デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


柳清良編

 

 ナースを志したのは

 

 たくさんの人を笑顔にしたいから

 

 悲しむより

 

 笑っている方が幸せだと思うから

 

 でも

 

 とある魔法使いさんを助けたら

 

 ナースよりも人を笑顔に出来る

 

 そんな存在になれると言われ

 

 その時から私は

 

 魔法使いさんの魔法に掛かりました

 

 ―――――――――

 

 おはようございます。元ナースでアイドルの柳清良です。

 私は今日、献血PRに使われるポスターの撮影とホームページで公開する動画撮影のために某所の撮影スタジオへ来ていて、今しがた無事に全てを終えることが出来ました。

 私が元ナースということでこのお仕事のオファーを頂いて、それはとても光栄なことなんですけれど―――

 

「大丈夫なんですか、プロデューサー?」

「…………」

 

 ―――私の専属プロデューサーが休憩スペースである椅子に座り込み、テーブルにお顔を突っ伏してグロッキー状態なんです。

 

 まるで初めて出会った時みたい。心配で私が声をかけても、プロデューサーは放心状態でますます私は心配になります。

 なのに―――

 

「プロデューサーさん、確認お願いしまーすっ」

 

「あ、はい、今行きます。清良、お疲れ。こっちのOKが出るまではここで休んでて」

「は、はい……」

 

 ―――プロデューサーは私の心配なんて知らずにお仕事に向かって行ってしまいました。プロデューサーである以上、責任を持ってお仕事に勤しむ彼は尊敬する。でもいつも自分のことを後回しにするあの自己犠牲思考は、私は感心出来ない。

 だってあの人は私にとっての掛け替えのない存在だから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私がアイドルになったのも、ここまで色んなお仕事が貰えるようになったのも、全てプロデューサーのお陰。

 多くの人を笑顔にしたい……そんな私の夢を彼は手伝ってくれて、しかもそれを叶えてくれる。

 その道のプロなのに私の意見もちゃんと聞いて、考慮してくれる。そんな柔軟なところや元からある思いやり深いところに私は惹かれ、恋に落ちた。

 

 最初はいけないことだと思ってた。捨てなきゃいけないことだと思ってた。

 

 でも、元々これと決めたら止まらない性格の私がその気持ちを捨て去ることなんて出来ないことだった。

 

 一緒に過ごせば過ごすほど、時が経てば経つほど、私の恋は膨らみ……そして爆発した。

 

 その日は私がアイドルデビューして初めてチケット完売して臨んだライブがあった。

 小さなところだったけれどそのライブは大成功と言える内容で、プロデューサーと思わず楽屋で抱き合うくらい喜び合った。

 そんなライブのあとで、私はプロデューサーに『お祝い』と言われて彼行きつけのバーに向かった。

 

 そこのバーはプロデューサーが大学生時代にアルバイトでお世話になったところで、華やかな新宿でも駅から離れた裏路地にひっそりとあるバー。

 中はレトロでマスターさんは三代目。昭和の後期からこの場所でやってるみたい。

 マスターさんの計らいで貸し切りにしてもらって、最初は静かにカクテルで乾杯をして、ライブの成功を祝ってた。

 

 でもそこで私はやらかした。お酒なんて普段からあまり飲まないのに、美味しいからとハメを外し、その結果私は酔っ払って……その勢いのままプロデューサーを口説いてて、朝意識がハッキリとすると私はプロデューサーの腕枕をされてた。

 

 若い子がよく言う『朝チュン』だったの。

 

 恥ずかしかった。記憶が飛ぶほど酔った自分にも、プロデューサーから聞かされた酔った自分の行動にも、何もかも……。

 

 なのにプロデューサーはただ笑って、一言だけ―――

 

『改めて、恋人してよろしくな』

 

 ―――って告げられて、すぐには信じられなかった。

 でもそのあとでキスをされて、そのキスに安心していた自分がいたことが分かって……体が覚えていることが分かって、やっと信じることが出来たの。

 

 はぁ、私、初めてだったのに……。ちゃんと覚えていたかったな。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 でも結果良ければなんとやら。私とプロデューサーは事務所に重大な秘密をしているけれど、アイドル仲間にも支えられて私たちなりの幸せな交際をしています。

 なのに―――

 

「………………」

 

 ―――プロデューサーがまた魂が抜けているかのように自分のデスクに突っ伏してます。

 

 撮影スタッフさんたちともご挨拶をして無事に事務所へと帰ってきた私たち。

 プロデューサーはいつものように上の方へご報告も済ませると、またこの状態に戻りました。

 

 でも先程までのように私はプロデューサーを心配してません。

 だって―――

 

「…………あ〜、俺の彼女女神だろ、白衣の天使なんて言葉じゃ足りないくらい尊い存在だったんだが…………」

 

 ―――このように惚気けてるだけですから。

 

 正直に言いまして、褒められるのは嬉しいです。でもですね、こんなに長時間も「可愛い」「女神」「美しい」なんて言われたことありません。しかも恋人に。

 ナース時代に元気なおじいちゃんや子どもには言われたこともありますが、相手が恋人なら私だって対応に困ります。

 プロデューサーモードの時はきりりとして格好いいのに、こんな私にデレデレしてる可愛らしい姿を見せるんですもの。ギャップがあり過ぎてこっちがキュンキュンしちゃいます。

 

「プロデューサー、そんなにナース服の私が魅力的だったんですか?」

「はい……ほら、今って看護師ってことで基本男女等しく制服はどこもパンツスタイルでしょ? 大きな病院とかは特に」

「そうですね」

「でも今回の撮影の衣装はもろナース服だったでしょ? それもザ・ナースみたいに薄ピンク色だったし」

「プロデューサーって私の下着も薄ピンクのモノがお好きですものね」

「いや、黒とか紫も好きだよ? って、下着の話じゃなくてさ、本当に清良にピッタリだったんだよ。俺めっちゃ写真撮ったもん。この写真部屋に飾るもん」

「やめてください」

「いつでも見られる位置にほしいじゃん」

「好きな時に私が着てあげますっ」

 

 自分でも何を言ってるんだろうって思います。でも写真のナースの私より、今の私に夢中になっててほしいんです。

 貴方を愛しているのは今の私なんですから。

 

「……本当に?」

「貴方に嘘を吐いたことはありません」

「今夜でも?」

「もう……エッチなんですから♡」

「清良のせいで俺はナース服フェチになったんだ」

「素直に喜べませんよ」

「えー、喜んでよ。俺を清良色に染めたんだぞ?」

「どちらかと言うと私の方が貴方色に染められた気が……♡」

 

 プロデューサーに頼まれたら、私なんだってしちゃうんですからね? 今まで着たことのない下着も服も、プロデューサーに頼まれたら最後、絶対に着ちゃうんですから。

 だって着た姿を貴方に見せると、とても嬉しそうにしてくれるんですもの♡

 

「まあ、ともあれ残りの仕事を済ませるか。それで今夜は俺の部屋に泊まって行ってくれ」

「分かりました……ふふ♡」

 

 ―――――――――

 

 それから私はプロデューサーのお仕事が終わるのを待ち、彼のマンションの部屋へとやって来ました。

 今日みたいに私が泊まることもあれば、プロデューサーが私のマンションへ泊まることもあります。

 ですから、お互いの部屋にお互いの着替えやなんかはちゃんと揃ってるんです。

 

 プロデューサーのお部屋は綺麗です。まあ私がついお世話を焼いちゃってお掃除してしまう時もありますけど、そんなに不衛生にしてないので本当にたまにです。

 そもそもお部屋には必要最低限の家具しか置いてないので、お掃除も簡単なんですけどね。

 

「清良、こっち来て」

「はい♡」

 

 それに部屋に上がれば、基本的に私たちは抱き合ってばかりです。

 私、実は声フェチで、プロデューサーのたくましい声が凄く好きで、耳元で囁かれるとフニャフニャになってしまうんですよ。

 今だってたったあれだけの声に私はときめき、プロデューサーのお膝の上に抱き合うように座り、彼の肩にお顔を預けてスリスリしちゃってます。本当に幸せなひと時です。

 

「プロデューサー……好きぃ♡」

「今は名前で呼んでほしいな」

「〇〇〜、好き〜っ♡」

 

 8つも年上の方を呼び捨てにするのはまだ少し抵抗がありますけど、呼び捨ての方を彼が望んでいるので呼び捨てにしてます。

 でも彼の名前を呼ぶと、彼の雰囲気がより温かくなって……私はその瞬間が大好きなんです。

 

「俺も清良が好きだよ」

「〜〜♡」

 

 耳元で囁かれると、背筋に電気が走ったみたいにビリビリゾクゾクします。

 だから私は『もっと言って』と言葉の代わりに、彼の首筋にキスをしておねだりする。

 すると彼は私の耳に甘い言葉をたくさん囁いてくれます。

 

 一言一言は短いです。でもその一言一言に私は脳が蕩けてしまったかのように、彼のことしか考えられなくなる。

 本当に、自分がこんなにも恋に夢中になるなんて思いもしなかった。でもこの幸せを感じられる今が、彼が与えてくれる幸せが、私をより恋に落とす。

 どこまでもイケない、私の愛する魔法使いさん。

 

「っ……はぁ、〇〇……♡」

「そんなに息を荒くして、どうした?」

「っ……知ってるくせにぃ♡」

「俺は清良への愛を囁いてただけだよ。それに清良のリクエストでもあったからね」

「〜♡」

 

 ず、ずるいっ。確かに私がおねだりしましたけど、意地悪しちゃ嫌です。

 

「意地悪しちゃ、やぁ……♡」

「愛でてるんだよ」

「やぁ……もっと優しくぅ♡」

「俺はいつだって優しいよ?」

「うぅ〜♡」

 

 ダメ。完全にプロデューサーに負けちゃってる。何も言い返せない。

 

「……私にエッチなことして?♡ 何でもするから……♡」

「何でも?」

「うんっ♡」

「ナース服着てくれる?」

「うんっ、着る♡」

「この前そういう店でめっちゃ清良に着てほしいの見つけたんだ」

 

 どうしてそういうお店行くんですか……。いえ、行くなとは言いませんけど、そこでどんな物を見つけたんですか。

 

「エッチなやつ……ですよね?」

「うん。めっちゃエロい!」

「そうですか……♡」

 

 あぁ、いけない。期待しちゃってる自分がいます。私、プロデューサーに求められたら断れないんです。ただただ嬉しくって、もっとしてあげたくなっちゃうんです。

 

「またお着替えも見るんですよね?♡」

「うん。清良の着替えシーンなんて俺だけの特権だから」

「もう♡」

「清良ラブだから仕方ない」

「うぅ〜、そう言えばいいと思ってませんか?♡」

「真実だから」

「分かりました……でもちゃんとあとで愛してくださいね?♡」

「勿論だ」

 

 それから私はプロデューサーが用意したエッチなナースに彼の目の前で着替えました。

 変なところにファスナーがあったり、胸元や背中が妙に開いていたり、本当にエッチなナース服でしたけど、彼がいつもより激しく愛してくれた素敵な夜になりました♡―――

 

 柳清良*完




柳清良編終わりです!

えっちなナースっていいよね?
元だから別に不謹慎じゃないよね?
ってことで!←

お粗末様でした☆

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