デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


持田亜里沙編

 

 歌うことが好き

 

 中でも子どもたちと一緒に

 

 歌うのが好きなの

 

 どんな子も素直だけど

 

 色んな子がいるから

 

 見ていて温かい気持ちになるの

 

 でも最近は

 

 大きなお友達も増えて

 

 前よりも歌うことが

 

 好きになっちゃった♪

 

 ―――――――――

 

「みなさーん、今日は私とウサコちゃんのトークショーに来てくれてありがとー! 今日初めての子も私たちのことを覚えて、よかったらお友達になってくださいねー!」

 

 パチパチパチパチパチパチ!

 

 ふぅ、今日のお仕事、無事に終了です。

 このお仕事は都内の大きなデパートのイベントエリアを使わせてもらってやる、私とウサコちゃんのトークショー。デパートの方が私を応援してくれているのもあり、月に1度やらせてもらってるんです。

 トークショーと言っても、最初と最後は来て頂いた方々と一緒に童謡を歌います。もちろん私はピアノの方も演奏させてもらってます。

 

 来て頂いた方々と手を振ってお別れして用意された控室に移ると、今度はデパートの方々とご挨拶をします。

 みなさんもイベント中はそのスタッフとして動いてくれてますが、私の歌声をいつも褒めてくださいます。

 好きなことを褒められるといくつになっても嬉しくなりますね♪

 

 そしてデパートの方々が去ると、今度はスタイリストさんたちが入ってきてメイクや衣装を戻してくれます。

 その間もみなさん、私の歌声を褒めてくれて、私はとっても温かい気持ちでいっぱいになりました♪

 

 ―――

 

 控室を出てデパート関係者さんだけが使える裏口へ着くと、既にそこには1人の男の人が私を待ってました。

 私の専属プロデューサーくんです。"くん"と言っても私より9つ歳上さんなんですけどね。

 でもプロデューサーくんは普通の男の人と比べるとちっちゃいんです。確か160センチしかないって本人は気にした様子で言ってました。かわいいのに。

 あとあと、それでちょっと丸っとしてますね。そのせいか、事務所ではマスコットみたいな感じにいじられキャラさんです。その時反応なんてとってもかわいいんですよ♪

 

「お疲れ、亜里沙ちゃん。車もう回してあるから乗って」

「はーい、安全運転でお願いしますね、プロデューサーくん♡」

「いつも安全運転を心がけて……ってタクシーの運ちゃんか俺は!」

「ナイスのりツッコミです、ふふふっ♡」

「俺は芸人じゃなくてプロデューサーなんだよ。さっさと乗れって」

「はーい♡」

 

 あぁ、私の恋人くんってかっわいい。

 

 あ、言い忘れてましたが、私はアイドルですけどプロデューサーくんと秘密恋愛してます。

 理由は単純で私の一目惚れです。だって大人なのにこんなにかわいい人今まで見たことも会ったこともないんですよ。

 ちっちゃいし、ちょっと丸くて、かわいくて、何事にもまっすぐで……だから何度も何度も『私とお友達以上になりましょ♡』って何ヶ月もアタックして、1か月前にやっと受け入れてもらえました。

 それからと言うもの―――

 

「事務所に向かう前にどこか寄ってくか? 1時間くらいは余裕があるぞ?」

「じゃあ、ちょっと近くの公園に行きましょう♡」

 

 ―――お仕事が終わったあとはちょっとしたデートをするのが当たり前になりました。

 

 プロデューサーくんは私のことを考えてスケジュール管理をしてくれてますが、デートが出来るようにしてくれてるんです。かわいいのに思いやりのある人だと分かった時は、もっともっと好きになっちゃいました。

 今だって毎日毎日プロデューサーくんの良いところを見つけて、毎日毎日プロデューサーくんに恋をしてます。本人にそれを言うと『むず痒くなるから止めろ!』って言われちゃうので言いませんが、代わりに仲良しのアイドル仲間のみんなに聞いてもらってます。

 でも―――

 

「そういえば、亜里沙さん。また俺のことを可愛いって他のアイドルや事務員さんたちに話したよな。お陰で出社した途端に色んな奴らからのど飴もらったんだぞ! あの話を知ってるのは亜里沙さんだけだよな! 話すなって言ったよな!」

 

 ―――話したことがバレると怒られちゃいます。

 

 そのお話というのはついこの前に私がのど飴の宣伝キャラクターに選ばれて、CMの撮影をした時でした。

 私とは別に元からいるのど飴のキャラクター……アザラシのノドちゃんというキャラクターと一緒にそののど飴の歌を歌うという内容だったんてすけど、プロデューサーくんってば私よりノドちゃんのことばっかり褒めてたんですよ。かわいいかわいいって。

 確かにノドちゃんの見た目はまん丸でくりくりの大きなお目々のぬいぐるみだったので、かわいかったです。

 でも恋人の私よりぬいぐるみの方を褒めるのは悔しかったので、その時のお話を事務所でしたんです。スタッフさんに許可を得て、そのぬいぐるみを抱きしめて『はわ〜♪』ってしてるプロデューサーくんがもうかわいいのなんのって! 嫉妬したのもありましたが、誰かと共有したくて喋らずにはいられなかったんですよ!

 あ、因みにその時私、こっそりとその時のプロデューサーくんをスマホのカメラで写真と動画の両方で保存してあります。私の宝物フォルダに入ってます。

 でもみんなにお見せしたら『どっちがぬいぐるみ?』って笑ってました。確かに雰囲気似てます。でも断然かわいいのは私のプロデューサーくんなんですからねっ。

 

「プロデューサーくんが他の子を褒めてたからですぅ」

「え、そんな理由?」

「そんな理由じゃないですよっ。恋人の私よりぬいぐるみだったんですよ? いい気分しません」

「それは悪かったよ。だって俺、あの手のぬいぐるみ好きなんだよ。知ってるだろ?」

「知ってますよ〜? プロデューサーくんが5歳の頃から今もた〜いせつにしてて、出張先にも連れて行く丸っこいフォルムのステゴサウルスのぬいぐるみのことはよ〜く知ってますよ〜?」

「ゴンサレスくんは俺の宝物だ! 棺桶に一緒に入るんだい!」

「分かってますよ〜。本当にかわいいんですから、プロデューサーくんは♡」

 

 そのステゴサウルスのぬいぐるみを抱っこして寝てるプロデューサーくんを想像するだけで、私は悶ます。実際にそれを見た時、そのぬいぐるみも約70センチと結構な大きさでしたし、ぬいぐるみの親子が並んで寝てるみたいになって興奮しちゃいました。

 その姿を拝見出来てとても嬉しかったので、いっぱい写真や動画に収めましたから!

 

「可愛い言うな。可愛いのは亜里沙さんだろ」

「え〜、プロデューサーくんのかわいさには負けちゃうなぁ♡」

「100人に訊いたら100人が亜里沙さんって言うに決まってる」

「そこに私が入ってたら私はプロデューサーくんって答えるので、99人ですね♡」

「なんで妙に嬉しそうなんだよ……」

「プロデューサーくんがかわいいってことを知ってるのが私だけだからですよ〜♡」

「…………はいはい」

 

 うふふっ、耳まで真っ赤にしちゃって……やっぱりかわいい。それにさっきは言い返しちゃったけど、私のことをかわいいって言ってくれたのはちゃんと嬉しかったです。好きな人に褒められるとやっぱり胸が温かくなりますからね。

 

「ほら、着いたぞ。変装忘れないように」

「はーい♡」

 

 話している内に公園近くのコインパーキングに車を停めたプロデューサーくん。

 私は彼に言われた通り、カバンに入れてある伊達メガネとつばの広いグレーの帽子を被ります。実はこれプロデューサーくんからのプレゼントだったりします、ふふふっ。

 ああ、因みにデートの時はウサコちゃんは車でお留守番です。持っていくとそこに私のお友達(ファン)がいた場合にすぐにバレちゃうので。

 

「ほら」

「失礼します♡」

 

 すかさず腕を差し出してくれる彼に甘えて、私は彼の柔らかい腕に抱きつきます。これだけで私の幸せはうんと大きくなります。柔らかいのにその奥は程よく硬くて……絶妙な抱き心地なんです、本当に。この人の恋人さんになれてよかった……って毎回この瞬間に実感します。

 

「寒くないか?」

「まだ日差しがありますから、大丈夫ですよ♡ それに〇〇くんの腕はポカポカしてますから♡」

「デブだから人より体温が高いだけだ」

「ぽっちゃりですよ。もっと太ってぽちゃぽちゃになったら、きっともっと柔らかくなって気持ち良さそうですね♡」

「健康診断で黄色信号出てるのに、今以上に太れっていう彼女はどうなんだよ」

「どんなに太ってても大好きですよってことです♡」

「はいはい、むず痒くなるからそういうこと言うの止めような」

「はーい♡」

 

 ―――――――――

 

 公園に入ると、夕方なのもあって子どもたちが遊具で遊んでます。

 そんな賑やかな声を聞きながら、私たちは夕日のあたる場所ベンチに肩を並べて座りました。

 

「子どもってのは元気だなぁ。俺もあれくらいの頃は遊び回ってたが、今じゃ遊び回る元気もないよ」

「遊ぶのは子どものお仕事みたいなものですからね。読書とかが好きな大人しい子もかわいいですけど」

「亜里沙さんって本当に子ども好きだね」

「はい、かわいいですから」

「俺は普通だな。自分の子どもなら分からないけど」

 

 でもそんなことを言うプロデューサーくんの子どもたちを眺める目は、とっても優しいものです。

 プロデューサーくんはちょっと素直じゃないところがあって、それは子ども好きということを認めないところです。

 前にアイドル活動の一環でボランティアとして事務所から近くの保育所に私を含めた数人のアイドルでお手伝いへ行ったんですが、そこでプロデューサーくんは子どもたちにとっても懐かれてたんですから。子どもは遊んでくれる人とそうでない人が分かりますし、プロデューサーくんも『あっちでお姉ちゃんたちと遊べよ』って言っててもとっても優しい声色だったから余計に懐かれてました。

 優しいプロデューサーくんだから私は好きになってよかったって思ってますよ。

 

「〇〇くん……♡」

「ん、どうした? やっぱ寒くなったか?」

 

 大好きな人の名前を呼んで、その柔らかい胸に頭を預けると、優しい彼は私の気持ちなんてこれっぽっちも察してないくせに肩を抱き寄せてくれます。

 だから私は調子に乗って―――

 

「大好きです♡」

 

 ―――そっと彼の耳元にその言葉を囁きました。だってそうすると彼の目は驚きの色を強くして、すぐに元の優しい色へと変わるんです。その変化が私は堪らなく愛おしい。

 

「な、なんだよ、急に?」

「言いたくなったからです♡」

「そうかよ……心臓に悪いからやめれ」

「無理です♡」

 

 笑顔で拒否する私はすぐにまた彼の耳元へ「大好きです♡」と繰り返し囁きました。するとどんどん彼の体温が上がって、耳まで真っ赤になります。あぁ、なんてかわいいの。

 

「あ、亜里沙さんっ」

「早く慣れてくださいね♡ 結婚したら毎日、一緒にいる時は常に言いますから、私♡」

「ええ〜……」

「うふふっ、試しに今度お泊まりしたら実行しますね♡」

「殺す気か!」

 

 その後も私は時間が許す限り、彼へ囁きました。

 そして当然、後日お泊まりした際に実行すると、プロデューサーくんは床を何度も転がってました。かわいかったですし、ちゃんと撮影しました♡―――

 

 持田亜里沙*完




持田亜里沙編終わりです!

優しいのにSっぽくしました!

お粗末様でした☆

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