デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


松原早耶編

 

 自分は女の子だけど

 

 同性からは

 

 嫌われる才能がある

 

 ずっとそうだった

 

 カワイくなりたいから

 

 カワイくなろうとしてるのに

 

 やればやるほど

 

 同性の子たちからは

 

 冷たい視線を浴びてきた

 

 でもね

 

 魔法使いさんに出会ってから

 

 もう何も怖くないの♪

 

 ―――――――――

 

「プロデューサーさぁん、早耶疲れた〜」

「そうか。ならもう一本行こうか」

「プロデューサーさんの鬼〜!」

 

 ど〜も、アイドルの松原早耶こと、さややで〜す♪

 今日の早耶はお仕事はないんだけど〜、早耶専属のプロデューサーさんの指示でトレーニング中〜。

 朝から皇居外苑をランニングして〜、少し休憩したらもう一周して〜、今またもう一周するとこ〜。

 もうやだ〜!って昔の早耶なら放り投げてたけど、今の早耶は絶対にそんなことしないよ。

 

「鬼で結構。でもこれは早耶のためにやってる」

「……はぁい♡」

 

 だって大好きなプロデューサーさんが一緒だもん♡

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 早耶ね、元はモデルだったの。

 カワイイ服とかアクセとかでいっぱい着飾って、写真を撮ってもらってるのは楽しかった。

 でも、楽屋とか控室は本当に嫌だった。

 

 カワイイって思われたくて頑張ってるのに、周りのモデルさんたちからは『ぶりっ子』とか『あざとい』とかいっぱい陰口叩かれてたもん。

 というか、聞こえるように言う陰口なんて陰口じゃないけどね。

 

 その日もね、そんな感じだったの。

 でも、その時たまたま撮影の見学に来てたのが今の早耶のプロデューサーさん。

 

 初めて会った人なのに、プロデューサーさんは早耶の手を引いて他の場所まで連れてきてくれた。

 初めて会った人なのに、早耶はこれまで溜め込んでたものをたくさんプロデューサーさんにぶつけた。

 

 そんな早耶にプロデューサーさんが言ったのは―――

 

『頑張ってる君はカワイイよ』

 

 ―――このたった一言だけだったの。

 

 こんな早耶でもカワイイって言ってくれたのは、プロデューサーさんだけ。

 だからこの人を追ってアイドルになろうって決めたし、絶対に離れないって決めたの。

 だって初対面でカワイイって……それも真剣な眼差しで言うってことはそういうことでしょ?♡

 早耶もこの人ならって心決めてたも〜ん♡

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 実際、プロデューサーさんについていって良かったと思ってるし、前より自信がついた。

 アイドルのお友達もたくさん出来たし〜、ステージにもいっぱい立てたし〜、色んなメディアにも取り上げてもらったし〜……いいことしか起こってないもん。

 でもプロデューサーさんは照れ屋さんだから、なかなか早耶のこと『好き』って言ってくれなくて……でもそんなプロデューサーさんが早耶は大好きなの♡

 まあ、アイドルとプロデューサーだから公の場では言えないのは分かってるけどね〜。

 

 でもでも、ちゃんと最初はプロデューサーさんから『好き』って言ってくれたもん♡

 プライベートでもちょっと冷たいけど、早耶のこと好き好きオーラ出てるもん♡

 

「えへへ♡」

「何をにやけてるんだ?」

「ナイショ♡」

「そうか。それにしてもあれだけヘバッてたのに、ちゃんと付いてきてるな」

「だって置いて行かれたくないもん♡」

「ならもっとペースを上げよう」

「なんでよ〜!?」

「トレーニングだから」

「早耶の足が棒になる〜」

「へぇ、俺そうなる人見たことないから見てみたい」

「例えって言葉知らないの〜!?」

 

 早耶がそう言っても、プロデューサーさんはただケラケラって笑うだけ。ホントドS。でもそれが早耶的にはイイ♡ なんかグッとくるの♡

 

 ―――――――――

 

 結局、トレーニングは鬼だった。プロデューサーさんは中学から大学まで陸上部だったから、早耶より全然余裕なんだよね。

 前にどうしてアイドルのプロデューサーになろうとの思ったか訊いたけど、陸上部の先輩が好きなアイドルのライブに連れてかれて、ファンじゃなかったのに演出とかライブの一体感に圧倒されたから、自分でもやってみたいって思って今の職に就いたんだって。

 もうさ、ホントカッコよくない? だもん、早耶もいっぱいカワイくなってプロデューサーさんの1番でいたいから、苦手なトレーニングも頑張ってるの♡

 

 それに―――

 

「よく頑張ったな」

 

 ―――最後まで頑張れば、プロデューサーさんが早耶のこと褒めてくれるもん♡ もうね、早耶はそうやって優しく笑ってもらって、声をかけてもらえただけで満足なの♡ それだけで今までの頑張りが報われるの♡

 

「疲れた〜」

「でも足が棒になってないな」

「だから例えだってば!」

「あはは、ごめんごめん」

「もぉ〜……」

 

 プロデューサーさんはズルい。そんな風に笑顔を見せられたら、早耶はなんだって許せちゃうんだからね?

 

「ちゃんとストレッチしとけよ?」

「もうしてる〜」

 

 プロデューサーさんにはデビュー前からこうやってしごかれてきたし、ストレッチの仕方も叩き込まれたもん。今じゃ、お風呂上がりにストレッチするのも日課になっちゃったんだから。

 

 でもプロデューサーさんが早耶に変なこと教えることはなくて、実際ストレッチを日課にしてから太りにくい身体になったし、身体も柔らかくなって前よりダンスとか出来るようになったんだよね。

 

「ん、偉い偉い」

「プロデューサーさんのアイドルだも〜ん♡」

「幸せな限りだね」

「えへへ〜♡」

 

 プロデューサーさんが幸せなら、早耶もチョー幸せ♡ お外じゃなかったら、もうプロデューサーさんに抱きついて、いっぱいスリスリしてる♡ 今は流石にしないけど。

 

「でもこれだけ走れれば、問題無いな」

「え?」

「次の仕事」

「え〜、もしかしてアイドル運動会みたいなことでもするの〜?」

「しないしない。あれは運動会じゃない。ただカワイイアイドルを見せびらかすショーだ」

「じゃあ、何ぃ?」

「全国ツアーだよ。早耶だけの」

「ふぇ?」

 

 全国ツアー? 早耶が? それもソロで?

 

「前々から考えてた。今の早耶なら全国どこでライブをしても満員になるし、体力もある。やってみないか?」

「早耶が断れないの知ってて訊いてる〜」

「断られないの知ってるからな」

「ぶ〜、やります〜♡」

「あぁ、やろう」

 

 いきなり決まった全国ツアー。でも全然不安がない。だってプロデューサーさんが笑ってるんだもん。プロデューサーさんが笑ってるってことは、早耶に出来るってことだもん。そんなのやるしかないよね♡

 

 ―――――――――

 

「で? なんだ、この状況は?」

「ん〜?♡ プロデューサーさんの愛を充電中♡」

 

 トレーニングもストレッチも終わった私たちの今日のお仕事は終わり。

 事務所に戻って帰る支度をして、早耶はアイドル寮に戻らないで、プロデューサーさんのマンションのお部屋に来て、プロデューサーさんを押し倒して、その上に覆いかぶさってるの♡

 

「充電中って……」

「だって暫くお互い忙しくなるでしょ?」

「やることが山積みだからな」

「だからそうなる前に今夜は早耶のこと、いっぱいいっぱいカワイがってくれないとダメなの〜♡」

「そういうことか」

「そういうこと〜♡」

 

 お仕事なら早耶だって我慢するけど、忙しくなると本当に触れ合うのすら数秒で終わっちゃうもん。だから先にいっぱい充電して、そのあとでまたいっぱい充電しないといけないの。

 

「早耶、カワイイ?」

「カワイイ」

「日本1?」

「世界1」

「えへへ、プロデューサーさんは世界1カッコイイよ♡」

「歳が10も離れてるから、そう見えるだけさ」

「むぅ、素直じゃない〜」

「カッコイイって言われてドヤ顔出来るほど、俺は自惚れられない」

「知ってる〜♡ プロデューサーさんは照れ屋さんだもんね♡」

 

 今だって早耶に押し倒されて小刻みに体震えてるし♡

 

「ねぇ、ちゅうして?♡」

「いつも勝手にするだろ」

「今はされたいの〜♡」

「まったく……」

 

 プロデューサーさんは不満そうに言うけど、早耶知ってるよ。そんなこと言っててもしてくれるって。

 だってもうプロデューサーさんの右手が早耶のほっぺ撫でてくれてるもん♡

 

「んっ……♡」

 

 唇と唇が重なり合う。たったそれだけで、早耶の体はお腹からじんわりと熱くなってく。それでいて好きって気持ちがいっぱいいっぱい溢れて、息をするのも忘れちゃう。

 

「……早耶はキスをすると、いつも泣くな」

「だってぇ……♡」

 

 嬉しいんだもん。こんなにこんなに大好きな人とキス出来たんだもん。そんなの悲しくないけど泣いちゃうよ。

 

「んんっ、ちゅっ、ん、ちゅ、ちゅぷぅ……♡」

 

 だからもっとキスしたい。プロデューサーさんに愛されたい。

 

「ぷぁっ……ぁ、んっふ……ちゅ、ちゅる、ちゅく……っ♡」

 

 好き……。大好き……。プロデューサーさん。

 

「はぁはぁ、相変わらず……激しいな」

「早耶を惚れさせたプロデューサーさんが悪いんだよぉ?♡」

「そう言われても……」

「もう何を言っても遅いからね? 少なくとも、今夜はずっと愛してもらうから♡」

「……なくの意味が違ってしまうぞ?」

「いいもん♡ どんななき声もプロデューサーさんのためだけに上げてる声だから♡」

「……カワイイ」

「えへへ、もっと言ってぇ♡」

 

 そのあともプロデューサーさんに、いっぱいいっぱい『カワイイ』って言ってもらちゃった♡

 でもそう言われて、早耶がこんなになるのはプロデューサーさんにだけなんだからね?♡

 

 ―――――――――

 

「…………んっ」

 

 早耶、どんなに寝るのが遅くなっても決まった時間には目が覚めちゃうの。何もないなら、また寝ちゃうんだけど―――

 

「おはよう、早耶」

 

 ―――プロデューサーさんも起きてるから、また寝るなんてもったいない。

 

「おはよ、プロデューサーさん♡」

「今日から忙しくなるな」

「うん、でもちゅうする時間はあるよね?♡」

「まあ、そのくらいなら」

「えへへ、なら早耶頑張るぅ♡」

「俺も頑張って、最高のステージを用意する」

「うんっ♡ でもその前にぃ……♡」

「?」

「彼氏限定、さややの彼シャツ姿とか見たくない?♡」

「遅刻するから全部終わったら見せてくれ」

「え〜♡」

 

 遅刻するからって、早耶のそういう姿見たら襲っちゃうってことなのかなぁ?♡ えへへ、嬉しいなぁ♡

 

「ほら、シャワー浴びてこい。その間に簡単なもの用意しておくから」

「はぁい♡」

 

 その日から早耶とプロデューサーさんは本当に忙しくて、全国ツアーが終わるまでキスしか出来なかった。

 でもツアーも大成功だったし、そのあとは二人っきりで3日間、あまあまなオフを過ごしたの♡―――

 

 松原早耶*完




松原早耶編終わりです!

さややはプロデューサー大好きなので書きやすかったです!
ぶりっ子で甘えん坊だけど、好きな人には一途ってのがいいですよね♪

お粗末様でした☆

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