デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


木場真奈美編

 

 歌とは不思議な物だ

 

 言葉だけでは伝わらなくても

 

 メロディに乗せると

 

 それが何かしらの形で

 

 人の心に届くのだから

 

 だから歌が好きだった

 

 技術を磨き

 

 歌に関われる仕事に就きたかった

 

 なのに人生は歌みたいに不思議で

 

 いつの間にか私は

 

 アイドルになってた

 

 ―――――――――

 

『きーみがーよーは♪ ちよにーーやーちーよーに♪』

 

 私は今、東京のドームで国歌を歌わせてもらっている。

 アイドルなのにこのような誉れ高い仕事を頂けたことに感謝し、ドーム全体に響き渡るように私の全てを出して歌ってみせる。

 

『こーけーのーー♪ むーすーまーーで♪』

 

 歌い終えて数拍の沈黙……そして次なる瞬間にはドーム全体から大きな声援と拍手がこだました。

 私はこれまでアイドルとして色んな経験を経てきたが、今回ばかりは胸が熱くなり、会場から戻る際に涙を流してしまった。

 

 ―――――――――

 

 控室に戻るまでに多くのスタッフさんたちから『素晴らしかった』『涙が出た』『また聴きたい』と温かい声をもらい、私は心から安堵した。

 日本の国歌……『君が代』というのは世界で最も短く、美しい歌だ。暫く海外で過ごしてきた私だが、今日は改めて自分の国の国歌に胸を打たれたよ。

 

 カチャ

 

「ふぅ……」

 

 控室に入った私は、あの瞬間の余韻に浸るように大きく息を吐きながら控室の椅子に腰掛ける。

 今回の衣装はいつものステージ衣装とは違って肌の露出の少ない白を基調としたマーメイドラインドレスで、上着は桜色の七分丈スリーブを着用した。日本らしくスリーブの刺繍は桜の花やその花弁が舞っているように模していて、結構気に入っている。あとでこの衣装のまま記念写真を撮ってもらおうと考えている程にな♪

 

 カチャ

 

「真奈美、お疲れ様」

「やぁ、プロデューサー。遅かったじゃないか」

 

 彼が私をアイドルにした張本人だ。そして今では私専属として奔走し、私とはプライベートで親密な関係を築いている……いわゆる恋人ということだ。事務所のお偉方にはまだ秘密にしているけどね。

 私が歌以外で最も夢中になっていることかもしれない。彼はそれぐらい私にとって掛け替えのない存在なんだ。

 

「いやぁ、本当ならすぐにでも来たかったんだけど、真奈美の姿に惚れ込んだ人たちから続々とCMの話とかキャンペーンガールとしての話とかされちゃってな〜」

「なるほど……つまりいの一番に私の所に来れなかったのは私のせいと言いたいんだな?」

「別にそうは言ってないよ……」

「あはは、分かってる。ほんの軽いジョークさ。プロデューサーであるならこの機を逃してはいけないだろうしね♪」

「ったく……性格悪いなぁ」

「そんな私のことが好きなんだろう?♡ ん〜?♡」

「…………その通りです」

 

 ふふっ、真っ赤になって可愛いなぁ♡

 私より5つも年上とは思えない魅力を持っているよ♡

 まあ、自分で言っておいてアレだが、本当は私の方が安心したくていつも『私が好きなんだろう?』と訊いているんだよ。

 

「あぁ、そうだ。衣装さんたちが来たら記念にプロデューサーと一緒に写真を撮りたいんだが、いいかな?」

「お、いいな。是非ともご一緒させてくれ」

「プロデューサーならそう言ってくれると思った♡」

「なら早速呼んでくるよ」

 

 プロデューサーはそう言ってすぐに控室へ衣装さんたちを連れてくる。

 そして私はプロデューサーと一緒に記念撮影し、衣装さんたちとも写真を撮り、最後はプロデューサーと共にスポンサーの方々へ挨拶して、特別に野球観戦をした。

 

 ―――――――――

 

「最後の逆転サヨナラホームランは凄かったね。私はあまり野球に詳しくはないが、楽しませてもらったよ♪」

 

 野球の試合も終わり、私はプロデューサーの運転で自分が住んでるマンションへ送ってもらっている。

 そこのドームを本拠地としている球団が勝ったが、友紀の好きなキャッツが負けたから明日辺りは愚痴を聞いてやらなきゃいけないかな。

 それよりプロデューサーはずっと顔を真っ赤にして押し黙っているね……可愛い♡

 

「プロデューサー、どうして私とのこの貴重な時間を有効活用しない? このままでは会話もなくマンションに着いてしまうよ?」

「…………」

「そーかそーか、そんなにプロデューサーは私とお似合いだと言われたのが嫌なんだね。そーいうことなんだね」

「ち、違う! そんなことは決してないぞ!」

 

 お、そこはハッキリと否定してくれるだね。年甲斐もなく喜びで胸がときめくじゃないか♡

 

 プロデューサーがどうしてさっきからこんな調子なのかと言うと、実は記念撮影をしている時に撮影を頼んだ衣装さんたちから―――

 

『まるで結婚式の撮影みたいですね♪』

『お似合いですよ、お二人共♪』

『雰囲気出すために腕とか組んじゃいましょう!』

 

 ―――と、色々と冷やかされたからなんだ。私もその言葉で気持ち良くなってしまって、つい調子に乗って腕を組んだり、お姫様抱っこを催促したりしてしまって、何枚も写真を撮ったものだからプロデューサーは野球観戦どころじゃなく、この有様なのさ。

 でも許してほしい。私だって根っこのとこはただの女なんだ。好きな人とお似合いと言われれば浮かれてしまうのも無理はない。

 それに今回の衣装は確かに結婚式で着ていてもおかしくないデザインだった。ならば女の憧れを存分に堪能したいじゃないか……そう思わせるのも全ては愛するプロデューサーがいけないんだよ?♡

 

「なら、どうしてそんなに恥ずかしがっているのかな?」

「そりゃあ、恥ずかしくもなるだろ……あんな……あんな……!」

 

 ワナワナとはこういう事を指すのかな? まさにそうだと言わんばかりにプロデューサーはやきもきしているね。理由は察してるが……ふふっ♡

 

「腕を組んで撮ったり、お姫様抱っこをして撮ったりしただけじゃないか。何が不満なんだ?」

「不満とかじゃなくて……」

「私ももっと欲張って頬にキスとかしてるシーンが良かったのかな?♡」

「ダメダメ! そんなことしたら事務所クビになる!」

「だから我慢しただろう? で、何がそんなに恥ずかしかったんだ?」

「…………お似合いだって言われたのが」

 

 まさか最初からだったか……本当にプロデューサーは男とは思えないほどピュアな人物だな。そこがまた愛おしくもあるんだが……♡

 

「私とお似合いだと言われて嬉しくないのか?」

「すっごく嬉しかったさ! こんな完璧超人とお似合いだって言われたんだからな!?」

「完璧超人……まあ苦手なことがないのは確かだが……」

「俺さ、いつも真奈美に不釣り合いなんじゃないかって不安なんだよ。だからお世辞でもああ言ってもらえたのが嬉しくて……でもそれ以上に恥ずかしかったんだ」

 

 なるほど、そういえばプロデューサーは自分で色々と抱え込んでしまう性格だったね。そんな不安をさせてしまっていたのは私の落ち度だ。

 

「……大丈夫。私はプロデューサーに惚れ込んでるんだ。私の隣に立つ異性は君以外あり得ない。安心してほしい」

「真奈美……」

「アイドルの私はファンみんなの物であることは自分でも理解している。でもね?」

「………………」

「木場真奈美という女はプロデューサー、君だけの女なんだ。これまでもこれからも……ずっとね♡」

「……うん」

「君が私にどんなプロポーズをして、どんな結婚式を一緒に考えてくれるのか……楽しみにしてるから♡」

「それ、ほぼほぼ逆プロポーズじゃね?」

「違うよ。プロポーズはあくまでも男の役目だろう? これでも憧れてるんだよ、プロポーズには?」

 

 それに何より―――

 

「君ならしてくれるだろう?♡」

 

 ―――プロデューサーが私の期待を外したことはこれまで一度もないのだから。

 

「……頑張ります」

「そこは『今からでも結婚します』じゃないのか?♡」

「っ……ま、まあ、順序というものがありまして……」

「私の体はもう君色に染められているのに?♡」

「うっうんっうんっ!」

 

 あからさまな咳払いだなんて、本当に可愛い誤魔化し方をするね♡

 

「ふふふっ、君だけなんだよ?♡ 私の弱いとこを知り尽くしてるのは?♡」

「も、もう勘弁してください……」

「可愛いからこれくらいにしといてあげる♡」

 

 あぁ、自分でも分かるくらい私今ニヤニヤしてるなぁ。でもこんなにも私のことでいっぱいいっぱいになってる恋人が目の前にいたら、幸せでしかないだろう?♡

 

 ―――――――――

 

 あれからもちょこちょこプロデューサーをからかって、楽しいドライブも終わり。

 私は変装としていつもの髪型じゃなく全体に髪を下ろして、伊達メガネも掛けてる。

 

「プロデューサー、私が帰ってしまうよ?」

「うん……お疲れ様」

「いいのかい? このまま帰らせて?」

「…………」

 

 顔真っ赤♡ これならあとひと押しくらいだね♡

 

「まだ一緒にいたいなぁ?♡」

「…………す、少しお邪魔させてもらおうかな?」

「いい子いい子♡ 駐車場に車置きに行こう♡」

 

 このために駐車場付きのマンションにしたんだから♡

 私も免許は持ってるけど普段からレンタカー派だもの。だからプロデューサーのために用意してる駐車場みたいなものだからね♡

 

 ―――

 

 私の部屋に入ると、プロデューサーと一緒にリビングのソファーに座る。特に目的はないんだ。ただ私がもっとプロデューサーと一緒にいたいだけ。

 

「もたれてもいいかな?♡」

「ど、どうぞ」

「んっ♡」

 

 私が自分の頭をプロデューサーの肩に軽く乗せると、プロデューサーはすかさず私の頭を優しく撫でてくれる。ひと撫でされる度に私の胸の奥がトクントクンと鳴って、『この人に愛されて幸せ♡』という思いが募る。

 

「もう日付けが変わってしまうな……」

「そうだな〜……」

「事務所に連絡したらどうだ?」

「そ、そうだな。真奈美を無事に送り届けたから――」

「――自分もそのまま直帰しますってね♡」

「ぬ?」

 

 ぬ?とか可愛い反応するの止めてくれないかな。余計に帰らせたくなくなる♡

 

「ダメ?♡」

「……選択肢1つしかないやつですやん」

「帰るって選択肢もちゃんとあるぞ?♡ 帰れればだけど♡」

「……ちょっと事務所に電話してきます」

「ん、よろしい♡」

 

 こうして私はプロデューサーを部屋に泊めることに成功。

 もちろん泊まってくれたお礼にうんとサービスして、骨抜きにしてやった♡ そんなこという私自身もプロデューサーにたくさん愛されて骨抜きにされたんだがな♡―――

 

 木場真奈美♢完




木場真奈美編終わりです!

クールビューティの中でもデレデレ要素をぶっ込んでみました!

お粗末様でした☆
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