女の子が好きだ!
いや、正確には
そのお山が大好きだ!
柔らかくてもちもちしてて
触ってるだけで癒やされる
だからお山があるところに
我は現れるのだ!
そんな我の味方は
すっごく悪い魔法使いである!
―――――――――
「おぉっ、おほほぅっ! これは素晴らしい!」
「ちょ、愛海ちゃん、アイドルがしちゃいけない顔と声が出てるけど!?」
今日のあたしはテレビ番組の収録に挑んでる。番組は美容とコスメをテーマにしたやつで、あたしはここの準レギュラー。そんで今回の番組のテーマは豊胸術らしくて、今あたしは豊胸手術で実際に使うシリコンバッグを触らせてもらってるとこ。
いや、正直舐めてたよ。どうせ偽物だ、作り物だ、と。でも掴んだ瞬間にあたしの細胞が幸福感にむせび泣き、歓喜の雄叫びをあげた。
だから隣にいる男のタレントさんの言葉なんて気にしてない。目の前に柔らかくて最高のモノがあれば、それを愛すことに全力を注ぎたいもん。
「はわぁ、いいですねぇ、これは〜♪ 手術とか関係なしに手元に常に持っておきたいくらいです〜♪」
「愛海ちゃん、それアイドルが言っていいの!?」
さっきからあたしのコメントにいちいちうるさい男だな〜。少しはあたし専属のプロデューサーを見倣ってほしい。物静かで真面目で、でも息抜きの時は全力で、そういうのがいい男への第一歩だよ。まあ個人差があるだろうけど、あたしの場合はそれってことで。
―――――――――
収録も無事に終わったあたしはプロデューサーとテレビ局のスタッフさんたちや共演者の人たちに挨拶をして回って、やっとプロデューサーの運転で事務所に戻るとこ。アイドルとしてデビューして半年でも芸能界ではまだまだ下っ端なあたしだから、挨拶回りが大変だよ。
「プロデューサー、疲れた〜」
「帰ったらオフィスに置いてあるおっぱい枕で癒やしてもらえ」
「そうじゃなくてさ〜」
「じゃあなんだ?」
「人肌で癒やしてほしいってこと〜♡」
「……お前は……」
プロデューサーは露骨にため息を吐いて肩をすくませる。でもあたしはそんなの気にしない。今のあたしは癒やしを求めているのだ!
「プロデューサー、お願〜いっ♡」
こうやって甘えた声でお願いすれば―――
「……俺はまだ仕事があるから、少しだけだぞ?」
―――にしし、プロデューサーは絶対に折れてくれるもんねー!
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――――――
―――
あたしは14歳だけど、プロデューサー(29歳)と付き合ってる。
理由は一緒にいてくれるから。
あたし、両親が共働きで忙しくしてて、小学校1年生の頃から鍵っ子だった。
同級生のみんなは『家に帰ったら一人で自由だから羨ましい』って言われた。
あたしはそれが普通だから特に優越感に浸ったりはなくて、寧ろみんな家に誰かがいることの方が羨ましかった。
両親があたしのことを大切に思ってないとは言わない。だって必ずどっちかは土日祝日は家にいてくれるもん。それにいない時はおやつに取引先で貰ったりしたお菓子がたくさん置いてあって、好きなだけ食べても怒られないし、寧ろ『この前の美味しかった』って言えば次の日はもっと置いてある。夕飯も母親が作り置きしてってくれるし、そうじゃなければ出前のお金と『時間がなくてごめんね』っていう書き置きがある。まあコンビニ弁当で済ませて、おつりっぽい小銭をあたしの書き置きと共に置いて、残りはあたしのぽっけに入れちゃうんだけどね、えへっ。
一人が当たり前と化してたあたしにとって、母親の柔らかさを求めた結果が女の子のお山だったの。別にお山じゃなくても、柔らかくて安心するモノだったらいいんだけどね。
そこでプロデューサーって訳。
出会いは完璧に最悪だろうけど、そんなあたしをアイドルにしたプロデューサーだもん。変わり者だよね。
だもん、一緒にいて心地良かったの。レッスンがなくてもプロデューサーに会いに行ってたし、気がついたらプロデューサーがいないと寂しくてどうしようもない女の子になっちゃった。
―――
――――――
―――――――――
だからプロデューサーに責任をとってもらったの!
そしたらプロデューサーが『一生面倒見るよ』って言ってくれた! ただ、あたしたちの関係は公には出来ないから、あたしが立派な大人のアイドルになるまでは隠れて付き合うんだ♪
でも別に大変なことなんてない。だって年の離れた兄妹みたいってみんなから言われるから、特別なことをする時以外は人目を気にしなくていいもん。
「はぁ、疲れた〜。なのに事務所にはプロデューサーしかいないという」
「番組収録なんてそんなもんさ。というか、俺たちだけなら都合がいいんじゃないか?」
「…………確かに♡」
それからあたしとプロデューサーは事務所の資料室(監視カメラが無い。でも警備員さんは定期的に巡回してるから念の為)に入った。
するとプロデューサーがおもむろにスーツの上着を脱いで適当な椅子にかけると、あたしに向かって両手を広げる。
だからあたしはル〇ンダイブでプロデューサーのお山(お腹)に飛び込んだ!
「おっほぉ!♡ やっぱりプロデューサーのお山は最高ー!♡ はふはふ、はふ!♡」
「まさか愛海の御眼鏡に適うとはな……人生何があるか分からんもんだ」
「えへへ〜、ずっとこのままをキープしててね♡ あとお尻のお肉も落とさないように!♡」
「普通ならダイエットしろって言うとこなんだがな」
「ダイエットなんてあたしが許さないから! この体型でも健康体なら問題ないでしょ!」
「それはまあ、そうなんだが……」
プロデューサーはメタボの一歩手前。健康診断とかではダイエットを勧められてるけど、そんなのあたしが許さない。だってプロデューサーのこのビールっ腹とお尻のお肉があたしは大好きだから!
あたしって色々と女の子のお山に執着してるけど、実際のとこは揉み心地が良ければ男だろうと動物だろうと、なんだっていいんだよね。だからその点、プロデューサーなら恋人だし揉み放題だし、プロデューサーも怒らない!
寧ろプロデューサーと付き合ってからは他の子のお山とかには触れないようにしてるよ。だってプロデューサーという愛する人がいるんだもん。なんか浮気してる気分になっちゃうんだよね。それにいつもプロデューサーと一緒にいるから好きなだけ人目を盗んでこのお肉をむにむに出来るもん♪
「はぁ、幸せ〜♡」
「愛海は本当に変わった子だな」
「変わってて結構。この幸せを得られるなら、あたしは変人で構わない!」
「はいはい。まさかこの体型に感謝するとは思わなかったよ」
「えへへ〜、プロデューサーも幸せ?♡」
「まあ、こんなに可愛い彼女がいればな」
「えへえへ、じゃあ二人で幸せってことだよね♡ 嬉しいね♡」
「俺は眩しいよ……」
プロデューサーはそう言って上を向く。あ、顎のお肉摘めそう。あとでスリスリさせてもらおうかな。プロデューサーって髭濃くないからジョリジョリしなくて最高なんだよね。チクリとはするけど、それも慣れればいいアクセントだし!
「ほら、もういいだろ。タクシー呼んどくから帰る準備してこい」
「え、やだ」
「やだじゃないだろ」
「や〜だ〜っ!」
「仕事が長引くと俺も愛海も困るんだよ」
「まだ癒えてない!」
「わがまま言うなよ」
「だって明日オフなんだもん! プロデューサーに明日会えないもん! プロデューサーの家知らないし!」
「教えたら入り浸るからな。そんな不健全なことさせられるか」
「恋人同士なら大丈夫!」
「年齢的にアウトなんだよ」
むう、プロデューサーは真面目なとこは好感持てるけど、融通がきかないのがちょっとなぁ。オフの日くらいプロデューサーのお肉を1日中触ってたいのに。
「あたしの両親、今出張してるから寂しいの」
「友達の家に泊まりに行ったらいい。幸いこれから三連休だ」
「プロデューサーのとこじゃだめぇ?」
「…………駄目だ」
お、これはもうひと押しすれば行けるのでは?
「プロデューサー、お願〜いっ♡」
「…………駄目だ」
ぐぬぬ、これに耐えるとは小癪な。プロデューサーにならあたし、何されたって嬉しいだけなのに。プロデューサーは真面目だからなぁ。
「プロデューサー、あたしを本当の彼女にして?♡」
「…………よく考えてそういうことを言え」
「言ってるもん」
「俺だって男なんだよ。その上可愛い女の子が自分に好意向けて誘ってるんだ。手を出す可能性が高くなる」
「手を出してって言ってるんだけど?」
「そんなの駄目に決まってるだろ」
「プロデューサーの意気地なし」
「それだけ大切に思ってるんだ。それと心にもないことは言うな。自分が傷つくだけだ」
「そこは自信満々なんだね……」
「愛海が俺のことを好きなのは毎日伝わってくるからな」
「あう……♡」
くそぅ、これじゃあたしの完敗じゃぬぃこ。
でもあたし、本当にプロデューサーと一緒にいたいんだけどなぁ。どうしよ。このまま帰ってもあたし部屋で泣いちゃうよ。
あたしがどうしようかとプロデューサーのお肉を揉みしだきながら考えてると、プロデューサーが大きなため息を吐いた。
呆れられたかなってちょっと不安になると―――
「俺は何もしないと誓う。だから愛海も何もしないと誓え」
―――って言ってきた。
それってそういうことでいいんだよね?
「いいの?」
「元々はそれが望みだろう?」
「何もしないの?」
「一緒に寝るくらいはする」
「それだけ?」
「何をさせたいんだ、俺に」
「色んなこと……♡」
「そこで顔を赤らめるな!」
「だってぇ、あたしの全部はプロデューサーだけが好きにしていいんだよ?♡ 好きな人には色んなことされたいじゃん♡」
「本当に14歳のセリフなのか、それは」
「大人な人と付き合ってるからね〜♡」
「はぁ、何にしても俺は何もしない。俺の仕事が終わるまで大人しく待ってろよ。終わったら一度愛海の家に行って、着替えとか準備してこい」
「分かった! プロデューサーの邪魔にならないようにお肉揉んで待ってる!」
「……好きにしろ」
こうしてプロデューサーは結局あたしを甘やかしてくれた。だから余計に好きになっちゃうし、色んなことしてほしい欲求が強くなっちゃった。
だからプロデューサーのお部屋にお泊まりしたら、ちょっと行動しちゃお♡
後日―――
「プロデューサーのいい握り具合いだったなぁ♡ あの柔らかいのが程よい弾力のある硬さに変化していくのはもう―――♡」
「少しは黙れっ」
あたしはプロデューサーが何もしないのをいいことに、プロデューサーの体を好きだけ堪能しちゃいました♡―――
棟方愛海*完
棟方愛海編終わりです!
彼女はお山とはまた別の境地を開拓してしまったのだ。
お粗末様でした☆