デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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大石泉編

 

 私には誇れるものはあまりない

 

 好きなプログラミングくらい

 

 アイドルになったのも

 

 親友の二人に誘われたからで

 

 そこに私自身の意思はなかった

 

 でも

 

 アイドルを続けるために

 

 たくさんのことを教えてくれて

 

 支えてくれた人がいます

 

 ―――――――――

 

「みんなー! 今日は私たち、ニューウェーブの単独スタジアムライブに来てくれてありがとうございましたー!」

「これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします!」

「アタシら三人のお給料のためにもまた来てよー! 絶対やでー!」

 

 ワァァァァァッ!!!!

 

 今日は私たち『ニューウェーブ』の単独ライブ。

 嬉しいことに満員御礼でスタジアムの外に設置してある大型スクリーンの前にも私たちのライブのために多くの人たちが集まってくれた。

 すべてが予定通りとはいかなかったけど、アンコール以外はどれも想定の範囲内。

 そして何より私たちもファンの人たちと一緒になって楽しめたから、ライブは大成功と言っていいと思う。

 

 ―――

 

「くぅ〜、疲れた〜」

「でも楽しかったよね♪」

「えぇ、そうね」

 

 控室に戻った私たちは互いに心地良い疲労感を抱えながら、笑顔で声をかけ合った。

 亜子に至っては、戻ってきて早々相変わらず自分のバッグにテーブルの上に余ってる頂き物のお菓子を全部詰め込んでたけど……。

 

 ガチャ

 

「みんなお疲れ様」

「今衣装さんたちが来るからな」

 

 そこにさくらと亜子の担当プロデューサーが入ってきた。

 私のプロデューサーはどこにいるんだろう?

 

「……あぁ、アイツなら事務所代表でスポンサー陣のとこへ挨拶しに行ってるよ」

 

 私の視線に気がついた亜子のプロデューサーさんが教えてくれた。

 そんなに分かりやすかったのかな?

 

「なはは、泉は相変わらずプロデューサー大好きっ子やな〜♪」

「亜子ちゃん、そんな言ったら可哀想だよぅ。いくらクールな泉ちゃんだって、やっぱり好きな人には早く会いたいんだから」

「ちょ、さくらっ、亜子っ!?」

 

 べ、別に私はそんなこと思って―――るかもしれない……。

 だって二人の言ったことは事実だから。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私は自分専属プロデューサーと秘密恋愛してる。

 秘密といっても事務所やファンにってことで、さくらや亜子、そしてその二人のプロデューサーさんには事情を把握してもらってる状態。

 

 なんでアイドルとプロデューサーがって言われるかもしれないけど、長い時間接する訳だし、私だって恋くらいする。

 それに自分がアイドルをする理由をくれた人でもあって……私にとってプロデューサーはとても大切な人。

 

『いつでも頼ってほしい。そのためのプロデューサーだ』

 

『一緒にたくさんのことを見つけよう』

 

 アイドルをただのお仕事と思ってた私に、プロデューサーはそう言って優しく……時には諭すように私へ確実なヒントを与え続けてくれた。

 そんなプロデューサーと二人三脚でここまで来て……いや、ほとんど私がプロデューサーに手を引かれてって感じだけど……私はいつしか彼と一緒にいることが当たり前だと思うようになってて、彼のことを目で追うようになってた。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 すると私はプロデューサーに振り向いてもらおうと、たくさんアピールしてようやくそれが実って、1週間前にお付き合いを始めて、今に至る。

 

「んじゃ、お疲れ様、泉。ゆっくり休めよ?」

 

 ライブを終えて、みんなで事務所に戻って上へ結果の報告をして、解散したあとの私はプロデューサーに車で家まで送ってもらった。

 車内では普通に明日以降のスケジュールの確認とかでいつも通りの私たちだけど―――

 

「…………プロデューサー」

 

 ―――今日くらい……ライブが成功した日くらいはもう少しあなたと一緒にいたい。

 

「ん、どうした?」

「あの……えっと……」

 

 でもいざとなるとちょっとためらってしまう。

 だって好きな人に面倒な子と思われたくないから。

 

 私が何も言い出せずにいると、

 

「……親に少しプロデューサーと打ち合わせがあるって言ってこい。急な要件だって」

 

 プロデューサーが私の気持ちを察してくれた。

 私はそれがとっても嬉しくて、急いで親に伝えてからまた車に乗り込んだ。

 お父さんは「遅くなるなよ」って言ってたけど、ごめんね……きっと遅くなる。

 こういう時の私ってすごくワガママになるから……。

 

 ―――――――――

 

 私たちはそれから車で家からそんなに離れていないところにある海岸の駐車場に来た。

 ここの砂浜にはレッスンとかでも良く来てる場所で……私たちも今日みたいに少しおしゃべりしたりするのに良く来てる。

 街灯はあけるどあんまり人も通らないし、波の音を聞きながら穏やかな時間を過ごせるから私は結構気に入ってるの。

 

「これ羽織っとけ」

 

 プロデューサーは自分のコートを私の肩に羽織らせる。

 

「ありがとう、プロデューサー♡」

「風邪引かせる訳にはいかないからな」

 

 言葉はちょっと冷たいけど、声色からは私への思い遣りが伝わってくる。

 だから私はコートのお陰じゃなくて、プロデューサーの思い遣りで胸の奥から温かくなっていく。

 

「プロデューサー、今日の私はどうだった?」

「んー? 輝いてたぞ、声もすごく通ってたし、ステップのキレも良かった」

「…………そういうことじゃなくて」

 

 違う。それはもう送ってもらう中で聞いた。

 私が聞きたいのは違うの。

 

「悪い、ちょっと意地悪した。可愛かったよ、すごく」

「♪♡」

 

 これ……その言葉がほしかった♡

 

 こんなこと思ってるとファンの人たちに怒られるかもしれないけど、今の私はプロデューサーのためにアイドルをしてると言っても過言じゃない。

 

 プロデューサーは私のために私をプロデュースしてくれてて、その頑張りに私はアイドルの私として出来る限り応えてる。

 それが今私がアイドルを続けている一番の理由。

 

「ご機嫌だな」

「はい……好きな人から言ってもらえたから♡」

「いい笑顔しやがって……この」

 

 プロデューサーはそう言って私の頭をくしゃくしゃっと乱暴に撫でた。

 でも私はこれが嫌いじゃない……寧ろ好きな方♡

 

「きゃう……やめてよ♡」

 

 いや、やめないで……もっとして♡

 

「表情と言葉が真逆じゃんか、このこのっ」

「やんやん♡」

「……ったく……あのクールな泉がなぁ」

「今の私は嫌い?」

「いや、ギャップがあり過ぎて困ってる」

「私、好きな人の前だと背伸びしないみたいなの……だからいっぱい構って♡」

「素直クールとはレベルが高い……」

 

 素直クール? 意味がよく分からないけど、一応褒め言葉なのかな。

 

「でも好きな人の前なら素直にならない、普通?」

「そう出来ないって人もいるんだよ」

「なるほど……確かに考えてみれば、プロデューサーもあまり私には素直な好意を寄せてくれないものね。ツンデレって言うのよね、この場合?」

「ツンデレ……まあ確かに俺はツンデレにカテゴライズされるだろうな」

 

 あ、今のは素直。うーん、プロデューサーってやっぱり不思議。でもそんな人だから私は惹かれてるのかも。

 プロデューサーってどこまで素直なのかな?

 

「プロデューサー」

「ん?」

「私のこと好き?」

「好きだぞ」

 

 素直。

 

「愛してる?」

「愛が無きゃプロデュースしてないし、今こうしてない」

 

 うーん……素直。

 

「じゃあ、今ここでキスしてって言ったら?」

「人目がないから、してもいい」

 

 うーん、ちょっと素直じゃないけど、素直に入れよう。

 

「明日はオフだからプロデューサーのマンションに行ってもいい?」

「別にお家デートじゃなくてもいいんだぞ?」

 

 わぁ、素直……というか、他のデートでもいいんだ♡

 

「朝から行ってもいい?」

「合鍵渡してるから好きな時に来ればいい」

 

 これはちょっと素直な言い方じゃないなぁ。

 

「……なぁ、さっきから何の質問してるんだ?」

「プロデューサーが素直かどうか反応を見てた」

「また変なことを……」

「好きな人のことなら知りたいと思うのが普通でしょう?」

「確かにそうだけど……そんなのは追々知るだろ」

「私は気になったら調べる派だから」

「そうだな……確かに泉はそういう子だな」

「だからもっと教えて♡」

 

 どういうことを言われると恥ずかしいのか

 どういうことを言われると嬉しいのか

 どういうことを言われると楽しくなるのか

 

 あなたのことなら何だって知りたい

 

「…………泉と将来結婚したい」

「え、今までしないつもりでいたの?」

「へ?」

「だって今の発言はそういうことだよね? 私と付き合いはじめてそう思うようになったってことでしょ?」

「ん、まあそんなとこかな」

「私ははじめからプロデューサーと結婚したいと思って付き合ってたよ?」

「…………そうなのか」

 

 あ、目を逸らした。

 なるほど、プロデューサーはこういうストレートな言葉に弱いのね。

 

「でも良かった……ちゃんとプロデューサーも私との将来を考えてくれるようになって♡ 私これでも毎月複数の口座にコツコツ貯金してるの♡ 結婚するのにも色々とお金かかるし、今からしっかり計画しないとあとあと大変だもん♡」

「…………そーなのかー」

「だってそうでしょう? それに旅行でもお仕事でもなんでもプランが大切なんだから、私たちの将来のプランは立てておいて損はないもの」

「………………俺、なんか自信なくなってきた」

「どうして? 私、ずっとプロデューサーのこと好きだよ? 不安ならプロデューサーが不安にならないようにもっともっと好きって気持ち伝えるから、不安にならないで?」

 

 ギュッ♡

 

「大丈夫……私はプロデューサーしか眼中にないから♡ ずっとずっと……私がお婆ちゃんになっても大好きだよ♡」

「…………ありがとう。俺もずっと泉のことを想い続けるよ」

「うん♡」

 

 嬉しい♡

 自分が好きな人も自分と同じ気持ちなんだもん♡

 頑張って将来のプラン考えなきゃ♡

 

「私、性別はどっちでもいいから、赤ちゃんは最低でも二人ほしい♡」

「二人……」

「うん。それでマイホームよりは賃貸の方がいいな。そっちの方がローンとかに縛られないし、不確定要素にも対応しやすいと思うし、お互い忙しくても私の両親は子ども好きだし頼みやすい環境だから」

「よく考えてらっしゃる……」

「二人の将来のためだからね♡ あ、でもちゃんとプロデューサーの意見も取り入れたいから、ちゃんと発言してね?♡ これまでは私が良かれと思ってプランを立ててたけど、もうこれは二人のプランになったから♡」

「……俺も男だ。年下の彼女にばっか任せないからな!」

「うん♡」

 

 また新しい目標が出来ちゃった♡

 不確定要素もこれから先たくさん出てくるだろうけど、二人で力を合わせて乗り越えていけたらいいな♡

 頑張ってプロデューサーのために私なりに支えよう……プロデューサーだって私をいつも支えてくれてるんだから―――。

 

 大石泉♢完




大石泉編終わりです!

クーデレというよりは素直クール系かと思って、グイグイいく泉ちゃんにしました!

お粗末様でした☆

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