デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

89 / 196
上京してる設定です。


鷺沢文香編

 

 小さな頃から

 

 本が好きだった

 

 一冊一冊に

 

 主人公や作者の人生が書かれ

 

 自分では見れない世界に

 

 連れて行ってくれるから

 

 それで私は満足だったし

 

 自分から外へ行く勇気もなかった

 

 なのにそんな私の手を

 

 優しく握って連れ出してくれた

 

 不思議な魔法使いさんがいました

 

 ―――――――――

 

「……ふむ…………ほう…………ふふっ」

 

 ガチャ

 

「ごめん。ちょっと話が長引いた」

「あ、プロデューサーさん。大丈夫です。この通り、退屈はしてませんでしたから」

「それなら良かった。それじゃ、行こうか」

「……はい♡」

 

 私、鷺沢文香はこれから専属のプロデューサーさんと二人で地方の温泉街へ向かいます。

 そこが次のお仕事のロケ地で明日に旅番組の収録をするので、私たちは一足先にロケ地へ入るんです。勿論、収録予定の旅館ではない小さな旅館に私たちは泊まります。

 収録が行われる旅館はその温泉街の中で一番有名な温泉旅館……現在もとても有名で学校の教科書にも載っている作家さんがご贔屓にしていた場所。私もその作家さんの作品はいくつも読み、感銘を受けていたので今から収録がとても楽しみです。

 

 アイドルになって色々なお仕事をさせて頂いてきましたが、今回のようなお仕事があるととても嬉しくて……お仕事なのについ浮かれてしまいます。

 

 でももう一つ私の心を浮かれさせることがあります。それは大好きな人……プロデューサーさんと一緒ということ。

 

 ―――――――――

 ――――――

 ―――

 

 私はプロデューサーさんとアイドルとプロデューサーという関係を飛び越えて、お付き合いをしています。

 勿論、事務所の方には内緒にしてますので密かに関係を続けている状態です。

 

 私はこの人にアイドルにならないかとスカウトされ、アイドルになりました。

 最初はアイドルの好きな方なんだと思っていましたが、まさか芸能事務所のプロデューサーで私をスカウトしていたのでとても驚きました。

 

 でもこの人の目はいつも真剣で、この人ならと私はそのお話を受けました。

 この人が私という主人公で執筆していく物語がどんな物なのか、読んでみたいと思ったから。

 

 そして気がつけば、私はアイドルとしてそこそこ有名になり、プロデューサーさんをアイドルとしての私ではなく、一人の女性として見てほしいと思うようになっていました。

 

 ―――

 ――――――

 ―――――――――

 

 だからアイドル仲間の皆さんに恥を忍んでアドバイスを求め、今の関係になりました。

 お付き合いするようになって分かったのは、小説のような恋愛は物語だからいいのだということです。

 なぜなら―――

 

「プロデューサーさん、キスしてもいいですか?♡」

「…………うん、いいよ」

「えへへ♡」

 

 ちゅ〜っ♡

 

 ―――実際に恋をすると、私はこの人に首ったけになって、いつもキスをせがんでしまっているから。

 小説にあるような清らかな恋愛なんて、私には無理みたいです。

 

 二人きりになればずっと触れ合っていたいし、キスもしたい。

 お仕事の合間を縫ってでも1回でも多くプロデューサーさんとキスをしたい。

 どこかにデートへ出掛けるよりも、綺麗な夜景や星空を見るよりも、プロデューサーさんとずっとキスしていたい。

 

 盲目的にプロデューサーさんを愛し、求めてしまいます。

 こんなこと普通の小説ではお話になりませんからね。

 自分でもこんなにキスが好きになるだなんて思ってもいませんでした。

 でもそれだけ私にとってプロデューサーさんとのキスは幸せで、何よりも変え難い瞬間なのだと思います。

 

「文香は相変わらずキスが好きだなぁ。赤信号の度にキスしてるぞ」

「それだけプロデューサーさんとのキスが好きなんです♡ それにプロデューサーさんが私にキスを教えたんですから、責任取ってください♡」

「甘んじて取りますよ、キス魔さん」

「えへへ、期待してます♡」

 

 目的の温泉街までは東京から車で3時間半程。高速道路を利用すれば1時間半ですが、私たちだけの時は急いでいない限りのんびりと下道でドライブデートを楽しみます♡

 そして私に至っては赤信号で止まる度にキスしちゃいます♡

 他の車の方々には見られてしまっているかもしれませんが、私がアイドルだなんて気づく人はいません。念の為に眼鏡を掛けたりはしてますけどね。

 でもそうまでしてでも私は大好きなプロデューサーさんとキスしたいんです。

 

「しかし、まさか文香がこんなに積極的な女の子だなんて思わなかったよ」

「私もそうですよ。恋ってすごいですね」

「まあ、確かにな……そもそも俺は告白されるだなんて思ってもいなかったし」

「私もです。でもプロデューサーさんだったから、私はプロデューサーさんに恋をして、ここまで積極的になれたんだと思います」

「それは嬉しいけど、毎回毎回文香の行動力に驚かされるよ」

「これからも覚悟していてくださいね♡」

「はいはい」

 

 その後も私はプロデューサーさんに何度もキスをせがみ、プロデューサーさんは嫌な顔ひとつせずにその都度私とキスしてくれました♡

 

 ―――――――――

 

 旅館に到着した私たち。チェックインも済ませて泊まるお部屋に行くと、とても落ち着いた和室でした。

 

「森もすぐ近くだし、川も見える……前倒しして来た甲斐があるな!」

「こんな素敵なところでプロデューサーさんと二人きりになれて、とても嬉しいです♡」

「明日のロケ頑張ってくれよな?」

「はい……でもその前にキスしませんか?♡」

「とりあえずビール並みにキスするのな」

「とりあえずだなんて思ってません。プロデューサーさんだからしたいんです♡」

「まあ俺としては嬉しい限りだよ」

「良かったです……ちゅっ♡」

 

 プロデューサーさんの唇が私の唇に重なると、どういう訳か甘い気がします。

 車の中では我慢していたのもあり、私はその味をもっと味わいたくて、重なっている彼の唇へすぐに自身の舌でおねだりします。

 

 舌で彼の唇を二、三度突くと彼は閉じていた唇を開けて私の舌の入る許可をくれます。

 でも今日はなかなかその許可をくれません。だから私は何度も何度も彼の唇に舌を突きました。

 

「ん……んぅ……んんっ♡」

「ちゅっ……っ……」

 

 今日のプロデューサーさんは意地悪です。何度も何度も私が入れてくださいとお願いしてるのに、プロデューサーさんは私の舌を吸ったり、甘噛みしたりと焦らしてます。

 

「んぅ……ん〜、ん〜ん〜っ♡」

 

 だから私もむきになってプロデューサーさんの唇に甘噛みして、開けるように伝えました。

 薄っすらとまぶたを開けてみると、プロデューサーさんはとてもいたずらっ子のように笑っていて、私の気持ちを知っていて意地悪しているんだと確信しました。

 

「あむっ……んっ……ちゅ〜っ♡」

 

 なので私は強行突破することにしたんです。

 甘噛みした彼の上唇を痛くしない程度に上へ運び、その少しの隙間に舌を入れていく。

 するとやっとプロデューサーさんは観念して、私の舌を受け入れてくれました♡

 

「……っ…………ふぅ……ぁ……♡」

 

 甘い甘い……プロデューサーさんの口の中。どこを舌で舐めても、不思議な甘さを感じて、もっともっとと求めてしまう。

 なのに―――

 

「んむぅ!?♡」

 

 ―――プロデューサーさんは私の舌を甘噛みして拘束してきました。酷い……。

 

「んはぁ……プロデューサーさんっ」

「はぁはぁ……何かな?」

「意地悪しないでください……どうしてそんなに意地悪なことばかりするんですか?」

「一生懸命な文香が可愛いから」

「むぅ……そう言えば許されると思ってませんか?」

「ならどうしたら許してくれるの?」

「私にされたい放題でいてくれれば許してあげます♡」

「えぇ〜」

 

 今回のプロデューサーさんはとことん意地悪さんです。こんなに私が求めてるのに!

 でも―――

 

「あはは、ごめんごめん。俺も男だからさ、たまには主導権を取りたかったんだ。いつも文香には敵わないから」

 

 プロデューサーさんは優しく笑って、謝ってくれました。

 それに優しく私の頬も撫でてくれたので、これはもういつものようにしていいということです♡

 

 ―――

 ―――

 ―――

 ―――

 ―――

 

「はぁはぁ……焦らした分、すごい目にあってしまった……」

「私に意地悪した罰です♡」

 

 日がすっかり沈んでしまってから、私たちのキスが終わりました。

 プロデューサーさんは肩で息をしていますが、私は満足感と高揚感……そして大きな幸福感で満たされています♡

 

「文香には敵わないなぁ」

「プロデューサーさんへの愛は誰にも負けませんから♡」

「ありがと」

「はい♡」

 

 それから私たちはやっと浴衣に着替えて、温泉に浸かりに行きました。

 

 ―――――――――

 

「戻りました♡」

 

「はい……はい……あぁ、なるほど」

 

 お部屋に戻ると、私より先にお部屋に戻っていたプロデューサーさんは電話の最中で、私へ『ちょっと待ってて』とアイコンタクトしてきます。

 なので私は笑顔で頷いて、冷たいお茶を飲みながらプロデューサーさんを待ちました。

 

 ―――

 

「はい、分かりました。はい……では失礼します」

 

 電話を終えたプロデューサーさんは、小さくため息を吐きました。何かあったのでしょうか?

 

「あ、ありのまま今起こったことをそのまま話すぜ!」

「はい」

「収録の予定が機材トラブルで明後日に変更になった。宿泊をキャンセルして東京に戻ろうとちひろさんに確認したら、『最近お忙しかったですし、そのまま収録日まで羽を伸ばして万全の状態でお仕事に臨んでください』と言われた」

「ということは?」

「明日は丸々ゆっくり出来るってこと」

「わぁ♡」

 

 嬉しいです♡

 

「ってことで、早速明日は――」

「――ずっとプロデューサーさんとキスして過ごします♡」

「…………ふぁ?」

 

 こんなチャンス滅多にありませんからね。明日はお仕事も何も考えず、ただひたすらプロデューサーさんを考えて、プロデューサーさんを感じられる1日にしましょう♡

 

「プロデューサーさん♡」

「え、あ、はい?」

「明日はいっぱいいっぱいキスしますけど、嫌いにならないでくださいね?♡」

「嫌われる心配があるくらいキスするの?」

「はい……あ、勿論、普通のキス以外もたくさん♡」

「っ!?」

「あはっ♡ プロデューサーさんもやる気満々みたいで、嬉しいです♡」

「そ、そりゃあ、まあ……な」

「いっぱいキスしてあげますからね♡」

「お手柔らかに」

「善処しまーす♡」

 

 こうして私たちは明後日の収録まで同じ旅館でたくさん色んなキスをして過ごしました♡―――

 

 鷺沢文香♢完




鷺沢文香編終わりです!

一度箍が外れると突き進んじゃう系にしてみました!

お粗末様でした☆

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。