デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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安斎都編

 

 名探偵になりたい

 

 ずっとそれが私の夢だった

 

 そんな私に

 

 心強い助手が付き

 

 ちょっと当初の予定と違うけど

 

 夢への迷宮を

 

 着実に真実へ向かって

 

 突き進んでいます

 

 ―――――――――

 

「あのね、安斎さん。貴女のキャラ付けの徹底さは評価に値するわ……けどね、探って良いものと悪いものがあるってこと分からない? この業界で少しでも長生きしたいなら余計なことに首を突っ込むのはよした方が身のためよ?」

 

「すみませんでした!」

「す、すみませんでした!」

 

 私とプロデューサーさんは今、芸能界の大物タレントさんに怒られてます。

 それもプロデューサーさんに至っては、私のせいでめちゃめちゃに怒られてます。

 

 どうして怒られているのかというと、私がこのタレントさんのことを嗅ぎ回っていたから。

 今日はバラエティ番組の収録でこの方とご一緒したんですが、私の直感がビビッと反応したんです。

 だって5ピー歳なのにすっごくキレイなんだもん。

 これはどうしてそうなのか解明しなきゃ名探偵ミヤコの名が泣きますよ。

 だからじっちゃんの名に掛けて潜入捜査をしていたんですが、この通りバレて怒られているんです。

 

「安斎には私からもキツく言い聞かせます! なのでどうかこの通りです! そもそもこの安斎は芸能界の重鎮である貴女の美貌はどこから来ているのかと探求心にかられてやったことですので!」

 

 プロデューサーさんは土下座する勢いで謝ってます。

 私もプロデューサーさんと一緒に頭を下げてますが、頭の向こうからなんとも言えないプレッシャーがビリビリと伝わってきて……正直怖い。

 

「…………貴方の誠意と面子に免じて今回のことは水に流すわ。それと安斎さん」

 

「は、はい!」

 

「これだけ良いプロデューサーに担当してもらっているのですから、貴女も少しずつで良いからこの業界のことを知りなさい」

 

「はい! もうこんなことはしません!」

 

 私は一生懸命、謝りました。

 するとそのタレントさんは「はい、じゃあ解散」と軽く手を叩いて許してくれました。

 私はそのタレントさんに言われた通りに控室をあとにしましたが、プロデューサーさんは残って私の代わりに何度も何度も謝ってくれていました。

 

 ―――――――――

 

「ふぁ〜、今回はやってくれたなぁ、都ちゅわぁん」

「ご、ごめんなさい……」

 

 当然、帰りの車内では今回の反省会。

 

「収録の方はいつも通りいい出来だったのに、よりによってとんでもないことをしてくれたなぁ」

「うぅ……」

「ホント、あの人が本気でキレてたら干されて引退だったんだぞ?」

「はい……」

 

 本当に反省してます。

 もう二度とやりません。

 

「まぁ、都も散々怒られたし、俺はもうこれ以上は言わないよ」

「…………」

「今度お詫びの品を持って改めて謝りに行こうな」

「はいっ」

「ん、ならこの話はもう終わりな」

 

 するとプロデューサーさんは優しく私に微笑んでくれました。

 それがとても嬉しくて……申し訳なくて……私はプロデューサーさんの迷惑になることはしないと心に決めました。

 

 ―――――――――

 

 事務所に着き、私はプロデューサーさんと一緒にプロダクションの社長さんに報告をしました。勿論、私が犯してしまった失態のことも。

 社長さんにも怒られましたが、一番怒られていたのはやっぱりプロデューサーさんで……私は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいで泣きそうになりましたが、頑張って堪えました。

 

 でも―――

 

「グスッ……うぅっ……ごめん、なさい……っ」

 

 ―――事務所でプロデューサーさんが使う個室に入った途端、私は泣きじゃくってしまったんです。

 

「もう過ぎたことだ。もうやらなきゃそれでいい」

「っ……えぐっ……ひっく……」

「どんなに名探偵でも都はまだ16だもんな。でも最後まで泣かなかったのは偉いぞ」

「ひっく……はい……グスグスッ」

「ほら、泣き止め泣き止め。明日は雑誌の取材があるんだから、目が腫れて写真写りが悪くなるぞ?」

「んっ……」

 

 小さな子どもをあやすみたいに、プロデューサーさんは私の背中を私の呼吸に合わせるように優しく叩いてくれた。

 その優しさがまた嬉しくて……私は本当に恵まれてるんだと心から思いました。

 

 ―――――――――

 

「落ち着いたか?」

「……はい」

 

 あれからプロデューサーさんは私が泣き止むまで抱きしめてくれていました。

 途中からソファーに移ってプロデューサーさんは私を膝の上に乗せて抱っこしてくれて、私はプロデューサーさんにしがみついて、やっと落ち着いたところです。

 

「よしよし……都は強い子、可愛い子」

「プロデューサーさんの彼女ですから……」

 

 言い忘れてましたが、私はプロデューサーさんと付き合ってます。

 最初はプロデューサーさんが私の助手になることが条件でアイドルになったんですけど、このお仕事をしていく内にプロデューサーさんに恋の迷宮へと落とされてしまいました。

 もしかしたらプロデューサーさんこそが悪人なのかも……よく主人公に近しい人物が真犯人だったりして捜査を撹乱しますし。

 

「あぁ、自慢の彼女だよ。でも何度も言うが、これは二人の秘密だからな? 推理物風に言えば共犯だ」

「姑息な……」

「んんん? 告白してきたのはどちらだったかな、ホームズ?」

「……わ、私だよ、ワトソンくん……」

 

 完全に私の方が下手に回らざるを得ない状況です。

 でもこの関係が嫌じゃない私がちゃんといる……だからこそアイドルとしても恋人としても、長くプロデューサーさんの隣にいられるように頑張ろうって今日はとことん思いました。

 

「ははは、分かっているじゃないかホームズ。なら、当てたご褒美としてディナーでもご馳走するとしよう」

「デザートにストロベリーサンデーを要求したいよ、ワトソンくん」

「ならいつもの店だな♪」

 

 こうして一段落した私はプロデューサーさんのご厚意に甘えて、事務所をあとにしました。

 

 ―――――――――

 

 私たちが向かったのは事務所が入っているビルの裏路地にある老夫婦が営む喫茶店。

 いかにも闇組織との取引がありそうな雰囲気が出てるので、私のお気に入りです。

 調査の結果、マスターは優しくて、その奥さんは料理上手ということが分かり、シロでした。

 

 ここは私のお気に入りということも勿論ですが、プロデューサーさんの行きつけなので私たちが入ると貸し切りしてくれるんです。

 なんでもプロデューサーさんが私と付き合う前にマスターたちにご相談したらしくて、お付き合いのお返事を頂いてすぐにご報告に連れて来られた過去が……。

 でもそのお陰でプロデューサーさんと見つめ合っててもなんの心配もいらないんですけどね♡

 

「はい、スペシャルディナーよ。ゆっくりしていってね」

「いつも、ありがとうございます」

「ありがとうございます!」

 

 マスターの奥さんはいつも私たちに特別メニュー……いわゆる裏メニューを出してくれます。

 

「じゃあ、コーヒーだけど乾杯するか」

「は、はい♡」

「今日は本当にお疲れ様」

「お疲れ様です……そしてごめんなさいでした」

 

 カチンとカップを鳴らす私たち。

 マスターも奥さんも厨房の奥に引っ込んで、出来るだけ私たちを二人きりにしてくれるし、何か聞いてほしいことがありそうな時はそれを察してカウンターにいてくれます。これは本当に流石の一言で、私も尊敬してます。

 

「何から食べたい、都?」

「えっと……お、オムライスがいいです♡」

「はいよ……ふぅ、ふぅ……はい、あーん」

「あー……んっ♡」

 

 ん〜♪ やっぱりここのオムライスは最高です!

 しかも大好きなプロデューサーさんからあーんのおまけ付きとあれば、言うことなしですよ!

 

「あむあむ♡」

「はは、ハムスターみたいで可愛いなぁ」

「むぅ、ごくん……恥ずかしいこと言わないでくださいよ〜」

「事実だからな。それより交代してくれよ」

「あ、はーい♡」

 

 交代……つまり今度は私がプロデューサーさんにあーんをする番です♡

 因みにプロデューサーさんは必ずシーザーサラダから食べます。

 

「あーん♡」

「あむっ……うん、この絶妙なドレッシングの味わいがレタスに合って最高だ!」

「隠れた名店ですよね♪」

「そうだな」

 

 こうして私とプロデューサーさんは他愛もない会話をしながら、仲良く食べさせ合ってまったりとした時間を過ごしました。

 

 そして―――

 

「はーい、デザートのスペシャルストロベリーサンデーよ」

 

 ―――最後はお待ちかねのストロベリーサンデー!

 

 これはそんじょそこらのストロベリーサンデーとは違うんですよ?

 なんたって裏メニューなのでストロベリーソースだけじゃなくて、チョコソースとホワイトチョコソースまでかかってる至高の一品なんですから!

 まあ体型キープのためにこれを食べた次の日からはちょっと甘いものを控えねばいけませんけど……。

 

 奥さんがまた奥に引っ込むと、

 

「ほい」

「あむっ♡」

 

 プロデューサーさんは早速食べさせてくれます♡

 甘くて幸せなのにプロデューサーさんともラブラブに過ごせるから、最高のひとときになっちゃってます♡

 

 そして極めつけは―――

 

「んっ」

「っ……はむっ♡」

 

 ―――イチゴの口移しキッスの時間♡

 甘酸っぱくて、幸せで、胸がドキドキして……今はこのためにアイドルを頑張ってると言っても過言ではありません!♡

 

「んはぁ……プロデューサーさん♡」

「顔がとろっとろだぞ、都?」

「だってぇ、こんなに幸せなら、こうなっちゃいますよぉ♡」

 

 自分でもデレデレし過ぎてるなぁって思いますが、我慢なんて出来ませんよ。

 

「イチゴはあと3つあるけど、早速もう1ついっとく?」

「…………♡」

 

 私はただただプロデューサーさんの目を見つめて頷きました。

 するとプロデューサーさんは優しく微笑んで、また同じことをしてくれます♡

 

「ぷはぁ……プロデューサーさん♡ しゅき〜♡」

「俺も都が好きだよ」

 

 こうして私はプロデューサーさんが作り出す愛の迷宮に今宵も囚われるのでした♡

 

 後日ちゃんと改めてタレントさんに謝りに行って、お詫びの品(その方の好きなワイン)をお渡ししてきました!―――

 

 安斎都*完




安斎都編終わりです!

もう少し甘くしようとしたんですが、こんな感じになりました。
ご了承ください。

お粗末様でした☆
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