デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定、独自設定プロデューサーです。


岡崎泰葉編

 

 その人は私にこう言いました

 

 今楽しい?

 

 子役モデルとして芸能界に入り

 

 11年のキャリアの中で初めて言われた

 

 正直『何この人』って思った

 

 でも

 

 与えられた役をこなすだけの日々に

 

 私は楽しさなんて忘れてた

 

 だから私はその人の言葉が忘れらず

 

 気がついたらその人を求めてた

 

 ―――――――――

 

「はい、てなわけでね! 今回のゲストは子役モデルからまさかのアイドルに転身を果たした異色のアイドル! 岡崎泰葉ちゃんでした! ありがとうございました!」

「ありがとうございました♪」

 

 今日は朝のニュース番組に出演し、こうして無事に終えることが出来ました。ニュース番組といってもその中の芸能コーナーに7分だけの出演ですけど。

 でもスタジオにはモデル時代に何度か一緒にお仕事した方とかも出演されてたので、変に緊張はせずに終えることが出来ました。

 そして何より私自身も楽しめたお仕事でした。

 

「ありがとうございました。またよろしくお願いします」

「いえいえ、こちらこそ! また一緒にあなたとお仕事出来るのを楽しみにしてます!」

 

 出番を終えた私はスタッフさんたちに挨拶をしてスタジオから出ると、丁度私専属のプロデューサーさんと番組のディレクターさんが挨拶をしてました。

 私のプロデューサーさんはただのプロデューサーではなく、30歳という若さで"エグゼクティブ・プロデューサー"という肩書きを持ってます。

 でも本人はその肩書きに驕らずに普通のプロデューサーと同じように仕事をしていて、色んな業界に仲のいい友人がたくさんいるみたい。

 だから私もプロデューサーさんのお陰でこの朝のニュース番組に出演させてもらえました。

 

「あ、岡崎ちゃん! 良かったよー! また必ず依頼するから、その時もお願いね!」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。ありがとうございました」

 

 ディレクターさんは挨拶が終わると、改めて私たちに一礼してからスタジオに戻っていきました。

 

「お疲れ、泰葉。とりあえず控室に戻ってメイク落としと着替えをしてこい」

「はい、分かりました!」

 

 ―――――――――

 

 メイクを落として、着替えを終えた私はプロデューサーさんに今通っている高校まで送ってもらいました。

 

「それじゃ、いつもの時間になったら迎えに来るから」

「はい」

「学校の方で補習とかがあるって場合は連絡してくれ」

「ちゃんとお勉強してるから大丈夫ですぅ!」

「あはは、そうか。まあ学校生活も楽しんで」

「はーい♪」

 

 プロデューサーさんはそう言うと私の頭を軽く撫でてから、車で事務所へ戻っていきます。

 

 楽しんで……か。

 

 プロデューサーさんは『楽しんで』というのが口癖で、それをモットーにお仕事してる。

 楽しくない人を見てると放っておけない……悪く言えばお節介焼きな人。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 それは私がまだ子役モデルだった頃。

 プロデューサーさんはアイドル部門の人間として、私のお仕事の見学に来てました。

 

 私はその時も与えられたことをちゃんとこなし、何も問題なくお仕事を終えた。

 他にもたくさんの人たちが見学に来てて、私や他のモデルの子たちにも「良かった」とか「流石だね」って言ってたのに、プロデューサーさんだけは何も言わないでいた。

 

 だから私は何か気になることでもあったのかと思って声をかけたんです。

 そうしたら―――

 

『今のやってて楽しかった?』

 

 ―――って訊かれました。

 その意味が私はよく分からなくて……でも何だか無性に腹が立ってきて、私はいつの間にか『例え楽しくなくても完璧に出来たはずです』って言い返してました。

 そんな私にプロデューサーさんは―――

 

『楽しいことしたくない?』

 

 ―――って言ってきました。

 

 楽しいことをお仕事に出来る人なんてこの世の中に一握りいるかいないかだろう。みんな与えられたお仕事の中でそれに納得してやってる。だから世の中が成り立ってると思う。

 私はこれまで自分で納得してたことをそのままプロデューサーさんに伝えました。

 すると―――

 

『納得してやってるのは立派だけど、そこへ自分なりの楽しさを見いだせないなら続けていても、そこに誇りも生き甲斐も生まれず、意味のない人生になるよ』

 

『君みたいに素直に今の社会の型にハマって夢も語れない若者が、そのままで埋もれてしまうのは悲しいと思うんだよね』

 

 ―――って返されました。

 

 そこで私は考えた。11年やってきた今のお仕事に自分は誇りを持ってるか……生き甲斐を感じてるか……。

 でもいくら考えても答えは出なかった。

 

 そんな私にプロデューサーさんは「楽しいことがしたくなったらいつでも訪ねて来て」って言って、私に自分の名刺を渡して去って行きました。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 そしてそれから数日後に私はあの人が言ってた『楽しい』を知りたくてアイドルになり、今ではその『楽しい』意味も少しは理解してプロデューサーさんについて行って良かったと思ってます。

 

 ―――

 

 学校も無事に終わり、私はクラスの友達たちと別れて学校の裏門へ行きました。表門からだと学校の迷惑になってしまうので、いつも待ち合わせは裏門なんです。私、プロデューサーさんのお陰でアイドルとしても結構有名になったんですよ?

 

 プップー

 

「時間ピッタリ。流石俺と泰葉のコンビネーション♪」

「なんですか、それー?」

「そのまんまの意味さ。ほれ、早く乗れ」

「はーい♪」

 

 これから私はレッスンスタジオに向かいます。今度事務所に所属してるアイドルのみんなと大きなドームライブを予定してるので、それに向けたレッスンをするんです。

 

 でも―――

 

「あれ? プロデューサーさん、この道だとレッスンスタジオとは正反対ですよ?」

 

 ―――今日は何か違いました。

 

 プロデューサーさんに言っても「大丈夫大丈夫」としか言わないし……でも知ってる道を走ってる。

 

 ―――――――――

 

 そして私がプロデューサーさんに連れて来られたのは、プロデューサーさんが住んでるマンションのお部屋でした。

 

「ほら、いつまでもそこで突っ立ってないでソファーに座れ。今飲み物持ってくるから」

 

 訳が分からない私をよそに、プロデューサーさんは飲み物とかお菓子とかを用意し始める始末。

 何か大事なお仕事のお話でもあるのかな?

 

「さて、飲み物よし、つまみよし……さぁ、サボるぞ!」

「えぇ!?」

 

 私は驚きました。だってこんなに堂々とサボるなんて思ってもいなかったから。

 

「レッスンはどうするんですか!?」

「あっはっは、いいリアクションだな! そういうのいいぞ!」

「プロデューサーさんっ!」

 

 そういうことじゃないですよ!

 

「……大丈夫大丈夫。元々今日は泰葉にレッスンの予定なんて入れてなかったからな」

「へ?」

 

 どういうことなんですか?

 

「おぉ、そのキョトンとした顔もいいなぁ」

「…………説明してください。納得のいく説明がないなら帰ります」

 

 私がそう言ってプロデューサーさんを睨むと、プロデューサーさんは小さく笑って私の手を握りました。

 そして―――

 

「ここんとこ泰葉は働き過ぎだ。だからこのあとはオフ。しいて言えば恋人の俺と過ごすのが仕事だ」

 

 ―――プロデューサーさんは優しい声色でそんなことを言ってきました。

 

 私とプロデューサーさんは密かにお付き合いしてて、たまにこうしてプロデューサーさんが時間を作ってくれます。

 サプライズみたいな感じで毎回驚かされますが、悪い気分は全くしません。

 

 アイドルとプロデューサーなのに、と思われるかもしれませんが、恋というのは不思議で私にも説明は無理です。

 でも私はプロデューサーさんだから今の関係を望んでるんだと思います。

 

「……もう、いつも突然なんですからぁ」

「こういうの楽しいじゃん?」

「主に楽しんでるのはプロデューサーさんですけどね」

「そうか? 泰葉だって楽しくない?」

「……否定はしませんけど、毎回驚かされる方の身にもなってほしいです」

「だって泰葉はこうでもしないと甘えてこないだろ? 真面目が癖になってるんだから」

「…………イジワルな人は嫌いです」

「そうか。なら俺はイジワルじゃないから嫌われる心配はないな!」

「無自覚な人も嫌いです!」

「そうかそうか。ならいつも泰葉の『好き好き信号』をキャッチしてる俺は嫌われてないな!」

 

 ああ言えばこう言う……本当に仕方ない人なんですから♡

 今思えば、プロデューサーさんみたいな人って今まで出会ったことなかったから『この人といると楽しい』って思うようになって、気がついたら一緒にいるのが当たり前になってた。

 だから肩書きとか全部気にせず、私はプロデューサーさんに告白出来たんだと思う。まさかプロデューサーさんにOKしてもらえるとまでは思ってなかったけど……でも嬉しかったし、勇気を出して良かったと思ってる♡

 

「あ〜あ、いつもプロデューサーさんばっかり優位でズルいなぁ」

「経験の差だな」

「じゃあ、いつもの仕返しに各メディアに結婚記者会見の日程を公表してもいいですか?」

「泰葉ちゃん、そいつぁいけねぇ……主に俺が社会から抹殺される」

「そうなったら私が養ってあげますね♡ 愛があれば貧乏でも楽しく暮らせますよ♡ 喧嘩とかしちゃっても、私はプロデューサーさんならきっと許しちゃいますし、プロデューサーさんが酷いことするはずないので♡」

「嬉しいけど待ってね? 男としての尊厳がなくなったら生きてる意味なくなるから」

「私のために生きてくれれば問題ありません♡」

「清々しい顔でなんて肝の座ったアイドルだこと……」

 

 本当にそんなことはしないけど、私だってたまにはプロデューサーさんに反撃するんですからね?♡ いつまでもいい子な私じゃないんですから♡

 それに私でも優位になれることはあるんです。

 

「プロデューサーさん」

「今度は何だ?」

「大好きです♡」

「っ……おう」

「プロデューサーさんからは言ってくれないですか?♡」

「……そんな甘酸っぱい年齢じゃないんだよ、俺は」

 

 プロデューサーさんはこういう場合は弱いんです♡

 言葉にしなくてもプロデューサーさんの態度とか私に対する接し方で十分伝わってるんですけどね♡

 

「じゃあ、プロデューサーさんが言えない分、私が今から帰るまで……そして、これからも大好きって伝えますね♡」

「お、おう」

「大好きです、プロデューサーさん♡」

「……おう」

「大好きです♡ 大好き好きです♡」

「もう止めて! 俺のライフはゼロよ!」

「止めませーん♡ 大好きですよ、プロデューサーさん♡」

「うわーん!」

 

 こんな感じで私は久々のオフをプロデューサーさんとラブラブに過ごしました♡―――

 

 岡崎泰葉♢完




岡崎泰葉編終わりです!

愛くるしいスマイルで好き好き言ってくるスタイルにしました!

お粗末様でした☆

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