デレマス◇ラブストーリーズ《完結》   作:室賀小史郎

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上京してる設定です。


塩見周子編

 

 物事を真剣にやる

 

 そんなの面倒だと思ってた

 

 努力しても報われる訳じゃないし

 

 褒めてもらえないんだもん

 

 それならいっそなあなあで

 

 のらりくらりしてた方が楽

 

 なのにさ

 

 あたしを本気にさせた

 

 わっる〜い魔法使いがいたんだよ

 

 ―――――――――

 

「………………」

 

 待ち合わせの時間よりちょっと早く着いちゃった。

 

 今日のあたしは完全に1日オフ。だから今日はデート一択。

 誰とかって? そんなのプロデューサーさんに決まってるじゃん。あたし専属でデビュー前から今までずっとあたしのことを面倒見てくれた掛け替えのない人。

 

 そいでデートの約束したんだけど、予定より1時間早く来ちゃった。だってそれだけ楽しみにしてたし、2ヶ月振りのデートだもん♡

 あ、もちろん事務所には内緒にしてるし、今も伊達メガネかけてマスクもつけて、帽子も被ってるよ。バレたらあたしもプロデューサーもヤバいからね。でも仲良しな面子には教えてる。誰もバラすような人いないから。

 

「すいません」

「?」

「お一人ですか? 良かったらお茶しません?」

「………………」

 

 ナンパか〜。プロデューサーさんじゃないから無視でいいや。相手するの面倒だし。

 

「今日、天気いいですよね。デートするにはいいですよね」

「…………」

 

 めげないなこの人。これまで何度かナンパされたことはあるけど、口調も丁寧だしとっつきやすい感じはある。まあそれだけであたしは興味すらないんだけどね。早くどっか行ってくんないかな〜。それかあたしからどっか行こうかな〜。

 

「あの、無視は流石に傷つくんですけど?」

「っ」

 

 肩掴んできた。ん〜、大声出すべき?

 

「その人、自分の連れなんですけど、何かあったんですか?」

 

「へ?」

「♡」

 

 プロデューサーさん来てくれた♡

 あたしはすかさずプロデューサーさんの左腕に抱きつくと、ナンパの人は舌打ちしながらどっか行っちゃった。

 

「変なことされてない?」

「うん♡ それにそうなる前に大声出してる♡」

「早めに来て良かったよ……」

「へへ、早めに来てくれてありがと♡ そういうとこホント、大好きだよ♡」

「あ、あぁ……じゃあ、行こうか」

「うん♡」

 

 プロデューサーさんは本当にあたしのことを深く理解してる。だってそうじゃなきゃ待ち合わせの時間より早くに来ないからね。あたしが待ち合わせの時間より早く到着してるって考えてなきゃこうはならない。

 はぁ、好きな人に理解されてるって幸せなんだなぁ♡

 

 ―――――――――

 

 プロデューサーさんに出会う前のあたし……今もあの頃とそんな変わってないけど、確かに変わったのはプロデューサーさんに惚れて、恋人になりたいって願ったこと。

 それまでのあたしは身軽で何にも縛られない人間でいたかったの。そうすれば自分の思うままに人生を過ごせるし、面倒なこととも無理に向き合う必要もないから。

 なのにプロデューサーさんに出会ってから、アイドルになってプロデューサーさんに惚れてからは結構大変だった。

 でもあたしって気に入ったものは何が何でも手に入れなきゃ気が済まないんだよね。だからプロデューサーさんにはめっちゃ告ってアピールしたし、めっちゃ惚れてるサイン送ったんだ。

 そんでそれが実って半年前に受け入れてもらって、今に至る♡

 恋人なんて面倒だと思ってた昔の自分に喝を入れてやりたいくらいだよ。

 だってさ―――

 

「ねぇねぇ、〇〇さん、クレープ食べようよ、クレープ♡」

「ったく、仕方ないなぁ」

 

 ―――これだけの会話なのにとっても幸せな気持ちになれるんだもん♡

 

 今回のデートは食べ歩き。朝食も抜いてきたから、今日はたくさん食べる! プロデューサーさんもデートの時はめっちゃ甘やかしてくれるしね♡

 

 ―――

 

「はむはむっ♪」

「周子ってクレープでもあんこなんだな」

「むぐむぐ……だって美味しいじゃん♪ あんこ食べられない人は人生大損してると思うなぁ」

「俺は食えなくても人生損してるなんて思ってないよ」

 

 そう、あたしのプロデューサーさんはあんこが苦手。それだけじゃなくて、甘いもの全般が苦手なんだよ。今だってクレープのツナサラダ食べてるし。

 舌にねっとりとまとわりついてくる感じがダメなんだって。それが美味しいのにさ。

 てかその理屈ならツナサラダに入ってるマヨネーズもダメなはずなのにそれは許せるんだから、不思議でしかない。まあ苦手な物をあたしに合わせて無理に食べる必要もないんだけどね♪

 

「まあ、〇〇さんはそうだよね〜。なんたってあたしに出会えた時点でめっちゃ得してるもんね〜♡」

 

 なんてね。自分で言っておいてあれだけど、流石にサムい。

 なのに―――

 

「そうだな。周子に出会えた俺は幸せだし、今だって本当に恵まれてるよ」

 

 ―――マジレスすんのはホントズルいって。マジなんなん? うちのこと更に落とす気なん? もう落ちてますから。なんなら行くとこまで行っちゃってるから!♡

 

「も、もう、〇〇さん、何マジになってんの〜♡」

「ごめん……でも本当にそう思ってるから、ついな」

「〜〜〜♡」

 

 あぁ、もうあかんわ。

 

「〇〇さん、口元にマヨネーズついてるよ?」

「え、マジか?」

「取ってあげるから、こっち向いてそのままジッとしてて?」

「頼む」

 

 ちゅっ♡

 

「な……」

「へへ、嘘だよーん♡」

 

 プロデューサーさん赤面して口パクパクしてる♡

 でもあたしのことキュンキュンさせたのが悪いんだからね♡

 

「ほらほら、次行こ次♡ 次はアイス食べたい♡」

「あ、あぁ……」

「ほら、ちゃんと手を繋ぐっ♡ 指も絡めてっ♡」

「お、おぉ……」

「もう、ホント不意打ちに弱いんだから♡」

 

 でもま、そこがまたいつもと違うギャップであたし的には胸キュンポイントなんだけどね♡

 

 ―――――――――

 

 それからもあたしたち(主にあたし)は色んな物を食べ歩いた。

 んでデートの締めはプロデューサーさんの住んでるマンションのお部屋に上がり込んで、二人きりのラブラブタイム♡

 プロデューサーさんを床に仰向けで寝そべらせて〜、あたしはそんなプロデューサーさんに覆い被さるようにしてぐだ〜って寝そべるの♡

 

「ん〜、やっぱあたしたちのデートの最後はこれだよね〜♡」

「周子はこうするの好きだよな」

「うん♡ 小さい頃、お父さんとかお母さんに良くしてもらってたから、そのせいかも♡」

「子どもなら乗せやすいかもだが、今は流石に不安定だろ……」

「いいの♡ それに〇〇さんだって大好きなあたしと密着出来て嬉しいでしょ?♡」

「否定はしない」

「へへ、だよね〜♡」

 

 あ〜、ホント幸せ♡

 お腹はいっぱいだし、プロデューサーさんとイチャイチャまったり出来てるし♡

 きっと今のあたしは漫画とかだと、目にハートマーク描かれちゃってるだろうなぁ♡

 

「はにゃあ……〇〇さんに出会えて良かったぁ♡」

「今日はそのセリフを良く言うよな。なんかあったのか?」

「何もないよ。というか、シューコちゃんはこう見えてかなり一途だから、常に〇〇さんと出会えて良かったって思ってるんだよ?♡」

「塩見だからって急にしおらしくする必要ないぞ?」

「おもんな」

「そこは真顔かよ!?」

「あ、今のは面白ーい♪」

「ったく……」

 

 なでなで♡

 

 あ……頭なでなでしてくれた♡ そのしょうがないなぁみたいな感じで許してくれるとこ、ホント好き♡

 

「〇〇さぁん♡」

「ん?」

「あたしのこと好き?♡」

「あぁ、好きだよ」

「大好きぃ?♡」

「大好きだ」

「愛してるぅ?♡」

「あ、愛してる……」

 

 言い淀んだ……まあでも言ってくれたから良しとしてあげよう。

 

「じゃあさ……」

「?」

「あたしのどこが一番好き?♡」

「周子の好きなところ?」

「うん♡」

「………………」

 

 あはっ、考えてる考えてる♡

 別にどこが好きでもあたしはいい。それが例え顔でも胸でも……なんであっても。

 じゃあどうしてこんな質問したのかって訊かれれば、プロデューサーさんの頭の中をあたしのことでいっぱいにしたいから♡

 だって答えを考えてる間はあたしのことだけを考えてるでしょ? だもん、最高じゃん。だから答えなんてホントはなんだっていいの♡

 

「…………離れていても、心はいつも俺の側にいてくれるとこ……かな」

「◆%$◆@#*(]~◇!@・|*!?」

「?」

 

 や、ヤバい……何今の!? ティンと来たなんてどころの騒ぎじゃ足りないんだけど!? というか胸えぐられたような衝撃だったんだけど!?

 

「お〜い、周子〜?」

「だ、ダメ、ちょっとタンマっ」

「おわっ、なんだよ、手ぇ退かせよ。見えないだろ」

「見ちゃダメって言ってるのっ!」

 

 今のあたし、にやけ過ぎて絶対に変な顔になってるから。てかサラッとあんなセリフが吐けるってどうなの!?

 

「周子〜?」

「もう、アホ♡」

「好きなところ訊いてきたの自分だろ……」

「だってあんな気障なセリフが返ってくるなんて思ってもいなかったもん♡」

「たまにはいいだろ、かっこつけたって」

「アホ♡」

「はいはい、すみませんでした」

 

 ホント……アホ。でもそれなのにこの人のことが好きって気持ちが爆発してるあたしは大アホだと思う。

 

「ねぇ、〇〇さん」

「?」

「その手を、あたしの胸にあててみて?」

「こう?」

 

 トクン……トクン……♡

 

「分かる?♡」

「あぁ、すごいドクドクいってる」

「〇〇さんのせいだよ?♡」

「そっか……」

「だから、責任とって?♡」

「え?」

「〇〇さんしか、この高鳴りは止められないから♡」

「…………」

「だから、止めて?♡」

「優しくする」

「激しくしてもいいよ?♡」

「後悔するなよ?」

「うんっ♡」

 

 ―――――――――

 

 あれからプロデューサーさんにいっぱいいっぱい可愛がってもらっちゃった♡

 でも盛り上がり過ぎて、気がついたら寮の門限過ぎちゃった。だからフレちゃんに『今夜はプロデューサーさんのとこに泊まるから、寮の人には打ち合わせが長引いたのでビジネスホテルに泊まりますって言っといて♪』ってメールしといた。こんな時に友達が寮にいるといいよね♪

 ただフレちゃんからは『見返りに美味しいシュークリームよこせよ♡』ってきたから、明日買ってかなきゃ。

 

「やっぱ東京って進んでるね〜。もう0時回ってるのにステーキ屋さんやってるんだもん」

「まあ、色んな人がいるからな」

 

 そんであたしたちはプロデューサーさんのマンション近くにあるステーキ屋さんで夜食。やっぱ運動したあとはお肉だよね♪

 

「こんな時間にステーキとガーリックライスとか絶対太るよね〜♪」

「毎回じゃなきゃ大丈夫さ」

「それもそっか♪ それにあとでまた運動すればいいしね?♡」

「…………薬局寄って帰ろうな」

「えへへ、〇〇さん、チョー愛してる♡」

「うるさい」

 

 こうしてあたしたちはオフをとことん満喫したけど、朝になったら腰とか口とかめっちゃ痛くてヤバかった。

 でもプロデューサーさんに愛された証ってことでめっちゃテンション上がった♡―――

 

 塩見周子♢完




塩見周子編終わりです!

周子ちゃんは隠れ肉食系女子って印象があるので、こんな感じにしました♪

お粗末様でした☆

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