デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。
蘭子語は難しいので控えめにしてます。ご了承ください。


神崎蘭子編

 

 我は穢れた地へ降りし堕天使のひとり

 《私はアイドルをしている》

 

 心眼を持つ者に見出され

 《プロデューサーのお陰で》

 

 我は覚醒したのだ

 《今の私がある》

 

 光と闇が互いを知る時

 《あの人がいるから》

 

 我は真の姿を群衆へ現し

 《私はきらびやかなステージに立ち》

 

 迷える仔羊たちへ真の御言葉を授けん

 《歌うことが出来るんです》

 

 ―――――――――

 

『闇に呑まれよぉぉぉっ!!!』

 

 ワァァァァァッ!!!!!

 

 ピッ

 

「こんな感じのライブDVDなんだけど、どうかな?」

「さすが瞳を持つ者!」

《文句なんてないです!》

 

 私は今、専属プロデューサーと共に事務所の会議室で今度発売予定のライブDVDの映像確認をしてます。

 私としてはアイドルになって初めての単独ライブ……しかもアリーナにはたくさんのファンの方たちが来てくれて、一緒に盛り上がることのできた最高の時間でした。

 このように私がアイドルとして成功できてるのも、プロデューサーのお陰で……プロデューサーだから私は頑張って来れたんだと思ってます。

 

「ならこれで行こうか。じゃあ次はこのDVDを出すにあたって特典映像を付けようと思ってるんだ」

「真の闇への誘いか?」

《何を付けるんですか?》

 

 プロデューサーが考えてくれたことだから、私はどんな提案をしてくれるのか楽しみで仕方ない。

 

「ライブとかだと蘭子はカッコイイ感じだろ? だから特典の方は最高にカワイイ蘭子をお届けしたいんだ」

「降臨する前の我……」

《可愛い私なんて恥ずかしいです……》

 

 プロデューサーの考えは分かる。でもカワイイ私ってファンの人たちは見たいのかな?

 

「恥ずかしがる必要はないよ。蘭子は今のままでも十分可愛い!」

「…………♡」

 

 そんな真顔で言わないでください♡ 嬉しくて本当の私になっちゃうじゃないですかぁ♡

 

 私、神崎蘭子は事務所の人たちには秘密でプロデューサーと数週間前からお付き合いしてます。

 年齢的に15歳も離れてるから犯罪って言われるかもしれない。けど、私が心から望んだ関係なので何も問題はないと思ってます。でもプロデューサーの立場が大変になっちゃうから私が結婚出来る年齢になるまでは秘密にしてようって約束してるんです。

 

 プロデューサーはこんな私をアイドルにしてくれて、あのアイドルの最高峰……"シンデレラガール"にしてくれた掛け替えのない人。

 そんな人を好きにならない理由なんてないじゃないですか。だから私は秘密でもいいからプロデューサーを求めて、それにプロデューサーは応えてくれたんです。

 

 でもお付き合いを始めてちょっと困ってることがあります。

 それは―――

 

「プロデューサーにむぞらしか(可愛い)なんて言わるるとドキドキしてしまう〜♡」

 

 ―――私が素で熊本弁を喋ってしまうこと。

 

 堕天だとか魔王だとか色々と自分で言ってる私ですが、素は熊本娘。

 都会に憧れて親の反対を押し切ってまで東京の中学校へ編入して普段は滅多に熊本弁は出ないんですが、プロデューサー……大好きな人に褒められたりすると、私は元の神崎蘭子に戻ってしまうんです。

 

「お、出たな熊本蘭子♪」

「はっ……こほん……気の迷いよ」

《忘れてください》

 

 プロデューサーに変な子だって思われちゃう。

 

「熊本蘭子も今の蘭子も……俺はどんな蘭子だって好きだよ」

「さすが我を見定めし眼を持つ者♡」

《やっぱりプロデューサーは優しいですね♡》

 

 プロデューサーはどんな私でも受け入れてくれる。だから私はそんなプロデューサーに私なりに恩返しをしようと日々努力してる。最近はお料理とかもお母さんにレシピを聞いて練習してるんですから♪

 今ではずっと喧嘩してたお父さんともプロデューサーが間に入ってくれたお陰で仲直りすることができたし、私にできることは全部してあげたい♡

 

「それで企画としてこんなの用意したんだけど、どれがいいかな?」

「汝のグリモワールか……」

《見てみますね》

 

 1つ目は……『グラビア映像』ですか。

 前に私の写真集出した時は結構評判良かったんですよね……でもお父さんに「嫁に行く前に嫁に行けなくなる」って言われたから、あんまりやりたくない。

 

 2つ目は……『オフの蘭子映像』?

 

「これはどういった催しか?」

「これは……蘭子がオフの時の姿をハンディカメラで撮るってことだよ。ウィンドウショッピングに行ってる時の表情とか、ファンも色々と知りたいだろうからね」

「ふむ……」

 

 確かに私の素顔というか、本当の私を知ってもらうのにはいい機会かもしれない。ファンレターにも『休日は何をしてますか?』とか『作詞をしてる時はどんな感じですか?』とか訊ねられてますし。

 

「最後のは俺イチオシの企画なんだけど、どうかな?」

「汝が推す祭か……」

《プロデューサーイチオシ……》

 

 …………『蘭子とデート気分』?

 

 私は意味が分からなくてプロデューサーへ視線を向けました。

 すると―――

 

「要するに蘭子が恋人役になってる映像を撮るのさ。蘭子の好きな動物園デートとかその時の風景を撮って、ファンにも蘭子とデート気分を味わってもらおうっていう企画」

 

 ―――プロデューサーは熱心に説明してくれます。

 確かに私には男性のファンが多い……だからこの企画は多くの人に受け入れられるかもしれません。実際にこういうジャンルのDVDやVRを収録してるアイドルもいますし。

 でも―――

 

「我は汝の意を認めん」

《嫌です》

 

 ―――私はやりたくない。

 だって私の恋人はファンではなくて、プロデューサー一人だから。

 

「えぇ、いい案だと思ったのになぁ」

「っ!!」

 

 ガタッ

 

「プロデューサーはうちがプロデューサー以外ん人と付き合うてん平気なんか!?」

 

 私はそんなの絶対に嫌!

 認めない! 私の恋人はプロデューサーだけなんだから!

 

「いや、だってあくまでも()()()ってだけだろ?」

「役やろうと何やろうと嫌やけんそう言いよるんばい!」

 

 どうして私の気持ちを分かってくれないの!?

 そんなにプロデューサーは私が他の人の物になっても平気で居られるの!?

 

「分かった……蘭子がそこまで言うならこの企画は没だ」

「二度とこぎゃん企画せんでくれん。もし次同じような企画ば出したらプロデューサーとはお喋りしちゃらんけんね!」

「分かった分かった。ごめんなさい」

「じゃあ……んっ」

 

 私はそう言ってプロデューサーへ両手を広げました。いわゆる仲直りのハグの要求です。

 

「ごめんな……はい」

「んぅ……プロデューサーのばかぁ」

「いやほら、蘭子って本当にカワイイからさ。世の中に知らしめようと思って……」

「そぎゃんこつ知らしめんちゃよかもん……」

「そうだな。恋人の蘭子は俺だけが独り占めするよ」

「うんっ♡ 最初からそう思うとりゃよかと!♡」

 

 良かった。プロデューサーも分かってくれて。

 

「それで、蘭子?」

「んぅ?♡」

 

 《蘭子の首傾げ上目遣いが炸裂》

 

(確かにこんな可愛い蘭子は自分だけのでいいな)

「熊本弁が凄いけど今日はこのまま行くのか?」

「はっ……ごっほん……時がそうさせた一時の戯れよ」

《もう使いません》

 

 ―――――――――

 

 ちょっとした争いはありましたが、私はそのあとでちゃんとプロデューサーと話し合って、特典映像は私のオフの過ごし方を収録することにしました。

 リアリティを出すのと経費削減のために撮影はプロデューサーが行うことになり、午後のオフを利用して私たちは早速事務所の最寄り駅の地下街へ行きました。

 ここには私の好きな洋服やアクセサリーのブランドショップがあるので、良く行くんです。

 もちろん撮影なのでお店の方にはプロデューサーが許可を得てますから大丈夫ですし、撮影中は変装もきっちりしなくていいみたい! いつものように変装しちゃうとファンの方たちに本当の変装がバレちゃうからだそうです。

 

「この隠されし魔力……我を求めている」

《可愛いなぁ……買っちゃおうかなぁ》

「試着とか出来るならしてみたらいいんじゃないか?」

「まさに天啓!」

《してきます!》

 

 私はその服を持って試着室に行きました。

 あ、因みにプロデューサーの声は特典映像の方では編集して流れません。撮影者名にプロデューサーの名前を出すだけみたい。

 

 シャッ

 

「深紅の衣を纏いし我はさぞ恐ろしいだろう?♡」

《たまには赤い服にしてみたんだけど、どうですか?♡》

 

 いつもの私なら黒い服が多いのですが、プロデューサーは赤いワンピースとか好きなので今回は赤……正確にはワインレッドを基調としたミニスカートワンピースでスカートの延長部分として薔薇の刺繍が施されたレースが使われてる。もう既に持ってる網タイツとかと合わせればもっと色んなアレンジができると思う。

 プロデューサーの反応はどうかな?

 

「…………いい」

「ま、真か?♡」

《か、可愛いですか?♡》

「いい、凄く可愛いぞ!」

「ならば我の物とする! この衣は我だけでなく眼を持つ者にも選ばれたのだ!♡」

《じゃあ、買います! プロデューサーも気に入ってくれましたし!♡》

 

 あれ? 今思ったけど、これデートの時とあんまり変わりないんじゃ……?

 バレないようにちゃんとお友達といる時みたいな感じにしなきゃ!

 

 ―――――――――

 

 そのあともいろいろと見て回って、プロデューサーも「十分撮れた」って言ってくれたので撮影は無事に終わりました。

 なので私は変装してやっと恋人モードになります♡

 

「んへへ〜♡」

「どうした、えらくご機嫌じゃないか?」

「だってさっきはデートしよるんに恋人っぽうできらんかったけ〜ん♡」

「あぁ、その反動で今デレデレモードなのか」

「うんっ♡」

 

 それに今はゴシックカフェの個室で二人っきりだもん♡

 人目がないならいくら甘えたって平気だもんねー♡

 

「好き……たいぎゃ好いとるばい、プロデューサー♡」

「俺も蘭子が好きだよ」

 

 耳元で囁かれるとゾクゾクする。まるで全身に電気が走ったみたいになって、自分でも分かるくらい顔がとろとろににやけてる。でもプロデューサーの前だけだからいいもんね♡

 

「事務所に帰ったら編集作業しなきゃな」

「うちもおかせし(お手伝い)するぅ♡ もっと一緒におろごたる(居たい)やけん♡」

「寮の門限前には帰るんだぞ?」

「実はもう外泊届け出してしもうてたり……♡」

「…………可愛くて何も言えねぇ」

「お泊まりさせなっせ♡」

「今みたいに変装しろよ?」

「はーい♡」

 

 こうして私はプロデューサーの住むマンションのお部屋にお泊まりしまして、いっぱい可愛がってもらいました♡―――

 

 神崎蘭子♢完




神崎蘭子編終わりです!

蘭子語がとにかく難しくて2、3日何度も蘭子ちゃんのセリフを見聞きしてあんな感じになりました。
変だったらごめんなさい。

ともあれお粗末様でした☆

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