デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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神奈川から東京の事務所に通ってる設定です。


荒木比奈編

 

 アタシは半ニートだった

 

 オタクで漫画を描くことが好きな

 

 ただの冴えない女

 

 そんな自分へ

 

 "かわいい"と言ってくれた人がいる

 

 新しい自分を

 

 新しい場所を

 

 与えてくれた人がいる

 

 ―――――――――

 

「みんな、今日は来てくれて本当にありがとうっス!」

「また私たちのライブに来てくださいねー!」

「眼鏡新調して待ってますよー!」

「帰りは気をつけて帰るのよ!」

「次のライブで会えるのを楽しみにしてるわ♪」

 

 ワァァァァァッ!

 

 や、やっとライブが終わったっス。

 今回のライブはアタシたち『ブルーナポレオン』の単独ライブ。途中でMCとか入れたとはいえ3時間ぶっ続けでヘトヘトっス。

 

 は、早くアタシの栄養補給に行かないとタヒっスよ。マジで……。

 

 ―――

 

 弱りきったアタシはスタッフさんたちに挨拶しながら、おぼつかない足取りで控室に入りました。

 するとそこには―――

 

「おう、比奈。お疲れ、今日もバッチリ可愛かったぞ!」

 

 ―――アタシ専属のプロデューサーが待っていてくれたっス。

 アタシはプロデューサーを見た途端、プロデューサーに自分の体を預けました。

 

「プ〜〜ロ〜〜デュ〜〜サ〜〜……」

「うぉっ、だ、大丈夫か!?」

「無理っス〜、暫くプロデューサー成分を補給しないと動けないっス〜……」

「……まあ、今回は本当に頑張ったからな。少しは許そう」

 

 プロデューサーはそう言うとアタシの頭を何度も何度も優しく撫でてくれたっス♡

 

 実は自分たち彼氏彼女の関係でリア充街道まっしぐらなんスよ。

 アタシの人生で初めての彼氏……初恋ってやつなんスけど、なんとしてでも実らせたいし、プロデューサー以外なんて考えられないっス。

 

 いつも真剣にアタシのことを考えてくれてて、ここまで引っ張ってきてくれた人なんスから、いくらアタシでもその気になっちゃうっス。

 そもそも真顔で……お世辞とかそんなの抜きで『かわいい!』なんてプロデューサーが初めて言ってくれたし、毎回毎回言われてれば落ちるしかないっスよ。

 

「あらあら、プロデューサーくんたちは相変わらずね〜」

「アタシたちには別の控室が欲しいとこね〜」

 

 あ、後ろから瑞樹さんと紗理奈さんの声がするっス。

 まあでもこのお二人からは告白の勇気をもらった大恩人なので気にすることはないっスね。

 あ〜、プロデューサーの胸板はサイコーっス♡

 

「うわぁ、ドラマの世界みたい……」

「でも千枝ちゃんはこんなバカップルになってはいけませんよ?」

 

 む、バカップルとは心外っスよ、春菜ちゃん。

 アタシはただプロデューサーに癒やされてるだけなんスからね。

 千枝ちゃんにはちょっと早いかもしれないっスけど、後学ってことで。

 

「みんなもお疲れ様。衣装さんたちが来るまではゆっくりしててくれ。事務所の方にはもう連絡してあるから」

『はーい!』

 

 それからみんなのプロデューサーたちも控室に入ってきてそれぞれ言葉を交わし合う中、アタシだけはずっとプロデューサーに抱っこされてたっス。

 なんか色々言われてた気もするっスけど、モーマンタイっした。

 

 ―――――――――

 

 スポンサーの人たちとも挨拶を済ませたアタシたちは現地解散で、アタシはプロデューサーが運転する車の助手席に乗って移動中っス。

 瑞樹さんと沙理奈さんは自分たちのプロデューサーを引き連れて飲みに行くらしいっスけど、アタシたちや春菜ちゃんたち、千枝ちゃんたちは参加しない。

 打ち上げは打ち上げで明日予定されてるし、アタシもプロデューサーもお酒は飲まないっスから。あとの二人に関しては未成年で、千枝ちゃんに至っては小学生っスからね。

 

 それに―――

 

『比奈ちゃんは……比奈ちゃんのプロデューサーくんとよろしくやるわよね?』

『ねっとりしっぽり楽しんでね〜♪』

 

 ―――なんて瑞樹さんたちに言われてどう反応すればいいのか困ったっス。

 笑えば良かったんスかね?

 あの名シーンとは全く違っちゃうからダメ。今のは没っス。

 

 でもまあ、二人が言ったように確かにこれからプロデューサーのマンションの部屋で二人だけのささやかな打ち上げはするっスけど、なんであんなに見抜かれてるんスかね〜。やはり場数を踏んでる人は違うっス。

 

「なんか買ってく物とかあるか?」

「ん〜、アタシはこれと言って何も……」

「そうかなのか? なんか食べたいのとかどっかの店でテイクアウトしてってもいいんだぞ? 腹減ってるだろ?」

「彼氏の手料理に勝るご褒美は存在しないっス!」

「はは、了解。ならこれまでの独身生活で磨いた腕をうんと振るうよ」

「楽しみっス♡」

 

 プロデューサーは男の人なのにアタシなんかより料理が上手い。

 カップ麺の美味しい作り方なら負けない自信があるんスけどね。あとはトーストとか卵かけご飯とか。

 これ以外とコツと年季が必要なんスよ?

 

 まさか自分に彼氏が出来るなんて思ってもみなかったから、こんなことになるなら小中高ともっと真剣に調理実習やれば良かったっス。

 

 それか今からでも菜々ちゃんとかに教わろうかな。

 菜々ちゃんは本当にしっかりしてる子っスからね。しかも一昔前のアニメの良さが分かる数少ない同志っス!

 

 そんなこんなで、アタシはプロデューサーと他愛もない会話をしながらプロデューサーのマンションへ向かった。

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーの部屋はとてもシンプル。

 アタシの部屋みたいにゴチャっとしてなくて、まさに出来る男の部屋って感じっス。

 そんなプロデューサーの部屋の本棚はアタシの影響で漫画とか同人誌が並んでて、本棚だけ異様な感じになってるっス。

 でもアタシの好きな物を好きな人も気に入ってくれるのは正直嬉しい♡

 プロデューサーって偏見とかしないから、どんなジャンルをオススメしても必ず読んで感想をくれるっス。そんなプロデューサーとのオタクトークは楽しい♡

 

「?」

 

 プロデューサーがキッチンでお料理中なので、アタシは邪魔にならないようにリビングのソファーに座って待ってるんスけど、なんか新しい本の山を見つけたっス。

 なんの新刊なのか気になって一冊を手に取って表紙を見たら―――

 

『ブルーナポレオン写真集』

 

 ―――なんと自分たちの写真集でした。

 

 しかも今まで出た写真集全部揃ってて、アタシの写真のところにだけ付箋付けてて、付箋に『かわいい☆』とか『セクシー♪』とか『俺の嫁!』って書いてあって恥ずかしいっス……。

 まあ、悪い気はしないっスけど……♡

 

「ポテトサラダ出来たぞー……って、しまうの忘れてた」

「へへへ……もう見ちゃったっス♡」

「恥ずかしいなぁ」

「顔赤いっスよ?♡」

「そりゃあ本人に見られたらな……今後のために何度も比奈の写真は確認してるんだけど、見る度に『あぁ、このアイドルは俺の彼女なんだ』って思って私欲のままに付箋付けてるんだよ」

「そんなこと言われたらアタシの方が照れるっスよぉ……♡」

 

 でもそんなにアタシのことを好きでいてくれて嬉しい♡

 

「ま、まあ、とりあえずサラダ食べて待っててくれ。今メイン作って持ってくるから」

「は〜い♡」

 

 ん〜、自分でもにやけてるのが丸分かりで気持ち悪いっス〜♡

 でもこればっかりは仕方ないっスよ、うん。だってこれだけ彼氏から愛されてるのが伝わると、にやけるしかないっスもん♡

 

 ―――――――――

 

 それからプロデューサーの美味しい手料理も堪能して、アタシたちはそのままソファーでまったり中。

 アニメとか観てる時もあるんスけど、今回ばかりはアタシもイチャイチャしたい♡

 だから―――

 

「プロデューサー♡」

「今日の比奈は特に甘えん坊だな」

 

 ―――アタシは柄にもなくプロデューサーの膝の上に跨って抱きついてるっス♡

 

「いいじゃないスか〜♡ 今日の自分は甘えたい気分なんっス〜♡」

「まあかわいいからイイ!」

 

 プロデューサーはそう言うとアタシの頭を優しく撫でる。

 ただ撫でられてるだけなのに、心臓の音が大きくなって好きって気持ちが溢れてくるっス♡

 するとプロデューサーが―――

 

「比奈、いいかな?」

 

 ―――アタシの頬を優しく撫でながら、訊いてきた。

 これは……キスのお誘いっス♡

 

「プロデューサーからならいつでも大歓迎っスよ♡」

「大好きだよ、比奈……ちゅっ」

「んんっ……ちゅっ……ぷろりゅう、しゃぁ……ぁむっ♡」

 

 アニメや漫画のヒロインみたいに自分が好きな人とキスするなんて夢見たい……もし夢なら覚めないでほしい。

 でもプロデューサーから舌や唇を甘噛みされると、小さな電気が全身に走るように心地いい刺激がきて、夢じゃないよって教えてくれる♡

 あぁ、プロデューサー……好きぃ……大好きぃ♡

 

「もっほ……っ……もっほひへ……ちゅっ♡」

「んっ……ひ、な……っ」

 

 アタシはプロデューサーとのキスを終わらせたくなくて、プロデューサーの頭を両手で固定してまで離れないようにする。

 そんなアタシのお願いをプロデューサーは嫌がらずに応えてくれて、もっともっとキスしてくれた。

 アタシたちの唇が離れるとつばが糸を引いてて、もうどっちのつばか分からない。

 

「プロデューサー……はぁはぁ♡」

「……そんなに見つめてどうした?」

「アタシ……アタシぃ♡」

「言ってごらん? 怒らないから」

「……アタシ、帰りたくない……♡」

「あれ、帰る気でいたの?」

「ふぇ?」

「俺は元から帰す気なんてなかったんだけど?」

「ふぇぇっ♡」

「アレも買ってあるし、ちゃんと比奈を可愛がれるよ?」

「…………♡」

「どうした、急にもじもじして?」

 

「じ、実は……♡」

「うん」

「じ、自分もこうなることを期待して、ストックを1箱持って来てちゃってて……♡」

「なら朝までコースだな。今のうちに事務所に午後出勤になることを伝えておこう」

「っ……アタシでたくさん気持ちよくなってください♡」

「比奈も気持ちよくなるように優しくするよ」

「期待してまぁす♡」

 

 こうしてアタシはプロデューサーと朝までコースでイチャイチャしたっス♡

 でも夕方の打ち上げで瑞樹さんや沙理奈さんに『昨夜はお楽しみでしたね♪』って言われて焦ったっス。

 まあ自分がプロデューサーの首筋に()()をたくさん付けてたのが原因だったんスけどね―――。

 

 荒木比奈♢完




荒木比奈編終わりです!

干物女にも潤いを!ということで頑張りました♪

お粗末様でした☆

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