デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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三村かな子編

 

 甘いお菓子が大好き

 

 食べた瞬間に

 

 お口の中に甘さが広がって

 

 幸せな気持ちになるから

 

 みんなはそんな私を

 

 "幸せそう"って言って

 

 ニコニコしてくれます

 

 そんなただの食いしん坊な私に

 

 特別な魔法をかけてくれた

 

 素敵な魔法使いさんがいます

 

 ―――――――――

 

「はぁ……」

「どうした、かな子や」

「何か心配事?」

 

 お仕事もない簡単な打ち合わせだけのこの日。私は杏ちゃんと智絵里ちゃんと組むユニット『キャンディアイランド』で参加するイベントの打ち合わせを終え、そのまま事務所の休憩室で気ままに3人でおやつを食べて過ごしてます。

 今日は3人共レッスンもないし、私は昨日早くにお仕事が終わったからカロリー控えめなカップケーキを作って来たんです。

 

 でもふとした私のため息に、2人共声をかけてくれました。ついため息なんて吐いて心配をかけちゃったのを、私は心の中で謝りながら2人の厚意に甘えることにします。

 

「実は体重が増えちゃって……だからダイエットしようかなって思って……」

 

 私の悩みに智絵里ちゃんは「大変だね。でもトレーナーさんに言えばすぐメニュー組んでくれるよ」って、優しく励ましてくれます。本当にいい子です。

 でも杏ちゃんは―――

 

「またそのネタ〜? 流石に飽きたよ〜」

 

 ―――いつものうさぎさんソファーの背もたれにもたれ掛かって、心底呆れたような感じで言われちゃいました。

 ネタじゃないよっ!?ってすぐに私は言いましたが、杏ちゃんは「かな子の『ダイエットしなきゃ』発言は定期だからね〜」って余計に呆れられました。私ってそんなに言ってるのかな?

 

「まあ気にしなくていいと杏は思うけどね〜。杏も智絵里もガリだから、ユニットではかな子くらいの体型の方が健康的に見えるんじゃない?」

「そうだよ。かな子ちゃんのプロデューサーさんだっていつもそう言ってるし」

「でも……」

 

 2人の言ってることは分かります。私専属のプロデューサーさんが私に気を遣って言ってるんじゃなくて、本心で言ってくれていることも……。

 でも、私はプロデューサーさんに"太い"って思われなくないんです。大切な恋人さんですから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私はプロデューサーさんと事務所には内緒でお付き合いしてます。

 きっかけはプロデューサーさんが私を本気で『可愛い』って言ってくれたり、何人も担当アイドルを抱えてたのに私だけのプロデューサーさんになってくれたり……色んな好きになるきっかけをくれたんです。

 アイドルだからプロデューサーと付き合っちゃいけない。この気持ちは、叶うことはないから諦めないといけない。そう思ってたら、何故か私の気持ちがバレれてたらしくて、アイドルのお友達に『諦めちゃダメだよ』って背中を押してもらえました。

 中でもプロデューサーさんが前担当して愛梨ちゃん、菜帆ちゃん、志保ちゃんにはプロデューサーさんの好みまで教えてもらって、付き合うことになった今でも色々と相談に乗ってもらってます。

 

 告白は私から。最初はプロデューサーさんも驚いた様子でしたけど(私との年の差が12もあるから仕方ないですし、まさか私から告白するなんて思ってもいなかったと思います)、すぐにいつもの優しい目に変わって私の気持ちを受け止めてくれました。

 それだけでも夢みたいなのに、プロデューサーさんは私を本物のお姫様みたいに扱ってくれて、いつもお忍びデートの時はエスコートしてくれます。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 だからそんな私の王子様に幻滅されたくないんです!

 

「はぁはぁ、はぁはぁ……!」

 

 私は2人と別れて、事務所内にあるトレーニングルームに来ました。さっき食べたカップケーキのカロリーを消費するためです。

 2人には『本当に気にし過ぎない方がいいよ』と言ってもらえましたが、それに甘えていたら本当にブタさんやウシさんになっちゃいますからね。そういえば前にお仕事で水族館で撮影した時に、動物博士の人が『アザラシの体脂肪率は40〜50%なんだよ。因みにブタは14%程度ね』って言ってたから、アザラシさんになっちゃうって言うべきなのかな?

 とにかく、太ったらアイドルすら続けられなくなって、プロデューサーさんとの時間が今よりもっと減ってしまいます。

 

 でも、元々運動が苦手な私にとってはこのルームランナーもマスタートレーナーさんみたい。まだ初めて10分も経ってないのに……。ダンスレッスンならみんなと一緒だから、疲れるけど楽しく出来るのになぁ。

 

「かな子」

「っ……ひゃわ〜!」

 

 不意に背中にかけられた声に私は足が止まってしまい、後ろによろめいてしまいました。

 いけないと思ってすぐに後頭部を両手で覆い、痛みを覚悟しました。

 

 ドシーンッ!

 

 ドシーン……

 

 あれ? 痛くない?

 

 後ろにマットとか敷いてあったかな?

 

 私がそんなことを考えていると―――

 

「驚かせてごめん。声をかけるタイミングを間違えた」

 

 ―――そんな優しい声と言葉頭の上から降ってきました。

 上を向くと、プロデューサーさんのお顔がありました。つまり私はプロデューサーさんに後ろから抱きかかられたみたいです。

 それを理解すると、私の顔はすごく熱くなって、すぐにプロデューサーさんから離れました。

 

「わ、私こそ鈍くさくてごめんなさい! 重かったですよね!? 本当にごめんなさい!」

 

 土下座する勢いでプロデューサーさんに謝っていると、プロデューサーさんの笑い声が聞こえてきました。

 顔を上げると、プロデューサーさんは片手で口を押さえてて、肩を揺らすくらい笑ってます。でもその目は私をバカにして笑ってる目じゃなくて、とても愛おしそうな、ペットでも愛でるかのような目でした。

 

「ふふふっ、これでも俺は男だから、かな子くらいの女の子が寄りかかったくらいでどうこうならないよ。相変わらずかな子は体重を気にするね」

「だ、だって……」

 

 体重増えちゃったんですもん。元々細くもないし。

 

 プロデューサーさんは見た目は細いけど、身長が高いからそう見えるだけで実はちゃんとがっしりしてます。私のことを軽々とお姫様抱っこしますし、そのままスクワットとか出来ちゃうくらい。

 

「そんなに心配しなくてもかな子は俺にとっては軽いよ」

「そ、そういうことじゃなくて……」

「まあ何にしても少し休憩しなよ。飲み物買ってきたから」

 

 プロデューサーさんはそう言ってスポーツドリンクを手渡してくれました。

 まだ初めたばかりだけど、プロデューサーさんの言うことを断るのは嫌なので素直に頷きました。

 

 ―――

 

 プロデューサーさんに手を引かれ、トレーニングルーム内の長椅子に座ると、プロデューサーさんも私の直ぐ右隣に座ります。

 汗臭くないかな、髪型変になってないかな……色々と私がワチャワチャしちゃってるのを、プロデューサーさんは優しく見てます。

 

「ふふ、かな子はいつ見ても可愛いね」

「あぅ、そんなことないですよぉ……」

 

 プロデューサーさんに可愛いなんて言われると、顔から火が出そうなくらい熱くなります。なのにプロデューサーさんは楽しそうに目を細めるだけ。

 

「双葉さんと緒方さんから話は聞いた。ダイエットしてるんだって?」

「え、あ、はい……」

 

 うぅ、2人共プロデューサーさんに話しちゃうなんて酷いよぅ。1番知られたくない人に言うなんてぇ。

 

「デリカシーのない質問するけど、これもプロデューサーとしてだから大目に見てね。いくつ増えたんだい?」

「…………4キロです」

「なるほど、それくらいならダイエットする必要もないだろう。最近はトークショーとかラジオ番組とか座ってるだけの仕事が多かったけど、次のイベントではステージに上がってもらうからダンスレッスンも多くなるから」

「でも、私はすぐ痩せたいです。今のままだったらすぐに今よりポチャポチャに……」

「にしたって元々運動が得意じゃないのに無理するのはよくない。怪我したらそれこそ痩せるどころの話じゃなくなってしまうよ?」

「はい……」

 

 本当に私ってダメだなぁ。プロデューサーさんに嫌われちゃうよ。

 

 そんなことを私が思ってると、プロデューサーさんが私の頭を少し乱暴にわしゃわしゃと撫でてきました。

 

「そんな顔しないで。俺まで悲しくなる。大丈夫。ちゃんと考えがあるから」

 

 だから笑って……とプロデューサーさんは言います。本当に優しくて私を笑顔にする魔法使いの王子様。

 

「……はい♡」

「うん、かな子はそうじゃなきゃ。で、俺の考えなんだけど、近くのスポーツジムに通わないか? うちで他のアイドルの子たちも利用してるし、うちのアイドルが広告塔やってるから事務所所属の人なら割安で会員になれるんだ」

「あぁ、あそこですか? 確か心さんとか有香ちゃんとか翠ちゃんも通ってるって本人たちから聞きました」

「なら話が早いね。どうかな?」

「分かりました。でも、そこでどんな運動をすれば?」

「あのジムは地下に温水プールがあるからそこでウォーキングしたり、ゆっくりと泳いだりすれば運動が苦手でも比較的楽に運動出来るよ」

「なるほど……」

 

 流石はプロデューサーさんです。私じゃそんなこと思いつかないですから。

 

「俺もその時は付き合うね。プロデューサーとして、ってのは建前で彼氏としてサポートするよ」

「はぅ……♡」

「それに俺以外の男がかな子のわがままボディを眺めるのは癪だからね。俺がしっかりと害虫駆除するよ」

 

 優しい笑顔なのにサラッと怖いことを言うプロデューサーさん。でも私のことを大切に思ってくれてるのは伝わるので、そっちの気持ちの方が強くて嬉しくなっちゃう。

 

「水着、あとで買いに行こうね。普通の競泳用の水着の方が肌の露出も抑えられる」

「それなら授業で使ってるスクール水着がありますけど……?」

「スクール水着姿のかな子とかレア過ぎて余計に見せたくない。学校の授業とか仕事なら仕方ないけど、出来るだけ俺の目の前だけにしてくれ」

「分かりました♡」

 

 プロデューサーさん、コスプレって言うんでしたっけ? 好きなんですよね。前にバニーガールとか猫耳カチューシャのビキニメイドとかおへそを出したマイクロミニスカートのウェイトレスとか、ちょっとエッチな衣装を頼まれて着たら、とても喜んでくれましたから。でも流石にラ〇ちゃんの衣装は恥ずかし過ぎました……喜んでくれたから嬉しかったですけど。

 

「じゃあ話も纏まったし、俺の仕事もすぐ片付けてくるから着替えてオフィスに来てね」

「分かりました♡」

「あと、俺の分もあるよね?」

「へ、何がですか?」

「カップケーキだよ……って、まさか俺にはないの!?」

 

 さっきまでかっこよかったのに、いきなりへにょへにょになっちゃうプロデューサーさん。失礼ですけど、ちょっと可愛いかも。

 

「あ、カップケーキですか? ちゃんとプロデューサーさんの分はありますよ♡ 私がプロデューサーさんの分を忘れるなんてことないじゃないですか♡」

「それを聞いて安心したよ。可愛い彼女の手作りを味わえないのは悲しいからね」

「ちゃんとプロデューサーさんのだけ生クリームもカスタードクリームも多めにしてありますから」

「それは嬉しいね♪」

「でもプロデューサーさんってそんなに甘党だったんですね」

「かな子のせいだよ。かな子は常に甘い香りがしてるから」

 

 私のふとした疑問にプロデューサーさんはそう返すと、流れる動作で私にキスをしてきました。

 軽く唇を啄み終えると―――

 

「ほら、甘い」

 

 ―――プロデューサーさんはいたずらっぽく言って微笑みます。

 それにつられるように私も笑って、甘えておかわりをおねだりするとプロデューサーさんはすぐに応えてくれました。

 これからもこの人と甘い生活が出来るように頑張ろう♡―――

 

 三村かな子*完




三村かな子編終わりです!

甘いかな子ちゃんには甘い恋愛を!
私の中のキュート勢でトップ5以内に入るアイドルなので、甘く仕上げました♪

お粗末様でした☆

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