交界に合わせた赤いエンパイアドレス。

 ドレスなんてこれまで数回しか着たことなかったけど、アイドルになってから着る回数が増えた。

 でも恥ずかしくはない。私だって女だもの。キレイなドレスや可愛いドレスを着れるのは楽しいわ。

 

「は〜い、それじゃ一旦休憩です」

「分かりました」

 

 カメラマンに一礼して休憩スペースに向かう私。

 すると―――

 

「お疲れ様でした。レナさん」

 

 ―――私専属のプロデューサーさんが優しく笑って、私の手を取ってテーブルまでエスコートしてくれた。

 

 プロデューサーさんが私をアイドルにした張本人。お互いに人生を賭けてコイントスで決めて、私が負けた結果が今なのよね。

 でも後悔はしてない。寧ろ今の方が私は充実してる。

 負けず嫌いな私を、プロデューサーさんはいつも涼しい顔で負かしていく。そんな人に出会ったことはなかった。だから私は今がとても楽しいの。

 

 それに―――

 

「今回のドレス姿も素敵だよ」

「っ♡」

 

 ―――私はこの人の恋人だから♡

 

 プロデューサーさんは文字通り、私の人生を自由にする権利がある。

 よってプロデューサーさんは私に「一生面倒見るから」と言ってきた。

 最初はただの冗談だと思って笑い飛ばしてた。でもプロデューサーさんはいつも私を第一に考えて、行動してくれた。

 だから私も、気が付けばまんまとプロデューサーさんの術中に嵌って、もう「あ、私この人と結婚するんだ」って普通に受け入れてたのよね。

 

 でも今はまだ事務所にはお互い報告してない。報告するのは私がアイドルを引退する時と決めてるの。

 ただ、ちひろさんとか仲のいいアイドル仲間とか、味方はバッチリ作ってる。

 

 だから今は恋人以上夫婦未満の関係をお互いに楽しんでるの♡

 

「休憩中はこっちのサンダルに履き替えて」

「ありがとう♡」

「レナさんのプロデューサーですから」

 

 はぁ、私の王子様カッコイイ♡ プロデューサーさんに負けて今の関係になったけど、流石の私もあの時負けたのは良かったと思ってるくらいよ。

 

 プロデューサーさんは私と3つしか歳が離れてないんだけど、恋人補正とか抜きにして落ち着いたいい大人なのよね。それでいてこうと決めたら大胆に行動する。だから私はいつもドキドキさせられっ放し。

 でもそれが私としては幸せだったりするから、余計に心地よく感じてるのよね♡

 

「次の撮影なんだけど、社交ダンスしてるシーンを撮るということらしい」

「社交ダンス? 私やったことないんだけど? というか、それだったら礼さんとかの方が適任じゃない?」

「実際に踊る訳ではないから大丈夫。ただ社交ダンスをしてるポーズをすればいいだけだから」

「なら良かったわ……それで相手役の人は? 挨拶しないといけないでしょ?」

「目の前にいるよ?」

「え?」

 

 目の前? それってプロデューサーさんのこと?

 恐る恐る私がプロデューサーさんと目を合わせると、

 

「何か不満でも?」

 

 なんて返された。

 いや、不満なんてないわよ。これっぽっちも。

 

 プロデューサーさんは結構いいとこのお坊ちゃんで、本物の貴族みたいに社交界デビューみたいなこともしてて、同じ事務所の西園寺琴歌ちゃんとか櫻井桃華ちゃんたちとは前から顔見知りだったらしい。

 カリスマデザイナーの母親と外務省幹部の父親を両親に持つ、超勝ち組。幼稚園から大学までどれも超一流で、本人もそこでいい成績を残して卒業してる。

 なのにアイドルのプロデューサーになったのは、彼が重度のアイドルオタクだったから。

 

 ご両親は結構放任主義らしく、プロデューサーさんの選択には何も言わないらしい。ただ、後悔だけはしないようにと言ってるみたい。

 まあ私との交際も認めてくれたし、うちの両親なんてとても恐縮してたし……。

 

「不満なんてないわよ」

「なら良かった」

「でもプロデューサーさんそのままで撮影するの?」

「まさか。これからどの衣装を着るか選ぶんだよ」

「そうなんだ」

 

 み、見たい……っ! だって絶対にどの衣装も似合うもん!

 というか、私の今の衣装選びもプロデューサーさんに言われて、色んなドレス着せられたんだし、私だって色んな衣装をプロデューサーさんに着せたい! 私だけ着せ替え人形にされたままじゃ悔しいもの!

 

「……お顔に一緒に行きたいって書いてあるよ?」

「……ダメ?♡」

「っ、その言い方はズルいなぁ」

「プロデューサーさ〜ん」

「…………分かったよ」

 

 イエス!♡ イエェェェスッ!♡

 

「すみません、彼女も僕の衣装選びに連れて行ってもいいですか? このドレスと並ぶのに恥ずかしくない衣装を選びたいので」

「全然いいですよ」

「ではちょっと失礼しますね」

 

 こうしてプロデューサーさんはスタッフさんに了解を得て、私を連れて衣装室に向かった。

 

 ―――――――――

 

 衣装室にはちゃんと着替えるスペースがある。まあ、洋服屋とかで言う試着室みたいな感じね。

 でも―――

 

「ちょ、ちょっとプロデューサーさん!」

「え、何か変かな?」

「変とかの問題じゃなくて!」

 

 ―――私の目の前で着替え始めないでよ!

 

「僕はレナさんにどこを見られても恥ずかしくないよ?」

「私が恥ずかしいの!」

「え〜、つい昨晩も見たじゃ――」

「――着替えるとこはあっち!」

 

 私がそう言うと、プロデューサーさんはコロコロと笑って着替えるスペースに入っていった。

 

 本当に心臓に悪い……というか、狼狽える私を見て喜んでる風にしか見えない。プロデューサーさん、腹黒ドSさんだからなぁ。

 でも―――

 

「ネクタイを解く瞬間っていいわぁ♡」

 

 ―――正直言ってゾクゾクした♡

 

 はぁ、いけないいけない。仕事中なのに。

 でも―――

 

「私の彼氏カッコイイ〜っ♡」

 

 ―――結構、首ったけなのよね、私ったら。

 

「レナにそう言ってもらえて嬉しいよ」

 

 そこにプロデューサーさんが着替えを終えて戻ってきた。

 でもそのプロデューサーさんを見た私は、息をするのを忘れたわ。

 

「どう? 無難にネイビースーツにしたんだけど?」

「………………♡」

「レナさん?」

 

 何が無難になのか全く分からないわよ。

 ちょっと光沢のあるネイビーのストライプ柄のスーツ。そして白のワイシャツにグレーの蝶ネクタイ。

 それでいてそれが私の王子様なんだもの、ドキドキするしかないじゃない!?

 あぁ、ちゃんと撮影出来る不安になってきたぁぁぁっ!

 

「レナさん、どうしたの? ちゃんと見てよ」

「っ、見れないっ!」

「どうして? 何か変なら言って?」

「変じゃない! 寧ろ素敵過ぎて直視出来ない!」

「あはは、レナさんは相変わらず可愛いね」

「っ♡」

 

 両手で私の顔を固定して、目を覗き込んでくるプロデューサーさん。そんなプロデューサーさんにそう言われて、その優しい目を向けられると、私の心臓は今にも破裂しそうなほどバクバクと脈打つ。

 ドッドッ、ドッドッと心臓の音がうるさくて、でも目はプロデューサーさんの目から離せなくて……そんなことをしてるうちにプロデューサーさんの顔が近づいてきたの。

 

「ん……っ♡」

 

 当然のように唇を奪われた瞬間、私は目を閉じる。

 そしてすぐに私はプロデューサーさんの背中に両手を回した。

 

 こうしていきなりキスされるは今回が初めてじゃない。いつされても私はプロデューサーさんからキスされる度に『この人に負けて良かった♡』なんて、感じてしまう。

 

「また、こんないきなりぃ……」

「でも嫌じゃないでしょ?」

「うん……♡」

 

 この勝ち誇る顔がムカつくのに、それでもいいやって思ってしまう自分がいる。

 勝敗なんてプロデューサーさんの前じゃ、私はもう気にしないみたい。

 だって―――

 

「んっ、ちゅ……ちゅぷ、ちゅ……っ♡」

 

 ―――そんなことよりキスしたいって気持ちの方が大きいんだもの。

 

 あんまり時間はない。でも出来るだけ時間を掛けて、お互いの唇を舐め合う。

 

 私が薄目を開けてプロデューサーさんの顔を確認すると、プロデューサーさんは嬉しそうにしていてくれてた。

 私はそれがまた嬉しくて、離れたくないと言うようにゆっくりとプロデューサーさんの唇を舌でなぞる。

 

「ん、ちゅ……ちゅっ、ちゅぅ……ちゅっ、ん、ちゅ……♡」

 

 するとプロデューサーさんに腰をトントンって叩かれる。それがもう時間だよっていう合図。

 

「ちゅ……ぷはぁっ♡」

 

 思いの外、勢いよく唇が離れる。目を開けるとプロデューサーさんが満足げに笑ってて、私は顔が熱くなった。

 

「僕が野獣じゃなくて良かったね」

「え?」

「野獣だったら、既にレナさんはドレスを着てないから」

「……えっち♡」

「期待してたってその目が言ってる」

 

 そう言うと同時に、プロデューサーさんは私に反論させないように私の口を唇で塞ぐ。

 

「ちゅ……ちゅ、ちゅっ、ん、んちゅ……っ、んぅ……っ♡」

 

 君の人生はもう僕のモノだ……そんな風に言われてるみたいに、口を制圧され、私はそのことに全身が喜んでるというみたいに体温が上がる。

 

「ん、はぁ……はぁ……♡」

「続きはまた夜ね」

「やだぁ……」

「ドレスが汚れちゃうよ?」

「脱ぐからいい」

「僕今日は脱がせる気分じゃないんだよね〜」

「〜っ」

 

 意地悪。ほんっとうに意地悪だわ。だってすっごく目が楽しそうだもの。

 

「仕事が終わったら、このドレスよりもっといいドレスを買いに行こう。僕好みの、レナさんに似合うとびっきり似合うドレスを……。それだったら脱がせてあげるよ」

 

 耳元でそんなことを囁かれた。そのせいで私は脳を溶かされたみたいに、力なく頷きだけを返す。本当に今はそれが精一杯だった。

 

「そんなトロトロに蕩けた顔をしてたらバレちゃうよ?」

「誰のせいよ……♡」

「自分のせいでしょ? レナさんは僕の虜だから」

「うぅ〜っ♡」

「可愛い彼女を持つと世界がキラキラして見えるね♪」

「ふんだっ♡」

 

 これからも私はこの人に一生勝てないだろう。でもそれはそれでいいと思う。時々意地悪だけど、大切にされてるのは嫌でも伝わってくるもの。

 だから私は、この人になら負けてていい♡

 

 あ、もちろん仕事は頑張ってミスなく終えたわ!―――

 

 兵藤レナ*完




兵藤レナ編終わりです!

たまにはイケメンプロデューサーにしようと思い、普段は落ち着いた、でもやっぱりキュートなレナさんをデレデレにしました!

お粗末様でした☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。