デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

78 / 196
静岡から東京の事務所へ通ってる設定です。


上条春菜編

 

 私は地味だ

 

 これといった取り柄もない

 

 だから

 

 そんな自分を

 

 新しい眼鏡を掛けた時みたいな

 

 新しい自分になりたくて

 

 アイドルオーディションに応募した

 

 そこで私は盛大に滑った訳ですが

 

 そんな私に手を差し伸べてくれた

 

 魔法使いさんがいたんです

 

 ―――――――――

 

「春菜ちゃんは眼鏡の先輩だから、みくにアイウェアの選び方を伝授してほしいにゃ!」

「アイウェア? みくちゃんは眼鏡のことを"アイウェア"と呼んでいるんですか?」

「にゃ? そうだけど……変かにゃ?」

「変というか……違和感がありますね」

「そうかにゃー?」

「はい。そもそも眼鏡って……医療器具ですから!」

「眼鏡へのプライド高過ぎにゃ!」

 

 ワハハハッ!

 

 私は今、アイドル仲間のみくちゃんと共にプロダクション主催のトークショーをしています。

 このトークショーはファンクラブ限定のトークショーですが、嬉しいことに応募が殺到したので当初の予定人数より大幅に拡大し、小さなホール(300人収容可能)を貸し切って結構大きなトークショーになりました。

 

 アイドルになってこれまでいろんなお仕事をさせてもらってきて、最近はようやく変な緊張をせずに心地よい緊張感でお仕事に臨めてます。

 それもこの私を一人前のアイドルにしてくれた……今では私専属のプロデューサーさんのお陰なんです。

 

「…………♪」

 

 今も私のことを観客席の後ろから優しく見守ってくれてて、私はプロデューサーさんと目が合う度に胸の奥がトクントクンと高鳴ります。

 だって私……実は一週間前からプロデューサーさんと密かにお付き合いを始めましたから。

 密かにと言っても、みくちゃんやブルーナポレオンのみんなには相談に乗ってもらってたから知られちゃってます。

 

 アイドルだからとか、プロデューサーだからとか……最初は凄く考えた。

 それでも私は……私の心はプロデューサーさんと結ばれたいって願っていた。

 だからアイドルになれた時と同じくらい、今は魔法に掛かったような幸せな気持ちで、私の胸はプロデューサーさんのことで満たされています♡

 

 ―――――――――

 

「春菜ちゃーん、別に見るなとは言わないけどさー。ちょっと見過ぎだったよー。幸せなのは分かるんだけどー、公私混同するのはいけないと思うんだー」

「はい……気をつけます」

 

 それから無事にトークショーは終わり、トークショーに出演したみんなで楽屋に戻ってきました。

 メイクさんにメイクを落としてもらって、あとは着替えるだけなんですけど、その前に私はみくちゃんからこっそりとですが注意を受けています。

 その注意とは、

 

「プロデューサーチャンに好き好きビーム飛ばし過ぎ。今度から注意してよね。ファンの中には鋭い人もいるんだからね」

「はい……」

 

 私がトークショー中にプロデューサーさんのことを見過ぎてしまっていたこと。

 みくちゃんは私より年下だけど、私よりもずっとアイドルというお仕事に情熱を注いでる。今もお叱りモードなので、いつもの猫口調もなくなってるから、余計に怖い。

 

「みくは恋したことないし、ましてや恋人が出来たこともないから強くは言わないけどさ……覚悟持ってやってよね。どっちかしか出来ないならどっちか諦めるって覚悟もちゃんとしてね。それがプロだよ」

「うん……今度から気をつけます。ありがとう」

「ん。ならみくはもう言わないにゃ!」

 

 みくちゃんはいつものように笑顔を見せて、本当にそれ以上はもう何も言ってきませんでした。

 私はそんなみくちゃんのオンとオフの切り替えが凄くて、年下とか関係なくとても尊敬出来ました。

 

 ―――――――――

 

 着替えも終われば一旦事務所へ向かう。でもみくちゃんはみくちゃんの担当プロデューサーさんと自主トレするんだとかでレッスンスタジオに向かいました。そうしたストイックなところも私は見倣わなきゃいけない。

 

「私も何かした方がいいでしょうか?」

 

 でもいざとなると、何をしたらいいのか分からない。

 だから私は運転席に座るプロデューサーさんにアドバイスを求めました。

 しかし、

 

「そうだねー……春菜はまず休むことかな」

 

 プロデューサーさんはバックミラーに写る私にそう言うだけ。

 

「でも……」

「春菜は春菜。他は他だろ。人にはそれぞれ合ったやり方があるんだから」

「………………」

「何か足りない……何かしなきゃいけない……そう思うのは大切だ。でも春菜はハードなことは向いてない。だから今は休むこと。いいかい?」

「……はい」

 

 プロデューサーさんの言うことは分かる。そして私よりもプロデューサーさんの方が客観的に私を見て、その都度適切な指示をくれる。

 

「ほらほら、そんな暗い顔しない。眼鏡や猫の話をする時みたいにニコニコしなきゃ。俺は笑ってる春菜の方が今の春菜より数倍好きなんだけどなー」

「もう……意地悪な人ですね」

「そんな意地悪な人が好きなのはどこの誰だったかなー?」

「知りませーんっ」

 

 もう、本当にこういう時のプロデューサーさんは意地悪な恋人さんなんですから。

 でも、それなのにいつの間にか笑ってる自分がいる。だから私はそれに気がつくと、私はまたこの人の魔法に掛かったんだって思う。

 

「それじゃ春菜の笑顔も戻ったことだし、事務所に急ぐぞ。そんで帰る準備が出来たら気晴らしに行くぞー!」

「え、気晴らし?」

「デートだよデート。せっかくこれからオフなんだし、恋人になって一週間経つんだから、ここいらでデートくらいしよう」

「っ……もう、本当にいつも急なんですから♡」

「思い立ったらすぐ行動だからな♪」

「はーい、ついて来まーす♡」

「よろしい♪」

 

 ―――――――――

 

 そして私はプロデューサーさんに連れられて、とある区の商店街に来ました。

 夕方には新幹線で静岡へ帰らなきゃいけないけど、その時間まではまだ余裕がある。だから恋人になって初めてのデートを存分に満喫しよう!

 

「眼鏡外しちゃったんだ?」

「え……はい。流石に眼鏡してると、マスクをしてても私がアイドルだとバレてしまうので」

「なるほどね。でも危なくない?」

「乱視ではないので大丈夫ですよ♪」

 

 それに―――

 

「こうして〇〇さんの腕に抱きついてますから♡」

 

 ―――プロデューサーさんなら、私をちゃんと導いてくれますからね♡

 

「彼女がぐうかわで尊ひ……」

「恥ずかしいですぅ」

「かわいい春菜が悪い」

「あぅ〜♡」

 

 そんなこんなで私はプロデューサーさんの腕に自身の腕を絡めて、ウィンドウショッピングデートが幕を開けました。

 

 ―――――――――

 

「お、この前やった春菜のグラビア写真集が平積みされてる」

「なんか複雑です……」

 

 平積みされるくらい大々的に売り出してくれるのは嬉しいですが、初のグラビア写真集だから恥ずかしい気持ちの方が強いです。

 

「"笑ってるだけがアイドルじゃないんだよ?"なんて我ながらナイスなキャッチコピーだな」

「確かにそうですけど……」

 

 確かにこのグラビア写真集の撮影で、私は殆ど笑顔で写ってない。寧ろ視線を外してたり、熱っぽくレンズの向こうを見つめていたりと……私としてはアダルティな撮影になりました。それに水着もセクシーなのだったり……。

 

「今ふと思ったんですけど……」

「ん?」

「〇〇さんって嫉妬とかしないんですね。私のグラビア写真集が発売されても」

「そりゃあ仕事だからな。俺のワガママで仕事は選ばないよ。春菜第一だからね」

「なるほど」

 

 やっぱり大人だなぁ。私がプロデューサーさんと同じ立場なら絶対断っちゃってます。

 でも大人だなぁって尊敬する反面、もう少し私のことを独占したいとか思ってほしいと思ってしまう。

 

 でも―――

 

「それに本物の春菜は俺の彼女だから、全然悔しくない♪」

 

 ―――その言葉で私の心はこれでもかというほどときめきました。キュンってするなんて良く聞きますが、今のはギュンって言いました。心臓がギュンって。

 とってもとっても嬉しかったのに―――

 

「ば、ばかぁ……♡」

 

 ―――私はそう返すのがやっとでした。不覚。

 

「バカとか言ってるわりには、めっちゃ嬉しそうなんだけどなー?」

「し、知りませんっ♡」

 

 もう、本当にこういう時だけは意地悪さんになるんですから。

 でも―――

 

「んじゃ、次行こうか」

「……はい♡」

 

 ―――私はやっぱりプロデューサーさんに笑顔を向けられると、自分も笑顔になってしまう。

 

 ―――――――――

 

 次に私たちが立ち寄ったのは眼鏡ショップ!

 新作フレームが沢山あって私のテンションもうなぎのぼりなんですが、何分視界がいつもより悪いので鮮明に見ることが叶わないのが難点です。

 

「これとか春菜に似合うと思うなぁ」

「ラウンド型ですか……普段の私なら手に取らない型ですね」

「掛けてみてよ♪」

「こうですか?」

 

 キラッ

 

「…………かわいい」

「っ……ど、どうも♡」

 

 そんなマジマジと言われると照れちゃいます♡

 

「〇、〇〇さんも何か掛けてみてくださいよ。きっと似合いますから!」

「こんなのとか?」

 

 っ!!!!!?

 

 プロデューサーさんはウェリントン型でブラウン色の眼鏡を掛けました。

 どうしよう……控えめに言って、これでもかと控えめに言って―――

 

 私の彼氏超絶カッコイイィィィィィッ♡

 

 ―――普段はコンタクトしてるプロデューサーさんだけど、ほんっとにもったいない!

 こんなにこんなにこんなにこ〜〜〜んなにカッコよくなれるのに、どうして眼鏡を掛けないのでしょう!?

 

「どうかな?」

「…………素敵です♡」

「だいぶ間があったけど?」

「言葉を選んでました。素敵過ぎて♡」

「あはは、ありがとう。ならこれ買っちゃおうかなぁ」

「はい、是非とも。そして私だけの前で掛けてください。独り占めしたいので」

「そ、そんな真顔で言わなくても……」

「お願いします」

「……まあ、春菜がそう言うなら」

 

 シャッ!

 〜春菜は今年1番の渾身のガッツポーズをした〜

 

 ―――――――――

 

 楽しい時間もあっという間に過ぎ、私はプロデューサーさんに駅まで送ってもらいました。

 

「今度は1日オフになったらもっと長い時間デートしような」

「はい♡」

 

 今日はもうお別れだけと、またすぐに会えるし電話だって出来る。それに私も高校を卒業すれば、東京で暮らすことにしてるから。それまでの辛抱です。

 

「家に着いたら連絡してくれ。向こうに着いたらもう暗いだろうから、タクシーで帰るように。あと痴漢とかにも注意するんだぞ?」

「はーい♡」

「ん。じゃまた明後日な」

「はい……あ、忘れ物!」

「え、事務所にか?」

 

 ちゅっ――♡

 

「っ!!!?」

 

 デートの最後といえば、キスですよね♡

 

「浮気はダメですからね?♡」

「しないよ」

「約束ですよ、プロデューサーさんっ♡」

「うん」

 

 私としては大胆なことしちゃったけど、私だって大人しい彼女って訳じゃないんですからね♡

 

 こうして私たちはその日はお別れしましたが、あれ以来プロデューサーさんが別れ際にキスしてくれるようになりました♡―――

 

 上条春菜♢完




上条春菜編終わりです!

二次創作では何かと眼鏡推しの強い春菜ちゃんですが、私は敢えてデレデレ春菜ちゃんにしました!

お粗末様でした☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。