デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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桃井あずき

 

 ずっとアイドルになりたかった

 

 可愛い服に可愛いダンス

 

 どれもキラキラしてて

 

 ずっと憧れてた

 

 だからオーディションを受けたの

 

 ちょっと失敗はしたけど

 

 結果が良ければすべて良し!

 

 それに

 

 最高の魔法使いさんも味方だしね!

 

 ―――――――――

 

「…………あずき」

「………………」

「俺の饅頭を食べた罪深き頬肉はこれだな?」

「うわんうわんうわんっ」

 

 あずき、今日のレッスンが終わって専属のプロデューサーが使ってる事務所のオフィスに戻ったの。

 そしたらプロデューサーが席を外してて大人しく待ってたんだけど、プロデューサーのデスクの上にあずきの好きなお饅頭(地元で人気のテニスボールくらいの大きさのやつ)があったから、食べて待ってたの。相変わらずお饅頭は美味しかったし、丁度レッスンでお腹減ってたから余計に美味しかった!

 

 でもそれはプロデューサーも同じで、プロデューサーもこのお饅頭好きなんだよね。

 それで戻るなりあずきが頬張ってたもんだから、プロデューサーからの"ほっぺコネコネの刑"を甘んじて受けてる。

 心が狭いとかは思わない。だって食べ物の恨みは心云々の話じゃないからね。あずきももう少し考えるべきだったし。

 

「ったく、事務員さんからもらったからあずきと半分にして味わう予定だったのに」

「ご、ごめんね……もぐもぐ」

「はぁ、食べちまったのは仕方ないからな。今更戻されても嫌だし」

「ごくん……えへへ♪」

「で、腹は膨れたのか?」

「ちょっとね♪」

「さいですか。まあいい。次のライブが決まったから、ちょっと時間くれ」

「わっ、やった! 聞かせて聞かせて!」

 

 プロデューサーは大人だなぁ。伊達にあずきより15年先に生まれてるだけのことはあるよね。あずきだったらこんなに簡単に許せないもん!

 まあそんなとこがプロデューサーのいいところなんだけどね。

 

 ―――

 

 聞かせてもらった次のライブの内容。それは前から何度もユニットを組んでる『フリルドスクエア』のみんなでのドーム2daysだった。

 みんなに会えるの楽しみだなぁ。いつもメールとか電話してるけど、会う機会はあんまりないから嬉しい♪ それに今はあずきも学校が冬休みだからこのイベントまでは東京で過ごせるもん!

 そ・れ・に―――

 

「また新婚さんごっこしようね、プロデューサー♡」

 

 ―――その間はプロデューサーとずっと一緒にいられるもん♪

 

 あずき、アイドルだけどプロデューサーと付き合ってるの。あずきがアイドルを引退したら結婚するし、実家の呉服屋をあずきが継ぐからプロデューサーはお婿さんに来てくれるんだよ! もちろん、両親は承諾済み! プロデューサーさんくらい仕事に真面目な人だと、年の差とか関係ないみたい。それに両親から見ればあずきは結構わがままだから、そんなあずきを上手く手懐けてるプロデューサーに感心してるみたいなんだよね。

 まあそんな感じでプロデューサーとは将来ももう決まってる仲なんだ。こんなに素敵で頼りになる人があずきのお婿さんだなんて、あずき幸せ!

 

「たまにはアイドル寮の方にでも泊まればいいんじゃないか? ユニットメンバーとの交流も兼ねて」

「交流なんてもういっぱいしてるもん。それより将来のお婿さんとの交流を深める方が大切だと思うなー?」

「毎回毎回辛抱させられる身にもなってくれよ」

「両親は許してるんだから、辛抱しなくてもいいじゃん。あずきウェルカムだよ?♡」

「止めろ」

「むぅ、プロデューサーの甲斐性なし!」

「ちっ」

 

 うわっ、舌打ちされた! 将来を約束してる相手になんたることを!

 

「本当に勘弁してくれ。あずきを大切にしたいんだよ」

 

 と思ったらめっちゃデレたー! 不覚にもキュンときたー! ずるい! この男ずるい!

 

「た、大切にされてる自覚はあるよ〜? でも、あずき的には確たるものが欲しくてですね〜」

「俺から別れを告げることはない。まああずきが別れてほしそうにしてたら、俺から告げるかもしれないが……」

「ちょっと、何口走ってんの! あずきがそんなことしてほしくなる訳ないじゃん! プロデューサーのバカ!」

「すまん。でもあずきは若い。同世代だってこれからどんどん魅力的になるからな。未来は分からん」

「だからそんなのどうでもいいの! あずきはプロデューサーがいいの!」

 

 わからず屋のプロデューサーにあずきは怒鳴りつける勢いで宣言して、プロデューサーの胸に飛び込んだ。

 するとプロデューサーは苦笑いをこぼしながらも、あずきの背中に両手を回して抱きしめてくれた。そうだよ、それでいいの。余計なこと考えてないで、これまでと同じようにあずきとラブラブしてればいいの。バーカバーカ!

 

「あずきは本当にこれと決めたら一直線だな」

「ふんだっ、あずきは一途なの」

「ありがとう。俺を好きになってくれて……俺は幸せ者だ」

「今更気づくとか遅い」

「人間ってのはいつも迷う生き物なのさ」

「あずきは迷ってないから人間じゃないと?」

「そうは言ってない。まあ少しは後先を考えてはほしいな」

「……それは善処しゅる」

「そうしてくれ」

 

 そんな感じでちょっとケンカっぽくなっちゃったけど、最後はハグして終わったからオッケー!

 でもこれからもプロデューサーが不安にならないように、あずきの方からどんどん好き好きアピールしなきゃ! 絶対にこんな素敵な人、離さないんだから!

 

 ―――――――――

 

 お仕事の話とかも終わったあずきは、プロデューサーの運転で家まで送ってもらってる途中。

 でもまっすぐに家には帰らないよ。だって今日はまだ恋人としての時間を過ごしてないもん。アイドルのお仕事とプロデューサーのお仕事が終わったら、2人で恋人同士の時間を過ごすって約束があるの。

 だから今日も途中のコンビニで飲み物とかを買って、帰り道にあるちょっと広い公園の駐車場に車を停めてもらった。

 暖かければ変装して2人で公園を手を繋いで(もたろん恋人繫ぎね!)散歩したりするんだけど、最近は夜も冷えてきたから車の中でちょっとお喋りすることにしたの。

 

「プロデューサー、あんまん買ったんだ」

「誰かさんに食料を食われたからな」

「えへへ……美味しかったよ?」

「そりゃ美味かっただろうよ。俺も好きな店の饅頭なんだから」

「えへ、えへへ……」

 

 とりあえずあずきは笑って誤魔化すことしか出来ない。次からは本当に気をつけます。

 そんなプロデューサーのちょっと冷たい視線から逃げるように、あずきは温かいココアを飲んでると―――

 

「ほい、あずきの分」

 

 ―――半分子に割ったあんまんを渡された。しかも紙袋の中には半分子になってる肉まんもあった。

 

「……いいの?」

「いいからそうしてるんだが?」

「ありがと♡」

 

 えへへ、プロデューサーは優しいなぁ。また好きになっちゃった。

 

「それにな、こういうのは好きな人と半分にして食べると余計に美味いんだ。俺がまだガキの頃、親父とお袋がこうやって食べててな……。当時の俺は恥ずかしいことしてんなとか思ってたけど、実際にしてみるとハマるもんだ」

「そ、そっか……♡」

 

 うわーん、もうなんなの、あずきの彼氏可愛過ぎるんだけど! 余計に惚れちゃうでしょー! 絶対お婿さんにしてやるんだからー!

 

「はぐっ……うん、美味い!」

「そうだね♡」

「幸せだな」

「うん……とっても♡」

 

 ―――

 

 それから2人で仲良く食べて、食べ終わるとあずきが我慢出来なくなったからプロデューサーに抱きついちゃった。

 

「その体勢辛くないか?」

「シートベルト外してあるし、平気♡ 強いて言うなら後部座席に移ってもっと密着出来たら文句なしかな♡」

「今の状態で我慢してくれ」

「ふふふ、は〜い♡」

 

 別に我慢なんてあずきはしてないけどね。我慢してるのはプロデューサーの方なのに、辛抱強いなぁ。

 でもそれだけ大切にしてくれてるのはちゃんと伝わってる。だからあずきもちょっと大人になって、今はこれ以上わがままは言わない。

 焦らなくてもいつかはプロデューサーとなんのしがらみもなく触れ合える日が来るんだもん。その時になったらこれまで我慢した分あずきの要望を全部聞いてもらうんだから。好きな時にちゅうもぎゅうもしてもらって、好きなだけちゅうとぎゅうをしてもらって、ずっとずっとず〜っとイチャイチャするの。

 だから今は少しだけにするね。

 

「プロデューサー、あずきのこと好きって言って?♡」

「好きだよ、あずき」

「なんかサラッと言い過ぎじゃない?」

「これが初めてじゃないからな。毎度毎度おねだりされてれば慣れる」

「じゃあ愛してるって言って」

「……愛してる」

 

 ふひっ♡

 

 あ、なんか変な声出ちゃった。

 

「言わせておいて照れるなよ」

「いやぁ、言われ慣れてないもんで……♡」

「なのに言わせたのかよ……」

「言ってみたら言ってくれたもんで……♡」

「言わせたのはこの口か? おらおらっ」

「うににに〜♡」

 

 今度は"唇コネコネの刑"にされちゃった。コネコネって言っても、唇を軽く摘まれて上下に揺らされるだけだなんだけどね。

 でもそんなことよりあずき、サラッとプロデューサーが『愛してる』なんて言ってもらったことの方が嬉し過ぎてにやにや止まらないんだよ〜。

 

「ったく」

「えへへ、プロデューサーだあいすき♡」

「俺は愛してるって伝えたから俺の方が上だな」

「えぇー! あずきだよ! あずきの方が先にプロデューサーのこと好きになったんだからー!」

「そのあとで俺が抜かしたから」

「はぁ? そんなことない! 絶対絶対絶〜対っ、あずきの方が上だもん!」

「しょうがないなぁ、じゃあそういうことにしておくよ。俺大人だから」

 

 くぅ〜! よく回る舌め〜! そんな舌こうしてやる〜!

 

「はむっ!」

「んぉ!?」

 

 あずきはプロデューサーに"悪い舌カミカミ"の刑を与えた。本気では噛まないよ? ちょっと痛いってくらいにカミカミするだけ。唇を塞いで、舌で強引にプロデューサーの口の中に攻め込んで、その舌をカミカミするの。

 

「あ、あふひ……っ」

「はむっ、んっ、はむ〜っ!」

「っはぁ、悪かった! 俺の負けだ!」

「ふふん、最初からそうすればいいの♡」

 

 あずきの大勝利! へへーんだっ!

 

「じゃあ、お詫びのちゅうはプロデューサーからね♡」

「さっきまでしてたじゃないか」

「あれは罰! 今からのはラブラブのちゅうなの! 早くっ!」

「はいはい……ちゅっ」

「んむぅ♡」

 

 えへへ、プロデューサーとのちゅうはやっぱり幸せ。

 これからもいっぱいちゅうして、2人がおじいちゃんとおばあちゃんになってもずっとラブラブでいようね!―――

 

 桃井あずき*完




桃井あずき編終わりです!

天真爛漫なキュートなあずきちゃんはこんなのが似合うかと思って書きました!

お粗末様でした☆

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