魔法少女に憧れてた
魔法で悪い人をやっつけて
魔法でみんなを笑顔にする
ずっとそうしたかった
でも魔法はないんだって
ママも友達もみんな言ってた
でも千佳ね
現実でも使える魔法があるの
知ってるんだから!
それは
魔法使いさんから教えてもらった
人を笑顔にする魔法なの!
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『会場のみんなー! 魔女っ子ラブリーを応援してあげてー! せーのっ!』
魔女っ子ラブリー頑張れー!!!!
「ありがとうみんな! みんなのお陰で力がみなぎってきたわ! 行くわよ! みんなもあたしと一緒に呪文を唱えてね!」
クルクルキラキラシャラララブリー!!!!!
「これで終わりよー! いっけー!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
「みんなのお陰で倒せたわ! ありがとう! これからも応援よろしくねっ!」
パチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!!!
今日のあたしのお仕事はお芝居だけど、『魔女っ子ラブリー』を演じたわ。これはあたしがメインのお芝居でテレビでも日曜日の朝に放送されてるんだから。
それが人気で今日みたいにホールでお芝居をみんなに見せることもあるの。子どもだけじゃなくて、大きな大人の人たちも来てくれて、みんなあたしの演じる『ラブリー』を応援してくれるの!
これがあたしが使える魔法……『人を笑顔にする』魔法なの!
来てくれたみんなとお別れしたあたしは、舞台袖から舞台を降りて、スタッフさんたちや一緒にお芝居をした人たちに挨拶して、自分の楽屋に戻った。
「ただいまー!♡ プロデューサーくん!♡」
「おう、お疲れ、千佳。今日も可愛かったぞ」
「えへへ、ラブリーチカにこれからもおまかせ!♡」
楽屋にはあたし専属のプロデューサーくんが待っててくれて、あたしはプロデューサーくんが言ってくれたこともそうだけど、今日はこうして一緒にお仕事してくれたのが嬉しくて抱きついちゃった。
だってプロデューサーくんは千佳の将来の旦那様だもん!
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千佳はアイドルだけど、事務所には内緒でプロデューサーくんとラブラブなの。もちろんアイドルのお友達みんなにはお話してて、みんなあたしたちの味方だよ。それとママとパパもね! あたしがプロデューサーくんとじゃないとやだっていっぱい言ったから許してくれたの。歳は17歳も違うけど好き同士なら関係ないよね!
どうしてあたしがそんなにプロデューサーくんのことを好きになったのかというと、プロデューサーくんだけは『魔法』を馬鹿にしなかったからなの。
魔法なんて現実にはないってみんな言ってたのに、プロデューサーくんだけは『1つだけなら教えられるよ』って言ってくれた。
それが『人を笑顔にする』っていう魔法。だからあたしはアイドルになれて良かったと思ってるし、プロデューサーくんのことを大好きになったの。
最初は千佳がどんなに『お嫁さんにして!』ってお願いしてもプロデューサーくんてば頷いてくれなかった。
だからパパにお願いしたの。そうしたら次の日にプロデューサーくんから『覚悟を決めたよ』って言ってもらえて、それからお付き合いすることになったの!
でもあたし、どういう風にするのが付き合うことなのか分からなかった。
でもでも、それだとプロデューサーくんに嫌われちゃうじゃない? だからママがよくパパにしてるみたいに、いっぱいプロデューサーくんのお腹の上に乗ってぴょんぴょんしたの。ママは夜になるとパパのお腹の上に乗ってぴょんぴょんしてるから、だからラブラブなんだって思ったから。
ただあたしのやり方が間違ってたのか、プロデューサーくんに『苦しいからやめて』って言われちゃった。ママたちみたいに裸でしてなかったからかな?
でもプロデューサーくんは千佳のこと優しく抱きしめてくれて、『そんなことしなくてもちゃんと恋人らしくなれるよ』って言ってくれたの。
それからは恋人同士での手の繋ぎ方とか教わったし、お外ではどういう風に過ごさなきゃいけないか教わった。アイドルとプロデューサーがお付き合いしてるってバレたらタイヘンなんだって!
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みんなにこの人が千佳の将来の旦那様だよって言えないのはイヤだけど、プロデューサーくんと離れ離れになる方がもっとイヤだから2人きりの時だけ、今みたいにぎゅうってしたりする。
でも慣れてくるとこっちの方がドキドキするから、最近はこっちの方がお気に入りなんだよ。
「ラブリーチカは妖精みたいに可愛くて軽いね」
「きゃあ♡ もう、プロデューサーくん、抱っこじゃなくてぎゅうだよ?♡」
「どっちでも一緒さ。どっちにしたって俺は千佳へ愛を持ってやってるから」
「ん〜、ならいいよ〜♡ でももう少しこのままね!♡」
あたしがそう言うとプロデューサーくんは笑顔で頷いてくれる。あたしはそれが嬉しくて、ぎゅうってプロデューサーくんの頭に両手を回した。それで何度も何度もプロデューサーくんのほっぺにちゅうをしたの。大好きって言いたいけど大声で言えない時……でも周りにあたしたち以外に誰もいなかったらちゅうして伝えるの。たまにちゅ〜ってし過ぎちゃってプロデューサーくんのほっぺが赤くなっちゃうんだけどね。でもそれくらい千佳は『大好きだよ♡』って伝えてるの!
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お着替えもして、事務所に戻ってきたあたしたち。いつもならあたしは夕方になれば仲良しの子たちとお家に帰るんだけど、今日はママたちがお仕事で遅いからプロデューサーくんにあたしのお家に来てもらうの。
アイドルをやる前のあたしなら一人でもお留守番出来たんだけど、あたしも有名人になっちゃったから一人じゃなくて誰かと一緒にいた方がいいんだって。
その点、将来の旦那様であるプロデューサーくんが一緒なら安心だよね! ママたちが帰ってくるまで新婚さんごっこ出来るし!
「降りていいよ、千佳」
「はーい!」
あたしのお家の側にあるコインパーキングにいつもプロデューサーくんは車を置く。
お家のすぐ前に2台車置けるけど、そこにプロデューサーくんが車を置いちゃうとママかパパの車が置けなくなるから、毎回そうしてるんだって。
でもここから歩いてお家はすぐだし、その間プロデューサーくんとおてて繋げるから嬉しいの。お外だから恋人同士のする繋ぎ方は出来ないけどね。
「ご両親はいつ頃帰ってくるって?」
「えっとねー……今日はパパの方が早いかもだって。8時には帰ってくるみたい」
「今が6時だから、あと2時間か。ご飯はどうするって?」
「出来ればプロデューサーさんに食べさせてもらいなさいって」
「分かった。いつもみたいに冷蔵庫の中の食材使っていいんだな?」
「うん、そう言ってたー」
「なら家に着いたらすぐに夕飯の準備をするよ」
「何作ってくれるのー?」
「食材を見てからじゃないとなんとも言えないなー。何かリクエストでも?」
「ううん、千佳プロデューサーくんが作ってくれたのは全部好きだから!」
「…………そうか」
(純粋過ぎて眩しい)
―――
そんなお話をしながらお家の前に着いた。
だからあたしはいつもみたいにプロデューサーくんに待っててもらって、先に鍵を開けて中に入る。
するとプロデューサーくんがインターホンを押すの。
ガチャ
「おかえりなさい、あなた♡ お仕事お疲れ様♡ 今日は早く帰ってきてくれて嬉しいわ♡」
「ただいま、千佳」
これからは新婚さんごっこだもん。もちろん、あたしがお嫁さんの役ね!
玄関にプロデューサーくんを入れて、ほっぺに"おかえりのちゅう"をするとプロデューサーくんもお返しに"ただいまのちゅう"をあたしのほっぺにしてくれるの。本当なら毎日こうしたいけど、結婚してからのお楽しみだから我慢してるんだー。
「あなた、先にご飯にする?♡ それともお風呂?♡ それとも……ま・ほ・う?♡」
「魔法をお願いしようかな」
「はーい♡ ラブリーチカの魔法ね♡ 笑顔にな〜れっ♡」
にぱってあたしがプロデューサーくんに魔法をかけると、プロデューサーくんもにぱってしてくれる。やっぱり魔法ってすごいなぁ!
「えへへ、楽しいね♡」
「そうだな」
―――
そしてプロデューサーくんはお料理してくれて、あたしはその間に宿題を済ませた。
作ってくれたのはオムライスだった! ケチャップでハートマークも書いてくれてて、とっても嬉しい!
「いただきまーす!」
「召し上がれ」
ぱくっ
「ん〜、美味しい〜♪」
「そりゃ良かった」
「プロデューサーくんってどうしてママじゃないのにお料理が得意なの?」
「一人暮らしだからな。それにやってみると料理も楽しいよ。千佳も今度ママさんと料理やってみたら? 簡単に作れるお菓子とかあるし」
「じゃあ聞いてみるー!」
あたしもいつかプロデューサーくんに手料理を食べてほしいもん。美味しいって笑ってほしいもん。頑張らなきゃ!
そうだ。プロデューサーくんに聞きたいことあったんだ。
「ねぇねぇ、プロデューサーくん」
「ん?」
「はだかえぷろんって何?」
「っ……ごほっごほっ!」
「プロデューサーくん、大丈夫!?」
いきなり咳き込んじゃった!
「だ、大丈夫だ……で、その単語は誰から聞いたのかな?」
「昨日の夜にママがパパに2人の寝室で『今日はあなたに喜んでほしくて、恥ずかしいけどはだかえぷろんにしたわ♡』って楽しそうにお話してたのが聞こえたから……」
「夜はちゃんと寝ないと駄目だぞ?」
「だって今日のお芝居が楽しみでなかなか眠れなかったんだもん……それで喉が乾いたからお水飲みに行ったら、その帰りに聞こえたんだもん」
「だからってなぁ……(まあ、寝室の中を覗かない辺りは良かったけどさ)」
「あとあと、ママたちズルいんだよ! 夜は太るから食べ物食べちゃダメって言うのに、昨日の夜は2人して『ずっとあなたのこれが欲しかったの!♡』『お前は食いしん坊だもんなぁ。ほら、お前にだけにしか味わうことの出来ないものだ。しっかり味わうんだよ?』って何か食べてたんだから! プロデューサーくんからも注意してあげてほしいの!」
あたしがそう言うと、プロデューサーくんは両手でお顔を覆って上向いちゃった。どうしたのかな?
「…………千佳、夜は寝るんだ。飲み物はペットボトルに入れて寝る前にお部屋に持っていくんだ」
「うん、そうするー」
「で、千佳の質問の答えだけど、俺にも分からない。でも千佳に言われた通りに注意はするよ」
「うん、分かった!」
結局、あたしの聞きたいことは分からなかったけど、プロデューサーくんも知らないならしょうがないよね。
だからあとはプロデューサーくんといっぱいラブラブして明日からのマジカルパワーを充電したの!
それでパパが先に帰って来たんだけど、プロデューサーくんに注意された次の日にお家に大工さんが来て、ママたちの寝室を工事してた。でもそれから何も聞こえなくなったから、プロデューサーくんってすごいって思った!―――
横山千佳*完
横山千佳編終わりです!
二次創作なのでセーフってことで。
素敵な恋愛をしてほしいですね!
お粗末様でした☆